海外ファンドを利用して、資産を大きくしようという趣旨の本です。
では、具体的にどうやってこういう海外ファンドを買うのか。それは、本書の p.70、p.147、末尾(p.191)、奥付に明記されています。グローバルレポート社
http://www.globalreport.co.jp/
へ連絡するようにとのことです。著者の森氏はグローバルレポート社の主幹だそうです。
これで、本書の性格がわかってしまいました。日本の危機をあおり立て、不安を抱いた人たちを海外ファンドに誘導し、結果的にそれで儲けようというビジネスです。つまり、浅井隆氏のやり方
2006.2.20 http://otsu.seesaa.net/article/13495488.html
と同じです。奥付にある著者紹介を見ても、日本国破産に関するものを何点かお書きのようで、これまた浅井氏と同様です。
ちなみに、グローバル会員は年会費 42,000 円だそうです。こういうお金を払いたい方はどうぞ。こんなお金を払わなくても、十分海外ファンドは買えます。
p.102 では、3万米ドルを送金しても、コルレスチャージがかかって、3万ドルピッタリで先方に入金されるとは限らず、したがって海外ファンドが買えないことがあるとしています。したがって、プラス100ドルくらいして送金すればいいとのことです。乙の経験では、そんなことはありません。せっかくの3万ドルの申し込みを、数十ドル不足だからといって断るなんて、ファンド会社としてももったいないではないですか。当然、受け付けてくれます。29,950 ドルから運用を始めるのです。コルレスチャージは海外送金の常識なので、ファンド会社はわかっています。
ところで、これに関連して p.103 には、「100万ドルくらい多めに振り込む!!」と書いてあります。100 ドルの誤字ですが、大笑いできる誤字でした。
著者は、本書で元本保護型のファンドをすすめています。6割を国債購入に充て、4割でハイリスクな運用をするというわけですが、この考え方は変です。自分で資金の6割を国債購入に振り向ければ、あとは全部ハイリスク運用でかまわないということになるはずです。購入手数料は、全資金にかかってくるわけですから、国債を買う分の購入手数料は節約したいところです。
p.93 には、S社のAファンド、Bファンドの話が出てきます。これはスーパーファンド社ですね。何もS社などと名前を隠すことはないように思いますが、……。いずれも、2003 年ころから、あまりパッとしない成績です。
ところで、では、著者のいうように、海外ファンドは年率 10% で増えていく凄腕ファンドなのでしょうか。
実は、本書では、いちばん大切な為替の問題にまったく触れていません。米ドル建て、豪ドル建てのファンドは、それぞれの通貨で考えれば、たしかに 10% 程度の運用が可能なのですが、円高になると、とたんに(円で考えた場合に)資産が減ってしまいます。で、今後、円高・円安の方向性はどうなのかという問題が出てきます。今のように、海外が高金利、日本が低金利という状態が長く続けば、(為替レートはそれだけで決まるものではありませんが)理論上は円高になります。つまり、安定して年10%のリターンがあるとばかりは言えないのです。
まあ、ここを避けているのは、一番難しいところだということもあるのですが、それにしても、安易に海外ファンドに走らない方がいいかもしれません。
【関連する記事】
- 香川健介(2017.3)『10万円からできる! お金の守り方教えます』二見書房
- 大江英樹、井戸美枝(2017.2)『定年男子 定年女子』日経BP社
- 天達泰章(2013.6)『日本財政が破綻するとき』日本経済新聞出版社
- 安間伸(2015.11)『ホントは教えたくない資産運用のカラクリ 投資と税金編 ..
- 橘玲(2014.9)『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 2015』幻冬舎
- 橘玲(2014.5)『臆病者のための億万長者入門』(文春新書)文藝春秋
- ピーター・D・シフ、アンドリュー・J・シフ(2011.6)『なぜ政府は信頼できな..
- 小幡績(2013.5)『ハイブリッド・バブル』ダイヤモンド社
- 吉本佳生(2013.4)『日本の景気は賃金が決める』(講談社現代新書)講談社
- 川島博之(2012.11)『データで読み解く中国経済』東洋経済新報社
- 吉本佳生(2011.10)『日本経済の奇妙な常識』(講談社現代新書)講談社
- 野口悠紀雄(2013.1)『金融緩和で日本は破綻する』ダイヤモンド社
- 吉田繁治(2012.10)『マネーの正体』ビジネス社
- 午堂登紀雄(2012.4)『日本脱出』あさ出版
- ウォルター・ブロック(2011.2)『不道徳な経済学』講談社+α文庫
- 内藤忍(2011.4)『こんな時代を生き抜くためのウラ「お金学」講義』大和書房
- 瀬川正仁(2008.8)『老いて男はアジアをめざす』バジリコ
- 増田悦佐(2012.1)『日本と世界を直撃するマネー大動乱』マガジンハウス
- 藤沢数希(2011.10)『日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門..
