2017年06月25日

香川健介(2017.3)『10万円からできる! お金の守り方教えます』二見書房

 乙が読んだ本です。全部で4章構成です。
 第1章「日本の財政問題が解決不可能である理由」では、日本の莫大な借金は解決不可能な段階まで進んでしまったという現状認識が語られます。社会保障費が増大する一方で、少子高齢化が進み、もうどうしようもない段階になったというわけです。乙も基本的に同じ認識を持っています。納得しながら読み進めました。
 第2章「財政破綻の想定シナリオ」では、国債が売られたりして金利が上昇することから財政破綻が始まります。そして、ハイパーインフレが発生するというシナリオが描かれます。乙もこのシナリオと同様のことを考えていました。
 第3章「日本の財政破綻に備え、どう対策したらいいか」では、さまざまな金融商品を一通り並べ、それが財政破綻時にどんな影響を受けるかを論じています。結論として、外貨預金、金(ゴールド)、FX、ビットコインの四つを推奨しています。まあそうかもしれないけれど、一方では財政破綻がいつ起こるかわからないわけです。そんな場合に、あるとき、それーっとばかりにこの四つに資金を移動するなどということができるのでしょうか。しかも、FXはレバレッジが効いています。財政破綻だからといって資金をFXに移動するようなことをすると、思ったように円安が進まず、ちょっとした何かで一時的な円高になったりしたときに、失敗してしまう可能性もあります。というわけで、乙は、著者の香川氏の意見を参考にしつつ、各自の保有資産をながめて、それぞれで対策を講じるべきだろうと思います。ここは投資リテラシーが求められるところであり、それはそう簡単な話ではありません。
 第4章「いざというときに機動的に動けるよう、今やっておくべきこと」では3章の対策の準備段階を解説します。外貨預金のためにアメリカの銀行の口座を開設しておくというようなことです。具体的に説明しているので、この方面の知識がない人には有用だろうと思います。乙は、この部分は各自が努力して、それぞれの保有資産に応じて、機動的に動けるようにしておくべきだと思います。したがって、あまり有用な記述だとも思えませんでした。
 何はともあれ、これから財政破綻が現実的になります。あと数年かもしれないし、20年かもしれません。もっと先かもしれません。しかし、確実にやってくると思われます。
 本書は、そういう問題を身近に考え、対策を実行するのに便利な内容を含んでいると思われます。
 2箇所、小さな問題点を書いておきます。いずれも p.28 です。
(1)10行目
「医療だったら、本来かかる金額の7割以上は政府が補助しています。」
 こういう書き方をすると、自分で払う3割(以下)以外は政府が払っているように読めてしまいます。正しくは、p.42 にあるように、健康保険が払っているわけです。まあ健康保険が年金特別会計の中にあって、全体として政府が管理しているし、7割の部分について政府が関与している(そしてその一部を補助している)といえば関与している(補助している)のですが、7割を政府が払っているわけではないので、誤解を招く言い方だと思います。

(2)終わりから3行目
 政府が年金や医療介護などのお金を税金や保険料、国債発行で集めていると述べた後のところです。
「これらをおもに払っているのは、働き盛りの人や子育て世代などの現役世代や、まだ生まれていない人たちなどです。」
 まだ生まれていない人たちは、まだ払っていません。生まれた後に約20年以上経って、働くようになってから、払うことになる予定なのであって、現在は払っていません。勢いで書いたミスかもしれません。

 乙は、本書をいろいろな人におすすめしたいと思います。しかし、最初にこれ1冊を読んで、問題を理解し、対策を実行できるような人はいるでしょうか。たいていの人は戸惑いながら大波に呑まれてしまうことになるでしょう。
 本書のタイトルは変です。編集者が付けたのでしょうが、「10万円からできる」は、本来のあり方ではありません。本書中に書かれているように、10万円でもFXを使って財政破綻対策は可能だという意味では間違っていないのですが、貯金が10万円しかない人は、対策をしてもしなくても、大した違いはありません。本当に対策が必要な人は、数百万円ないし数千万円以上の資産を持っている人ということになるでしょう。もしも、日本の銀行の預金口座に全額を蓄えている(それしかしていない)人がいたら、そういう人こそ本書を読んで準備を進めるべきです。


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2017年06月16日

大江英樹、井戸美枝(2017.2)『定年男子 定年女子』日経BP社

 乙が読んだ本です。「45歳から始める「金持ち老後」入門!」という副題が付いています。
 通読した実感として、副題のほうが本書の内容を的確に表現していると思います。
 本書の内容を単純にいうと、働けるだけ働こうよということで、割と簡単にまとめられるように思います。(ちょっと簡単にまとめすぎで、実際はもっといろいろ書いてあります。)
 図表がたくさん入っていますが、本文と重なる記述を表の形式にしたものも多く、ページ数の割にはさっと読めてしまいます。シンプルな指南書で、さらっと書いてある感じです。二人の著者のトークセッションということで対談の文字化のような部分もあります。
 というわけで、乙としてはすでに知っていることも多く、一読した感想として、得るところはあまり多くないように思いました。
 ただし、45歳くらいの人で、老後や年金などのことを考えたことのない人には意味があるかもしれません。気をつけるべきことは何か、きちんと書いてあるように思います。しかし、そういう中年層は仕事に夢中で、こういう本を読むことなんて考えないのですね。もっと切羽詰まってから読むものでしょう。そのときにはすでに時遅しという場合も多いように感じています。
 乙は、もう少し投資のことが書いてあるのかと思っていましたが、ほぼ何も記述されていません。45歳から投資を始めるとしても15年(以上)あると考えられますので、少しはその方向も意識した方がいいと思いますが、どうなのでしょうか。

参考記事:
http://randomwalker.blog19.fc2.com/blog-entry-3175.html


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2016年06月27日

天達泰章(2013.6)『日本財政が破綻するとき』日本経済新聞出版社

 乙が読んだ本です。「国際金融市場とソブリンリスク」という副題が付いています。
 乙は題名に引かれて読んだのですが、実際の内容は副題のほうがよく示しています。特に第1章から第5章まではまさに「国際金融市場とソブリンリスク」と関連する視点から日本の財政を論述しているといえます。
 もしかすると、本書の題名は編集者がつけたものかもしれません。
 乙は、日本の財政破綻が心配なわけですが、それに関する話は、最後の3章に出てきます。
 第6章「誰が国債を保有しているのか」では、日本の銀行や保険会社、年金、日本銀行が大量に国債を保有していることを述べています。これは、銀行や保険会社の判断でそうなったわけではなく、国際的な規制や日本でいうと金融庁などの規制のためでもあるとのことです。金融機関は、ある一定程度の割合でリスクなし資産を保有していなければならず、そのためにはリスクフリーとみなされる国債が一番都合がいいということです。
 第7章「政府債務残高はなぜ増加したか」も重要な話です。日本の基礎的財政収支の悪化がひどいわけですが、そうなった理由の一つはバブル崩壊後の裁量的な減税政策にあるとのことです。また、社会保障費が増え続けていることも大きな影響を与えています。乙は減税が大きく響いているという意識はなかったので、おもしろく思いました。
 終章「外国投資家に財政赤字の穴埋めを頼るとき、財政破綻が訪れる」では、どのように財政破綻が起こるかを略述しています。政府債務残高が民間の金融資産残高を上回るタイミングは 2025 年ありはそれよりも早い時期だという話で、残された時間は余りありません。
 今の政治家たちの主張を聞いていると、一方では増税をせずに、他方では金を多方面にあれこればらまいているようです。これでは、政府の債務残高が減少するはずがありません。こういう事態に対して、個人ができることはあまりにも少ないように思います。
 乙としては、淡々と投資を続けるだけですが、一方では、不測の事態にも対処できるよう、注意しておきたいと思います。
 本書を通読してみると、なんだか、何となくどこかで読んで知っているようなことが多いような印象を受けました。乙がさまざま読んできた投資関連本のどこにそういうことが書いてあったかを思い出すことは不可能です。しかし、本書を読みながらどうも既読感がぬぐえませんでした。
 本書は国債に関連する基礎的な知識を解説してると位置づければいいのでしょう。


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2016年06月06日

安間伸(2015.11)『ホントは教えたくない資産運用のカラクリ 投資と税金編 2016』東洋経済新報社

 乙が読んだ本です。
 旧版、安間伸(2003.5)『ホントは教えたくない資産運用のカラクリ 投資と税金編』東洋経済新報社
2006.9.28 http://otsu.seesaa.net/article/24543877.html
の改訂版ということのようです。
 とはいえ、内容はずいぶん違ったものになっています。なぜなら、この間の日本の税制の変化がそれだけ大きかったということなのでしょう。
 一読してみると、2016 年からの税制の変化に対応しています。2015年末までにやっておかなければならないことなども記述されています。ということは、11月に刊行された本書を買い、読み、1ヶ月の間に債券を売却するようなことを行うというわけです。実際上かなりむずかしいことだろうと思います。
 記述はかなりくわしく、読んでいて学べることがたくさんありました。役に立つ本だと思います。しかし、ある意味でかなり短期的な視野で書かれているように思えます。数年後にはこれらの知識が古くなっているかもしれません。そのときはそのときで他の本を読めばいいのでしょうか。
 それよりも、もう少し長い視野で投資を考えるほうがいいのではないでしょうか。
 たとえば、現時点で雑所得と譲渡所得を比べたり、源泉分離課税の損得を考えるよりも、10年先、30年先はどうなっているか、それに対応する話が必要なように思います。もちろん、30年後には日本の税制なりなんなりが変わっているはずですから、それを見通して書くなんてことは不可能です。しかし、考え方は一貫したものがあるはずです。現状はこれこれの方針がよい。しかし、こんなふうに税制が変わるなら、こちらの手段を考えるようにするとよいというような書き方は可能ではないかと思います。こういう書き方はそんなにむずかしいのでしょうか。
 乙は、単行本でありながら、とても短い視野で書かれていることが一番の驚きでした。


ラベル:安間伸 投資 税金
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2016年01月03日

橘玲(2014.9)『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 2015』幻冬舎

 乙が読んだ本です。
 「知的人生設計のすすめ」という副題が付いています。本書は、橘玲(2002.12)『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』幻冬舎
2006.7.16 http://otsu.seesaa.net/article/20844064.html
を改訂したものです。
 旧版を読んだものからすれば、橘氏の考えが全面的に変わるわけもないですから、改訂版を読まなくてもいいし、まだ読んだことのない人は改訂版を読めばいいということになります。
 乙は旧版を読んでいたので、第0章「「黄金の羽根」ができるまで」がおもしろかったです。なぜ旧版ができた(橘氏が執筆することになった)のか、裏話的に書いています。
 ざっと一通り読みましたが、日本社会のゆがみを徹底的に利用しようとすると、こういう話になるのだなあというあたりが感想です。
 自分の生き方を考えてみるきっかけにはなると思いますが、乙のように普通に働いて給料をもらうサラリーマンでは、橘氏のマネをすることもできず、不自由な身の上を嘆くことしかできないように思います。
 学生時代にこういう本を読んでいたら、その後の人生、働き方が変わったかもしれませんが、今となっては遅すぎます。


ラベル:橘玲
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2015年03月05日

橘玲(2014.5)『臆病者のための億万長者入門』(文春新書)文藝春秋

 乙が読んだ本です。
 乙は、橘玲氏の著書は何冊も読んできましたので、今回も楽しみにしていました。
 しかし、一読した結果、かなり残念に思いました。すでに書かれている内容と重なる部分が多く、新鮮みがないように思ったのです。
 新書ですから、それでいいのかもしれません。特に、若い人などには、こういう薄い本で気軽にさっと読めるものを推薦し、実際に読んでもらうといいでしょう。
 しかし、いろいろな本を読んできた人間にとっては、似たような話のくり返しになるので、あまり読まなくてもいい本ということになります。
 こういう投資本が新書になる時代がやってきたのですね。昔では考えられなかったことです。


ラベル:橘玲
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2014年05月12日

ピーター・D・シフ、アンドリュー・J・シフ(2011.6)『なぜ政府は信頼できないのか』東洋経済新報社

 乙が読んだ本です。「寓話で学ぶ経済の仕組み」という副題が付いています。
 3人が魚を捕って(それをそのまま食べて)暮らしているという設定で物語が始まります。それから、新しい網を作って、たくさんの魚を捕まえて、それを分配したり、「魚紙幣」を作ったりしていきます。現実のアメリカ経済を元にした寓話であることがわかります。
 マンガなども多く、その点では読みやすい本だと思います。
 しかし、このタイトルは何でしょうか。本の内容とかなりずれています。原題は「How an economy grows and why it crashes」です。原題ならばわかりやすいし、書かれている内容を一言で表しているという意味で、とてもいい題目です。なぜこれが「なぜ政府は信頼できないのか」になるのでしょう。副題をメインタイトルにしていたら、少しはマシだったと思います。
 この結果、乙にとっては、期待した内容と違ったことが書かれている本だということになりました。
 題名の翻訳はむずかしいものですが、それにしても、今の題名の翻訳は、読者に悪い先入観を与えてしまうことがある点で、より望ましい題名にしてもらいたかったと思います。
 寓話で経済の仕組みを説明するという試みはうまくいったといえるでしょうか。
 乙の感覚では、「成功した」とはいいにくいように思います。
 たとえば「魚は(時間が経っても)腐らない」ということになっています。金本位制を魚で説明しているのですが、現実の魚は腐らないはずがありません。その点だけでも金本位制を説明するのに不適切なたとえだと思います。
 マンガもあるので、1冊を通読するのはむずかしくありません。すうっと読んでいけます。しかし、どうも頭に残りにくいように思います。
 乙は図書館で借りて読んだのですが、自分で買わなくてよかったと思いました。


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2013年12月16日

小幡績(2013.5)『ハイブリッド・バブル』ダイヤモンド社

 乙が読んだ本です。「日本経済を追い込む国債暴落シナリオ」という副題が付いています。
 題名からして、国債がこれから暴落するという話かと思いましたが、必ずしもそうではありません。今が国債のバブルだ、したがって価格が高すぎる、金利が低すぎるということを述べていますが、それは、必ずしも国債が暴落するというわけではないのです。今のままの状態がずっと続いて、日本経済が安楽死する可能性もあるというわけです。
 乙は、日本の国債には投資していませんが、投資してもしなくても、国債の金利がどういう傾向にあるかは把握しておく必要があると思っています。その意味では、小幡氏の分析は興味深いものでした。
 やはり、国債の金利の動きは、過去20年以上にわたっておかしいとしかいいようがありません。こんなに低金利が長く続いていることは、何とも納得できません。しかし、現実にそうなっているわけで、であれば、現実をどう考えるべきかという問題になります。
 たいていの人は、だからこれから国債が暴落するのだということで不安を募らせて終わりになるでしょう。
 今までずっと国債暴落説が言われ続け、一部のヘッジファンドがそれに賭けて資金を投入し、失敗して撤退したということが続いてきました。国債が暴落することがなかったのです。
 小幡氏の分析は、国債がバブル状態にあるということです。なぜそうなるのかは、本書中で説明されています。日本国内の機関投資家の考え方やその投資行動を丁寧に説明していきます。
 本書を一読すると、日本国債はこのままかなあと思えてきます。
 国債の暴落もあり得るけれど、それ以上に、国債の額が大きすぎて、日本の各種資金が国債に吸い寄せられ、企業活動などに有効に使われることなく、日本経済が安楽死するというのが一番ありそうな未来像でしょう。
 黒田日銀総裁の金融政策は異次元の緩和というものです。本書はその政策が発表され、実行に移された直後に刊行されています。黒田総裁のやり方に大きな疑問を投げかける立場です。さて、これからどうなっていくのでしょうか。
 本書は、今の日本の置かれた状況を、国債を通して眺めるというものです。今の日本という国を理解するために、興味深い1冊でした。


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2013年09月22日

吉本佳生(2013.4)『日本の景気は賃金が決める』(講談社現代新書)講談社

 乙が読んだ本です。とてもわかりやすい本です。
 日本は賃金デフレの状態にあるから、低所得者層の賃金を上げて、賃金格差を小さくし、これによって景気を回復させようという主張です。
 図表が多用されます。巻末の図表目次によれば68枚あります。データを示して、それに基づいて議論するというのはわかりやすいし、説得力があります。
 日本社会の問題点と景気を回復させようという話がリンクして、全体として首肯できる提言だと思いました。
 日本社会の問題点とは何か。「男・大・正・長」と「女・小・非・短」の間の格差です。前者は、「男性、大企業、正社員、長期就労者つまり中高年層」で、and (論理積)でとらえます。この人は高い給与をもらっています。一方、後者は「女性、小企業、非正規社員、短期就労者つまり若者」で、or (論理和)で考えます。どれかにあてはまると低い給与しかもらえないということです。両者の間の格差が大きいことが問題ということになります。
 乙の感覚では、これをなくせば景気が回復するという主張は正しいと思われますが、しかし、一方では、高い給与をもらっている人たちが収入が多いわけで、そういう人たちがある種のパワーを持っている以上、日本のあり方を変えていくのはきわめて困難だろうと思います。

 著者の吉本氏の主張を手っ取り早く理解するためには、第5章を読めばいいでしょう。
 なお、第6章は、人口を都市部に集めて地価を上昇させ、押しくらまんじゅう政策で日本を暖めるという話になります。これまたおもしろいと思いました。ただし、こちらも、地方が1票の格差ということである種のパワーを持っている以上、なかなか変えられないだろうと思われます。
 本書を一読して、著者はとてもいいことをいっていると思うのですが、「わかっちゃいるけどやめられない」が現状なんですね。
 さて、どうしたらいいのでしょうか。


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2013年08月03日

川島博之(2012.11)『データで読み解く中国経済』東洋経済新報社

 乙が読んだ本です。「やがて中国の失速がはじまる」という副題が付いています。
 本書は中国経済をどう見るかを論じたものです。グラフや表がふんだんに使われ、それらに基づいた考察がなされるという論述スタイルで、信頼感があります。
 序章では「奇跡の成長とバブル」ということで、中国の現状を短く表現しています。奇跡の成長を遂げたけれども、今はバブルだというわけです。
 第1章「急速に少子高齢化する中国」では、一人っ子政策による中国の年齢別人口構成を見ていきます。中国は日本の25年遅れの状態だということです。バブルも25年遅れといえるのでしょうか。
 第2章「中国はごく普通の開発途上国」では、投資額が異常に多い中国の変な仕組みを論じます。いずれにせよ中国を「開発途上国」とみれば、不思議ではないのかもしれません。
 第3章「成長から取り残される農民」では、農民の貧しさを描きます。いろいろな統計資料を駆使して、中国政府が公表したくないところまで何とか探ろうとしています。これだけでも、中国がいかにいびつかが納得できます。
 第4章「都市住民は豊かになったのか」では、都市の生活に焦点を当てます。すると、統計資料からでは、クルマを買ったり住宅を買ったりすることは困難のように思えるけれど、現実には売れているわけで、どうも、公の統計資料に現れない裏金(役人の賄賂など)がけっこうな量に達しているようだということになります。
 第5章「中国解剖図」では、なぜ中国が奇跡の成長を遂げられたのか、その裏技を描きます。わかってしまうと、なあんだという感じになりますが、ここで描かれているような汚職が全国的に蔓延しているとしたら、中国人は幸せになれないような気がします。
 第6章「中国共産党と国家」では、具体的な人数の推定を入れながら、共産党がどのように中国の支配者となっているかを描きます。
 第7章「中国の「失われた20年」が始まった」では、無人マンションとかのバブルの影響を描きます。中国は、内需だけでは成長できないのですね。いよいよこれから問題が噴出するようです。
 第8章「日本への影響」では、中国と貿易の比率が高い日本が中国のバブル崩壊によってどんな影響があるかを描きます。

 一読して、中国の全体を把握できたように思います。投資家としては、こういう中国に関わり合いたくない気分にもなりますが、まあ、資金の一部は中国に突っ込んでおいたほうがいいのでしょうね。バブルが崩壊しない可能性もゼロではないわけですから。


ラベル:川島博之 中国
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2013年06月23日

吉本佳生(2011.10)『日本経済の奇妙な常識』(講談社現代新書)講談社

 乙が読んだ本です。
 今の日本では常識とされていることで、どうにもおかしいことがあるということで、グラフなどを多用して「奇妙な常識」に反論していきます。
 書かれてあることには賛成ですが、どうにも説明が長かったりして、くどさや読みにくさを感じてしまいました。吉本さん、ごめんなさい。
 乙が本書で一番おもしろいと思ったのは、第5章(pp.235-)の復興国債の話です。福島の原発事故に関わる「復興」は、どのようにするべきかをめぐって議論が続き、なかなか復興が進まないわけですが、それをお金の面から促進しようという発想です。普通の10年ものの変動金利の個人向け国債よりも少しだけ高い金利で個人に対して発行する国債です。中途換金時には金融機関に売却できるということにします。
 このアイディアがどういうものであるか、投資家・国・金融機関・被災者にとってどんなメリットがあるのかは本書を読んでいただくとして、こういうアイディアがあるということだけでも、うれしい話でした。
 乙はこのアイディアを本書で読んでびっくりしたわけですが、こういう話は国レベルでは全然検討もされないようです。残念なことです。
 もう一つ、pp.245- ですが、日本が財政破綻したとき、どうするべきかを事前にきちんと検討しておくという話です。とても大事なことです。財政破綻するかもしれないけれど、しないかもしれません。しかし、万が一財政破綻したら、そのときになってからあれこれを短期間に(泥縄式に)決めるのでなく、事前に決めて国民に知らせておくというのは望ましいことだと思います。政治家の数を半分にするとか、公務員の数をここまで削減するとかいうことです。
 今は、財政破綻しないことを前提に、何も決めていないわけですが、それでは、現在大学を出て公務員になる人は、公務員がクビになる可能性なんて考えもしないことになります。しかし、事前にそういうことがあると決めてあれば、その覚悟で就職活動をするでしょう。どんな破綻処理をするのかを各党が提案して、選挙の公約に掲げるなどというのは、興味深い話でした。
 本書の主要な内容でないところでコメントしました。
 重ね重ね、失礼しました。


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2013年05月11日

野口悠紀雄(2013.1)『金融緩和で日本は破綻する』ダイヤモンド社

 乙が読んだ本です。
 タイトルにひかれて読みました。
 本書は、ダイヤモンド・オンラインの2012年に連載した「経済大転換論」を編集したものです。
 図表をふんだんに掲載し、しっかりした記述になっています。
 著者が言いたいことは3点です。
(1) これまでの金融緩和策は実体経済を活性化できなかった
(2) 日銀引き受けで国債を発行すればインフレになる
(3) 日本経済活性化は構造改革によってしか実現できない
 これらのことを具体的な資料に基づきながら緻密に論証していきます。一読すると、野口流の考え方に染まってしまいそうです。(それでいいと思いますが。)
 では、タイトルとの関連はどうなっているのでしょうか。
 p.239 に結論が書いてあります。日銀の消費者物価上昇率2%の目標は達成できないということです。では、なぜこんな目標を掲げるのか。野口氏によれば、「金融緩和の本当の目的は、物価上昇率を引き上げることでもなく、経済を活性化することでもなく、日銀が国債を購入することなのだ。」というわけです。
 乙は、これを読んで、すとんと腑に落ちました。そうか、こういうことだったのか。
 こうして、日銀が国債を引き受けることでインフレと円安が起こり、資本逃避が起こるということです。
 これが第9章「財政赤字と金融緩和で国家は破綻する」の結論です。
 今のままでいけば、日本はこうなるだろうという予測です。これを変えることができるでしょうか。今の政治家たちを見ていると、到底不可能なように思えます。投資家としては、インフレ・円安・資本逃避に備えるしかないようです。


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2013年04月27日

吉田繁治(2012.10)『マネーの正体』ビジネス社

 乙が読んだ本です。「金融資産を守るためにわれわれが知っておくべきこと」という副題が付いています。
 副題に引かれて、読み始めましたが、中身はマネー入門ということで、まさに「マネー」とは何かを論じています。歴史的な観点も入っており、世界のあちこちの実例を取り上げつつ、多面的にマネーを見ていきます。
 第6章「21世紀の新しいマネー 巨大デリバティブはどこへ向かうのか?」では、デリバティブを「新しいマネー」ととらえている点がおもしろかったです。デリバティブは新しいマネーなんですね。確かに、そういわれればそうも見えます。それを作り出すことができたアメリカは、ある時期だけ見れば、無から有を作り出したことと同じで、金融で大儲けをしたといえそうです。
 第7章「われわれのお金はどこへ、どう流れているか」は、資金循環表などを用いて個々人のマネーが全体としてどんな動きになっているかを述べます。日本の財政破産の問題も扱われますが、たとえば、約30%ご破算になる程度のことであり、若い人にとってはむしろ希望を与えることかもしれないと述べています。マクロに見ればそういうことかもしれません。30%のご破算というと、あまり大きな問題ではないような気がしてきました。だって、株価が下落すれば資産の30%くらいは吹っ飛んでしまうことがあるでしょう。その程度のことで日本が再生するなら、一度財政破産をやってみてもいいかなと思います。
 ともあれ、本書を読んで「マネー」について、改めて考え直すきっかけになった気分です。
 投資家は、どんなことがあろうとも、最善の道を進まなければなりません。本書は、そういうことを考えるための基礎知識が得られるといったところでしょうか。


