題名に引かれて、期待して読んだのですが、残念ながら乙の好みには合いませんでした。
投資に関係する10話のショートストーリーを示し、それに付け加えて解説があるというスタイルです。しかし、このショートストーリーが成功したとは思いません。創作ですから、いつのどこの世界の話か定かではなく、なんなる寓話です。しかも、それがありえないような話になっていると、興ざめでしかありません。
たとえば、第2話ですが、3人の父親と1人の母親から生まれた女の子が、どんな夫(3人)と結婚するかという話です。別の星の話だということになっていますが、こういうことはありえないと思います。3人の父親は、競争状態になり(けんかになり)、1人だけが結婚し、あとの2人はあぶれるのが普通です。地球上の生命はそうできています。その結果、よりよい子孫が残るというわけです。
この話が、分散投資のすすめと関わってきます。3人の父親の働き方と稼ぎが違うから、どういう状態になってもこの母親は大丈夫で、したがって、娘に3人の違ったタイプの男性と結婚しなさいというアドバイスをするわけです。
この話を読んで、乙はどうにもしらじらしく思いました。ありえない話よりは、もう少し別のたとえ話にした方がよかったと思います。
10話ともこんな感じなので、乙としては、こういうショートストーリーの部分を省略してコンパクトにしてくれた方がよかったと思いました。
203ページの本ですが、全体がこういう調子で書いてあるので、あっと言う間に読み切れます。
乙がおもしろく思ったのは、p.70 で、アメリカと日本の投信を比較しているところでした。アメリカでは、発売から10年以上経過した長寿投信が運用残高の 65% を占めるのに対し、日本ではたった 5% しかないとのことです。また、運用残高規模で上位15位の投信を見ると、アメリカでは15本すべてが10年以上運用しているのに対し、日本では10年以上の投信がゼロだということです。日本の投信が本来のあり方を逸していて、まるでいびつな形になっていることがわかります。これでは日本の投信に未来はありません。
続いて p.71 では、さわかみ投信やセゾン投信を取り上げて「成果を出している」と評価していますが、それだけでは日本としてさみしい限りです。
ともあれ、本書は、「法則」とはいえないような書き方で書いていることで、題名と内容にギャップがあると思いました。
間違っていることを書いているわけではないので、その点では許せるのですが、もう少し書きようがあるように思いました。著者の意気込みが空回りしているようでした。
ラベル:中桐啓貴
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