- きたみりゅうじ(2005.10)『フリーランスを代表して申告と節税について教わっ..
この日の話題に取り上げられていた『海外ファンド投資プラン』が、友人の編集者が担当した本であることと、この本の著者とは何度か会っているのでコメントをさせていただきます。ちなみに私は、この本の著者と利害関係はまったくありませんし、友人というわけでもありません。
本記事が掲載されていたのは前から知っていたのですが、なぜ今になってからコメントするのかといえば、この本を書いたご本人が「私は気にしていません。わかっている人だけわかってくれればいいだけですから」とまったく問題にしていなかったからです。
ところが、海外ファンドについての記事を書くことになって、あらためて調べると、乙様の的外れなコメントが気になってしょうがなくて、あえてひと言いいたくなった次第です。著者ご本人はこの投稿をご存じありません。
まず、この日の記事のうち冒頭に置くくらいですから、海外ファンドのススメが、この著者のビジネスのための誘導である、ということを最も言いたいのかと感じました。
このことについては、いくらここで書いても信用してもらえないと思いますが、一度、グローバルレポート社にアクセスするといいと思います。
現在、著者はこれを本業とはしていませんし、このことで利益はまったくあがっていません。そもそも、すでに十分な蓄財もあり、ガツガツ儲けようなどというつもりはまるでないようです。自分自身がやってきた体験をノウハウとして共有し、その情報を興味のある人たちに伝えたい、そして個人がやるのには煩雑すぎる手続きを代行したい、ということから始めています。
利益の追求だけからいえば、海外ファンドを中心にした投資をしているだけのほうがいいくらいでしょう。
さて、以下、異議を感じている具体的な内容についてです。
「こんなお金を払わなくても、十分海外ファンドは買えます」
とのことですが、現在約2万5000流通している世界中の海外ファンドのうち、日本で買えるのは非常にわずかな数でしかありません。そして、本当に優良な、あるいは著者がすすめる優良な海外ファンドは日本では買えません。
このことを無視して、「日本で買える」というひと言では、乙様のブログを楽しみにしている読者をミスリードすることになるのではないかと危惧いたします。
「乙の経験では、そんなことはありません。せっかくの3万ドルの申し込みを、数十ドル不足だからといって断るなんて、ファンド会社としてももったいないではないですか。当然、受け付けてくれます。29,950 ドルから運用を始めるのです」
海外の富裕層を相手にしている海外ファンドでは、実際に1ドルでも足りなければ受け付けてもらえないものが数多くあるのです。少なくともこの本で紹介しているところでは、受け付けてくれません。実際にお試しになるといいと思います。
「これに関連して p.103 には、「100万ドルくらい多めに振り込む!!」と書いてあります。100 ドルの誤字ですが、大笑いできる誤字でした」
ご本人も赤面して、間違いを悔やんでいました。
「著者は、本書で元本保護型のファンドをすすめています。6割を国債購入に充て、4割でハイリスクな運用をするというわけですが、この考え方は変です。自分で資金の6割を国債購入に振り向ければ、あとは全部ハイリスク運用でかまわないということになるはずです」
ここは、考え方の相違だと思いますが、そもそも自分で固有の投資先を選ぶのと、運用先自体をまかせるファンドを選ぶのとでは話が全然違うと思うのですが、いかがでしょう?
あるいは、元本保護型をすすめていること自体に異議があるのでしょうか?