ラベル:マネー
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2012年09月17日

午堂登紀雄(2012.4)『日本脱出』あさ出版

 乙が読んだ本です。「この国はあなたの資産を守ってくれない」という副題が付いています。
 タイトルを見たとき、日本を脱出して、海外で生活するための本かと思いました。
 読み終わってみると、まあ、そういう話も出ては来ますが、本書のごく一部でしかありません。p.170 あたりにマレーシアへの脱出が出てくる程度で、あとは、必ずしも海外への脱出の話ではありません。期待して読んだ乙の失敗でした。
 230 ページほどの本ですが、投資の本としても、あまり参考になる話は出てきません。
 目次を見るとわかるように、多種多様なことが述べられていますが、それぞれが1〜2ページで論じられており、これでは、なぜそう考えるのか、根拠を示すところまでは行きません。したがって、全体として著者の主張が書かれていても、それぞれが掘り下げられていないのです。
 何というか、消化不良のような感想を持ちました。


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2012年09月05日

ウォルター・ブロック(2011.2)『不道徳な経済学』講談社+α文庫

 乙が読んだ本です。「擁護できないものを擁護する」という副題が付いています。
 文庫本ですが、もともとは『不道徳教育』という題だったとのことです。原書は 1976 年の出版だそうですが、いい本はいつまでもいい本だと思います。
 本書は、橘玲氏の訳で、例などが日本で該当するものに置き換えられており、とても読みやすくなっています。
 基本的にはリバタリアニズムの立場から、一般には「不道徳なもの」(=擁護できないもの)をそんなに悪くないものだとしています。見方の転換があり、とてもおもしろく読めます。
 では、どんなものが擁護できないものでしょうか。
 目次を見れば一目瞭然です。売春婦、ポン引き、女性差別主義者、麻薬密売人、シャブ中、恐喝者、……。
 これらを擁護する議論ですから、一般にはとても受け入れられないと言われるでしょう。でも、本書を一読すると、なんだか擁護してもいいような気分になるので、そこがおもしろいと思えます。たとえば、売春婦の場合だって、客との間で合意して自由意思で契約し、セックスを提供してお金をもらっているわけで、その過程で何も悪いこと(殺人など他人に迷惑をかけること)をしていないということになるわけです。
 なお、p.11 から訳者の橘玲氏の手で「はじめてのリバタリアニズム」という解説があります。本文を読む前に、ピッタリの解説です。その中で、p.39 あたりですが、アフリカの貧困者に食料や衣類を援助することはよくないという議論が出てきます。たとえば、トウモロコシを送っても、それらは旱魃の被災地には届かず、政治家の選挙区や闇市に流れ、さらには、無料の農産物の大量流入で、現地の農業を破壊してしまうというのです。衣類の援助でも、現地の軽工業にダメージを与えているという話で、乙は、こんな見方を知りませんでしたから、かなりショックを受けました。
 小さなミスですが、p.110 には、ある発明によって、労働時間が半分になれば余暇が2倍になると書いてあります。これは間違いです。余暇が労働時間の半分であれば、たとえば、余暇が4時間で労働時間が8時間であれば、労働が半分の4時間になると余暇が8時間になるので、余暇が2倍になりますが、それ以外では違ってしまいます。
 暇つぶしに読んでみてもいいと思います。


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2012年07月29日

内藤忍(2011.4)『こんな時代を生き抜くためのウラ「お金学」講義』大和書房

 乙が読んだ本です。表紙には「55 Things You Didn't Know About Money」という英語の題名もついています。「Didn't」や「About」は、一般に大文字で書き始めることはないと思われますが、まあ、そんなことはいいでしょう。
 本書は全体が七つの「Step」に分かれ、それぞれが 7,8,6,5,8,10,5 の項目に分かれています。足し算すると、おや、49 個になります。おっと、コラムが六つありますので、それを足すと 55 個になります。
 本書を読んで、どうだったか。乙はひとことでいうと、不満でした。述べてあることは間違いではありません。しかし、そのようなモットーのようなものを書き連ねても、当たり前であり、おもしろくも何ともありません。
 たとえば、Step 1 の@は「お金をほったらかしにしない」です。当然です。ということは、記述の中にいかに具体例を盛り込み、モットーではなく、例に基づいて話ができるかというあたりが書き方のポイントになりそうですが、そこのところが全般に弱く、読んでいて「なるほど!」と思う部分はあまりありませんでした。説得力という点ではイマイチだったように思います。
 もっともだと思いながら、完全に同意できなかったこととしては p.64- の「有名なお店には行かない――同じときに同じことをするのは損――」というのがありました。ゴールデンウィークに海外旅行に行ったり、お盆になると帰省するというようなことは、お金の面でいえば損なのはわかっています。しかし、やっぱりその時期でないとできないことはあるのです。仕事を持っていれば、好きなときに海外旅行というわけにも行きません。仕事がない時期をねらうと、ゴールデンウィークに海外旅行というのは、しかたがないのです。損なことはわかっていても、そうするしかないという感覚でしょうか。
 乙も、退職したら、平日に海外旅行を楽しみたいと思っていますが、そうなるまでは「わかっていてもやめられない」だろうと思います。
 本書を読むなら、若い人でしょう。あまりお金について考えていない人は、こういう本を読んで考え方のポイントを押さえることも大事だと思います。


ラベル:内藤忍
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2012年06月10日

瀬川正仁(2008.8)『老いて男はアジアをめざす』バジリコ

 乙が読んだ本です。「熟年日本男性のタイ・カンボジア移住事情」という副題が付いています。
 タイが中心でカンボジアも1割くらい記述されています。
 日本人男子高齢者がタイやカンボジアに移住(ないしロングステイ)していますが、そういう人たちが経験したさまざまなことを描いています。
 著者は映像ジャーナリストということで、多数の日本人にインタビューし、それをまとめて1冊にしています。
 出てくる話は、若い女性との恋愛・結婚、あるいは破局や詐欺が多く、次に、ビジネスをしていく上で騙された話もたくさんあります。
 個々のケースについて具体的に書いてあります。
 しかし、エピソードがあまりに多いので、読み進めるうちに、いくつかの話がこんがらがってしまうような感覚になりました。
 日本で結婚しなかった(できなかった)高齢男性が、タイで若い女性を得て幸せに暮らしている例もあるわけですが、彼女らが巧みに日本語を話すのは、そうすることで彼女らの(さらにはその親や親戚などの)生活が成り立っているからです。つまり、日本人高齢者は、どうみてもネギをしょったカモなのです。「財布がもてている」のが現実なのです。日本では普通の金額にあたるようなものでも、現地では相当な額になるので、それをねらう人々が活躍するわけです。厚生年金をもらっているような人もねらい目です。結婚して、先に男性が死ねば、その後、女性は遺族年金で暮らしていけばいいわけで、一生安泰です。そういう知識は現地の女性たちに行き渡っています。
 結婚・恋愛も、金とつながっています。儲け話に騙されるのも同根の話です。
 そんなわけで、やはり、アジアで暮らしていくのもなかなかむずかしいものだということになります。
 自分はどんな人生を送っていきたいのか、考えさせられる本でした。
 乙は、まだ年金をもらうような歳ではありませんが、本書に出てくる人たちの考え方がわかるような気がします。
 本書は、「定年後は海外でロングステイを」と考えている人には必読書になるでしょう。


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2012年06月09日

増田悦佐(2012.1)『日本と世界を直撃するマネー大動乱』マガジンハウス

 乙が読んだ本です。
 一口で言うと、世界の経済を概観する本です。
 第1章は「全米市民もようやく目覚めたのか アメリカは財務省。ウォール街複合体に潰される!?」です。アメリカはいよいよ格差が大きくなっており、中間層が没落し、一部の人たちが富を独占し、多くの人たちが貧困にあえいでいる国です。それを具体的に記述します。
 第2章は「アメリカの金権社会は、荒療治でしか直せない」です。金融業界がいかに腐ってしまっているか、綿密に描きます。
 第3章は「悪夢と化したアメリカン・ドリームとこれから隆盛するジャパニーズ・ドリーム」です。平均寿命、エネルギー、ドル安政策、米国債など、マクロな目でアメリカ社会を見ていきます。著者によれば、アメリカは、あちこちに問題点大あり社会ということになります。
 第4章は「ほんとうに危ないのはドイツとイギリス 復活は永遠にありえないユーロ経済の真実」です。この章では、ギリシャ危機をはじめ、スペイン、イタリアの問題を取り上げ、フランス国債の下落の問題も扱います。そして、各国の抱える問題と、それが影響するドイツ・イギリスを取り上げ、ユーロ圏はどこもかしこも危機であり、もうどうしようもないとしています。
 第5章は「明らかに変調する中国 崩壊へのカウントダウンはすでに始まっている!」です。リーマンショック以来、中国経済がおかしくなっているというのです。共産党内部の問題、為替政策、外交や軍事の問題まで幅広く取り上げ、めちゃくちゃぶりを描きます。
 こうして、アメリカも、ヨーロッパも、中国も、問題を抱えて、どうしようもないという現状を述べた後、第5章「なぜかマスメディアは絶対報道しない 日本と金だけが一人勝ちする世界」が続きます。著者は、つまり、これからは日本と金(ゴールド)に投資するのがよいというのです。
 乙は、驚きました。普通に言われていることとまったく違います。
 一つのものの見方として、おもしろいと思いました。
 では、日本と金に投資するか。いや、話はそう簡単ではないと思います。著者の意見は意見として、そうではない見方もあるわけで、社会のありかたがおかしくても、それがそのままで経済的に発展していくことだってあると思います。世界各国でさまざまな問題があることはその通りだけれど、だからといって、そこに投資しないという否定的な態度を取る必要はないと思います。
 本書は、大いに危機を煽っていますが、ある意味ではパニック本的なにおいもしています。世界のこれからを予想することはむずかしいと思います。著者のいうことを信じていくのもいいですが、はずれることとだってあると考えておくのが無難な態度でしょう。


ラベル:増田悦佐
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2012年05月28日

藤沢数希(2011.10)『日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門』ダイヤモンド社

 乙が読んだ本です。「もう代案はありません」という副題が付いています。ちょっと副題の意味がわかりにくいですが、今の資本主義の仕組みが最善であって、これを上回る仕組みは存在しないということです。いろいろ問題はあるものの、それを改善しつつ、何とかやりくりしていくしかないということです。
 内容は、章目次でだいたいわかります。
第1章 マネーは踊り続ける
第2章 小一時間でわかる経済学の基礎知識
第3章 マクロ経済政策はなぜ死んだのか?
第4章 グローバリゼーションで貧乏人は得をする
第5章 もう代案はありません

 一読して、納得する内容でした。図表なども適当に含まれていてわかりやすかったと思います。
 この本が「経済学」の本かどうか、わかりませんが、少なくとも、日本を中心に世界を見る「見方」が述べられており、しかも、その見方は妥当であると思えました。
 日本の現状をどう見るか、あれこれを関連付けてきれいに解釈してくれています。一読して、すっきりした気分になりました。
 日本の閉塞状況を打ち破るためにも、著者の指摘する現状の問題点などを知ることはとてもいいことだと思います。日本の今後を考える必要のある政治家など、本書を読むといいのではないでしょうかね。
 しかし、既得権の圧倒的に強い日本社会を見ていると、現状の問題点を知ったとしても、それを改善することなんてできるんだろうかという気持ちにもなります。
 それはそれでまた別の話なのかもしれませんが……。


ラベル:藤沢数希
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2012年05月26日

きたみりゅうじ(2005.10)『フリーランスを代表して申告と節税について教わってきました。』日本実業出版社

 乙が読んだ本です。長いタイトルですが、タイトルが本書の中身を十分語っています。
 フリーのライター&イラストレーターである著者が税理士に税金について質問をし、税理士が回答する形で書かれています。
 サラリーマンを対象にした節税の話は(需要が多いので)いろいろな本に書かれていますが、フリーランスの人を対象にした本は(サラリーマンよりは圧倒的に需要が少ないので)ほとんどないように思います。
 税金と社会保険の話から始まって、記帳業務の大切さを説きます。さらに、白色申告と青色申告の違いを説明し、青色申告をするように説きます。
 消費税についても書いてあります。1千万円を超える売り上げがあると消費税にも注意しなければなりません。本書では、フリーランスの人に対しては、手間を省いて簡易課税を推薦していますが、たしかにこれで十分なように思います。
 さらに、その後の話として、法人化も視野に入れていますが、このくらいの規模になると、フリーランスで働いているというよりは会社の社長として働いているわけですから、本書とは違った側面の知識が必要になるでしょう。しかし、それならそれでいろいろな本がありますから、そちらで知識を得るほうがいいと思います。
 最後に「税務調査」の話が書いてあります。実調率(実際に調査に入った比率)については、個人の所得税なら1%、法人だと6〜7%という統計が示されます。ずいぶん低いものです。
 岩松正記(2011.2)『個人事業、フリーランス、副業サラリーマンのための「個人か? 会社か?」から申告・節税まで、「ソン・トク」の本音ぶっちゃけます。』ダイヤモンド社
2012.4.21 http://otsu.seesaa.net/article/265912899.html
とは少し値が違いますが、まあ似たようなものです。
 ただし、乙は、所々に入るイラストが不要だと思いました。本文との重なりが気になります。また、話し言葉(対話調)で書いてあるのも、ちょっと冗長な感じで、これなら普通の書き言葉で書いてあるほうが読みやすいのにと思いました。
 とはいえ、税金について知りたい場合、全体としてまあ良書だと思います。


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2012年05月20日

山田順(2011.10)『資産フライト』(文春新書)文藝春秋

 乙が読んだ本です。「「増税日本」から脱出する方法」という副題が付いています。
 第1章は「成田発香港便」で、実際に現金を運んでいる人を取材しています。夫人と二人でバッグに500万円ずつ詰めて運んでいるような人ですから、普通のサラリーマンではありません。普通のサラリーマンなら、年収は数百万円のオーダーでしょうから、1000万円の現金を目にするようなことはなかなかないものです。
 p.28 では、普通のOLが香港の銀行に口座開設する話が出てきます。口座を開設するのは個人の考えですから、他人がどうこういうことは慎むべきですが、「普通のOL」ならば、わざわざ海外に持ち出すほどの現金を持っていることもないのではないかと思います。安易な気持ちで口座を開設しても、有効に活用できるのか、乙は心配になります。
 第2章は「震災大不況」で、3.11 の震災の後外資金融が東京を逃げ出したことを描いています。中でも、p.53 で、菅首相(当時)が浜岡原発の全面停止を要請したことを日本人の多くが評価していることをとりあげ、これに対して外国人投資家、そして日本人投資家も驚いていることが書いてあります。原発を停止して天然ガスを何十億ドルも購入して、電気料金を上げ、税金も上げるというやり方は、どうにもおかしいとしています。こんなことが積み重なって、外国人投資家も、日本人投資家も、日本を見限ってしまうのですね。
 p.56 から、歴史のアナロジーとして18世紀のポルトガルの例を引き、1755年のリスボン大震災で大きな被害が出てしまい、その後、街は復興したものの、産業は戻らなかったことを記述しています。今の日本と実によく似ています。
 第3章「海外投資セミナー」では、日本国内でさまざまな海外投資セミナーが開かれていることを書いています。ここでの「海外投資」は、海外に投資することではなく、(それを含みますが)海外で投資することです。
 第4章「さよならニッポン」では、富裕層が日本を捨て永遠のトラベラーになることを書いています。まあ日本の制度を見ていると、それはそれでしかたがないかもと思います。
 第5章「富裕層の海外生活」では、海外の富裕層を取材して書いていますが、あまりたくさん実例にあたっているわけでもないようで、やや迫力に欠けます。
 第6章「税務当局との攻防」では、武富士裁判や『ハリポタ』翻訳家の申告漏れ事件を取り上げ、オフショアが発展している様を描きます。
 第7章「金融ガラパゴス」では、日本のおかしな制度を指摘しています。
 第8章「愚民化教育」では、日本の教育全般の批判です。英語教育が特にやり玉に挙げられています。
 第9章「愛国心との狭間で」では、日本の税制などの不備を指摘するものです。
 全体として、まあよく書けていると思います。
 しかし、著者がいう「資産フライト」は、富裕層を念頭に置いているようです。一般のサラリーマンにはあてはまらないような話がたくさんあります。ただし、そういう富裕層なら、こんな本を読まなくても、実務的な相談相手がいることでしょう。となると、本書はいったいどんな読者を想定して書かれたのでしょうか。そう考えてみると、著者の立ち位置がだんだんわからなくなってきました。
 巻末の著者紹介を見て、すこしわかるような気がしました。著者は、光文社で雑誌や本の編集を手掛けてきた人です。一応関係者に取材して書いています。しかし、どうにも突っ込みが足りないような印象を受けます。なぜかといえば、著者が自分自身で投資をしていないからでしょう。経済学や金融などの知識もあやしいものです。乙の読後感では、不満が残る内容でした。
 週刊誌を読んでいるようなものだと思えば「不満」はないものと思います。


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2012年04月28日

中町敏矢(2012.1)『あんしん・お気楽! 年金15万円のゴージャス生活』ぱる出版

 乙が読んだ本です。著者自身が月15万円の年金受給者ということです。そして、年金15万円だけでどれくらい生活が楽しめるか、本書中で具体的に書いています。
 乙が特におもしろいと思ったのは、5章「今、知らないと絶対損する「税金と保険」」でした。世帯分離の効果、その具体的な方法など、乙が知らないことがたくさんありました。
 5章の細目次は以下の通りです。
1 税金をタダにする
2 子供の税金を安くする
3 健康保険料をタダにする
4 日本一の名医に診てもらう方法
5 高額療養費制度のうまい使い方
6 医療費・介護費が半減する「世帯分離」とは何?
 知識の有無で損したり得したりというのが日本の現状のようです。
 著者がなぜこのような知識が豊富なのかというと、奥付の著者紹介を読んで納得しました。「1948 年大阪府生まれ。団塊の世代だが、学生運動の経験ナシの高校卒。大阪と京都で小企業を2回転職、経理マンとして定年まで勤め上げる。」なるほどといった感じです。会社でもっぱら経理を担当していたならば、税金や保険に詳しくなることもわかります。
 本書を読んで、老後に海外で生活するよりも、国内で生活したほうがいいかもしれないなどと考えてしまいました。それくらい、日本という国は、老後に豊かな生活ができる国なのです。
 60歳前後の定年を迎える(た)人に読んでもらいたい好著です。


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2012年04月21日

岩松正記(2011.2)『個人事業、フリーランス、副業サラリーマンのための「個人か? 会社か?」から申告・節税まで、「ソン・トク」の本音ぶっちゃけます。』ダイヤモンド社

 乙が読んだ本です。極端に長いタイトルで、その中に句読点などの記号がちりばめられています。副題はありません。
 税理士が書いた本ですが、ところどころに「ぶっちゃけ税理士のBCG判定」というコラムが出てきます。こんなことをしていいのかという問題に対して、回答を Black(×)、Clear(◎)、Gray(△)に区分しています。とてもわかりやすい記述です。
 内容は、税金の問題が大半を占めます。
 特に長いのは Part 01 で、「「個人か? 会社か?」会社をつくる「ソン・トク」ぶっちゃけます!」というタイトルがついています。ここは、個人事業主と会社とで課税がどう違うか、その結果税金がどう変わるかを具体的に詳しく記述しています。個人で起業する人などは、ぜひ、こういう知識を持っておくべきです。
 Part 02 の「経費に関する「ソン・トク」ぶっちゃけます!」もおもしろかったです。ホンネがたくさん出てきます。たとえば「個人的に使ったお金はどこまで経費にねじ込めるのか」などということは、回答を知りたいと思う質問の第1位ではないでしょうか。
 乙が気になったところですが、p.241 で「実調率」(じっちょうりつ:税務調査の割合)が書いてあり、2006年度の数値ですが法人 4.9%、個人 0.8% と書いてありました。こんな低いとは知りませんでした。個人では一生税務調査と無縁の人もけっこうたくさんいることでしょう。言うまでもなく、全国民がまじめに所得を申告し、税金を払っていれば、税務調査は無用です。現実はそうでもなさそうですが、……。

 本書は良書です。

ラベル:岩松正記 税金
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2012年03月31日

出井康博(2008.6)『年金夫婦の海外移住』小学館

 乙が読んだ本です。新書サイズで手軽に読めます。
 マレーシア・タイ・フィリピンで増えている「裕福でない日本人老年層」を取材した結果です。こういう国では生活費が安いからということで、あまり多くの預貯金を持たない日本人が退職後に英語も現地語も話せないまま長期滞在している例が多いという話です。
 本書は、海外移住を勧めるスタイルではなく、むしろ、騙されたり詐欺に遭ったりしている日本人高齢層の例がたくさん書かれています。つまり、トラブル集のようなものなのです。現地人にやられる例もあるし、日本人にやられる例もあります。こういう本を読んでいると、ホントに海外移住していいのかというような感覚になってきます。
 まあ、どこに住むのであれ、イヤなことがいろいろあるものでしょう。地球の上では、どこに行っても誰かがいるし、また他人なしでは生きていけないのが人である以上、地上には楽園がないようなものなのです。
 本書のタイトルの「年金夫婦の」は、ちょっと言い過ぎかもしれません。マレーシア編では確かに年金夫婦がでてくるのですが、タイ編では、タイ人妻と暮らす年金受給者(騙されているのかどうなのかよくわかりませんが)がメインですし、フィリピン編でも介護を受ける老人の話題ですから、ちょっと違います。
 いざ、海外で暮らすことを考える際には、本書のようなものも一読しておくとよさそうです。


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2012年03月17日

安達誠司(2012.1)『円高の正体』(光文社新書)光文社

 乙が読んだ本です。
 第1章「為替とは何か?」は、為替の基本的な考え方の解説です。通り一遍的に感じました。
 第2章「円高・円安とは何か?」も、まあまあ常識的な内容です。
 第3章「「良い円高」論のウソ」は、円高なんていいことはないということで、このあたりからおもしろくなってきます。円安は輸出企業に有利で、円高は輸入企業に有利と考えたくなりますが、そう簡単な話ではなく、輸出企業と輸入企業を併せて日本全体として考えると、円高は良くないことになるという話です。50ページほどの章ですが、図表で具体的な数値を示しながらの記述ですので、説得力があります。
 なお、p.94 から変動相場制の下では通貨の暴落が起こらないということを論じています。この議論もおもしろいものでした。ヘッジファンドが通貨アタックを開始した場合でも、円安になるだけで、景気が回復してしまうとのことです。したがって、日本への通貨アタックはないとしています。
 平常時には、この議論が成り立つと思いますが、しかし、非常時にも同様なのか、乙は自信がありません。非常時というのは、財政破綻・日本国債暴落が起こった場合です。
 第4章「為替レートはどのように動くのか?」もおもしろかったです。p.133 によれば、為替レートは2国における将来の物価についての予想の格差の変動によって動かされているとしています。データで示されているので、説得力があります。「修正ソロスチャート」というのは、初めて見ました。おもしろい話です。
 第5章「為替レートは何が動かすのか?」は第4章の続きのような感じです。
 第6章「円高の正体、そしてデフレの“真の”正体」は、今の日本ではマネタリーベースが不足だとして、日銀があと 28.8 兆円を追加すればいいとしています。こんな簡単な話なのか、こういう結論でいいのか、乙はよくわかりませんでした。納得しがたい面があるということです。こんな簡単な話なら、政府なり日銀なりがちょいと政策を変更すればできてしまう話です。そんな話なのでしょうか。円高にしても、デフレにしても、いろいろなことがからんでいて、簡単に割り切れるものではないように感じているのですが、どうなんでしょうか。
 著者のようにすっきり考えられたらうれしいのですが、……。
 いずれにせよ、円高問題に興味のある人は読んでも損はしないと思います。


