PTとは、p.24 によれば Permanent Traveler あるいは Perpetual Tourist、Passing Through、Parked Temporarily、Prior Taxpayer などの頭字語だそうです。
本書は、日本語で紹介された、たぶん最初のPTの本だろうと思います。PTというのは、世界中を旅していて、どこの国の居住者でもなく、したがって、合法的にどこの国にも税金を払わないという人(およびそういう生活のしかた)です。
PTということばは、他の本にも書いてありました。
2006.10.8 http://otsu.seesaa.net/article/25061050.html
2006.9.20 http://otsu.seesaa.net/article/24035583.html
2006.7.14 http://otsu.seesaa.net/article/20748838.html
2006.3.9 http://otsu.seesaa.net/article/14475013.html
しかし、PTについてここまで詳しく書かれた本は少ないと思います。各国のビザや、オフショアセンター、オフショアバンク、オフショアファンドの利用法なども解説されています。
さて、では、いざPTになろうとするとき、いったい資産はどれくらいあればいいのでしょうか。
p.247 では、年金受給額が年間 300 万円の老夫婦を考えて、金融資産 4000 万円とはじいています。4000 万円を運用しても、年 5% くらいしか収入が得られないでしょうから、200 万円の収入です。税金が収入の2割かかるとして、40万円です。これを節約するために、外国(と日本)を行ったり来たりすることを考えると、あまり現実的ではありません。PT生活には飛行機代もかかるわけですし、それぞれの土地で生活するとなると、ずっとそこで暮らしている人よりは何かと生活費がかかるはずです。これでは生活が破綻しそうです。
資産3億円ではどうでしょうか。運用収入が 5% として 1500 万円、その税金が2割として 300 万円ですから、これを合法的に節約するというのは結構大きいと思います。3億円あると、相続税も気になってくる金額ですから、その点からもPTはあり得るかもしれません。
乙の総資産が15年後に3億円になるか。以前の計算
2008.2.14 http://otsu.seesaa.net/article/83933945.html
によると、そこまではならないはずなのですが、将来のことはわからないので、もしかしたら3億円になるかもしれません(笑)。とすると、PTも選択肢の一つとして考えられないわけではありません。
しかし、乙のケースを考えれば、妻はPT生活に大反対です。日本(の特に東京)に住んで友達と遊んでいたいということです。親戚や息子たちも日本に住んでいます。では、ここで夫婦別居ということになるのでしょうか。いや、家族が日本にいたら、非居住者とみなされないのですから、単なる別居ではダメで、離婚しなければなりません。PTになるために離婚するというのでは本末転倒ですから、やはり夫婦で考え方が一致したらPT生活を考えることになるのでしょう。
それにしても、300 万円の税金を払って友達と遊んでいたいかと考えると、かなり気になる話ではあります。普段外国に住んでいて、25万円ほどの旅費を使って、毎月1回(数日間の日程で)飛行機に乗って日本にやってきてホテルに泊まり、友達と遊んでまた外国に行く。これでもいいのではないでしょうか。
実際は、PTとしてあちこち移動しなくても、税金の安い国に住み続ける方が生活が安上がりで便利だと思います。
これからインターネットがますます普及し、高速化していきますから、外国に住んでいても、メールや電話、さらにはテレビ電話などですぐ連絡がつくとなれば、国内にいるのとあまり変わりません。
なお、本書の p.42 10行目〜13行目の1段落の意味がよくわかりませんでした。
「Aさんの場合、「日本の居住者」であり米国の非居住者になりますから、米国では預金利子に対する税金を支払う必要はありません。米国の場合、米国に住んでいない非居住者の利子所得については、原則 30% の源泉徴収がなされますが、非居住者の預金や国債、社債の利子所得については非課税となっているのです。」
どうも、何かが抜け落ちているようにしか読めません。
ついでに言えば、本書に関連して、ネット内では以下のような記事も参考になると思います。
http://www.alt-invest.com/roadto/kimura.html
http://www.alt-invest.com/topics/990710_ptforum.html
2008.2.20 追記
本文中の最後に書いた p.42 の記述については、PALCOM さんが
http://palcomhk.blog79.fc2.com/blog-entry-461.html
で説明してくださいました。
あわせてご参照ください。
2009.5.27 追記
この話の続きを
http://otsu.seesaa.net/article/120279406.html
に書きました。
よろしければご参照ください。
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