「p.93 には、S社のAファンド、Bファンドの話が出てきます。これはスーパーファンド社ですね。何もS社などと名前を隠すことはないように思いますが、……」
これは、すでに買ってしまっている人のことを気の毒と考えて、名を伏せたそうです。
「実は、本書では、いちばん大切な為替の問題にまったく触れていません。米ドル建て、豪ドル建てのファンドは、それぞれの通貨で考えれば、たしかに 10% 程度の運用が可能なのですが、円高になると、とたんに(円で考えた場合に)資産が減ってしまいます」
そもそも著者のこれからの資産運用の主張は、外貨での預金や運用です。将来的に弱くなるであろう日本円ではなく、外貨での資産運用をすすめています。
いや、日本円にしなくては意味がないのではないか、という反論に対しては、それに直接応じられる回答も用意していますが、本で書くことではないのであえて書いていないそうです(私はその回答も理由も聞いています)。
乙様にも、その回答や、書いていない理由はおわかりなのではないでしょうか。
著者であるご本人は、自分自身で海外に行き、対面販売で海外ファンドを大変な苦労をして買い、そして多くの運用をしてきた長年の結果を、この本に書きました。
直接お話を聞くと、普通では買えない海外のプライベート・ファンドの話、香港やシンガポールのプライベート・バンクの話、海外の金融業界から直接入ってくる情報など、私などが驚くような話をたくさんお持ちです。失礼ながら、乙様とはキャリアも運用資金も桁違いなのではないかと思います。
ご自分の経験のないことは、「ないこと」とお書きにならないほうがいいのではないでしょうか。せっかく乙様のご意見に信頼を寄せている方をがっかりさせかねないと思います。
以上、ブログにお書きになった点のみに絞って書きましたが、言葉が過ぎた点があればご容赦願いますし、また私自身の素人考えで的外れを申し上げているのでしたらば、その点もご容赦願います。
長い長いコメント、ありがとうございます。
乙は、グローバルレポート社のサイトにもアクセスしました。(だから、ブログ記事中に URL を明記しました。)著者がこれを本業としているか、それで利益を上げているかは、乙はまったく考えていません。ただ、本書が自分の関係する会社への誘導をねらっているということは言えると思います。本書中には何ヵ所も、グローバルレポート社の話が出てきます。その点で、本書の記述は「李下に冠を正している」態度であり、乙は、そういう態度を避けるべきであると考えています。
乙は、手続き代行業の存在を無視するものではありません。しかし、代行してもらわなくても、別のやり方があるということもまた一方の事実です。
海外ファンドを買うとき、乙は、日本で買うとか日本で買えるとはひとことも言っていません。実際、乙自身も、日本で買っている例はまったくありません。したがって、乙の言い方が読者をミスリードするとは考えていません。
乙は、1ドル不足して受け付けてもらえないのか、受け付けてもらえるのか、それを数多くの海外ファンドについて実験的に調べるつもりはありません。しかし、乙の経験(わずかに10社ほどですが)では、送金額不足で断られた例は一つもありません。そもそも自分で送金額不足だ(コルレスチャージ分が不足している)と知ったのは送金した後のことで、おやおやと思ったくらいでした。
乙の場合、最近は海外ファンドへの投資を控えており、近いうちにこの点を試すつもりもありません。どちらのタイプが多いのか、何ともわかりませんが、森氏が気にしすぎている点が気になりました。
次に、元本保護型のファンドの話ですが、乙は、元本保護型をすすめていること自体に異議があるという立場です。これは立場の違いでしょう。国債を購入する手数料はかなり安いものです。何といっても、ファンド購入の手数料よりは安いのです。だから、資金の一部を利用して自分で国債を買い、残りの資金を元本保護型でないファンドに投資する方が、手数料全体を考えると確実に安上がりで、しかも実質的に同じことができます。そこで元本保護型のファンドを否定的に見ています。(実は、元本保護型のファンドを買ってしまった経験もあるのですが、
2006.7.9 http://otsu.seesaa.net/article/20493021.html
今は反省しています。)
外貨での預金や運用を考える場合でも、円高/円安は関係があります。日本で生活している場合は、円で収入がある場合がほとんどでしょうが、円高になれば、(外貨での)収入増と同じ効果があります。乙は、将来的に日本円が弱くなるかどうかは何ともわからないという立場ですが、そのため、随時、円でものを考えるということがあっても不思議ではないと思っています。
つまり、乙は、日本円にしないで考えるという立場を否定するものではありませんが、日本円で考えるという立場もあると思います。
乙は、海外に行って、海外でファンドを購入したこともありますが、経験は少ないし、運用する資産は大した金額ではありませんし、その意味では森氏とはまったく違う経験をしていると思います。
プライベートバンクは、利用するほどの資産を持っていないので、話ができません。もっとも、橘玲氏の一連の著作などを読んで、プライベートバンクが、一般に考えられるほど有利な仕組みではないように思っています。
「ご自分の経験のないことは、「ないこと」とお書きにならないほうがいいのではないでしょうか。」というご意見に対しては、乙のブログ自体が自分が経験したことを中心に書いており、「経験のない」ことを「存在しない」と断定的に書いたことはないつもりです。ご指摘の件がコルレスチャージの話だとすれば、ブログ記事本文には「乙の経験では、そんなことはありません。」と書き、あくまで自分の経験した範囲での記述にとどめています。
私も本を読み終えて、「著者はグローバルレポートを宣伝するためにこの本を書いたのかな?」と感じた一人です。
もちろん、私にとってはとてもためになる内容がたくさん書かれていた本ですので、多少の紹介が入っても私は良いと思っているのですがなんども「宣伝してるな〜」とは思いましたね。
本の中でおそらくは10回以上、グローバルレポートという言葉がでてきていますので、私と同じことを思う人も多いと思います。
グローバルレポート社の紹介ばかりで同様のサービスを提供する他社の紹介がないことも気になりました。
70ページ、141ページ、147ページ、191ページ、192ページ(筆者略歴ページ)の5つでした。
10以上というのは大げさだったようです。大変失礼いたしました。