ラベル:安達誠司 円高
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2012年03月07日

スティーヴン・D.レヴィット/スティーヴン・J.ダブナー(2010.10)『超ヤバい経済学』東洋経済新報社

 乙が読んだ本です。
 必ずしも従来は経済学的に考えるとは思われなかったようないろいろな問題について、考えてみたというお話です。しかし、単なるエッセイ集ではなく、巻末に詳しい参考文献があります。本文中のすべての出典がわかるのではないかと思われます。つまり、本書の記述には具体的な裏付けがあるということです。このあたり、意外にしっかりしています。
 扱われる議論の中身はさまざまです。乙は、p.23 からの売春婦の話がおもしろいと思いました。いったいいくらで体を売るのか、その値段を売春婦の側でつり上げたら、客の反応がどう変わるかということが書いてあります。実際に、町で商売をしている売春婦にインタビューをして書いているようです。
 p.176 からは、障害を持つ人を雇うかという問題が出てきます。アメリカでは、障害を持つ人を差別しないように作られた法律があるそうです。しかし、そういう法律があるために、経営者は、障害を持つ人を簡単にクビにできないと考えて、最初から雇用しないようになってしまったというのです。法律は、意図通りには機能しないのですね。
 p.267 からは終章ですが「サルだってひとだもの」がおもしろいと思いました。疑似コインを使うようになったサルの実験です。疑似コインがエサの代わりになり、それをオスがメスにプレゼントすることでサルがセックスをする、つまり、売春が行われるというあたり、実に興味深い記述でした。
 ともあれ、気楽に読めるスタイルで、さまざまな問題を常識とは異なる側面から読み解いてくれます。読んでいて楽しい1冊です。
 ま、しかし、読んだからといって経済学に詳しくなるわけではありませんので、ご注意を。


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2012年02月29日

若林栄四(2011.7)『デフレの終わり』日本実業出版社

 乙が読んだ本です。「2012年に「千載一遇」の買い場がくる」という副題がついています。
 タイトルに引かれて読み始めました。
 読み始めてすぐに、驚きの説明が出てきます。序章ですが、「相場は「黄金分割」で定められている」ということです。で、チャートなどは、水平線に対して36度の角度をもつラインが重要だとのことです。相場が急上昇するときは72度だそうです。(p.21)角度なんて、縦軸/横軸に何をとるか、どれくらいの間隔で目盛りを振るかで変わってくるものです。そんな説明なしで、いきなり36度といわれても、まったく無意味です。
 各種サイクルについても、27(年)とか162(ヵ月)などという数字が重要だとのことです。(p.31)
 なぜこの数字が重要か、なぜこのような数字に従って経済が動くのか、まったく説明ができていません。
 著者は、本気でこんな数字に頼って投資を考えているのでしょうか。
 第1章の50ページほどを読んで、説得力がまったくないことで、乙はこの本を読むことを止めました。
 巻末の著者紹介を見ると、1966 年、京都大学法学部卒業です。金融畑一筋で 1996 年に退職したとのことです。この業界には、こんな人がいるのだと知って、ちょっと恐くなりました。


ラベル:若林栄四
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2012年02月26日

佐々木融(2011.10)『弱い日本の強い円』(日経プレミアシリーズ)日本経済新聞出版社

 乙が読んだ本です。
 日本経済はダメダメだといわれているのに、円高です。円高ということは、円が強くなっているということです。なぜ、こんなことになるのでしょうか。これを説明したのがこの本です。
 新書サイズで読みやすく、しかし、中身はしっかりしていて、読んでいて納得感があります。
  第3章 国力が為替相場を決めるわけではない――長期的な為替相場変動の要因――
 ここでは、長期的に購買力平価が成り立っていると説きます。
  第4章 円に買われる理由などいらない――中期的な為替相場変動の要因――
 ここでは、投機筋がどうこうという話ではなく、貿易収支が重要だと説きます。
  第5章 強い雇用統計で売られるドル――短期的な為替相場変動の要因――
 ここでは、円がどうこうという話よりは米ドルが(アメリカが)どうなっているかで相場が決まると説きます。
 これら三つの章で為替の問題がクリアーに説明されます。とても納得できます。
 関連しておもしろかったのが
  第8章 介入で「円安誘導」などできない――介入のメカニズムと効果――
です。日銀が為替相場に介入して、円安にしようとして、円を売ってドルを買っていますが、そんなことにはまったく効果がないと説きます。むしろ、外貨準備として大量のドルを積み上げる結果になっています。その資金は、国債を発行して、いわば借金しているわけです。
 日本は、こうして大量のドルを積み上げて、円高/ドル安で大損をしているわけですから、結果的にアメリカに貢いでいるようなものです。日本はアメリカの植民地か属国なんでしょうか。
 介入しても円安にならないならば、ドルを売って円を買って(円安介入の反対をして=円高介入(?)をして)も効果がないはずで、そんな大量に積み上がったドルはさっさと取り崩すべきだと思いますが、どんなでしょうか。
 本書では、pp.220-221 で、円売り介入は円買い介入より楽であると述べ、数十兆円程度の大量の円買い介入をすると、資金が尽きてくるので、投機的な円売りが始まって円の下落がさらに加速してくると説きます。
 なかなかむずかしいものですね。

 何はともあれ、為替問題を明確に説いている点で、本書は読むに値する本だと思いました。


ラベル:佐々木融 円高
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2012年02月24日

鈴木亘(2010.9)『財政危機と社会保障』(講談社現代新書)講談社

 乙が読んだ本です。
 今の時代にぴったりの本です。
 日本の財政危機と社会保障とが関連する問題であることがよくわかります。
 いくつか、特におもしろかったところを抜き出しておきましょう。
 p.80 では、菅首相のいう「強い社会保障が成長戦略だ」が間違いであることが明確に書かれています。2010年当時、こんなにはっきり間違いを指摘した人がいたでしょうか。いたかもしれませんが、乙は知りませんでしたので、とても興味を持ちました。
 p.141 では、技術的に年金は破綻しないこと、一方、p.145 では、政治的に年金が破綻しうることを述べています。なるほどと思いました。今の政治家たちのアホさ加減を見ていると、これこそが日本の危機であるという思いを強くします。これから日本がどうなるのか、心配が募ります。
 本書は、全体として、日本の財政危機と年金・医療・介護・保育所などの問題をわかりやすく説くものです。一読することで、日本のこれらの問題をどう考えるべきか、正しい視点を得ることができます。

 それにしても、本書は、2010年9月刊行の本なのに、「菅首相」などが出てきて、古さを感じさせます。たった1年半前なのにです。日本では総理大臣がころころ変わっていて、日本という国は、なんて安定感のない国なんだろうと思います。


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2012年02月12日

石角完爾・田代秀敏(2010.12)『日本国債暴落のシナリオ』中経出版

 乙が読んだ本です。
 日本国債がデフォルトすることを予測しています。なぜそうなるかといえば、日本国債を買う人がいなくなるからです。そして、第4章では、国債が暴落することで、日本国民の生活がどうなるかを描いています。円安、インフレになり、政府、企業、金融機関、農業、年金、公的サービスがどうなるか、変化を予想しています。
 記述はおおむね妥当でしょう。
 一番の問題は、このような日本国債の暴落に備えて、では何をすればいいかということです。本書では第5章で若干の記述がありますが、大したことは書いてありません。基本的には、それを受け止めるしかないというスタンスです。
 投資の観点からは、分散投資をすすめています。まあ当たり前でしょう。しかし、p.203 では「損切りのルールを守る」などということが出てきて、「あれ?」と思ってしまいます。
 それにしても、国債が暴落するとは、一体、いつごろの話なのでしょうか。もしも、今のままの日本のあり方が継続するとして、数年先でしょうか。10年先でしょうか。あるいはまた20年ほど先なのでしょうか。それによって影響が全然異なります。しかし、本書にはそういう時期の話は一切出てきません。なぜなのでしょうか。
 p.18 では、他の記事の引用で「今から50年以内に……」というようなことがちらっと書いてあるのですが、50年後ならば、乙は当然死んでいますから、どうでもいい話です。少なくとも心配するような話ではありません。
 本書を読んで、わかったような気になる一方で、どうにもわからなくなりました。


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2012年01月28日

向谷匡史(2007.11)『人はカネで9割動く』ダイヤモンド社

 乙が読んだ本です。「成功者だけが知っている「生き金」のつかい方」という副題がついています。
 どんなふうにカネを使ったらいいか、たくさんのアイディアが出てきます。読んでいると、それなりにおもしろいと感じます。
 しかし、読み終わって考えてみると、それらのアイディアの多くは、ホストやホステスなど水商売の人間や、ヤクザ系の反社会的勢力の人間から見聞したものが大半です。
 ビジネスマンが自分のビジネスに応用して成果があるものなのか、乙はイマイチわかりませんでした。
 話としてはおもしろいけれど、一般化は危険なように思います。
 投資と関連するかと考えると、あまり関係ない気がしてきました。なぜこんな本を読む気になったのだろうと思いました。


ラベル:向谷匡史
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2011年12月17日

野口悠紀雄(2011.5)『大震災後の日本経済』ダイヤモンド社

 乙が読んだ本です。「100年に1度のターニングポイント」という副題がついています。
 野口氏の議論は、いつもおもしろいと感じていますので、この本も読む前から楽しみでした。
 一番おもしろかったのは第2章「電力消費抑制に価格メカニズムの活用を」でした。震災後の電力不足を乗り切るためには、計画停電よりも、電気料金を上げるほうがいいという議論です。本書では、どれくらい上げるかを具体的に明記しています。工場などで使う電力の場合、超過電力に対して、1.5 倍にするということです。まあ、そんなものかもしれません。
 一方、家庭の電気料金では、40A 以上の基本料金を5倍程度に値上げするということです。30A までは今まで通りということで、基本料金は 819 円ですが、60A だと、今の 1638 円が 8190 円になるという話です。これは大きな違いです。乙の自宅では、10kVA の契約ですので、今の基本料金 2,730 円が 13,650 円になるということです。どうでしょうか。契約アンペアを減らすでしょうか。少しは減らすかもしれません。このあたり、具体的な値上げ幅が書かれていないと、机上の空論になってしまいますが、金額がわかれば、自分の家ではどうするか、考えることができます。
 その他にも、興味深い議論がたくさんありました。
 p.131 では、復興財源を得るために、法人税を上げるのはよくないとしています。日本の企業は7割以上が赤字ですから、法人税(率)を上げても、まったく税収は増えないというわけです。むしろ、各種の租税特別措置をなくすことが重要だと説きます。目からウロコでした。
 p.133 では、法人税はコストでないと説きます。乙は法人税は企業にとってはコストだと思っていたので、これまた目からウロコでした。法人税は利益にかかるものなので、コストではないわけです。
 p.224 では、新興国は販売先ではなく、投資先ととらえるべきだとしています。つまり、国内の製造業などは海外移転するべきで、それがすなわち「投資」ということになります。言い替えれば、国内は空洞化でよいというわけです。
 ところで、本書中で乙がよくわからなかったところもあります。pp.29-30 ですが、大震災からの復興のために復興国債を発行する場合、負担を将来に先送りできないのだそうです。国債を発行するとき、その時点でお金を集める形になるので、その時点の人々が負担していることになり、償還時は、国債を保有している人が償還金を受け取る、つまり、納税者から国債保有者に所得が移転するだけで、国全体としては使える資源が減少するわけではないということです。
 復興国債も、普通の国債も、特に違いはないわけですから、日本の膨大な国債も、今の人が負担していることになり、将来の人が負担するわけではないということになりそうです。乙は、何となく、子供や赤ちゃんやこれから生まれてくる人々が膨大な借金を返す形になるように思っていました。
 国債が、(未来の人からの借金ではなく)今の人からの借金だと考えれば、今の日本が持っているお金の全体以上に国債を発行することはできないことになります。でも、実際は、国債の発行はできてしまいそうに思えます。インフレで国債の価値が低くなるので、ある程度以上の国債の発行は無意味ということになるのでしょうか。
 国債を買った人は、その時点で自分の金を国家に提供したことになります。それはわかります。しかし、国債の買い手は、その国債を償還までずっと保有し続けます。そして、国債の償還時に現金を入手することになります。国債の買い手が国債をずっと保有するということは、つまりは負担(国の借金)を将来に引きずっているのではないでしょうか。
 このあたり、どうにも理解できませんでした。


ラベル:野口悠紀雄
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2011年12月08日

松田千恵子(2011.9)『国債・非常事態宣言』(朝日新書)朝日新聞出版

 乙が読んだ本です。「「3年以内の暴落」へのカウントダウン」という副題がついています。
 日本国債が危ないのかどうかは議論が分かれるところです。
 著者は、ムーディーズジャパン格付けアナリストという経歴を持っています。そのためもあるのでしょうが、さまざまな角度から日本国債が危ないかどうかを考えていくとともに、最終的には、今の格付け会社が日本国債に比較的高い格付けを与えていることを反映して、日本国債は当面大丈夫と見ているようです。
 しかし、第2章「国債暴落のシナリオ」を見ると、やっぱり危ないという気がしますし、第3章「国債暴落後の日本経済」を読むと、どうなるかはほぼわかっているといえそうです。こんなことまで考えていて、かつ、今は大丈夫といわれても、一般人としてやはり心配になってしまいます。
 格付けなども、下げるときには下げるでしょうから、「今」は大丈夫だとしても、いつ危なくなるのか、わかりません。
 本書中の具体的な議論や、国債のあり方などをめぐる考察などは、妥当なもので、危機感を煽ろうとする「扇動本」とは一線を画しているといえそうです。
 副題は、はやり、編集者が付けたもので、著者の真意とは少し違うようです。
 それにしても、国債の信任が崩れるとすれば、一気にそうなるでしょうから、日本に生きる人間としては、いつでも注意しつつ事態を見守るしかないかもしれません。
 乙は、格付け会社の分析がそんなにも正しい(妥当だ)とは思いません。今の政治家たちの議論を聞いていると、こんな人たちに政府の運営(つまりは日本国の経営)を任せておいて大丈夫だろうかと大いに不安になってきます。

ラベル:松田千恵子 国債
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2011年11月21日

藤巻健史(2011.6)『マネー避難』幻冬舎

 乙が読んだ本です。「危険な銀行預金から徹底せよ!」という副題がついています。
 今までにも藤巻氏の本はおもしろく読んできました。このブログを検索すると、以下のような本を読んでいます。

2010.11.8 藤巻健史(2010.8)『日本破綻』朝日新聞出版
http://otsu.seesaa.net/article/168656410.html
2010.6.22 藤巻健史(2010.3)『日本破綻』講談社
http://otsu.seesaa.net/article/154037696.html
2009.6.20 藤巻健史(2009.5)『100年に1度のチャンスを掴め!』(PHPビジネス新書)PHP研究所
http://otsu.seesaa.net/article/121785435.html
2007.8.24 藤巻健史(2007.7)『マネーはこう動く――知識ゼロでわかる実践・経済学』光文社
http://otsu.seesaa.net/article/52516511.html
2006.6.18 藤巻健史(2003.10)『藤巻健史の実践・金融マーケット集中講義』(光文社新書)光文社
http://otsu.seesaa.net/article/19423811.html
2006.6.13 藤巻健史(2003.11)『タイヤキのしっぽはマーケットにくれてやる!』日経ビジネス人文庫
http://otsu.seesaa.net/article/19199262.html
2006.6.10 藤巻健史(2004.7)『藤巻健史の「個人資産倍増」法』講談社+α文庫
http://otsu.seesaa.net/article/19069474.html
2006.4.24 藤巻健史(2006.3)『藤巻健史の5年後にお金持ちになる「資産運用」入門』光文社
http://otsu.seesaa.net/article/16965888.html
2006.4.21 藤巻健史(2005.11)『直伝 藤巻流「私の個人資産」運用法』講談社
http://otsu.seesaa.net/article/16834359.html

 今回の本も、今までと同様の主張が書かれています。
 目次は以下の通りです。
Part 1 日本の財政はここまで悪化している!
Part 2 分不相応に贅沢だったこれまでの生活
Part 3 震災後、日本経済はどう動いたか
Part 4 電力不足は経済にどう影響するか
Part 5 財政破綻に拍車をかける大震災
Part 6 国債・円・株の暴落は避けられない
Part 7 日本経済はこれからどうなるか
Part 8 豊かでなくとも、豊かに生きる
Part 9 危険な銀行預金から撤退せよ!
Part 10 日本経済復活に向けて何をするべきか
Part 11 日本経済復興へのシナリオ
Part 12 円が暴落した後、日本は復活する
 何だか、目次を見ていると、本の内容が大体推測できるように思います。そして、その通りです。
 結論からいえば、藤巻氏は外貨への分散投資を説いています。そして、日本は円安になると予想しています。確かに、円安になれば、日本経済はうまく回りそうに思います。
 意図的に円安にしなくても、日本の財政破綻という形で、結果的にそのようなことになるのかと思います。しかも、その場合は、暴力的なほどに急激な円安が起きます。藤巻氏の意見もそれに近いのでしょう。それに備えて、今から外貨建ての資産を増やしておくべきだという話であれば、確かにもっともなことです。
 円を銀行預金に預けておくだけでは危ないというのはその通りです。しかし、すでに外貨建ての資産のほうが円建て資産よりも多くなっている乙のような人間には、本書が説くことはある意味で当たり前すぎるようにも思います。
 本書は、海外分散投資などに目を向けてこなかった人向けに書かれたものなのでしょう。

 問題は、日本の財政破綻がいつ起きるのかです。乙の勝手な予想では、今のままでは、数年から10年程度で起こりそうな気がしています。そういう事件が起こらずに、円高がずっと継続していく可能性もありますが、それが何十年も続くことはないと思われます。あくまで乙の勝手な予想ですが……。


ラベル:藤巻健史
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2011年11月12日

笹子善充(2010.11)『はじめての海外ファンド投資マニュアル』実業之日本社

 乙が読んだ本です。
 タイトルに「はじめての〜」とあるので、海外投資の入門書かと思って読んでみました。しかし、どうもそうではなさそうです。
 目次は以下の通りです。
  CHAPTER 1 あなたはそれでも日本で資産を運用しますか
  CHAPTER 2 日本に一番近い国際金融センター 香港
  CHAPTER 3 海外に銀行口座を開設しよう
  CHAPTER 4 これだけは知っておきたい! 海外ファンド活用マニュアル
  CHAPTER 5 投資の現場最前線 突撃! 海外投資体験談
  CHAPTER 6 究極のキャピタルフライト 香港移住のススメ
 著者は香港在住で、各種投資コンサルタントであり、自らも投資を実践している人だそうです。
 読んだ後で、この本は、どんな人が読者対象として想定されているのか、わからなくなってしまいました。
 たとえば、p.186 以降には、香港と日本の税金の比較が載っています。所得税は日本が最大40%に対して、香港は15%。住民税は日本が10%に対して、香港はゼロ。相続税は日本で最高50%、香港はゼロ。贈与税も同じ。というわけで、日本を脱出する人が後を絶たないということです。
 それはそうですが、しかし、所得税が40%の人というのは、課税標準額が1800万円以上の人で、はっきりいえば富裕層、つまり金持ちです。相続税が50%というのも、課税標準(基礎控除後の金額)が3億円を越える人で、これまた金持ちです。金持ちは、カネを生み出す仕組みを持っています。単なる会社勤めのサラリーマンでは、なかなか金持ちにはなれません。もしも、会社の経営者だとすると、そのような所得を生み出す源泉が日本にあることになり、香港に移住することはそのような源泉から離れることになり、簡単にできることではありません。
 本書は、そのような(日本の税金が高いと思うような)金持ちを読者対象にしているようですが、そういう人は、すでに投資などをはじめているでしょうから、本書に出てくる解説が必要なのかどうなのか、大いに疑問に思います。
 本書中の記述で気になった点をいくつか書いておきます。
 p.002 香港の銀行で日本円を米ドルに両替すれば手数料が安いとのことです。日本の銀行に比べれば、確かに香港の銀行の方が安いのですが、それでも、両替手数料は「安い」といえるレベルではありません。こんなことで円安をねらおうなどと思っても、ダメです。銀行に裸にされてしまいます。もっと安く両替できるようでなければいけません。
 p.054 タックスヘイブンについて、直訳すると「税金天国」だとしています。著者は heaven(天国)と haven(避難所、避難地)を誤解しているようです。こういうミスをしている人がタックスヘイブンの利用を勧めていても、それは信じられないというレベルです。
 p.088 海外の銀行に最初に口座を開設する際には、現金を100万円ほど口座に入金しておくといいとあります。ここから海外ファンドなどを買うためです。しかし、このようにすると、実際に海外ファンドを買う際に、外貨に両替しなければなりません。金額にもよりますが、100万円程度(あるいはそれ以上)の資金では、両替手数料が海外送金手数料よりも高くなります。つまり、送金手数料を節約するために、こういうやり方をしても、トータルではあまり節約になっていないということです。
 p.090 海外送金について、日本の通常の銀行からの送金では1回につき最低1万円近くかかるとしています。著者は、香港在住ということで、日本の銀行からの海外送金の経験があまりないか、ずっと以前の経験しかないのではないかと思います。実際上、手数料 5000 円程度で送金できます。
 p.160 金(gold)投資を行う場合は、(日本で行う)円建ての取引よりも(海外で行う)米ドル建ての方が効率がよいとしています。昨今は、円高が進んでいるため、国内金価格はあまり上昇していないという話です。これは著者のまったくの勘違いでしょう。円で投資しても、米ドルで投資しても、金は金です。米ドル建てで一見金の上昇率が高いように見えても、円高で円建て価格が上昇していないように見えても、両者は同じことです。
 p.168 「人民元ETFで大きなリターンを狙え」ということで、p.169 では人民元の米ドルに対するレートの上昇のカーブがグラフで示されています。米ドル建てで人民元ETFを購入すると、大きなリターンが期待できるとしています。しかし、グラフをよく見ると、2005 年から 2010 年までで 25% ほどの上昇にすぎません。この期間の円高は、1ドル 120 円が1ドル 80 円くらいになっており、3割以上の上昇になっています。米ドル建てで大きなリターンがあるように見えても、円建てではさほどでもないということになります。いろいろな通貨で投資することを基準に考えると、人民元に投資したからといってリターンが大きいとはいえません。
 p.191 BVI(ブリティッシュ・バージン諸島)にペーパーカンパニーを設立する話が出てきます。確かにペーパーカンパニーは簡単に作れるでしょう。しかし、実際には、ペーパーカンパニーを作ったして、その後が問題です。そのペーパーカンパニーをどう活用するといいのでしょうか。単に法人税が安いというだけで、具体策は何も書いてありません。各自で考えよということでしょうか。何かの事業をする場合は、そういう会社があるといいのはわかりますが、普通のサラリーマンだったら、活用法はあまりなさそうです。いや、乙が知らないだけかもしれませんが。

 本書は、全体として、あまりおすすめではありません。海外ファンドに投資すること自体の問題もありますし、本書ですすめる具体的投資先は、イマイチのように思います。そして、上記のように、著者の考え違いがあちこちに散見され、この人にコンサルタントを依頼していいのだろうかと疑問に思えます。


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2011年10月15日

マネー・ヘッタ・チャン(2011.4)『マッチポンプ売りの少女』あさ出版

 乙が読んだ本です。「童話が教える本当に怖いお金のこと」という副題が付いています。
 同じ著者の『ヘッテルとフエーテル』
2010.4.19 http://otsu.seesaa.net/article/146977431.html
を読んだことがあったので、ちょっと気になって読んでみました。
 童話仕立てで10個の話が出てきます。

 その1 検索エンジンの表示が社会に大きな影響を与えている話
 その2 文芸賞がどのように選ばれ、運用されているかという話
 その3 流行は、誰かが意識的に作っている場合があるという話
 その4 世界の貧困層への寄付の一部が別の用途に使われている話
 その5 マンションを買って損をする話
 その6 不動産の談合の話
 その7 保険(会社)の話
 その8 天下りの話
 その9 試験でゼーリシになった人がいじめられる話
 番外  国家破産の話

