著者は資産運用を専門におこなってきた人で、各種デリバティブを利用して商品開発を行ったり、ファンドマネージャーをつとめたりしています。プロ中のプロなんでしょう。投資のプロの考え方を知るにはいいかなと思って読んでみました。
全体の趣旨は、株価はランダムウォークを行うから、投資家はそれを前提にして市場に臨むべきだということです。また、行動ファイナンスの考え方も説明されています。
乙がおもしろいと思ったところをいくつか抜き書きしておきましょう。
p.101 「「理解できるものにしか投資しない」というバフェット理論は多くの投資家に逆効果」ということで、バフェット流の投資は彼にしかできないと喝破しています。確かに、バフェット流投資術は素人投資家が一朝一夕にマネすることができるとは思えません。
pp.128-131 コンセンサスの誤謬というのがあるそうです。コンセンサスというのは多数派意見のことですが、マーケットのコンセンサスは、多数の支持を得ている意見ですから、もはや相場を動かすエネルギーがないとのことです。また、運用組織内のコンセンサスも、事実上マーケットのコンセンサスと一致することが多く、それに従うと投資判断を間違えることがあるとのことです。
p.144 テクニカル分析について、「トレンドが反転するときには、そうしたパターンが現れやすい」けれども、「そうしたパターンが現れるとトレンドが反転する」ということではないと述べています。原因と結果を取り違えているという見方はおもしろいと思いました。議論はテクニカル分析に対する批判になっています。
p.150 投資家は損切りがむずかしいのは情熱的自己正当化があるからだと述べ、日本の銀行が不良債権に苦しんだのも同根だとみています。それくらい、投資家にとって損切りはむずかしいものなのですね。(乙も塩漬け株を持っていますので、実感していますけれど。)
第5章(pp.158-171)は投資を「巨額損失の押し付け合い」と見るもので、投資で負けが多いのは当然だとみています。自分流の投資を考える上で参考になる考え方です。
第6章(pp.172-237)は、特に初めのほうが抽象的記述でわかりにくく感じました。マーケットにわずかに存在する期待リターンの源泉を明示するもので、それを扱う投資手法がヘッジファンドに結びついています。
本書は、投資を考える上では有用な考え方がたくさん出てきますので、読む価値があると思います。ただし、全体として、やや抽象的で読みにくい気がしました。タイトルにある「図解でわかる」ですが、乙の感想としては、あまり説得的な図は多くなかったように感じました。厳密なグラフでなくて、概念図のようなものが多いのですが、必ずしも成功しているとは言えないようです。
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