ところで、今後の投資方針を決めたり、いろいろ考えたりする際に、人はリターンは意識しますが、リスク(ブレの大きさ)は意識しにくいと思います。
今後の(例えば1年後の)リターンは、そのときになってみればわかります。そのときに自分の資産が(例えば1年前と比べて)増えているかどうかですから、誰でも意識せざるを得ません。
それに比べると、リスクは意識しにくいと思います。ある時点で資産が増えているか減っているかではなく、そこまでの過程で資産総額が増えたり減ったりしたかどうかがリスクです。したがって、リスクは直接意識できるものではありません。リターンは、その場でその時点で高いか低いかすぐわかるのに対し、リスクは、たえず過去の成績を計算しなければ、高いか低いか、わかりません。つまり、リターンは現実的・即物的であるのに対して、リスクは抽象的であり、過去の記録に基づいて計算して初めてわかるものなのです。
リスクを意識しないと、つまりはリターンだけに目がいってしまうわけで、投資家としてはこれは危険なことこの上なしです。
さて、リスクは、過去に目を向けないと見えないものですが、一方、過去何年間を見るかによって変わってきます。
日経新聞に載っていた日本株の投資信託のリスクとリターンのグラフは、だいぶずれているようなので、モーニングスターのサイトで調べた結果を示しましょう。各投信ごとにリターンとσ(リスク)とシャープレシオを示します。日経新聞に載っていた七つのファンドに、参考までに、トピックス・インデックス・オープン(野村)を付け加えました。
投資信託 | 1年 | 3年 | 5年 | |
アクティブバリューオープン | リターン | -16.2% | 14.5% | 21.6% |
σ(リスク) | 23.43 | 23.72 | 23.93 | |
シャープレシオ | -0.71 | 0.61 | 0.90 | |
ミュータント | リターン | -22.5% | 3.8% | 22.8% |
σ(リスク) | 14.83 | 22.26 | 26.95 | |
シャープレシオ | -1.56 | 0.16 | 0.84 | |
さわかみファンド | リターン | -19.9% | 4.8% | 12.8% |
σ(リスク) | 15.29 | 15.58 | 16.21 | |
シャープレシオ | -1.34 | 0.29 | 0.78 | |
ダイワバリュー株オープン | リターン | -22.0% | 7.7% | 13.0% |
σ(リスク) | 16.52 | 19.69 | 18.71 | |
シャープレシオ | -1.37 | 0.38 | 0.69 | |
トピックスインデックスオープン | リターン | -19.2% | 7.1% | 11.9% |
σ(リスク) | 15.81 | 17.76 | 17.11 | |
シャープレシオ | -1.25 | 0.39 | 0.69 | |
ノムラ日本株戦略ファンド | リターン | -19.4% | 6.7% | 12.0% |
σ(リスク) | 16.95 | 18.66 | 17.75 | |
シャープレシオ | -1.18 | 0.34 | 0.67 | |
フィデリティ日本成長株ファンド | リターン | -16.8% | 6.6% | 13.5% |
σ(リスク) | 16.63 | 19.08 | 20.57 | |
シャープレシオ | -1.05 | 0.33 | 0.65 | |
デジタル情報通信革命 | リターン | -20.6% | 1.5% | 7.0% |
σ(リスク) | 16.11 | 20.01 | 20.15 | |
シャープレシオ | -1.32 | 0.06 | 0.34 |
こうしてみると、それぞれのファンドは、リスクの値が1年でも5年でもあまり大きくは変わらないことがわかります。
そして、シャープレシオが大きいのがいいファンドとすれば、5年のところで見て、アクティブバリューオープンが1位、ミュータントが2位、さわかみファンドが3位ということになります。
乙は、最近、アクティブバリューオープンを少額だけ買いましたが、
2008.5.16 http://otsu.seesaa.net/article/96869587.html
どうせ買うなら、こういうファンドがよさそうです。(もっとも、買うと決めた時点ではこういう対照表を作成したわけではないのですが。)1年でも3年でも5年でもトピックス・インデックス・オープンを凌駕する成績を残しています。
シャープレシオがマイナスの時は、下落の幅がリスクと比べて大きかったかどうかを表しますから、運用状況が横並びで悪かった場合でも、マイナスが比較的小さい(数値の絶対値として小さい)もののほうが成績がいいということになります。
アクティブバリューオープンは、1年のところで見ても、その意味で、優れたファンドだということがいえると思います。(下落していて「優れている」というのは変な気がしますが。)
マイナスリターンの時に分母であるリスクを大きくすると、レシオの絶対値が小さくなってしまい、何か変な感じがします。
何か上手い指標は無いものでしょうか?
マイナスリターンの時でも、リスクが大きい場合、レシオが小さくなって、「リスクが大きい割には、下落幅が小さい」という意味ですから、これでいいのではないでしょうか。