 童話仕立てとはいえ、子供が読んでも理解できないでしょう。いろいろな企業や政治家の名前が、正式なものでなくかなり形を変えて登場します。それが何を指しているかがわからないと、おもしろくも何ともありません。それがわかるということは、日本社会に関するある程度の知識がある人ということになります。
 それぞれの話は、業界の裏話的要素があり、おもしろく読めます。しかし、フィクションになっているので、迫力はありません。著者のせっかくの知識が活かされていないように思います。
 内容は、もっともだと思うところが多かったのですが、乙が、ちょっと違う考え方をしているのはその4の寄付の話です。
 某寄付集め団体の例が出てきますが、183.5 億円を集め、157 億円が海外にある本部に送金され、26.6 億円が活動費になっているということです。著者は、この活動費でりっぱなビルなどを持っていることを書いていますが、集めた資金の 15% ほどの経費率と考えれば、そんなものではないでしょうか。乙は、寄付をした全額が寄付先に行くとは考えていません。経費率が 50% くらいのこともあるのではないかと思っています。
 経費率を下げることは重要です。しかし、普通の個人が年収の1%程度を寄付するとして、経費をかけずにどこかに寄付をするというのはなかなかむずかしいことです。1億円を寄付する場合は、手段もあるでしょうが、1万円では、実質的に寄付集め団体を経由するしか手段はないのではないでしょうか。そこで一部を抜かれてもしかたがないと思います。
 もう一つ、番外編(special volume)も、「おや?」と思ったところです。預金封鎖と新円切替が起こるという話です。実際に 1946 年に日本であった話ですが、今後、こんなことが日本で起こるのでしょうか。政府が何をするのかはすべて国会で決められるようになっています。国会の議決なしに政府が個人のお金を巻き上げるようなことができるのでしょうか。国会で議論したら、議論の中身が公開されますから、預金封鎖も新円切替も意味をなさなくなります。まさか、1日で提案から可決まで行って、即日実施などということになるのでしょうか。そんなことをしたら、今まで政府が国民に説明してきたことは何だったのかということになります。こんな案に賛成した国会議員は次の選挙で全員が確実に落選します。そんな危険をおかして、国会議員がこんな決定をするものでしょうか。乙はありえないように思うのですが、……。


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2011年10月13日

橘玲(2011.7)『大震災の後で人生について語るということ』講談社

 乙が読んだ本です。
 タイトルは、ちょっと中身を代表していないような感じです。本書の内容の一部の小見出しを本のタイトルにしたようなものです。
 本書に書いてあることは、日本の社会をどう見るかということです。多くの人によってずっと信じられてきた四つの「神話」を述べます。
・不動産神話 持ち家は賃貸より得だ
・会社神話 大きな会社に就職して定年まで勤める
・円神話 日本人なら円資産を保有するのが安心だ
・国家神話 定年後は年金で暮らせばいい
 その上で、そのような神話にしばられず、社会を眺め渡すと、違ったものが見えてくるわけです。その結果、本書はある意味での人生指南書の様相を呈しています。
 おもしろいといえばおもしろいと思います。神話は神話ですから、信じられているだけで、「正しい」ものではありません。この四つの神話が崩れると、多くの日本人はどうしたらいいか、わからなくなりそうです。
 しかし、橘氏の過去の著書を読んできた人間には、あまり新鮮味がなかったかもしれません。著者がそう簡単に主張を変えるはずもなく、どんどん著書を出していけば、いつかは似たような著書が複数存在することになるでしょう。しかし、重要なことは何回も聞くことが望ましいことです。過去の著書と同じような記述があったからとして、「だから悪い」とはなりません。新しい著書には新しい読者がつくこともあると思います。


ラベル:橘玲
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2011年09月19日

安田修(2011.8)『日本を脱出する本』ダイヤモンド社

 乙が読んだ本です。「短期の海外移住から永住まで」という副題がついています。
 海外移住に関する総合的入門書といえるでしょう。海外移住といっても、さまざまなタイプがあるわけで、特に、若い人で海外で働くことを念頭においている場合と、年配でリタイアしてから海外で暮らそうとしている場合では、相当に違ったものになります。
 本書は、そのようなさまざまな目的に使えるように、網羅的な記述をしています。この記述ができたというだけでも、著者の博識(あるいは情報収集能力)はすごいものだと思います。
 乙の場合は、第5章「リタイアメント」が一番おもしろかったのですが、いろいろな国にリタイアメント制度があり、年金がもらえれば、それぞれの国で十分暮らしていけそうです。海外旅行の延長上に、こんな暮らしもおもしろいと思いました。どこかの国に決めたら、そこの言葉を覚えるようにするといいと思います。1年や2年はあっという間に経ってしまいますし、それでも言葉を覚えるという意味ではまだ初心者でしょう。やることがあるというのは何よりもうれしい話です。
 もしかすると、乙の場合は、投資永住権を取得する手(第4章)もあるかもしれません。しかし、今の仕事で定年を迎えるまでは、ずっとこのまま継続したいと考えていますし、その後も、投資はするとしても、ある1ヵ国(の会社や不動産)に集中投資するのは危険なように思います。ということは、投資永住権とは無縁なものになるというわけです。
 この本でいろいろな国を比較してみると、やっぱりアジアが親近感が持てそうな気がします。
 もしも、さらに具体的に知りたいということになれば、関連の本を読んだり、ウェブで調べたりできるわけです。まずは、何か最初の1冊となれば、本書は大変有意義でしょう。とりあえず必要なことが何でも書いてあるというスタイルです。
 定年を迎えるころになって、海外移住を具体的に考えるようになったら、また本書を紐解きたいものです。
 とはいえ、そのころにはさらにいい本が刊行されている可能性が高いと思いますが。
 著者の安田氏は「海外移住情報」
http://www.interq.or.jp/tokyo/ystation
というサイトも運営しています。こちらは、本書よりもさらに詳しくて、しかも無料で読めます。


ラベル:安田修 海外移住
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2011年09月15日

堀井憲一郎(2006.4)『若者殺しの時代』(講談社現代新書)講談社

 乙が読んだ本です。あまり投資とは関係しません。
 目次は以下の通りです。
  第1章 1989年の一杯のかけそば
  第2章 1983年のクリスマス
  第3章 1987年のディズニーランド
  第4章 1989年のサブカルチャー
  第5章 1991年のラブストーリー
  第6章 1999年のノストラダムス
  終章 2010年の大いなる黄昏 あるいは2015年の倭国の大乱
 第1章以外は、年代順に記述されています。こうして、それぞれの年に何があったかを年代ごとに思い起こして書いていくスタイルです。著者の堀井氏は1958年生まれ、こうして若者として自らが経験してきたことを、多くの人(その多数は、早稲田大学の落語研究会の異なる世代のメンバー)の証言と付き合わせつつ、現代史を書きつづっていきます。
 乙は、本書を読みながら、奇妙な感覚を覚えました。いやにリアルなのです。実際、ディズニーリゾートのアトラクションの数の変遷とか、データはありますが、必ずしもすべてがデータに基づいて議論しているわけではありません。しかし、そこに展開される論説は、当時を生き抜いてきた人間の生の証言であり、何か、世の中を裏側から見ているようなシニカルな感覚にあふれています。
 このような記述から、本書では、若者が無理にいろいろなものを消費させられてきた存在なのだとしています。そのような各種流行(何が流行だったかは上の目次をご覧ください)は、大人たちが若者たちからカネを巻き上げるためのものだったのです。若者は、そのようなことを知らずに、世の中の流行に遅れまいと従っただけですが、結果的にその上の世代の人に貢いでしまった形になっています。
 こういう視点は、今まで乙が明確に意識してこなかったものなので、本書を読みながら、現代史を改めて実感するようなことになりました。
 描かれているのは、たった30年前のことですし、乙はその時代を生きてきたわけなのですが、改めて、これこれこういう時代だったと言われて、納得してしまったようなしだいです。


ラベル:堀井憲一郎
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2011年09月04日

小屋洋一(2011.7)『35歳貯金ゼロなら、親のスネをかじりなさい!』すばる舎リンケージ

 乙が読んだ本です。「一生お金に困らない2世代マネープランニング」という副題が付いています。
 実は、乙は著者からこの本を寄贈していただきました。(だからといって、単純に本書を持ち上げる話を書くつもりはありませんが。)
 基本は、「2世代マネープランニング」にあります。単純にいうと、30代の人に対して、親のマネープランニングと自分のそれと、両方を考えるようにしようということです。
 p.33 には「2世代マネープランニングとは、あなたにできる最高の親孝行なのです!」とありますから、著者が信念を持って、こう主張していることがわかります。
 乙は、2世代マネープランニングという考え方自体はよいものと思いました。しかし、親世代がきちんと考えていれば、それで大丈夫なはずです。むしろ、30代の子供世代は、働くことに忙しく、マネープランなどは考えている時間的余裕がないかもしれません。乙の場合も、30代の息子がいますが、もしも、息子から2世代マネープランニングが提案されたら、「そんなの必要ない!」というでしょう。自分なりにもう考えているからです。いや、2世代分を考えているわけではないけれど、自分たちの老後までを考えてプランしておけば、それで十分で、息子世代は息子世代で自分で考えればいいと思います。遺産が入った時点で考えてもいいでしょう。それまでに、さまざまな形で乙が息子たちに対する「投資教育」をしなければなりませんが、それは日常的な会話の中でも十分可能だと思います。
 乙のような、親の立場の人間からすると、本書に書かれていることはわかりきったことで、内容的に不満が残ります。30代の人で、かつ、親が投資などに無関心な人には有用な面もあるかもしれません。
 p.38 では、将来の(定年までの)給料の予測が出てきますが、こんなことわかるものでしょうか。
 乙は、若いころは公務員だったので、俸給表に従って給料をもらっていたはずで、したがって調べれば将来の給料がわかったはずですが、一度も調べもしませんでした。庶務課の給与担当者が計算を間違えなければ(そして、計算はコンピュータ化されているので、ほとんどそういうことはあり得ませんが)、しかるべき給料をしかるべくもらうだけでした。
 しかし、現在の民間の企業の給料は、なかなか将来予測が難しいと思います。雇用や給料のあり方が、単なる終身雇用・年功序列ではなくなりつつあります。
 しかるべき年齢になって、後から若いころの給料を振り替えれば、そうだったと(なつかしく)思いますが、若いころ(30代)に、40歳で○○万、50歳で○○万くらい給料がもらえるだろうなどとは予測できないのではないでしょうか。
 もしも、そういう予測ができたとしても、給料が増えると同時に教育費や住居費などがかかるようになってくるわけで、そんなのを踏まえてマネープランを作っても、実際とはかなり違ったものになるのではないかと思います。
 本書を読んで、一番違和感があったのはタイトルです。子世代が親世代のスネをかじる話はほとんど出てきません。あくまで2世代マネープランニングが話の中心です。この点で、タイトルはミスリーディングです。まあ、2世代マネープランニングをすれば、結果的に子世代が親世代のスネをかじることになっているのかもしれませんが、……。
 本書は、全体に着実平易な記述がされています。しかし、どこまで有効か、若干疑問に思う面もありました。6章の相続の話などはわかりやすく、現実的でした。しかし、5章の投資の話はやや不満でした。7つの金融商品を使い分ける主義のようですが、7分散でいいのでしょうか。国内と海外の株式と債券は標準的ですが、それに加えて、国内 REIT と海外 REIT とコモディティを加えています。このあたりは、正解がないし、考え方によっていろいろ変わってくるものなので、単純に7分散を説いているところには疑問を感じました。
 本書は全体にわたって、1段落が1〜2行で構成されています。ちょっと段落が短く、乙は読みにくい印象を持ちました。今の若い人は、こういう改行が多い文章を好むのでしょうが、……。



参考記事:
http://kaeru.orio.jp/blog/2011/08/book_34.html
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2011年09月02日

若林亜紀(2009.6)『国破れて霞が関あり』文芸春秋

 乙が読んだ本です。「ニッポン崩壊・悪夢のシナリオ」という副題が付いています。
 第2章から第7章までは、国土交通省、環境省、農林水産省、文部科学省、防衛省、厚生労働省のそれぞれの問題点を具体的に記述しています。官僚がいかに無駄遣いをしているか、それを赤裸々に描き出した本です。ただし、防衛省については、体験入隊の話が中心になっており、記述のトーンが異なります。
 大変おもしろくて乙は一気に読んでしまいました。
 こんなふうに各省に無駄遣いがはびこっているのでは、財政再建なんて夢のまた夢です。天下りの弊害もひどいものです。
 「役人=官僚」のあり方を通して、日本のあり方を考えることができます。
 この問題の解決はむずかしいものがあります。数十年も積み重ねられてきた「実績」ですから、それを破壊するには相当のエネルギーが必要です。今の民主党政権を見ていると、とてもではないけれど、改革なんてできるはずもありません。
 いっそのこと、国債の未達とか、赤字国債の発行が国会で拒否されるとか、とんでもない事件が起こった方が、旧来の悪習を打ち破るいい機会になるのではないでしょうか。



 余計な話ですが、若林亜紀氏の本は、以前に『公務員の異常な世界』を読んだことがあります。
 ブログを検索すると、何と、このブログで2回取り上げて書いています。2回目に書いたとき、1回目があることはまったく意識していませんでした。
 何ということでしょう。
2010.7.8 http://otsu.seesaa.net/article/155697493.html
2008.10.21 http://otsu.seesaa.net/article/108385508.html
ラベル:若林亜紀
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2011年08月12日

スティーブ金山(2011.2)『HSBC香港資産運用術』アールズ出版

 乙が読んだ本です。「資産を安定的に殖やしたい人のための」という副題が付いています。
 本書には、HSBC 香港の使い方が書かれています。しかし、こういう本を読んで大いにもうけようと考えたりすると、痛い目に合いそうです。
 乙が読んで気になったところをいくつかメモしておきます。
 pp.36-37 「年利 15% の定期預金?」というところがあります。「?」が付いているので、その分だけ良心的でしょう。これはデポジットプラスというもので、実態はデュアルカレンシー・デポジットという仕組み債の一種です。単純に年利 15% がつくものではありません。普通の投資家は、こんなものに投資してはいけません。とんでもなくハイリスクです。これを勧めるかのように書いている時点で、本書には疑いを持ってしまいます。
 p.44 l.-2 投資ファンドについて説明しているところで「HSBC のグローバル投資の専門家たちによって、世界中の有名なファンドハウスの中から厳選した質の高いファンドをリストアップされています。」とあります。「を」は「が」のミスですが、それはさておき、「質の高いファンド」とは何でしょうか。そんなものがあるでしょうか。HSBC を使わずに、日本から投資できないのでしょうか。疑問が膨らみました。
 p.47 では「頻繁に組み換えを行う人に便利な FundMax(ファンドマックス)」の説明があります。あれこれファンドを乗り換える人向けのサービスで、ファンドを乗り換えても購入時の手数料がかからないというものです。一見よさそうにも思いますが、問題は FundMax の手数料です。投資金額にもよりますが、年利 1.00-1.75% がかかります。この手数料が「高い!」と思います。こんな手数料を払わず、購入したファンドを乗り換えずにずっと保有しているほうがよっぽど安上がりです。
 pp.58-62 ETF・インデックス投資が説明されます。香港の ETF の紹介記事のようになっています。最後の p.62 では、「個々の ETF の内容を詳しく知るためには、楽天証券のサイトが便利です。」ということで、楽天証券の URL が書いてあります。だったら、楽天証券で ETF 投資をすればいいのではないでしょうか。HSBC 香港のサイトを使わないということは、その分、HSBC 香港のサイトが不便だと言っていることになります。HSBC 香港と楽天証券を(手数料も含めて)あれこれ比べてあればより有意義になったのに、……と思いました。
 pp.101-104 では、HSBC 香港の口座への送金方法について説明しています。日本の銀行からの海外送金(手数料 6000 円程度)、Go Lloyds を利用した海外送金(手数料 2000 円+送金額の 0.1%(最低 1500 円))が説明されていますが、いずれも手数料がかなり高いと思います。p.103 からほんの数行で FX-CFD 口座やアフィリエイトサイトからの HSBC 香港の口座への出金について書いていますが、手数料についてまったく触れられておらず、どのサイトで何をすればいいのかもまったくわかりません。
 というわけで、HSBC 香港への送金については、ほとんど何も説明していないに等しいと思います。著者本人がどのくらい経験があるのか、疑問に思いました。
 p.136 から Deposit Plus の説明がありますが、Deposit Plus が何であるのか、一切説明がありません。pp.36-37 に簡単な説明があるのですが、だったら、p.136 に「p.36 を見よ」と書いておくべきです。今の記述では、何が何だかわかりません。
 本書を読んで、乙が知らなかったことが一つだけありました。p.129 ですが、乙は、送金限度額を変更設定するとき、ネット上のフォームをプリントしてサインして郵便で送っていました。実はメールに添付して送るのでいいのだそうです。サインが必要ですから、たぶん、サインしたものをスキャナで取り込んで送るのでしょうが、このやり方は知りませんでした。

 本書は、HSBC 香港の使い方マニュアルのような内容でした。まあそういうねらいの本があってもいいでしょう。しかし、乙は大いに不満を感じました。
 第1に、HSBC 香港の提供する個々の金融商品の説明はあるけれども、日本の証券会社や銀行で提供されるものと比べてどっちがどれくらい有利なのか、何も書かれていないということです。たとえば、投資ファンドです。HSBC 香港で購入すると、初期手数料として、5.00-5.25% がかかります。(本書では、p.49 の中国株ファンドのところに記載があります。)乙の感覚では、数年前はそんなものかと思っていましたが、現在は、とんでもなく高いと感じるようになりました。日本だったら、ノーロードとか、せいぜい 3% くらいではないでしょうか。日本ではどうなのかも書かないと、HSBC 香港が有利かどうか、わからないのではないかと思います。
 第2に、HSBC 香港のデメリットについてまったく書かれていないことです。本書自体が HSBC 香港を使うことをすすめるスタイルで書かれているわけですから、デメリットについては書かないことにしたのかもしれませんが、しかし、それでは客観的な記述になりません。一例だけ挙げると、HSBC 香港の口座で中国株に投資している場合、配当金が出て、自分の口座に振り込まれると 30HKD が入金手数料としてかかります。大した金額ではないという見方もあるかもしれませんが、けっこうな負担です。たとえば、分散投資を心がけて、いろいろなジャンルの中国株20〜30種類くらいに資金を分散させて投資することは一つの投資法だと思いますが、個々の銘柄で配当金が出た場合、それぞれから 30HKD が引かれるので、少額の投資では割に合いません。こんな説明は本書中のどこにも出てきません。pp.38-43 で中国株投資を勧めるならば、まずこの情報を明示するべきだと思います。
 というようなことで、著者の金山氏が自分自身で HSBC 香港を利用して投資しているのかどうか、あやしいものだと感じました。本書の記述は HSBC 香港のサイト内を(英語で)ネットサーフィンすればわかるようなことばかりです。読む価値はあまりないものと判断します。
 HSBC 香港を使うメリットは何かということは重要ですが、第1章「なぜ、HSBC 香港なのか」(特に pp.22-29「海外に口座を開設するメリット」)に書かれていることを読んでも納得できませんでした。
 乙は、HSBC 香港に口座を開設していますが、では、この口座を畳んで撤退するか。いいえ、そうはしません。ということは、本書に書かれていないメリットがある(と考えている)からなのですが、本書の読者が知りたいのは、まさにそういうことなのでしょう。しかし、それは本に書けないということでしょう。(乙のブログでも書けません。)となると、こういう本を読んでもあまり意味はないことになります。
 大まかにいえば、HSBC 香港のサイトで、英語でわかるようなことを、日本語に直したくらいのことでしょうか。


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2011年07月31日

星野泰平(2010.12)『半値になっても儲かる「つみたて投資」』講談社+α新書

 乙が読んだ本です。
 毎月定額の積立投資を勧める本です。簡単にいえばドルコスト平均法です。
 ドルコスト平均法は、理論的には得でも損でもない方法ですが、著者によると、これが一番いいとのことです。
 定期的な収入のあるサラリーマンには、現実的には、積立投資がベストでしょうが、理論的に優れているわけではありません。
 その意味では、少しだけミスリーディングかもしれません。読者は、あたかも、どんな場合でも積立投資がベストであるかのように誤解しがちだということです。
 タイトルの「半値になっても儲かる」はインパクトがあります。実際にはどういうことかというと、10,000 円の基準価額でスタートし、7年後に 2,000 円まで下がり、10 年後に 5,000 円に回復した場合を考えています。
 グラフを参照してください。
tumitate.jpg
この場合、10年間の積立総額の 120 万円が 1,392,397 円になったということで、16% 増えたというわけです。
 このシミュレーションは正しいです。乙も検算して確認しました。
 こういうシミュレーションを見ると、なるほど、積立投資は有利だと思えますが、ポイントは、投資のはじめのころは投資金額が小さいので、基準価額が下落しても最終的な投資成績には大きな影響はないのに対して、投資の終わりのころは投資金額が大きくなっているので、基準価額の上下を大きく反映するということです。
 投資は、10年で終わりではありません。仮に、あと1年長くして、11年としましょう。10年目で 5,000 円まで回復したものが、11年目で 4,300 円まで下がったとします。こんな話は本書には出てきませんが、シミュレーションを1年間延長するだけで計算できます。
 7年間で8割減という「実績」のあるファンドならば、1年で 14% 減などというのはよくある話でしょう。
tumitat2.JPG
 計算してみると、132 万円の積立額に対して、11年目の現在価値は 1,307,942 円ということで、成績は -1% ということになります。
 つまり、だんだん投資金額が大きくなってくると、少しの基準価額の増減で現在価値は大きな影響を受けるわけです。
 だからといって、積立投資がダメだと主張するものではありません。積立投資でいいと思います。しかし、本書は、各種シミュレーションのうち、比較的うまくいく場合の例を多数示すようにしていて、p.52 のように、損をするパターンもありますが、全体としては少な目です。その意味で、ミスリーディングかもしれないということです。
 なお、p.202 には「全世界で【中略】60億人で「つみたて投資」をしたら、素敵だと思いませんか?」とあり、失礼ながら、乙は思わず笑ってしまいました。著者は全世界の人口を基準にして考えているようですが、投資ができるほどに余裕があり、積立投資ができるように定期的な収入があるのは、先進国に住む一部の人間に限られていると思います。

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2011年06月10日

荒川雄一(2011.3)『海外分散投資入門』パンローリング社

 乙が読んだ本です。「日本が財政破たんしても生き抜くためのノウハウ」という副題が付いています。
 「はじめに」に「本書は、2008年11月に発行された『着実に年10%儲ける「海外分散投資入門」』(実業之日本社)の改訂版です。」とあります。
 前著については、乙はすでに読んでいました。
2009.1.12 http://otsu.seesaa.net/article/112487936.html
 タイトルが変わっていたので、新著だと思って図書館から借りて読んでしまいました。
 前著について述べた問題点は繰り返さないことにしましょう。
 p.156 オフショア地域では、投資家も運用の途中で税金を源泉徴収されないと述べた上で、「一方、日本国内で設立したファンドの場合、毎年決算を行い、利益が出れば税金を支払わなければなりません。」と書いています。しかし、これは間違いです。利益が出た上で、それを投資家に分配すれば、その時点で税金がかかりますが、分配しなければ税金はかかりません。まあ国税庁の指導で日本のファンドは分配を強制されている(?)ようですが、それはまた別の問題です。
 というわけで、オフショア地域のほうが途中で課税されないから有利ということにはなりません。
 p.179 でファンド選びのポイントを述べていますが、次のような記述があります。
 「第4のポイントは、いうまでもなくファンドの過去のパフォーマンスです。設定当初の1〜2年だけ良くて、その後、急激に悪くなるようなファンドもありますので、注意が必要です。」
 この第1文と第2文は矛盾しているように思います。第1文では過去のパフォーマンスを見よと言っているのに対し、第2文では、その後急激に悪くなることがあると言っています。第2文が妥当ならば、第1文の主張とは違って、過去のパフォーマンスを見てもしかたがないということになります。
 p.191 海外分散投資のステップ1として「通貨分散」がうたわれています。これが間違いであることは前の記事
2009.1.12 http://otsu.seesaa.net/article/112487936.html
2007.2.23 http://otsu.seesaa.net/article/34452967.html
で書きましたので省略します。
 こういうことをいまだに書いているという点で、乙は荒川氏の論述を全面的に受け入れられないと考えます。
 p.217 アドバイザーに対する報酬について書いてあります。荒川氏は、日本の金融商品について、運用結果の如何に関わらず、固定的な手数料を取っていることを述べ、それよりも PMS(ポートフォリオマネジメントシステム)のやり方は 1.0% プラス成功報酬だから、資産残高が増えないとアドバイザーの手数料も増えないので、アドバイザーは顧客の資産を増やすことに真剣に取り組むとしています。これを「Win-Win の関係」と呼んでいます。
 しかし、これは違います。成功報酬(普通は上昇分の2割ですが)は、Win-Win の関係とは限りません。こういうアドバイザーが一番儲けるやり方は、運用方針を思いっきりハイリスクにすることです。万が一大きく儲かれば、その2割ががっぽり手に入ります。万が一大きく損をすれば、投資家がかぶります。顧客の資金をいろいろなハイリスクのファンドに振り分けるようにしておけば、顧客が損をしても、アドバイザーが儲けることが可能です。
 なお、1% プラス成功報酬というのも(昔はそんなものかと思っていましたが)今は高いと思います。

