記事の先頭の一部(2段落分)は NIKKEI NET でも読めるようになっています。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20080508AT3S0701C07052008.html
(この記事の見出しでは「額減」とありますが、新聞本紙では「減額」となっており、当然、NIKKEI NET のほうが間違っています。)
未納や未加入とされていた期間の記録が見つかって、年金記録を訂正すると、何と支給される年金が減額される場合があるというのです。これは見過ごせない記事です。
しかし、この記事のおもしろい部分は、具体例が書いてある、次のパラグラフです。新聞記事から引用します。
「一例は遺族厚生年金をもらっている人で、会社員の夫が亡くなったとき妻に遺族厚生年金が支給されるが、年金額は夫の過去の平均収入から算出する。夫が若手だった当時の安い給料の期間が見つかると平均報酬月額が下がる。障害厚生年金も同様の仕組みで、年金額が減る可能性がある。」
考えてみると、実におかしな制度であり計算法です。日本の年金は賦課方式であり、積立方式ではありません。そこでこんなことが起こるのでしょう。積立方式ならば、自分で積み立てたものを自分で受け取るので、未納とされていた期間に年金の掛け金を支払っていたことが確認されれば、それは年金増額の方向での修正しかありません。
他にも、こんなことがありうるのかと思ってネットを探してみると、坂本直紀氏のブログ記事
http://arcmist.net/html/nenkin/176.html
http://sakamotonaoki.seesaa.net/article/96023560.html
(両者は同じ記事です)
がありました。
賦課方式は、いろいろとめんどうな計算がありそうですが、それにしても、こんなことがあるというのは、制度上の不備としか思えません。こんなことがあると、特に若いときに、掛け金を払いたくなるという人が増えるかもしれません。多くの人が掛け金を払いたくなくなると年金制度は崩壊します。
そして、単純に考えれば、逆のケースがあり得ます。年を取って年金の受領が始まるときに、いつから年金に加入したかによって受領額が変わります。もしかして、若いときの一部の加入記録を放棄する方が年金の受領金額が高くなるわけです。だったら、いろいろな場合分けを考慮して、最大年金受領額を計算し、そうなるように、若いときの年金加入記録の一部を放棄すればいいのです。実際は年金に加入して、掛け金を払っていたとしても、それをなかったことにする「記録の修正」は可能なのではないでしょうか。本人にしてみれば、払った掛け金を捨てようというだけのことで、何も悪いことはしていません。
この話は、今後、日本がインフレになり、給料が大幅にアップするようなことがあると、より深刻な形で現れてきます。ただし、インフレ時には、過去の標準報酬月額は現在の賃金水準から比較すると著しく低いものとなり、不合理なものとなるので、現在の平均水準報酬月額に見合うよう一定の修正率を乗じる仕組みになっています。このあたりの詳細は乙にはよくわかりませんが、本当に修正ができるのでしょうか。できるのでしょうね、たぶん。
そもそも、年金の支給額を計算するときに、コンピューターで計算するわけですから、自動的に最大年金受領額を算出するように、そういう計算手続きをプログラムに組み込んでしまえば問題はなくなります。そんなに複雑なことではなさそうに思います。社会保険庁はNTTデータに毎年システム経費として800億円も支出している
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20070611
のですから、この程度のプログラム改修は無料でやってもらって当然です。
いろいろな年金加入記録の放棄の組み合わせを考えて、最大年金額になるように計算して、それをその人の受領額にします。簡単なことじゃないですか。なぜこうなっていないのでしょうか。こういうシステム設計がそもそもおかしいと思えるのです。
今回は、5000 万件の宙に浮いた年金記録問題があったから、こういうことが表沙汰になったわけで、そういうことがなければ、わからなかったでしょう。
実に残念な話です。
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