 こういう本を読むと、海外ファンドに手を出したくなりますが、そんなにうまくいくものではありません。本の記述の中にどういうウソが含まれているかを見抜くことはむずかしいことです。かなり知識が身に付いてからでないと、ウソは見抜けないと思います。
 本書のように、正しいこともいろいろ述べているけれども、一部に間違った記述があるというのは本当に困りものです。こういう本を信じて海外ファンドに飛び込む人が出ることになります。


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2011年04月26日

大前研一(2011.1)『お金の流れが変わった!』PHP新書

 乙が読んだ本です。「新興国が動かす世界経済の新ルール」という副題が付いています。
 タイトルを見ると、本書の内容がほぼ推測できます。こういうタイトルの付け方が好きです。タイトルは1冊の内容の要約になっていなければなりません。
 第1章は「超大国「G2」の黄昏」で、アメリカがうまく立ち回って世界中から資金を集め繁栄してきたものの、今や崩壊しつつあるという認識を示します。中国も、そのうちバブルが崩壊するだろうとしています。
 第2章は「お金の流れが変わった!」で本書の中心部分ということです。
 p.54 では、ホームレス・マネー 4,000 兆円が世界を翻弄していると説きます。これがどこに向かうかで、その向かった先の国が大きな影響を受けます。
 pp.105-106 シンガポールは、資金も人材も世界中から取り入れているのに対して、日本は両方とも拒否しています。日本にはホームレス・マネーがほとんど来ていないため、国民から税金で巻き上げるか、国債発行で将来から借金するしかなくなっていると述べ、国家をどう経営するかという点で、日本の特異性を指摘しています。
 第3章は「21世紀の新パラダイムと日本」です。
 p.118 から、財政出動によって実体経済に影響を与えようとするケインズ政策などのマクロ政策では経済がどうにもならなくなったと説きます。新鮮な見方でした。
 pp.124-127 では、経済がサイバー化し、ジャスト・イン・タイム方式が普通になり、経営のしかたが変わってしまったと述べます。サイバー経済では無料が基本ということも見逃せないでしょう。
 p.139 では、日本にホームレス・マネーが来ないことの契機がブルドック・ソース事件だったとしています。これによって世界のマネーがぱったり日本に入ってこなくなったというわけです。
 p.162 では、大前氏のアイディアで日本航空をJR東日本に買ってもらったらどうかという大胆な提言をしています。陸と空の機能的融合でおもしろいことができるとしています。(民主党はそういう発想がないからダメだという文脈ではありますが。)
 この第3章は、いろいろなアイディアにあふれていて、一番おもしろい章のように思いました。
 第4章は「新興国市場とホームレス・マネー活用戦略」です。
 日本と外国のあり方の違いの典型的な例として、p.227 では、日本の首長は永田町に陳情に行くのに、中国の各市長は自分の市を世界に売りこもうとし、日本に来るときも市の会社の社長を数百人単位で連れてくると述べます。何という発想の違いでしょう。お金の集め方、使い方の根本的違いを感じてしまいます。

 本書は、全体として、これからの日本のあり方を述べています。こういうことが実現すれば、明るい未来がありそうで、日本も元気になるのですが、今の政治の状況を見ていると、とてもそんなことは望めそうにありません。
 本としておもしろいし、ためになると思いますが、それを鏡にして日本の政治の現状を見ると、いよいよがっかりせざるを得ません。


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2011年04月15日

竹中平蔵・池田信夫・鈴木亘・土居丈朗(2010.11)『日本経済「余命3年」』PHP研究所

 乙が読んだ本です。刺激的なタイトルに引かれて読む気になりました。「「徹底討論」財政危機をどう乗り越えるか」という副題が付いています。
 全体は5章構成で、目次は以下の通りです。
第1章 「国家破綻」に至るシナリオ
第2章 税と世代間の負担をどうするか
第3章 社会保障をどうするべきか
第4章 経済成長の鍵となる考え方
第5章 真の「政治主導」の実現を
 乙が一番関心があったのは第1章でした。
 p.28 では、政府の債務をどう考えるべきかについて、土居氏が述べています。グロスの政府債務(総債務)や政府保有の金融資産分を相殺消去したネットの政府債務(純債務)などで見ることが普通ですが、OECD の統計では将来の年金給付債務が含まれていない一方で、政府保有の金融資産に年金積立金が入っていることなど、いろいろな事情があります。そのため、国民が将来税金で負担する政府債務の総額として「グロスの債務」プラス「年金給付債務と覚しきもの」マイナス「外国債」マイナス「金融資産」という計算をしています。
 こんなことでも、論者によって違う基準で話をしたりするわけですから、まずは、このあたりで合意ができないとどうしようもありません。土居氏のこういう基準は、本書を読む限りもっともだと思えます。
 p.38 では、鈴木氏が年金・医療・介護の債務超過について述べています。厚生年金と国民年金で、現在支払を約束している年金受給総額だけで800兆円の債務超過だというわけです。すごい数字です。さらに、医療で380兆円、介護で230兆円で、三者を合計すると1410兆円という、いよいよどうしようもない数字が出てきます。実際には、さらに、共済年金の債務の問題(200兆円?)があるし、年金の計算で厚労省が将来の利子率を 4.1% という高い利率で計算している(実際はこれより低くなることはほぼ間違いない)という問題まであります。どう考えても、日本の財政は破綻しているとしかいいようがありません。
 第3章では社会保障を取り上げていますが、p.98 で、社会保障費と社会保障関係費について鈴木氏が説明しています。社会保障とは社会保険(年金、医療保険、介護保険、雇用保険など)であり、それとは別に社会保障関係費という支出があり、これには生活保護の他に、根拠不明の支出(医療保険で国が4割ほど負担する分とか、後期高齢者医療制度や国民健康保険で国が半分くらい負担している分など)がものすごく多くなっています。このあたり、国のあり方を考えると、今の制度でいいか、大いに疑問が残ります。
 第5章では、政治や官僚の問題が扱われます。p.201 の竹中氏のことばが印象的です。「いまの制度でいちばん困るのは、能力のある人があとから入ることができないことです。キャリア制度の下だと、そこに能力のある人が40歳で入ってきて、5年間、不良債権処理をやろうと思っても、自分より能力の低い人に使われることになってしまう。それがわかっているから、能力のある人はあえてそんなバカバカしい仕事をしようとしない。」何ということでしょう。この一言で官僚制度の問題をするどく突いてしまいました。もっとも、だからといって、この制度がそう簡単に「改革」できるとも思えませんが。

 本書は、全体として、今の日本の政治と経済の問題をズバリ指摘している内容になっています。
 4人の話し合いのスタイルで書かれていますので、(たぶん、実際にそういう話し合いがあり、それを文字化して、お互いに手を入れたのでしょう)読みやすいと思いました。しかし、きちんと図表なども入れて、しっかりした作りになっています。
 今の日本の政治と経済を考える人におすすめの内容です。



参考記事:
 http://koutou-yumin.seesaa.net/article/192317020.html
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2011年04月06日

辛坊正記・辛坊治郎(2011.1)『日本経済の不都合な真実』幻冬舎

 乙が読んだ本です。「生き残り7つの提言」という副題がついています。
 前著『日本経済の真実』
2010.8.1 http://otsu.seesaa.net/article/158083591.html
の続編です。
 第1章 日本国債はなぜ暴落しないのか
 第2章 君には破綻の足音が聞こえないか
 第3章 20世紀の二大経済学者に学ぶ不況の原因と対策
 第4章 日本を強くする7つの提言
という4章で構成されています。
 第1章では、政府紙幣を発行することについて、暴論だとしています。乙は、発行してもいいと考えていますので、
2009.2.11 http://otsu.seesaa.net/article/114032329.html
ここは著者たちと意見が異なりました。乙は、政府紙幣を限定的に発行するなら、副作用は小さいと思いますが、著者たちは政府や政治家を信じていないようです。
 全体に、あまり意外な話もなく、妥当な考え方が述べられているように思いました。7つの提言というのも、よくいわれていることです。
 1 供給サイドを強くせよ
 2 法人税を抜本的に引き下げよ
 3 日本的雇用慣行を根本から変えよ
 4 内需重視! の掛け声に騙されるな
 5 FTA を推進せよ
 6 規制緩和を強力に進めよ
 7 不透明な日本流規制をやめさせよ
それぞれの具体的な内容を知りたい方は本書を一読するといいでしょう。
 これらの提言はもっともなのですが、それが実行できるかといえば、まず無理です。日本のあり方を根本から変えなければならず、社会がきしみます。誰もそのようなリスクを取りたがらないのです。総理大臣が旗を振って、みんながついていくようなことにでもならない限り、そういう変革は無理というものです。今の政治家では特にそう思います。
 どうしたらいいか、よくわかりません。
 まずは、選挙区の定数を是正して一人一票を実現し、今の政治家の基盤をくずすところあたりから始めないとダメでしょうか。いや、これまた難問なのですが、……。


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2011年03月22日

アーニー・J・ゼリンスキー(2003.9)『働かないって、ワクワクしない?』ヴォイス

 乙が読んだ本です。
 文字通り、働かないことで自由時間を確保し、豊かな生活を楽しもうという本です。
 「自由な時間」を多く持っている人こそが、ほんとうの「豊かな人」だという考え方が述べられています。
 しかし、乙は一読して失望しました。
 「働かない」理念は興味深いものがあります。しかし、では、具体的にどのような生活をするのか、収入はどうするのか、その具体策がまったく書いてありませんでした。
 著者はどうしているのでしょうか。巻末にこう明記してあります。「アーニーは一日4,5時間、週4日働き、英語で“r”がつかない月、つまり5月、6月、7月、8月には仕事をしないことにしている。」
 これでわかります。つまり、まったく働かないのではなくて、少なく働いて自由時間をたくさん確保しているのです。それならそうと、この暮らし方を早めに提示するべきでしょう。
 普通に誤解するのは、「働かないこと」がすばらしいなら、「全然働かないこと」がベストということになるということです。しかし、その場合、収入の道がないわけで、日々の生活はどうするのかという問題が起こります。
 収入については、いろいろな考え方がありますが、ある程度の財産があれば、あとはまったく働かない(つまりは早期リタイヤ)という選択肢もあります。日本円で考えれば、たとえば5億円あれば、毎年1%で運用したとしても、500 万円の収入があることになりますから、それで財産を減らすことなくずっと暮らしていけます。また、2億円あれば、まったく運用しなくても、毎年 500 万円ずつ取り崩して40年暮らしていけます。
 もっとも、そういうお金を得るためにがむしゃらに働くことは著者の主張に反することになります。したがって、これが達成できる人は、親からそういう財産を相続した人くらいかもしれません。
 そうでなければ、少しは働いて、収入を得る必要があります。著者のスタンスがわからなかったので、本書を読みながら不満が募りました。第11章「優雅な生活に大金はいらない」にしても、具体的なお金の話はまったく出てきません。
 ところで、短時間だけ働くというスタイルですが、著者が住むカナダではこういう働き方ができそうに思います。しかし、日本ではどうでしょうか。短時間の仕事では十分な収入が得られるようにはなっていない(そういう仕事はない)のが現実ではないでしょうか。一日5時間週4日働くというのは、週20時間ということです。そういう仕事といえば、まずアルバイト程度しかないのではありませんか。とすると、時給 1000 円の世界です。週2万円、月8万円、1年に8ヵ月働いて64万円の収入です。これでは豊かに生活するにはとても足りません。逆に、時給 4000 円の仕事をするならば、年収 256 万円となり、まあ何とか暮らしていけそうです。しかし、時給 4000 円の仕事といえば、それなりの専門職ということになり、そういう人が毎年4ヵ月の休暇を取るというスタイルを貫けるでしょうか。乙は大いに疑問に思います。
 この本は、著者の考え方を書いた本であり、具体的な生活の話はまったく出てきませんので、こんなことで 300 ページもかける必要はないと思います。100 ページ、あるいは 10 ページに圧縮して書いても趣旨が伝わります。
 もっとも、定年退職した後の生活のことを考えるためには、こういう本も適している面があります。


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2011年03月15日

駒崎弘樹(2010.12)『「社会を変える」お金の使い方』英治出版

 乙が読んだ本です。「投票としての寄付 投資としての寄付」という副題が付いています。
 社会を変えるために寄付をしようという呼びかけの本です。著者の駒崎氏は NPO 法人のフローレンス(病児保育を行います)の代表理事ということで、自ら NPO 法人としていろいろな企業などに寄付を呼びかけ、それに基づいてフローレンスを運営しているという話です。
 p.4 には、こう書いてあります。「寄付は、投資家が株や投資信託に投資するのと同じようなものなのです。」副題に書かれていることにもつながる考え方です。しかし、乙は、寄付と投資は別物のように感じています。自分のお金を投じるという点においては共通性があるものの、両者は異なる点もあります。寄付は、自分の願い(こうありたい、こうしたい)を直接表現するものですが、投資は、第1義的には資金を増やすことを目指すものです。そして、がんばってほしい企業の株を買うというような考え方の投資もある一方、どの企業に投資したらいいかわからない人のための投資法もあるわけです。前者は、寄付と通じる部分がありますが、後者はずいぶんと離れているように思います。インデックス投資の考え方が後者と重なるとすれば、寄付と投資はかなり違った面を見せることになります。
 寄付は、投資と一線を画すようなものだけれど、こういうことをして、続けていってほしいという願いを実現できる一つの方策として、「寄付」は意義のあるものだと思いました。
 巻末には、「寄付先のご紹介」があります。いろいろな NPO ががんばっているのだなとわかります。
 乙の寄付先は、必ずしも NPO ではないようで、一つも含まれていませんでした。しかし、自分なりに意義があることに自分のお金を使おうという意味では、今までのやり方でいいと思っています。

 インデックス投資になぞらえれば、インデックス寄付ということがあってもいいと思います。これらすべての NPO 法人に(均等に?)配分するようなしくみを作ったらいいのにと思いました。150 ほどのリストですから、1口 1,500 円として、何口でもよしとすると、毎月定期寄付などということができます。投資信託を買うのと同じやり方で寄付することができます。毎月一人分として、たとえば 10 円だけ一つの NPO 法人に流れます。たくさんの人が賛同してこれが増えてくると、バカにならない金額が動くようなことにもなるのではないでしょうか。
 乙は 1,000 円からの投信積立には否定的ですが、
2009.10.7 http://otsu.seesaa.net/article/129680323.html
1,500 円からの定期寄付は賛成です。これで1年に 18,000 円の寄付になります。収入の1%を寄付にあてると考えれば、ちょうどよさそうな金額です。普通のサラリーマンなら、2口か3口くらいでちょうどいいのではないでしょうか。
 もっとも、あまり安易にインデックス寄付を導入すると、インデックス投資と同じく、モラル・ハザードを引き起こす可能性もあるあたりがマイナスかもしれません。

参考記事:
 http://happy2020.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/post-0a99.html


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2011年03月02日

山森亮(2009.2)『ベーシック・インカム入門』(光文社新書)光文社

 乙が読んだ本です。「無条件給付の基本所得を考える」という副題がついています。
 ベーシック・インカムとは、誰にでも一定額の所得を与えようという話です。どういう理念なのか、そういうことが可能なのか、それを知りたくて読んでみました。
 一読して、乙はかなり不満を感じました。
 本書中には、歴史的にどういう運動があり、どのようにベーシック・インカムという考え方ができあがってきたかが記述されています。しかし、本当に知りたいのは、日本なら日本に適用したときにどういう制度になるのかということです。たとえばもらうお金にしても、毎月3万円か、10万円か、はたまた30万円かによって姿は全然違って見えると思います。そういう具体論は一切出てきません。ただし、仮にということで、p.10 では、大人一人1ヵ月10万円、子供は7万円という数字が出てきますので、たぶん、このくらいのことを想定しているものと思われます。
 ベーシック・インカムに関して、乙が疑問に思った点はいくつかあります。
 第1に、子供の分は誰に支払うべきかということです。たとえば、18歳で区切って、それ未満は子供扱いし、それを越えたら大人扱いする(本人に支払う)のでもいいと思いますが、その子供の分は親に払うということでいいのでしょうか。両親が離婚したケース、家庭崩壊したケース、両親ともに死んでしまったケース、施設に入っている子供のケース、などなど考えてみると、「親に払う」ということでもけっこう手間がかかりそうです。現在の「子ども手当」の場合と同じ問題が起こります。
 第2に、外国人をどうするかという問題です。もちろん、外国人もベーシック・インカムの対象です。日本に住んで(働いて)いれば、日本に税金を払っているわけで、国籍で差別することがあってはなりません。しかし、入国してきた人に毎月10万円をプレゼントするということが世界中に知れ渡ると(そしてそうなることは明らかですが)、さまざまな理由で日本への入国者が激増しそうです。留学生・就学生はもちろんですが、理由は何でもいいので、日本の医療を受けたいとか、日本人との(偽装)結婚とか、蛇遣いのプロ(エンターテイナー)とか、何でもありになるかもしれません。日本人がそういう不法入国を手伝う(そして荒稼ぎする)例が激増するでしょう。密入国者の場合だって、それを理由にベーシック・インカムを支払わないというのは本来の趣旨に反します。「日本に1年以上住んでいる人」などと条件を付けることは、ベーシック・インカムの理念(何も条件を付けずにばらまくのがよい)に反することです。日本に入国した人は、働く必要はありません。働かなくても食っていけるだけの金額を渡すことがベーシック・インカムでしょう。「黄金の国、ジパングに行こう。覚える言葉はたった一つ。ベーシック・インカム、プリーズ。」こういう外国人が激増してもベーシック・インカムという制度が耐えられるのでしょうか。
 第3に、第2の点の裏返しですが、日本人(日本国の居住者)は、海外に出かけていく(留学でも就職でも起業でも国際結婚でも何でも)ことが少なくなりそうです。日本にいれば毎月10万円もらえるけれど、海外に行ったらそれがもらえないのでは、わざわざ海外に出かけようとする人は少なくなるでしょう。日本人はいよいよ内向き思考になりそうです。これがいいか悪いかは議論の余地がありますが、日本国の(さらには全世界の)発展のためにはよくない面が多そうです。
 第4に、ベーシック・インカム制度のもとでは働かない人が増えそうです。本書の pp.146-147 では、ベーシック・インカムへの批判として、働かない人に甘く、働く人に厳しい制度だといわれることがあると述べ、それに対する反論が書いてありますが、乙は、反論になっていないと思います。たとえば、大学を卒業するころ、ベーシック・インカム制度があったとして、乙は就職の道を選んだでしょうか。働かなくても一定の収入があり、自分の時間をすべて好きなことに割けるなら、そちらを選んだ(つまり就職しない)可能性があります。これは社会の理念の問題というよりは個人の生き方の問題です。たくさんの人の判断の集合として働かない人が多くなれば、いわば日本全体が「引きこもり」状態になるわけで、社会は崩壊します。
 第5に、ベーシック・インカムは豊かな社会の発想であり、そうでない社会には受け入れられないということです。ベーシック・インカム構想の歴史を述べた p.150 以降でもそれははっきりしています。豊かな社会が実現し、福祉国家が実現してきたからこそこういう考え方が登場してきたのであって、人類の大部分の歴史にはこういう考え方はありえなかったということです。ベーシック・インカムには 200 年の歴史があるといいますが、たった 200 年です。人類の大部分の歴史は、どうやって食って(生きて、子供を育てて)いくかということであったろうと想像します。近年、豊かな社会になり、ようやく弱者も生存の権利があると考えられるようになってきた(他人に助けられれば弱者も生きていけるし、助ける側も自分のことだけに精一杯ではなく、他人を助ける余裕ができてきた)わけです。ベーシック・インカムは、そういう豊かな社会を前提にして成り立つ制度です。日本は「豊かな社会」でしょうか。これからもずっとそうであり続けるでしょうか。
 第6に、不正受給や支払ミスの防止の問題です。ベーシック・インカムは、誰にでも支給するから審査などの手間が不要でその分のコストがかからないという議論がありますが、実際はそんなでもないと思います。少なくとも、年金と同じく、その人が生きてそこで生活していることの確認は必要ですし、二重支払などにならないための制度が必要です。それはけっこうコストがかかる話でしょう。

 なお、本書中の記述で乙がおやと思った点についてもメモしておきます。
 第2章「家事労働に賃金を!」で、家事労働に従事する女性たちに賃金を払うべきだという考え方が紹介されます。これもベーシック・インカムにつながっていく考え方です。しかし、こういうときの家事労働は、それによってメリットを受ける側(夫、あるいはその家族)が賃金を払うべきであり、社会が払えばいいということにはなりません。
 p.275 では、「働かざる者、食うべからず」という言い方に触れ、もしも本気でそう思うなら相続税 100% にするべきだという議論が書いてあります。これは変です。そんなことをしたら、裕福な人はどんどん外国(相続税のない国)に逃げていくだけです。武富士の創業者の息子が香港に住んでいたような話です。
 本書で、乙も賛成するところがありました。p.267 から、ベーシック・インカムを導入することと似た結果になるということで、生活保護や児童扶養手当を利用しやすくすること、年金を税方式にすること、児童手当の所得制限を撤廃すること、所得税の計算で所得控除になっているところを給付型税額控除にすることなどを挙げています。そうするべきかどうかは議論の余地がありますが、このような施策はベーシック・インカムへの道として考えてもいいと思いました。

 ベーシック・インカムに関しては、以下のようなブログ記事も参考になるかと思います。
http://blog.goo.ne.jp/yamazaki_hajime/e/df9729ff82024e97dd3447d08d9c5f27
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50907051.html


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2011年02月22日

橘玲(2010.9)『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』幻冬舎

 乙が読んだ本です。
 橘玲氏の本は、今までにも何冊か読みました。
2010.1.24 橘玲(2009.6)『貧乏はお金持ち』講談社
http://otsu.seesaa.net/article/139190837.html
2008.8.11 橘玲, 海外投資を楽しむ会(2008.7)『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 至高の銀行・証券会社編』ダイヤモンド社
http://otsu.seesaa.net/article/104547631.html
2008.8.8 橘玲, 海外投資を楽しむ会(2008.7)『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 究極の資産運用編』ダイヤモンド社
http://otsu.seesaa.net/article/104383634.html
2008.5.29 橘玲(2008.3)『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』ダイヤモンド社
http://otsu.seesaa.net/article/98372824.html
2008.3.29 橘玲(2007.11)『亜玖夢博士の経済入門』文藝春秋
http://otsu.seesaa.net/article/91427357.html
2006.12.15 橘玲(2006.11)『マネーロンダリング入門』(幻冬舎新書)幻冬舎
http://otsu.seesaa.net/article/29655402.html
2006.10.8 橘玲(2005.7)『永遠の旅行者(上・下)』幻冬舎
http://otsu.seesaa.net/article/25061050.html
2006.10.6 橘玲(2003.4)『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)幻冬舎
http://otsu.seesaa.net/article/24967688.html
2006.7.19 橘玲(2004.9)『雨の降る日曜は幸福について考えよう』幻冬舎
http://otsu.seesaa.net/article/21013037.html
2006.7.16 橘玲(2002.12)『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』幻冬舎
http://otsu.seesaa.net/article/20844064.html
2006.7.14 橘玲+海外投資を楽しむ会(2003.11)『世界に一つしかない「黄金の人生設計」』(講談社+α文庫)講談社
http://otsu.seesaa.net/article/20748838.html
2006.7.12 橘玲+海外投資を楽しむ会(2004.8)『「黄金の羽根」を手に入れる自由と奴隷の人生設計』(講談社+α文庫)講談社
http://otsu.seesaa.net/article/20655082.html
2006.6.16 橘玲(2006.4)『臆病者のための株入門』(文春新書)文藝春秋
http://otsu.seesaa.net/article/19337369.html
これらはすべておもしろかったので、この本も楽しみにしていました。
 しかし、内容は、「投資」というよりも、人生の生き方のような感じになっていて、ちょっと期待と違っていました。目次は以下の通りです。
 序章 「やってもできない」ひとのための成功哲学
 第1章 能力は向上するか?
 第2章 自分は変えられるか?
 第3章 他人を支配できるか?
 第4章 幸福になれるか?
 終章 恐竜の尻尾のなかに頭を探せ!
 これを見ても、内容が今ひとつ推測しにくいものです。さまざまな話が出てきますが、はじめに、自己啓発本の批判から始まり、なかなか自分を変えられないことを前提に、それでも幸せに生きていくための方策を述べます。「はじめに」には、次のようにあります。「残酷な世界を生き延びるための成功哲学は、次のたった二文に要約できる。 伽藍を捨ててバザールに向かえ。恐竜の尻尾のなかに頭を探せ。」これだけ読んでも意味がわかりませんが、伽藍が会社などを指し、バザールがグローバル市場を指すということがわかれば、うすうす主張が見えてきます。恐竜の尻尾というのはロングテールのことで、あまり売れない商品が膨大に(種類が多く)存在することを指しています。
 やっぱりわかりませんね。
 この本を読んでみましょう。


ラベル:橘玲
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2011年02月03日

高野秀行(2000.9)『極楽タイ暮らし』(ワニ文庫)KKベストセラーズ

 乙が読んだ本です。「「微笑みの国」のとんでもないヒミツ」という副題が付いています。
 乙は、老後、タイに住んでもいいかなと思っているので
2011.1.19 http://otsu.seesaa.net/article/181405201.html
タイトルに引かれて読んでしまいました。
 おもしろい本でした。
 ただし、読んでみると、あまりお金の話は出てきませんでした。本書の内容は、日本人から見たタイ人を描いており、いわば日タイ比較文化論といった色彩の本でした。
 乙は、電車の中でこの本を読んでいたら、おかしくて笑い出しそうになり、そんなはしたないことをするのもためらわれ、必死に笑いをこらえていたこともあります。
 著者の高野氏は、チェンマイ大学日本語科の講師をしていたということで、タイの学生などを通して、タイの人々の考え方をよく把握していると思いました。
 こういう本を読むと、ますますタイでのロングステイを経験してみたいと思いました。そのまま永住という可能性もあるような気がしています。


ラベル:高野秀行 タイ
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2011年01月23日

小黒一正(2010.8)『2020年、日本が破綻する日』日本経済新聞出版社

 乙が読んだ本です。「危機脱却の再生プラン」という副題がついています。
 インパクトのあるタイトルだったので、読む気になりました。
 第1章「財政破綻はいつ起こるのか?」では、日本の借金大国のありさまを描きます。2020 年ころには政府が国内から借金できなくなるということで、外債を発行することになると予想しています。単なる破綻本と違い、客観的な記述がされているように思いました。まあ、財政破綻があるかどうかはよくわからないわけですが……。なお、消費税を増税するときは、段階的に増税するよりも一気にあげる方がいいということは初めて知りました。もっとも、そんなことは政治的に非常に困難でしょうが。
 第2章「債務超過の日本財政」も第1章の続きで、日本のバランスシートを考えると相当にひどいということになります。債務超過は 280 兆円と聞くと、一体どうすればいいのだと思います。さらに大きな問題は、社会保障(年金・医療・介護)が抱える「暗黙の債務」がかなり大きく、実は 1430 兆円あるのだということです。
 第1章と第2章の二つの章は、日本の現状を描き出すものです。
 第3章「「埋蔵金」で問題は解決しない」では、「埋蔵金」を活用することは国債を発行することと同等であり、問題は解決されないとしています。
 第4章「縮む日本経済、進む世代間格差」では、財政が抱える本当の問題は世代間格差であると説きます。
 第3章と第4章の二つの章は、誤解されやすい認識を正そうとしているかのようです。
 第5章「「崩壊する社会保障」の再生プラン」では、日本の現状を改善するにはどうしたらいいかということで、「事前積立」などのいろいろな方策を提案しています。
 第6章「いまこそ世代間の公平を実現せよ」では、「世代間公平委員会」を作り、「世代会計」を予算編成に活用し、世代間の公平を実現することを提案しています。
 第5章と第6章の二つの章は、問題を解決するための著者からの提案です。
 こうしてみてくると、タイトルは本書の内容からかなり外れています。まあ、編集者が付けたものだと思いますが、タイトルに誘われて読む気になったのはやや的外れでした。特に「2020年」と明記してあると、あと10年もないのかということで、日本の財政を憂える人は本書を手にとることが多いのではないでしょうか。
 それはともかく、財政破綻の問題は、年金をはじめとする多くの問題とリンクしていることがわかります。それだけに、日本を根本的に改造するような大手術をせずに、今のままズルズルと運営していくと、天地がひっくり返るような事態になりかねません。
 でも、今の民主党政権を見ていると、とてもこんなことはできないと思えます。それが一番悩ましいところです。

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2010年12月27日

大前研一(2010.7)『民の見えざる手』小学館

 乙が読んだ本です。「デフレ不況時代の新・国富論」という副題が付いています。
 本書は「週刊ポスト」での連載の「ビジネス新大陸の歩き方」などを編集したものです。例によって大前氏の歯切れのよい口調が楽しめます。日本の何が問題なのか、ズバリ指摘しています。
 本書の主張は p.27 l.-1 から p.28 に出てきます。
最も有効な経済対策とは、金利でもマネーサプライでもなく、世の中にあまたあるお金が日本国内で活躍するような政策であり、そうした巨大マネーを日本に引き込むための「無から有を生む」仕掛けである。

 これをどうやって実現するのかは、あとの方に出てきます。
 実に夢のある話です。こういうことで1冊の本ができあがっているのですから、おもしろいはずです。
 pp.64-67 で、日本の標準家庭は「単身世帯」であるとし、だから p.68 でいうように、総合スーパー(4人家族くらいをイメージしたパッケージで売っている)が不振なのだとしています。この見方で、最近の小売りの傾向をずばり表現してしまいました。なるほど、こういう把握の仕方で世間を見る目が変わってきます。
 p.76 ブランド品は安売りをしたらおしまいだということで、安売りをしないブランド品の例が挙がっています。そう、最近の小売業は、ブランド品とそうでないものの区別ができていないかのようです。
 pp.125-130 では、ロシア・ビジネスの重要性が語られます。北方領土の問題などは、適当に済ませて、むしろビジネスの展開を図るべきだということです。特に、核弾頭の再利用でエネルギー 100 年分とか、核燃料再処理工場をシベリアに設置など、ユニークなアイディアが満載です。
 p.159 あたりでは、国民のグッドライフを実現するためには、都市の住民を対象にした各種政策を実施するべきだとしています。今や、都市の住民の方が多数派なのですから、非都市よりも都市のほうを向いた政策が必要なのです。ただし、大前氏は、このとき、増税も、税金財源も、外国頼みも全部ダメだといいます。それでは、都市の再生はできないというわけです。ではどうするか。pp.163-169 に雄大な構想が書いてありますので、ぜひご覧ください。市街化調整区域、湾岸再開発、容積率緩和ですが、ここでは詳細を省略します。乙はとてもおもしろいと思いました。
 こういうビジョンのある人が総理大臣になってくれれば、日本も少しは変わるのでしょうが、国会議員が首相を選ぶ(そして国民が国会議員を選ぶ)以上、そんなことにはならないでしょう。民主主義社会では、衆愚政治になりやすいといわれますが、今の日本などは、まさにその典型のようです。
 pp.186-187 では、文科省による大卒者の「就職支援」をこき下ろしています。p.193 によれば、アメリカの大学のビジネススクールでは、就職内定率や就職率を気にしないそうです。大企業に就職しないからです。大半は自分で起業するか、おもしろそうなベンチャー企業に行くとのことです。日本との大きな違いに驚きます。
 しかし、そうはいいつつ、p.197 では、韓国の就職のむずかしさを述べ、安定した生活が保障される就職先(政府、サムスン、現代、LG、ボスコなど)と他の会社に就職した場合で、生涯収入が月とスッポンほど違うと述べています。韓国の学生にも起業を勧めるわけではないのですね。ここは主張が一貫していないように思いました。日本だって、大企業に行けばかなりの確率で一生涯安定した生活ができそうです。だからみんな大企業に行こうとしているのではないでしょうか。
 ともあれ、1冊読むのが楽しくてしかたがない感じでした。ま、このような話は実現しないのが現実なんですけれど、……。


ラベル:大前研一
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2010年12月18日

原田泰(2009.9)『日本はなぜ貧しい人が多いのか』(新潮選書)新潮社

 乙が読んだ本です。「「意外な事実」の経済学」という副題が付いています。
 NIKKEI NET BIZ+PLUS「経済学で考える」の連載を中心に、一部「エコノミスト」の記事なども入れてまとめた本です。元の記事は2004年から2008年くらいのものが多いようです。その意味で、内容がやや古い印象があります。
 本書は、全6章に区分されていますが、さらに62節に細分されています。それぞれの節のタイトルが「〜か」という問いかけになっており、内容をよく表しています。その問いかけに答えているのがその節の記述だということです。
 乙がおもしろいと思ったことをいくつか取り出しておきましょう。
 pp.81-83 くらいの記述ですが、夫の所得が高いほど妻の有職率は低い(ダグラス・有沢の法則)という傾向が、30歳未満では逆になることから、長期的には夫の所得が高くても妻の有業率は低下しない(あるは上がる)と予想しています。そのことから、高所得カップルの子供を(保育園という形で)税金で面倒を見ることが疑問だとし、所得の高い家計からは実際にかかるコストを保育料として徴収し、その資金で保育所を増設すべきだと主張しています。実際の保育料がいくらになるかで話は変わってきますが、実際にかかるコストの8割が税金だということは、単純にいえば保育料が5倍になるということです。今は、保育料が5万円くらいでしょうか。とすると、原田説では保育料が25万円になります。1年間で300万円です。高所得カップルは払えるでしょうが、若い人で高所得というケースは少ないでしょうから、あまり現実的な案ではないかもしれません。
 なお、p.83 で保育料は所得を得るための必要経費として所得から控除することを提案しています。アメリカではそうなっているそうなので、日本でも同様にしてもらいたいものです。
 pp.118-120 で、子育ての機会費用が高いことを述べています。p.120 の図3は、
http://koutou-yumin.seesaa.net/article/166428656.html
にも引用されています。働く女性が仕事を辞めて、出産・育児のあとにパートタイマーになるとすると、2億3719万円もの所得が失われるというわけです。こんなにも子育てコストが高いのでは、児童手当(現在は子ども手当ですが)などをもらってもまったく割に合わないということになります。
 なお、このような機会費用を考慮すると、保育園の保育料が1ヵ月25万円になっても安いものだという議論が成り立ちます。(現状と大きく異なるので、心理的には受け入れにくいと思いますが。)
 著者は、さらに、日本的雇用システムが崩れつつあることから、年齢による賃金カーブがフラットになっていくので、子供のコストが低下していくと述べています。そして、日本の女性は、子育て後でも、パートタイマーよりもずっと高い賃金カーブの仕事を見出すことができると予測しています。ここのところは、乙には違和感がありました。これからの日本は賃金カーブがフラットになるだけでなく、賃金レベルが下がっていく(つまり、全員がパートタイマーのようになる)のではないかと思います。今の若者の就職難や、非正規雇用の増加は、こんな日本の将来を暗示させます。とすると、子育ての機会費用が低下するのはその通りですが、所得全体として減少傾向になるのではないでしょうか。つまり、少子化は簡単には解決しないことになります。
 p.184 では、次のようにあります。
 日本で生産性を高めるという議論をするとき、既存の産業の生産性をいかに高めるかという議論になることが多い。しかし、アメリカの生産性の高さは、生産性の低い産業を輸入に置き換えることによってもたらされている面が大きい。

 この話は目からウロコでした。この考え方をすると、日本のあり方は大きく姿を変えることになりそうです。

 他にもおもしろいところが何ヵ所もあります。本書は、事実を重視して、図表を多用し、そこから話を進めていくスタイルなので、わかりやすいと思いました。
 あえて欠点らしきものをいうと、あちこちのグラフが Excel で書かれているようで、モノクロでは線の区別がむずかしいということがあります。もう少し、相互に区別しやすい線などを使うとか、別の工夫をすればよかったと思いました。

関連記事:
http://koutou-yumin.seesaa.net/article/166397774.html


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2010年11月29日

高橋洋一(2010.8)『日本経済のウソ』(ちくま新書)筑摩書房

 乙が読んだ本です。
 全体が3章構成になっています。第1章「日本はなぜ不況なのか?――デフレ不況の経済学」、第2章「危機はいかに克服されるか?――危機克服の経済学」、第3章「これからの日本経済はどうなるか?――国家再建の経済学」といった内容です。
 三つの章のうち、第1章と第2章は、新書とはいえ、かなり内容が高度で、読みにくく、正直言って乙はお手上げでした。専門用語がバンバン出てくる感じです。
 2点だけ、コメントしておきます。
 p.082 には図が1枚入っています。図11です。これが本文で参照されていません。そして、図の中に「Nagaku niopebu」と書いてあるのですが、この意味がわかりません。
 BIS について、p.127 で説明されています。しかし、p.121 ですでに「BIS」という言葉を使っています。初出のところで説明するのが当然でしょう。
 他にも問題はあると思いますが、こういう書き方が本書を読みにくくさせていると思います。
 それらに比べて、第3章は内容がわかりやすく、おもしろいものでした。第1章・第2章とずいぶん違う感じです。もしかしてどこかの講演をもとにして書き改めたのかもしれません。それぞれで聴衆のレベルが大きく異なっていたかのようです。
 第3章は、大きく三つの部分からなります。
 第1に、「日本経済はどうなっていくか?」ですが、民主党の新成長戦略や日銀の現在の政策では、日本経済がうまく回っていかないことを数字をあげて説明しています。経済財政諮問会議の廃止などは非常に乱暴なやり方だったことがわかります。
 p.144 では、「国の政策では、極論すればJALが倒産したなどの「滑った転んだ話」よりも、マクロ経済政策のほうが遙かに重要です。」と述べています。でも、現実の政治家はマクロ経済政策についてはわからないから、「滑った転んだ話」に傾いてしまいます。まさに日本の政治の問題点の一つです。ちゃんと経済学的知識を持っている人が舵取りをしないと、日本はどこに向かってしまうか、心配になります。
 第2に、「日本はなぜ正しい金融政策を行えないのか?」です。ほぼ日銀批判になっています。具体的に、誰のどういう発言が問題なのか、それはなぜかを指摘していて、おもしろいと思いました。著者は日銀が量的緩和で資金を供給すればデフレから脱却できると主張しています。
 第3に、「日本の未来はどうなるか?」ということで、日本経済(日本国)は破綻しないということと、亀井氏が強引に進めている郵政再国有化がいかに間違っているかを論じています。前者については、日本の債務残高は大きいけれども、保有している資産もまた大きいので、差し引きを(ネットで)計算すれば、債務残高はGDPに対する比率で見て大したことないということです。乙は、こういう見方も可能だとは思いますが、毎年のように政府が赤字予算を組んで、しかも支出先に変なところ(失礼!)が多いのでは、いつかは日本国としておかしくなりそうに思います。それに国の資産が本当にそれだけの価値があるのか、ちゃんと調べてみると、実は帳簿ほどには資産でなくなっているのではないか(帳簿の金額ほどの価値がなくなっているのではないか)という疑いもあります。乙は、高橋氏のように楽観的ではいられません。
 ともあれ、第3章だけでも読む価値はありそうに思います。高橋氏はあちこちを切りまくって、歯切れのいい話を展開していますですから、読んでいておもしろいのです。


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2010年11月22日

堀江貴文(2010.6)『拝金』徳間書店

 乙が読んだ本です。小説でありフィクションです。
 とはいえ、自伝的小説なので、ノンフィクション的な味つけが効いていて、とてもおもしろいと思いました。しかし、あくまで全体が「小説」であり「フィクション」ですから、何がフィクションで何がノンフィクションかわかりません。乙はこの点がかなり不満でした。男にも女にもクラスがあるなどという話は、ヒルズ族だった著者ならではの書きぶりだと思いますが、でも、それが本当なのかどうか、わかりません。全体がフィクションであれば、その中にノンフィクション的な部分を含ませても、それもまたフィクションなのです。
 乙は普段ほとんど「小説」を読みませんが、それは、こういうところが嫌いなのだということがよくわかりました。
 今は、小説中のネクサスドアはライブドアのことだ、ヤマトテレビはフジテレビのことだとわかりますが、20年も経ったらそんなことは忘れ去られてしまうのでしょうね。その段階で、この小説がおもしろいと感じられるかどうか。それがこの小説の価値を決めるように思います。
 内容的には、一人の貧しい若者が大きなビジネスを起こしていくといったもので、よく書けていると思います。


ラベル:堀江貴文 拝金
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2010年11月12日

カン・チュンド(2010.10)『ETF投資入門』日本経済新聞出版社

 乙が読んだ本です。先日、カンさんとお会いしたときこの本をいただきました。感謝しております。
 カンさんのブログ
http://tohshi.blog61.fc2.com/
もそうですが、とてもわかりやすく書かれています。本書は 168 ページほどの新書ですから、読み切るのにも時間がかかりません。それでいて ETF については必要なことがほぼ全部書かれているということで、入門書としてきわめて有意義なものといえます。
 読んでいておもしろかった点ですが、pp.60-61 で、国内 ETF が低調なのは機関投資家が利用しないからだとしています。そうなのですよね。いくら個人投資家が ETF がいいからといって買ったとしても、たかがしれています。機関投資家が利用するようにならないと売買に厚みが出てきません。そして、機関投資家ならば、理論価格と市場取引価格のずれ(乖離)を利用した裁定取引などもできるでしょうから、ぜひ ETF に参加してもらいたいと思います。それでこそ、個人投資家が安心して ETF を買えるようになるはずです。
 p.132 では、安全資産を保有する場合、銀行預金よりも債券に投資する非上場投資信託にするべきだとしています。乙は、銀行預金と債券とを(固定金利ということで)一緒に考えていますが、本書ではそうではないとのことです。
 その理由は、
@銀行の倒産リスクを隔離できる
A銀行の預金より若干高いリターンが期待できる
Bポートフォリオのバランス調整がしやすい
という3点です。以下、これに関する乙の意見を書いておきます。
 @ですが、預金保険でカバーされる範囲(1,000 万円まで)の預金ならば、銀行が倒産しても、あまり問題ではないように思います。一つの銀行で 1,000 万円ですから、複数の銀行を利用すれば「銀行数×1,000 万円」の預金ができます。普通の人には十分な範囲だと思います。
 Aは、一般的にはそう言えますが、定期預金の利率は、ボーナス時期などではかなり高くなることがあり、
2009.12.8 http://otsu.seesaa.net/article/135002513.html
債券を上回ることさえあります。うまく探して、時期が合えば、定期預金の方がいいということもありそうです。
 Bはカンさんのおっしゃるとおりで、銀行の定期預金は、預入のときに決めた期間、おろせないし、おろすと利息がきわめて低くなります。したがって、定期預金ではリバランスなどはほぼ無理です。債券のファンドならば可能です。
 とはいえ、リバランスがどれくらい必要かということですが、乙は、実際上あまり必要ではないのではないかと感じています。これについては、先日も述べました
2010.11.6 http://otsu.seesaa.net/article/168435589.html
が、もしも株式が大幅に上がってしまったら、固定金利の定期預金を増やせばいいので、事実上リバランスできます。株式が大幅に下がった場合が問題で、定期預金を一部解約するのは非現実的です。ただし、リバランスは、あまり頻繁に行うものではないというのがモーニングスターの主張ですが、だとすると、そのうちには定期預金が満期を迎えるのではないでしょうか。それを継続しなければ、定期預金をやめることに該当し、つまりはリバランスしていることになります。定期預金は3年くらいが普通の最長期ですが、だとすると、平均1年半で満期が来ます。定期預金は1口にまとめておく必要はないので、適宜預け入れると、いわば口数を分散していることと同じことになり、実際上リバランスできてしまうように思います。
 というようなことを考えると、Bもあまり大きな差ではない(銀行預金だって負けていない)という見方ができそうに思います。
 ともあれ、個人投資家にとってとても役立つ本です。広くおすすめします。


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2010年11月08日

藤巻健史(2010.8)『日本破綻』朝日新聞出版

 乙が読んだ本です。「「その日」に備える資産防衛術」という副題が付いています。
 藤巻健史(2010.3)『日本破綻』講談社
2010.6.22 http://otsu.seesaa.net/article/154037696.html
の続編という位置づけです。
 第1章「欧州の財政危機を読む」ではギリシャ危機を取り上げて論じます。
 乙がおもしろく思ったのは、p.14 に出てくる話です。日本国債はその95%を日本国民が持っているわけです。すると、日本国債がデフォルトしても他国では直接的な被害を受けません。したがって、日本国債のデフォルトについては他国は騒がないという論理です。なるほどと思いました。
 p.20 では、ギリシャ危機の本質について、固定相場制の問題だと喝破しています。以前だと、ヨーロッパ各国が独自の通貨を持っていたので、それぞれの国の間で為替相場が変動し、さまざまな偏りを自動的に修正するようなことが可能だったのに対し、今はユーロという単一通貨を使用していますから、そういうことができません。これが固定相場制と同じ問題なのだというわけです。まさに、この見方でギリシャ危機が理解できます。
 第2章「日本の財政危機を直視する」では、日本の財政危機が、もうどうしようもない状態になっているということを説明します。
 第3章「楽観論に対する反論」では、国の借金が増えてもまだ大丈夫だという議論に反論しています。
 第4章「なぜこのような状況に陥ってしまったのか?」はたった5ページですが、結論としては、日本が計画経済国家で市場原理が働いていなかったからだとしています。
 第5章「解決方法はあるか」では、とてもありえない話からあり得る話まで、さまざまな「解決方法」が述べられます。藤巻氏はハイパーインフレがもっとも可能性が高い解決方法だとしています。乙も、ハイパーインフレ説を考えています。
2009.5.3 http://otsu.seesaa.net/article/118371423.html
 第6章「「市場の反乱」のシナリオ」では、どんなふうに国債の暴落が始まるかをいくつかのシナリオで解説します。それぞれ可能性があるように思います。
 第7章「「その日」は国債未達に始まる」では、具体的に、国債の暴落が始まる最初の事件として「国債未達」(発行する国債の一部が売れ残ること)を取り上げています。乙がおもしろいと思ったのは、p.110 です。国債の入札の時の応札倍率が1倍未満になれば、もちろん危ないわけですが、3倍程度あったとしても安心していてはいけないという話です。ここは藤巻氏のトレーダーとしての経験が活きています。応札する側が、高めの入札価格で多めに入札しているという話です。乙はこんなことがあるなんて知りませんでした。
 一番の問題は「その日」がいつかということですが、これは誰にもわかりません。
 第8章「「その日」に備える資産運用の原則」では、保険のつもりで、国に頼らず、リスクを認識し、長期を見据えましょうと説いています。
 第9章は「これで完璧! 預金封鎖対策」ということです。「預金封鎖」は憲法違反なので起こらないだろうという話ですが、もしも、それに対して対策を立てるとすると、コストが高くなるということです。
 p.125 から、海外の銀行・証券会社での口座開設について述べられますが、コストが高いということでよくないとされています。ある意味ではそうかもしれません。藤巻氏が指摘するのは、税金の問題で、日本国内なら20%の源泉分離で済むのに対して、海外だと総合課税になるから、所得の高い人だと50%が税金として取られてしまうとしています。それはそうなのですが、乙は、サラリーマンなので、定年があります。その後は年金生活になります。そのときに運用していた資産を取り崩すつもりです。そうなると、収入はかなり少なくなるので、税金もそんなにかからないのではないかと思います。
 第10章「ハイパーインフレに備える――基礎・中級編」第11章「どの国、通貨、金融商品に投資するか」第12章「ハイパーインフレに備える――上級編」などは、具体的な投資話ですので、ぜひ本書をお読みください。
 p.162 では、米国株のありかについて説明しています。米国株を買うと、その株券が日本に送られてくるのでなく、ニューヨークにあるカストディアン口座(信託口座)に日本の仲介証券会社名で登録されるとのことです。
 乙がよくわからなかった点
2010.10.26 http://otsu.seesaa.net/article/167198285.html
でしたが、一応、わかってきました。
 なお、p.181 から出てくる「キャップ」については、乙は今まで知りませんでした。これから少しは勉強してみてもいいのかもしれません。
 第13章「未来は暗いわけではない」は最後の結論部分です。株・債券・円のトリプル安が日本を襲うことになっても、それは「不幸中の幸い」だとしています。韓国のような前例があるからです。
 一時的に日本経済は極端なダメージを受けるでしょう。しかし、その後は経済が大復活するだろうというわけです。

 全体として、「日本破綻」ですから、他の多くの破綻本と同じようなものと見られるかもしれませんが、乙はかなりの信頼性を感じました。おもしろい本でした。
 日本は、ハイパーインフレになるかもしれないけれど、ならないかもしれないわけで、どちらでも大丈夫なように資産運用を考える必要がありそうです。ということは、結局、海外分散投資しかないように思います。


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2010年10月18日

若田部昌澄(2010.7)『「日銀デフレ」大不況』講談社

 乙が読んだ本です。「失格エリートたちが支配する日本の悲劇」という副題がついています。
 本書の基本的な主張は、現在の大不況は日銀が引き起こしたものだということです。言い替えれば、日銀の考え方・行動のしかたは間違っていると批判しています。
 どんなところかというと、ひたすらインフレを避けようとし、デフレでいい(デフレにも「良いデフレ」がある)とするところです。
 本書を読むと、まあそうかもしれないと感じるのですが、それにしても、すべての責任を日銀に押しつけて、それで終わりというわけにもいかないでしょう。日本国を運営しているのは日本政府です。その代表が総理大臣です。だとすれば、政府や総理の考え方・行動のしかたも大事なのではないでしょうか。
 日銀は、「政府からの独立性」を根拠にして、政府の干渉を受けないようにして、自らの政策を貫徹しようとしているという著者の見立てはいいのですが、一方では、もう少し大局から見れば、やはり、政府の責任というのも無視できない部分があるはずで、本書ではそちらはあまり描かれていません。
 あえて、政治を切り離して、日銀に焦点を当てることで、今の日本の状況を違った観点から見ようとしたのかもしれませんが、そちらも含めて眺めた方が良かったのではないでしょうか。
 本書は、最後に「第5章 日本は必ず復活する」があるのが救いです。もっとも、ここに書かれている内容は、すでに誰かがどこかで述べているようなことで、あまり新鮮味はありませんが。
 日本の現状を憂える人は本書を読んでおいて損はなさそうです。


ラベル:若田部昌澄 日銀
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2010年10月12日

坂田純一, 杉田宗久, 矢内一好(2009.4)『Q&A 国際相続の税務』税務研究会出版局

 乙が読んだ本です。
 構成はシンプルで、全体が3章に分かれています。
第1章 米国と台湾の遺産税
第2章 韓国の相続税
第3章 日本の相続税
 第1章の記述の中心は米国で、65ページもあるのに対し、台湾は14ページしかありません。
 それぞれの国(地域)の相続に関わる税について、Q&A 形式でまとめた形になっています。
 第3章は、一般的な知識のように思いました。類書も多いです。
 本書の特色は、三つの国と地域の相続税について、くわしくまとめて記述したところにあります。
 三宅茂久(2008.6)『Q&A海外移住タックスガイド』財経詳報社
2010.9.26 http://otsu.seesaa.net/article/163771032.html
で取り上げていた地域とは重ならないようになっているので、両者を併せて読むといいと思います。
 乙の場合、Interactive Brokers を通じて、アメリカに資産の一部をおいている形になるので、もしも乙が死ねば国際相続の問題が発生します。本書を読んで、そういうことに備える必要があると思いました。いや、実は、海外での投資を始める前にこういう本を読んでおくべきでした。実際は、1年半前に出版されたものですので、乙の海外投資の開始には間に合わなかったのですが。
 以下、主として米国に関する記述で重要なことをピックアップしてみましょう。
 p.24 では、米国に joint tenancy(合有制)があることを述べています。これについては、p.65 でも述べられます。「共有」とはずいぶん違います。合有するということは、自分が死んだらもう一人に権利を無償で移転するという契約なのです。
 もちろん、合有によって、相続税(遺産税)を免れることはできません。しかし、合有制があるおかげで、遺産に関して裁判所が検認するまで何もできないというような不便さはなくなります。このあたりは p.70 に記載があります。
 乙がアメリカにある財産を子供との合有にすると、その財産の取得費用を乙が全部出したことは明らかですから、この財産全部が課税対象になるわけです。ま、これはしかたがありません。
 p.27 では、親が財産を海外に移し、子供を海外に居住させて日本に住所がないようにした場合でも、子供が日本国籍を持っているならば、日本で課税されるとのことです。平成15年からこういう変更がなされたという話です。もっとも、子供が日本に帰らない状態でどうやって子供に課税するのか、よくわかりませんが、……。
 p.37 では、米国の遺産税について、米国に住んでいない外国人の場合は、生涯控除額が6万ドルとのことです。つまり、米国に6万ドルを超える財産を持っていると、死んだ時に遺産税が取られます。乙もすでに引っかかる状態です。米国の遺産額の税額は、日本の相続税なみかと思いますが、日本での二重課税を避けることを考えると、けっこう手続きがめんどうなように思います。
 p.53 非居住外国人の遺産税の計算例が示されています。非居住外国人は、全世界の総遺産額を算出する必要があります。なぜなら、どの国にいくらの遺産があるかによって、葬儀費用・管理費用を按分して控除するためですが、これまたけっこうめんどうな処理です。子供にやってもらえるでしょうか。

 本書の記述はくわしく、かつ具体的です。有用な本だと思います。海外投資を始める前に、こんな知識を持っていればよかったと思いました。


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2010年09月26日

三宅茂久(2008.6)『Q&A海外移住タックスガイド』財経詳報社

 乙が読んだ本です。
 海外移住に必要な税金関係の知識をまとめて解説した本です。
 非常に興味深く読みました。
 各国の税制は大きく異なっています。それを知らずに移住先を決めるのは無謀です。特に、高額資産を保有している人はこの点をシビアに考える必要があります。
 第1章「日本の国際所得税」では、日本人が海外移住した後、日本でかかってくる所得税をどのように処理するかを解説しています。日本の資産を全部売り払って海外に移住したとしても、なお、日本で所得がある場合もあります。たとえば、年金です。したがって、たぶん、税金の面では、一生、日本からは離れられないと思います。
 海外移住した場合でも、日本に不動産を持ち、賃貸に出していたり、株を持っていたり、預金があって利息を受け取ったりする人も多いでしょう。それらはすべて税金がかかってきます。ぜひ、これらの知識を身につけておく必要があります。
 第2章「日本の国際相続税」も興味深いものです。海外移住しても、移住先での交通事故などで突然死亡することがあります。そのとき、相続が発生しますが、相続人が外国に住んでいる例もあるし、財産がいろいろな国にあるとなると、それらをどう扱ったらいいか、問題が生じます。日本の居住者の定義などから始まって、全体にくわしい記述がなされています。
 乙は知らなかったのですが、たとえば、p.77 ではこんな話があります。日本人甲が10年前からA国に移住していて、その配偶者もA国に10年在住しているとします。その場合に、甲が配偶者に日本の有価証券を贈与すると、それは日本の贈与税の対象になるとのことです。受贈者が日本に住んでいる場合、勤務でB国に在住4年の場合、それにもちろんこの配偶者のようにA国に住んでいる場合を分けて、甲の贈与財産をA国の不動産、A国の有価証券、B国の預金、B国の不動産などに分けて、それぞれが日本の贈与税の対象になるか否かを述べています。いやはや、むずかしいものです。
 第3章「米国」第4章「カナダ」第5章「オーストラリア」第6章「ニュージーランド」第7章「スイス(チューリッヒ州)」第8章「ドバイ」第9章「シンガポール」第10章「マレーシア」第11章「タイ」第12章「ベトナム」第13章「香港」は、それぞれの国ごとの税制を記述しています。居住者・非居住者の定義から始まって、日本の各種収入、当該国での各種収入をどう扱うべきか、贈与税や相続税がどうなっているか、二重課税の調整法など、興味深い内容です。各章がほぼ同じ構成で書かれているので、移住先を比較検討する際にも便利です。
 乙は、アメリカでの相続について考えたことがありましたが、
2010.8.31 http://otsu.seesaa.net/article/161081438.html
本書で、かなり詳しく知ることができました。
 たとえば、p.111 では、遺産税について、遺産が100万ドルまでは統一税額控除でほぼ無税にできるようです。これはアメリカに住んでいる人の場合で、アメリカに居住していない人の場合は異なります。けっこうな額です。まあ、アメリカにはあまり移住したいと思わないのですが、こんな知識を知っているのと知らないのでは大違いです。
 なお、乙が上記のブログ記事で問題にしたのは、日本にいながらアメリカの株を買ったりするとアメリカに財産がある形になるということで、ここでの問題とは別です。
 国ごとに税制には大きな違いがあるものです。本書でそれを一覧表のように知ることができた点に意味がありました。
 国ごとのページ数が大きく異なります。
 米国 39p. カナダ 19p. オーストラリア 15p. ニュージーランド 25p. スイス 19p. ドバイ 11p. シンガポール 25p. マレーシア 17p. タイ 19p. ベトナム 31p. 香港 8p. です。米国とベトナムがページ数が比較的大きく、香港は薄くなっています。これは、各国の税制の複雑さを表しています。米国は税制が複雑です。香港は、贈与税・相続税がないので、両方合わせて1行しか記述がありません。香港では銀行の利子も非課税です。記述は簡単でも十分ということになるわけです。
 というわけで、海外移住を考える上では、本書は大変有効な指南書になるでしょう。
 乙は、本書を図書館で借りて読んだのですが、自分で買って読んでもいいと思いました。もっとも、今買っても、移住を実現するまでは15年くらいかかりますから、読んだ知識が陳腐化しそうです。具体的に移住を考える段になってから、改めて買うのがよさそうだと思いました。もしかして、そのころには改訂版が出ているかもしれませんし……。


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2010年09月20日

鈴木亘(2010.7)『年金は本当にもらえるのか?』(ちくま新書) 筑摩書房

 乙が読んだ本です。
 とてもわかりやすい年金の本です。
 「はじめに」がおもしろいです。なぜ年金の本はむずかしいかという疑問から入ります。それは、厚生労働省のお役人が、自分たちへの批判を避けながら、国民を情報操作するために書いているからだと喝破しています。
 本書は、そうではありません。鈴木氏が日本の年金の全体像をわかりやすく(お役人とは別の目で)説明しようとしているからです。
 まさに新書にピッタリの内容でした。
 本書は、18の質問に答える形で書かれており、著者の鈴木氏が真正面からそれぞれの問いに答えようとしているため、わかりやすくなっているのだと思います。
 p.64 では、年金の国庫負担分について「社員旅行の積立金」のようなものと説明しています。幹事が「社員旅行に来ないと積み立てた旅費を返さないよ。来ないと損だよ」と言ったら、普通の人なら怒り出す、社員旅行に来ない人には積立金を返還するのがスジだと書いてあります。
 しかし、乙はそうは思いません。旅行に行かない人には積立金を返還する必要はなく、その分は、旅行に行った人が、自分の積み立てた分よりも少しだけ豪華な旅行にして楽しんでかまわないのではないでしょうか。そういう積立金を個々に返還していたら、社員旅行に行かない人がさらに増えて、仕組みそのものが崩れると思います。
 p.118 では、基礎年金を税方式にするべきだという話の続きで、なぜ年金を税にしないのかを説明しています。ひとことで言えば、年金特別会計をにぎっている厚生労働省のお役人たちが、天下りなどの自分たちの権益を手放そうとしないためだとしています。この考え方が本当かどうか、わかりませんが、そう考えると、さまざまな年金問題にからむゴタゴタがすっきり見えるようになることは事実です。乙はこの説明に納得しました。
 p.140 では、基礎年金の25年ルール(年金保険料を25年間払い続けないと受給資格がない)を10年とかに短縮することに意味があるかを論じています。実は意味がないということです。乙は、25年は長すぎると思っていたので、短縮案に賛成だったのですが、ここの説明を読んで、そう簡単な話ではないと気づきました。単純に言えば、短縮案は低年金の人を増やすだけだということです。意外な結論でした。
 p.79, p.150, p.226 には、それまでに論じてきたことを1ページにまとめたところがあります。頭の中を再整理するのに便利なように思いました。一気に読む場合は問題ないのですが、少しずつ読み進める場合は、こういうのがあるとありがたいです。
 そして、巻末には、もらえる予定の年金額を記載した表が付いています。生まれ年だけでなく、共働きか専業主婦か、月収はいくらか、など条件を変えて複数の表になっていますので、多くの人が自分の年金を概算することができると思います。これは便利です。
 乙は、自分の年金の予想額を知って、意外と多いことに驚きました。たいていの人は、こんなことも知らずに生活しているものでしょう。
 もっとも、いざ、年金をもらうころになったら、制度の「改正」があって、実質的には受取額が減ってしまうものと覚悟しています。「100年安心プラン」なんてウソで、たぶん10年も安心できないものと思っています。
 しかし、仮に年金が2割減となっても、日常の生活には困らない程度になりそうです。
 老後の生活を考える上でも有益な本でした。


ラベル:鈴木亘 年金
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2010年09月18日

週刊ダイヤモンド 2010.9.18 特集「壊れる大学」

 乙が読んだ雑誌です。今回の特集は、大学です。
 pp.36-88 まで、50ページの特集です。(広告が入るので、正味はもっと少ないですが。)
 大学問題は、投資と直接関連するわけではありませんが、これからの日本の方向性を考える上で、ちょっと目を通しておこうと思って、駅で見かけたときに買いました。
 Part 1 では、「瀬戸際に追い込まれた大学」ということで、「危ない大学」の名前が具体的に挙げられています。実のところ、日本には乙が聞いたこともないような大学がいろいろあるものだと思いました。最近開学したような大学も多いようです。ここで名前を挙げられた大学は、これからいよいよ倒産(大学閉鎖)するのではないかと思いました。今の日本には大学が多すぎるように思います。
 Part 2 は「大学ルポ・生き残り大作戦」で、それぞれの大学の学生集めに関する各種作戦が書かれていました。乙が経験した数十年前の大学とはまるで違ってしまっています。大学はこんなことでいいのでしょうか。いやまあ、倒産するよりは、何としても生き残った方が(大学関係者には)いいのでしょうね。
 Part 3 は「驚愕の学歴ロンダリング」です。これは、神前悠太他(2008.12)『学歴ロンダリング』光文社 の一部を抜き出したような内容で、もとになった本を読む方がはるかにマシです。大したことない大学に入った場合でも、東大の大学院に入り、「東大大学院修了」という学歴を身につけることを「学歴ロンダリング」と呼ぶわけです。
 もっとも、乙は、学歴ロンダリングが本当に有効なのか、よくわかりません。
 某企業の担当者から聞いた話では、すでに学歴ロンダリングということが知られているので、採用人事では、応募者が学部レベルでどの大学に入ったかを見るもので、大学院レベルは重要視しないなどということでした。この本(およびこの雑誌記事)がいうように、今でも学歴ロンダリングが有効な会社もあるのだろうと思いますが、そればかりではないと思います。
 まあ、それはともかく、各大学の大学院も壊れつつあるようです。
 Part 4 は「「財務状況」ワーストランキング」です。全国537私大のランキングです。壮観です。ワースト10あたりは早々と退場を迫られるのではないかと思われます。

 それにしても、日本はずいぶん大学が多いと思います。18歳人口の半分が大学に進学する時代になりましたが、そんなにたくさんの人が大学に行って、いったいどうするのでしょうか。人口の半分が進学する時代では、大学レベルの教育は本当にその質を保てるのでしょうか。絶対に無理です。今の学生たちの親の世代がお金に余裕があるのでこんなことになっているのではないかと感じています。
 どう考えても、閉学すべき大学がたくさんあるように思います。(関係者の方々には厳しく響くと思いますが、……。)
http://dw.diamond.ne.jp/?banner_id=t1dia017

diamond-hyousi
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2010年09月16日

内藤忍、小松原宰明(2010.6)『投資信託は運用会社で選べ!』ユナイテッド・ブックス(阪急コミュニケーションズ)

 乙が読んだ本です。「主要運用会社31社の実績と評価2010年度版」という副題が付いています。
 この副題によれば、近いうちにデータを改めた○○年度版が出るようです。期待しています。
 本書は、今までにない投資信託の本です。タイトルが強烈な個性を物語っています。各社にアンケート調査をおこない、その他の資料とつきあわせて、それぞれの運用会社を評価しています。評価基準については、第3章でくわしく検討しており、納得できます。第4章では1社ずつ評価しており、ここが本書の中心です。
 いわれてみればなるほどと思いますが、なぜ類書がなかったのでしょうか。このあたり、各運用会社の情報のディスクロージングが不十分だったということを物語っていそうです。
 乙は、最近、投資信託をあまり活用していませんが(ETF が中心です)、さわかみファンドにはそれなりの金額を入れており、関心を持っています。それに、今は保有していなくても、過去に保有していた投資信託も多いので、他人事とは思えませんでした。購入したころ、こういう本を読んでいたら、判断も相当に違ったものになったことでしょう。
 ともあれ、投資信託の世界に新風を吹き込んだ企画に拍手したい気分です。
 あ、そうそう、18ページからの「個人投資家が犯す7つの間違い」も必見です。以前の乙のことが書いてあるような気がして、思わずにんまりしてしまいました。


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2010年09月10日

高橋洋一(2010.5)『日本の大問題が面白いほど解ける本』(光文社新書)光文社

 乙が読んだ本です。「シンプル・ロジカルに考える」という副題が付いています。
 本書のタイトルが中身を表しています。
 いろいろな問題について、高橋氏が「解答」を示すというスタイルで書かれています。
 各章のタイトルとページ数を示すと、以下のようになります。
 第1章「民主党の政策の大問題」120ページ
 第2章「社会保障制度の大問題」24ページ
 第3章「税の大問題」18ページ
 第4章「地方分権の大問題」10ページ
 全体は4章構成ですが、第1章がかなりを占めることがわかります。第2章以下も、今の民主党政権の考え方の問題点を示し、代案を提示するというスタイルで書かれています。つまり、民主党の政策の問題点を指摘することが記述の中心というわけです。
 もっとも、この記述のしかたが成功しているといえるのかどうかはわかりません。p.40 では「民主党には成長戦略がないけど大丈夫?」という問いがあるのですが、産業政策は一度も効いたためしがないということを2ページほど述べ、ほぼこれで終わっているようなものです。その後、ハローワークを国でやる必要はないという話になります。そして、自分自身で経験したハローワークの対応の問題点が4ページほど続くのですが、これは、この部分の問いに対する解答になっていません。自分のグチを語っているようなものです。
 乙がちょっと意外に思ったのは、為替について述べたところで、p.67 にはこうあります。
 多くの人にとってあまり関心が強くない中長期の為替の動きについては、かなりの程度説明することができます。長期の動きについては「購買力平価」という物価の面から、中期については「金利差」の面からこれを行うことができるのです。

 はっきり断定的に書いてあったことに驚きました。
 もっとも、中期と長期の違いといってもどのあたりでそれを区分していいるのか、両者の接続部分でどのようにすりあわせが行われるのか、よくわかりませんでした。
 いろいろな問題にズバリ解答が書かれていて、わかりやすかったと思います。

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2010年09月08日

田原総一朗、猪瀬直樹、財部誠一、花岡信昭(2010.6)『壊れゆく国』日経BP社

 乙が読んだ本です。「なぜ日本は三流国に堕ちたのか」という副題が付いています。
 本書は、nikkei BPnet の「時評コラム」に掲載された記事をもとに構成したものです。
 乙は田原氏のコラムは以前から定期的に読んでいました。あとの3人のは読んでいませんでした。
 本書を読んで驚いたことといえば、6月28日刊行のもので、2009 年の政権交代以降の話しか書いていないのに、9月段階でもう古くなっていると感じたことです。この1年の政治・経済の変化の大きさを感じさせます。
 にもかかわらず、本書で提言されていることは、今でも有効であるということです。民主党政権になってからほとんど何もやられてこなかったことがわかります。
 各章ごとのページ数を示すと、次のようになります。
 第1章「日本経済の国際的地位と課題」田原総一朗 8ページ
 第2章 対談「田原VS猪瀬」日本はどうしたら再生できるか 31ページ
 第3章「「政治とカネ」「普天間問題」に本音で切り込む」田原総一朗 56ページ
 第4章「黙ってはいられない、「高速道路問題」「地方分権」」猪瀬直樹 59ページ
 第5章「国際戦略につまずく日本企業を叱咤する」財部誠一 22ページ
 第6章「保守派が喝破する民主党政権の危うさ」花岡信昭 35ページ
 というわけで、かなりの部分は田原・猪瀬両氏の手によるものです。そういえば、表紙の著者名をよく見ると、4人が併記されながらも、田原・猪瀬両氏がやや大きな活字で印字されています。
 乙が一読した感じでも、田原・猪瀬両氏のところがおもしろく感じました。
 本書の内容は、上記の目次を見るとだいたいわかると思います。今問題になっている政治・経済のメインテーマに関して4人がそれぞれの立場で意見を述べているというものです。
 どの章も具体的に書かれていて、読みごたえがあります。とはいえ、田原総一朗氏のコラムは
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20080923/100463/
にありますし、猪瀬直樹氏のコラムは
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20080923/100453/
にありますから、それらを直接読めば無料で済んでしまうので、それでもいいのではないでしょうか。
 本書を読んでから、乙は猪瀬氏のコラムも定期的にチェックするようにしました。


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2010年09月01日

鈴木亘(2010.7)『社会保障の「不都合な真実」』日本経済新聞出版社

 乙が読んだ本です。「子育て・医療・年金を経済学で考える」という副題が付いています。
 鈴木亘氏といえば、「保育園問題をミネラルウォータにたとえると」
2010.8.28 http://otsu.seesaa.net/article/160795171.html
と同じ筆者です。期待できます。
 本書は、一読して、大変おもしろく思いました。
 1章のタイトルは、本のタイトルと同じです。本のタイトルをここから取ったということでしょう。
 日本の人口減少・少子高齢化という現状では、今まで通用していたビジネスモデルが通用しないわけですが、日本は、それまでの成功体験の故に、ビジネスモデルを変えることはきわめてむずかしいとしています。納得しながら読み進めることができました。
 2章「子ども手当は子どものためか」では、子ども手当の問題点を論じています。また、保育園の待機児問題を取り上げ(ミネラルウォータにはたとえていませんが)、両者を一括して解決する方策として、「子ども手当のバウチャー化」を提案しています。
 乙は、個人的には、p.54 以降で論じられる「病児・病後児保育は保険制度で」という提案が大変おもしろかったです。この問題は、保育園を利用しつつ働いている人にとっては実に大きな問題です。乙の場合も、子どもが小さかったころは、妻と仕事の調整をしながら、どちらかが休んだりして、がんばってきました。休みの日であるにもかかわらず、どうしても仕事の一部をしなければならなかったときは、子どもを勤務先に連れて行ったこともありました。短時間で済む仕事だったので、周りに甘えたかっこうです。そのような経験を通して、子どもを保育園に入れたとしても、子どもが病気をすると、とたんに大変になる現実を実体験として知りました。
 鈴木氏によれば、それが保険でカバーできるというのです。病気をしなくても、保険料を払い続けなければなりませんが、いざというときのことを考えれば、実際そういう保険があったら、保険料がかなり高くても、加入する人は多いでしょう。
 3章「社会保障は貧困を減らせるか」では、貧困対策と貧困ビジネスの問題を論じています。無料低額宿泊所に対しても、民主党のいうように直接規制では問題は解決せず、(むしろ問題を悪化させ)貧困者をさらにまどわせることになるとのことです。
 4章「年金は本当に大丈夫なのか」は、乙にとっても関心が高い年金の問題を扱っています。旧自公政権の「百年安心」年金は、全然安心できないこと、国民はその実態を理解していないことを解説しています。そして積立方式を提案しています。
 5章「介護難民はなくせるか」では、無届施設に押し寄せる「介護難民」の問題を論じています。介護労働力不足が一番の問題だと思いますが、低賃金労働では、改善はむずかしいでしょう。鈴木氏は、サービス価格の自由化と「混合介護」の導入を説いています。経済学から考えると、なるほどと思わせます。
 6章「医療を誰が支えるか」では、医師不足問題と後期高齢者医療制度の問題を取り上げています。ここでも積立方式が提案されています。
 7章「財政破綻は避けられるか」では、日本の社会保障費の膨張の問題を取り上げます。このままでいくと 2010 年代には財政危機となると予測しています。どうにも大変なことになりそうです。
 それぞれの章は違った話題を取り上げていますが、著者の鈴木氏は豊富なデータを基に、きちんとした一貫性を持って各問題を扱っています。読んでいて実に気持ちがよかったです。こういう人が政府の中心部に入り、首相に各種提言をするようなことにでもなれば、日本は大きく変われるのになあと思いました。
 現実の政治は、いろいろなドロドロがあるのでしょうが、それにしてもわかりにくいものになっています。政権交代して1年経ちましたが、日本の政治は変わっていないと思います。民主党政権になれば、政治がもっとドラスティックに変わるのかと思っていましたが、全然そんなことはありません。
 こういう本を読んで、溜飲を下げる思いです。
 日本の現状を憂える人に、日本に未来を考える人におすすめの1冊です。

参考記事:http://agora-web.jp/archives/1053712.html


ラベル:鈴木亘 社会保障
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2010年08月22日

浅川芳裕(2010.2)『日本は世界5位の農業大国』(講談社+α新書)講談社

 乙が読んだ本です。「大嘘だらけの食料自給率」という副題が付いています。
 一読して、驚きました。大変おもしろい本です。日本の農業のこれからを真剣に考えた書です。データも豊富で、グラフや数表などがちりばめられ、それに基づいた議論が展開されます。
 全体の主張は、「日本の農業は弱体化しているわけではない。」ということです。あたかも日本の農業は先行き真っ暗であるかのような見方が支配的ですが、これは農水省の見せかけ作戦にすぎないというわけです。
 第1章「農業大国日本の真実」は、タイトルに一番近いところです。食料自給率などという、日本以外では使われてもいない指標で日本の農業が不十分なままだと見せかける日本の政策を批判しています。
 まったく同感です。食料自給率なんて無意味です。そんなことをいうなら、食料以上にエネルギー自給率をどうするのか、考えておいたほうがいいです。石油なんて、日本の首根っこが完全に押さえられているわけですから、こういうところをそのままにしておいて、食料自給率だけをどうこうするという考え方自体がおかしいものです。
 乙は、むしろ、世界中のあらゆるところから食料を輸入するようにすることが、食糧難に関する一番の安全策であるように考えます。(イギリスがそのような考え方に立脚しているとのことです。)
 第2章「国民を不幸にする自給率向上政策」は、第1章の継続で、自給率を上げようとすること自体を批判しています。これまた説得力がある章です。乙が一番おもしろく思ったのは、p.66 で、自給率が低い小麦や大豆を作ることに対して「転作奨励金」が出るわけですが、これがかえって小麦の生産にマイナスになっているというのです。農家としては、小麦や大豆を作るだけで補助金の形で収入になるため、品質の向上には取り組まないというわけです。したがって、国産の小麦は品質が悪く、外国産のほうがはるかによいということになります。7兆円の転作奨励金によって、経営努力を放棄した農家を作り出し、品質のよくない在庫の山を築いただけだということになります。転作奨励金という補助金が農業をダメにしている一例です。
 第3章「すべては農水省の利益のために」では、農水省をめぐる闇の一部を赤裸々に描いています。役人の天下り先としてのおかしな団体も登場します。そんなところがボロ儲けをしているわけです。その分、消費者は高いものを買っていて、余計な金を負担しているわけです。第1章から第2章で述べてきた日本の負の側面の主人公がこうして暴かれます。
 第4章「こんなに強い日本農業」では、日本の農業が生産性を向上させてがんばっている姿が描かれます。
 第5章「こうすればもっと強くなる日本農業」では、農業の改善のために、具体的な政策が提言されます。これまたおもしろい発想です。
 第6章「本当の食料安全保障とは何か」では、日本の政治的な問題も含めて、浅川氏の考える食料安全保障の姿が描かれます。
 第6章まで読み進めてくると、著者の浅川氏が農業を中心としつつも広い視野を有していることがわかります。その視野を基準に第1章以下を書いてこられたわけです。具体論から始まって、だんだんズームアウトして世の中の農業関連を広く見渡していくという書き方は大いに成功していると思います。
 多くの方におすすめしたい良書だと思います。


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2010年08月12日

菅下清廣(2009.11)『世界のマネーは東へ動き出した!』フォレスト出版

 乙が読んだ本です。「国際金融のトップしか知らない! 2010-11年の世界経済シナリオ」という副題がついています。
 副題につられて読むことにしたのですが、一読した結果、この本は他の人におすすめできないと思いました。国際金融のトップたちがこの本に書いてあるようなことを考えているとは、とうてい思えません。
 あえていえば、過去数年間で乙が読んだ本の中でも最悪の部類に入るかもしれません。(失礼な言い方で恐縮です。)これは著者が悪いのではなく、こういう著者に話を持っていった(あるいは著者から持ち込まれた企画をきちんと評価することができなかった)出版社(の編集部)の問題でしょう。
 まずは全体に関わる問題点について述べましょう。
 第1に、参考文献が一つもあげられておらず、図表が1枚もありません。それどころか、西暦の暦年表示や日経平均株価、GDP 以外には、まったく数字が出てきません。著者が何に基づいて話を進めているのか、ぜんぜんわかりません。本書中にはさまざまな「予測」が出てきますが、それらは「勝手なたわごと」にすぎません。「勝手なたわごと」でないということを主張するためには、なぜそのようなことがいえるのか、その「根拠」が必要です。乙は、一般にそういうものが図表で示されることを好みますが、別にそれにこだわるつもりもありません。しかし、本書中の記述では、「何かに基づいて議論をすすめる」という態度がまったく見られません。著者紹介によれば、著者は立命館大学経済学部卒業とのことですが、乙は、まるで著者は卒業論文を書いたことがないかのように思えました。
 第2に、用語に関する著者の勘違いが目に付きます。一義的には著者の責任ですが、編集者がきちんと原稿を読んでいないという点で、編集者(および出版社)の責任も大きいと思います。
 たとえば、「大鑑巨砲主義」(正しくは「大艦巨砲主義」)があります。p.27, p.28, p.32, p.42, p.156 に現れます。5ヶ所に現れるということは、ミスプリではなく、本人の間違った思いこみです。
 さらには「マニュフェスト」(正しくは「マニフェスト」イタリア語 manifesto)があります。p.159 および p.168 に使われます。p.168 では、節の題名に使われ、したがって、目次にも現れています。
 ミスプリも当然あります。p.83 では、「1ドル50円〜60年を目指すようなドル安」がゴチックで現れます。こんなところのミスプリは目立ちます。
 さて、以下では、個々の問題点について述べましょう。
 p.2 の「まえがき」では、「本書では、【中略】「独自の人脈」「独自の情報網」「独自の分析」を活かした2010年から2011年にかけての経済シナリオを紹介していきます。単なる予測ではなく、「独自の人脈」「独自の情報網」「独自の分析」から得た確度の高いシナリオになります。」とあります。2回も同じ語句が繰り返され、そこがゴチックになって強調されています。
 「独自の人脈」はどういうものなのでしょうか。もしも、本当に著者独自の人脈があるなら、その当該人物の交際範囲はきわめて狭いものになるでしょう。さもないと「独自」の人脈ではなくなってしまいます。端的に言えば、当該人物は著者だけに接するような人です。でも、他の人といっさい接触しないような「重要人物」がいるでしょうか。そんな人が本当に「重要人物」でしょうか。
 逆に、さまざまな人と接する人がいれば、著者のいう「独自の人脈」ではなくなってしまいます。
 以上のことにより、「独自の人脈」ということ自体、矛盾を内包しているといえます。
 「独自の情報網」も「独自の人脈」と同じように矛盾する概念です。
 「独自の分析」はありえます。しかし本書中には「分析」といえるようなものは何一つ書かれていません。データが何もない場合に、何をどう分析できるのでしょうか。
 ところで、なぜ著者は本を書くことになるのでしょうか。「本当に確度が高い予測」ができる場合は、こんな本を書くのではなく、その予測を活かした大儲けをねらうべきで、その手段は、証券会社や投資銀行を渡り歩いた著者ならば熟知しているでしょう。そういうことをせずに、こんな本を書いているのはきわめて不合理です。
 p.4 では、こんな話が出てきます。2010年の初頭に言及して「もしかすると年初に大雪が降るかもしれません。逆に異常に暖かいお正月を迎えるかもしれません。年頭の天候異変は“大きな変化”の前ぶれになるというのが歴史の法則です。」ここでいう「大きな変化」は、政治的な、あるいは経済的な変化のことです。著者がまじめにこれを信じているならば、もうこの先を読む必要がないレベルの発言です。信じていないならば、こんな不用意なことを著書中に(たとえ「まえがき」であっても)書くべきではありません。
 pp.55-56 では、3年くらいを周期にして相場のサイクルがあるとし、以下のように述べます。「警戒ポイントのひとつめは、2010年の夏から秋にかけての時期です。【中略】2つめは、2011年の春です。【中略】私は、その時期に「2番底」がやってくる公算はきわめて高いと見ています。」第2章のタイトルは「2番底は必ず来る!」ですが、その根拠は相場のサイクルだけのようです。
 p.94 では算命学
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AE%97%E5%91%BD%E5%AD%A6
が出てきます。p.105, p.106, p.117, p.151 にも出てきますので、著者は本当に信じているようです。こういう本は珍しいものです。
 p.120 では、2010年にアジアG5、G7 のような動きが起こってくると予想しています。
 p.141 では、「民主党政権に対する国民の支持率は、向こう4年間、相当に高い状態がつづくのではないか」としています。本書が書かれたのは2009年の9月頃でしょうが、そのころの雰囲気ではさもありなんでしょうね。しかし、民主党政権支持率のその後の急激な変化は著者の予想を大きく超えるものでした。
 p.141 では、著者のいう楽観シナリオと悲観シナリオを比べて「私は、おそらく楽観シナリオに近い方向に進む、と予測しているのです。」と書いています。楽観シナリオでは、p.137 にあるように「2020年までに在日米軍が撤退する」のだそうです。乙は、これはないと予想します。
 p.168 以降では、鳩山首相の「2020年までにCO2を25%削減」という宣言を高く評価し、日本が大きく変わるだろうと述べています。乙は、それはないだろうと予想します。そもそもCO2削減案の世界的合意が無理である上に、もしも合意ができたとしても、日本の 25% 削減も非常に困難で、排出権取引という形で日本は外国に金を配るだけになるだろうと予想します。
 他にもいろいろとメモを取ったのですが、長くなるので、このあたりでやめておきます。ここまでに示した部分だけでも本書の内容が類推できるのではないでしょうか。
 この本を読んで、自分の時間を損したとは思いません。
 反面教師も存在意義はあるものです。
 本書のどこが問題かを考えることは、自分の考え方を形作っていく上で意義のあるものと思います。
 本書は 2009年11月の刊行ですが、2010年夏の時点で、もう賞味期限が切れてしまいました。もともとその程度の本でしかなかったということです。


ラベル:菅下清廣
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2010年08月01日

辛坊正記・辛坊治郎(2010.4)『日本経済の真実』幻冬舎

 乙が読んだ本です。「ある日、この国は破産します」という副題がついています。
 乙がおもしろいと思ったところがいくつかあります。
 まず、pp.145-146 です。日本の国債がどうなっているかを友達に金を貸した場合で説明しています。
 友達があなたから100万円借金をしていて、あなたに90万円くれたとします。友達が再度100万円借りるとすると、あなたは手元の10万円と友達からもらった90万円で100万円を貸すことができます。
 これを繰り返すことで、たとえば、190万円のお金があれば、1000万円を貸し付けることができるというわけです。これが日本の国債だというわけです。ここからの結論は、p.146 に書いてあります。「見かけ上の国民の貯蓄額と、国の借金の残高だけから単純に破綻の時期は推定できない」ということです。乙は、なるほどと思いました。どんどん国債を発行せよ(そうしても日本は破綻しない)という主張がありますが、乙はそれは間違っていると思います。なぜ間違っていると思うかをきちんと説明することはむずかしいのですが、ここでの比喩でなかりわかるような気がしました。
 本書は、第5章「日本を滅ぼす5つの「悪の呪文」」が一番おもしろいと思いました。こんなことを言っているとダメだという例です。

・経済の豊かさより心の豊かさが大切
 ブータン流ではダメだと喝破しています。
・大企業優遇はやめろ!
 大企業こそ優遇せよと主張しています。
・金持ち優遇は不公正だ!
 子ども手当の所得制限などはおかしな話だと切って捨てています。
・外資に日本が乗っ取られる
 外資が日本に投資してくれるのだから、ありがたい話だと説きます。
・金をばらまけば、景気がよくなる
 新しいサービスや産業を産み出していかなければならないとしています。

 これらの5つの呪文はいろいろなところで聞こえてくる言説です。そうではないのだときちんと述べているところはわかりやすく、すっきりした気分になれます。
 おまけに、「おわりに」の中ですが、p.214 で、経営は前例、他社、当局を見ていれば簡単にできるとしています。単純ですが、日本的経営の本質をついているように思いました。今後はそんな簡単な話ではなさそうですが、今まではそんなことも多かったように思います。
 すっきりした気分になれる本です。


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2010年07月23日

海老原嗣生(2009.5)『雇用の常識「本当に見えるウソ」』プレジデント社

 乙が読んだ本です。
 タイトルが内容を物語っています。
 今の日本の雇用情勢に関して、さまざまなウソがはびこっているということで、データで反論しています。
 たとえば、終身雇用は崩壊したといわれていますが、そんなことはなく、崩壊していないということです。
 転職が一般化したともいわれていますが、ちっとも一般化していないとのことです。
 派遣社員の増加は正社員のリプレイスが主因ではないとか、正社員は減っていないとか、けっこう目からウロコの主張が並びます。しかも、データで裏付けられていますから、一般に流布している俗説の方が間違いであると思われます。
 p.119 では、正社員が非正規社員になったわけではなく、かつて零細商工の従業員だった人が非正規なったと書いてあります。単なる統計を見るのでなく、その裏側を解明していると思います。
 p.167 では、日本の雇用に関して、正社員のクビを切れないから、クビを切らなくて済むしくみを作ったとあり、現在のしくみをひとことでまとめています。これは、はたと膝を打つ感覚でした。
 また、p.196 では、為替レートと関連付けて日本の人件費を論じていますが、まさに為替レートの大きな変動が日本のあり方を変えたのだということがわかります。日本はいまさら円安の世界には戻れないでしょう。だとすれば、今後どうするべきかも自ずと方向性がはっきりしてくると思われます。

 本書は、全体としておもしろい本だと思いますが、本書中の決定的な間違いが気になりました。
 第1は、p.125 の図表12−1で「各国の失業率推移」を示していますが、縦軸が%で示されているのですが、軒並み数十%になっています。ここは軸の目盛りが違っています。
 第2に、p.137 ですが、「調査労働者(年)」という欄があります。数値は、6桁くらいのものがずらりと並んでいます。「年」が単位であるはずがありません。また、勤続年数(年)のところも、2桁から4桁くらいの数値が並んでいます。こちらも「年」が単位であるはずがありません。

 データに基づいて論じていく本であるだけに、図表の間違いは致命的です。
 とはいえ、全体の主張は納得できるように思います。テレビやマスコミに登場するお手軽コメンテーターは、海老原氏の態度を見習うべきでしょう。


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2010年07月12日

竹中平蔵(2009.11)『「改革」はどこへ行った?』東洋経済新報社

 乙が読んだ本です。「民主党政権にチャンスはあるか」という副題がついています。
 一読して、竹中流の考え方に染まるような心地よさを感じました。日本が直面するさまざまな経済上の問題について明確に論じます。単なる評論家とは違った、かつて政権中枢にいた人のことばだけに、具体性があると思いました。
 第1章「逆戻りした日本――小泉語の日本経済――」では、今の日本経済について、ひとことでいえば「改革を止めたからダメになった」という見方を展開しています。乙は、かなり納得しながら読みました。
 第2章「ずさんな政策論議――「100年に一度」という言い訳――」では、今、あちこちから聞こえてくる政策論議を切り捨てます。「植物学者が優れた庭師になれる保証はない」ということで、政策を担当する人と、評論家を峻別しています。
 p.89 では、「政策論に関しては民間には知恵がほとんどありません。」と述べています。乙としては、これはちょっといただけなかったですねえ。竹中氏のおごりではないでしょうか。竹中氏が大臣や参議院議員として政治に関わるようになる前は「民間人」だったのではないでしょうか。そのころの竹中氏には知恵がなかったのでしょうか。
 第3章「誰が日本の前進を止めたのか」が(乙としては)一番おもしろいところでした。日本のさまざまな「抵抗勢力」について述べています。
 p.110 では、官僚が経済財政諮問会議を利用して主導権を取ろうとしていることを批判しています。役人の書いたペーパーが経済財政諮問会議に出てくるようになってくると、そこに総理大臣がいることで、いわば総理大臣も認めたということになってしまうと述べています。なるほど、官僚の狡猾なやり方がわかる書き方です。
 p.138 からは、「増殖するワイドショー・ポリティクス」という題で、竹中氏はテレビのワイドショーなどを批判しています。野球の評論家は元プロ野球選手であり、そのようなプロだからこそ語れることがあるのに、政策の評論をしている人はみんなアマチュアであり、議論のレベルが低いとしています。確かにそうかもしれません。しかし、乙はちょっと違う感想を持ちました。今の政治のしくみを考えれば、国民が選挙で議員を選ぶようになっており、いわば一番アマチュアらしい人が一番強い実権を握っているともいえるわけです。つまり、プロはプロとして存在理由はあるけれども、そういうプロを選ぶのがアマである以上、アマにわかりやすい話をしなければならないと思うのです。「プロでなければわからない」ということをいっていると、正しい民主主義は根付かないでしょう。手間がかかっても、国民に懇切丁寧に説明し、納得してもらえるようにしなければなりません。これを省くと、「俺についてこい」的な、言い換えると独裁的な政治家が登場するでしょう。乙は、こちらのほうがきらいです。手間がかかっても、みんなで議論していきたいと思います。
 第4章「それでも日本経済は強くできる――再生への四つの提言――」では、実際には五つの提案をしています。法人税減税、ハブ空港・オープンスカイ、東京大学民営化、農地法の改正、インフレ目標の導入です。だいぶ意外な気がします。論拠など詳しくは本書を読んでいただきたいと思います。本書を読むともっともな話に聞こえますが、後から考えてみると、この五つというのは、ずいぶん独創的な話のように思えてきました。日本経済を強くするために、この5点が挙げられるのですからねえ。
 とにかく、行うべきことがたくさんあるというのはその通りです。
 第5章「民主党政権にチャンスはあるか」は、今回の参議院選挙の結果からもうかがえるでしょう。
 全体としておもしろく読めました。


ラベル:竹中平蔵 改革
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2010年07月08日

若林亜紀(2008.3)『公務員の異常な世界』(幻冬舎新書)幻冬舎

 乙が読んだ本です。「給料・手当・官舎・休暇」という副題が付いています。
 本書の内容をひとことでいえば、「公務員はこんなに優遇されている」ということを縷々述べたものです。
 著者自身の経験と、いろいろな新聞記事などから事実を集めていますので、書いてある内容はウソではないのでしょう。しかし、ここに書かれていることがどのくらい多いのか、それはわかりません。事件性のあるものを取り上げて面白おかしく書いているように思います。
 乙も、ずっと公務員(国家公務員→地方公務員)だったので、自分の周辺を見渡して感じましたが、確かに、一部に暇な人がいる(いた)のは事実です。しかし、多くの人はまじめに勤務しており、ごく一部の人を取り上げてルポ風に描いても、それでは全体を見たことにはならないと思います。
 そんなに公務員が楽で給料をたくさんもらうならば、学生の新卒者などでもっともっと公務員人気が上がりそうなものです。現実はさほどでもなく、適当なところで折り合っています。ということは、本書では触れていない「公務員のマイナス面」もあるのではないでしょうか。
 たとえば、公務員宿舎ですが、本書中(p.122 以降)では便利なところに格安家賃で住めると書いてあります。しかし、乙自身の経験(ずいぶん前ですが)では、結婚後、公務員住宅に申し込もうとしても、遠くて狭くて不便なものしかなかったと記憶しています。乙のいたセクションは、手持ちの公務員宿舎があまりなかったのかもしれませんが。
 というわけで、例外的なものだけを書いても説得力はないと思います。全体的なところ、平均的なところを書かなければなりません。しかし、それでは、記述内容が平凡になり、おもしろい本は書けないでしょう。そう、公務員の実態は「平凡」なのです。大多数はそれに収まっているように思います。
 本書は、例外的なできごとをもっともらしく書いているだけのように思えました。

 著者の若林亜紀氏は1965年生まれということですから、本書刊行時で43歳です。この年齢では、社会的な経験もいろいろお持ちでしょうから、本書のようなものを書く場合、「では、今後どうしたらいいのか、どうすればそれが可能になるのか」を書いてほしかったと思います。たとえば、年度末を目指して予算を使い切る話は公務員の場合は広く行われていますが、もしも、これをなくそうとする場合、どうしたらいいでしょうか。現状では、一つのセクション(サイズは何でもいいですが)だけが「予算を余らせる」ことはできないと思われます。そんなことをしたら、他のセクションから「あそこは予算を余らせた、つまり、当初予算が多すぎたのだ。だから次年度から予算を減らすべきだ」という声が上がるでしょう。どうしたらこういう声が上がらずに、公平に予算を使っていくことができるかが問題です。「翌年度繰越」も、同様の意味でむずかしいものだと思います。
 「予算を使い残したら、翌年度給与アップ」などという奥の手も、よく考えてみると、うまく運営していけるのか、大いに疑問です。これらはあくまで一例ですが、若林氏なら、この問題にどういう回答を出すのでしょうか。
 本書には、こういう視点が欠けており、乙としてはかなり不満に感じました。
 乙が気になった記述に、次のようなものがあります。p.213 です。
 厚生労働省の調査によれば、05年、メンタルヘルス上の理由で休業した労働者がいる企業は、3.3パーセントにすぎませんでした。ただし、従業員100人以上の企業では16パーセント、500人以上で66パーセント、1000人以上では82パーセントと、大企業ほど率が高くなっています。大企業ほどストレスが溜まるというより、大企業ほど制度が整って交代要員もあり、休業しやすいのだと思われます。

 若林氏は、何の疑いもなく上のように述べています。しかし、従業員数が多くなれば、その中にメンタルヘルス上の問題点のある従業員がいる確率は高くなるに決まっています。
 たとえば、従業員100人の企業の16%が休業者ありだとしましょうか。すると、従業員500人の企業では、従業員100人の企業が5倍集まったものと同じことになりますから、休業者がいる確率は 1-0.84**5=0.582 となります。約58%になるわけです。従業員1000人の企業では、同様の計算をすると、1-0.84**10=0.825 で、約82%です。厚生労働省の調査は従業員数を適宜区分して調査していますから、そんなに簡単な話ではありませんが、少なくとも、一定の比率で休業者がいるならば、大企業ほど「休業者が一人でもいる確率」は高くなるものです。
 こんな簡単な計算をせずに(誤解して)記述しているようでは、本書全体が信頼性を失うように感じられます。


ラベル:若林亜紀 公務員
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2010年07月05日

九鬼太郎(2009.8)『“超”格差社会・韓国』(扶桑社新書)扶桑社

 乙が読んだ本です。「あの国で今、何が起きているのか」という副題がついています。
 韓国の現状を描きます。著者の九鬼氏は韓国在住の日本人起業家だそうで、韓国語に堪能だということですから、韓国の現状を余すところなく記述できるのでしょう。
 第1章「迷走する教育熱と受験戦争」では、韓国の過熱した受験戦争を描きます。高校の卒業生の84%が大学に進学するというのですから、すごいものです。そして、親を巻き込んで大変な戦争が起こっています。塾に通うために、有名塾の近隣のマンションを買って引っ越す(そして受験が終われば売って引っ越す)などと聞くと、「何もそこまでしなくても....」と思ってしまいます。子供たちの塾も、日本では考えられないくらいの長時間教育をしていて、これでは韓国の子供たちがかわいそうに思えます。まあ長時間だから深夜に子供たちが町を歩くことになり、だから塾の近くにマンションを買う必要がある訳なのですが。
 海外留学も、大学からというわけではありません。小学校からの留学も普通のことだとのことです。
 一方で、大学では休学者が続出しているとのことですし、大学の新卒者の正規雇用者が2割しかいないという就職難です。韓国はどちらを向いて走っていくのでしょうか。
 第2章は「壮絶な企業サバイバル」で、韓国企業の特徴を描いています。一言でいうと、オーナーがきわめて強いということです。どんどん従業員をクビにします。鶴の一声で会社を動かします。スピード経営といえばかっこいいですが、そういうワンマンは、反面で失敗のリスクを抱えているともいえます。非正規職者の比率が日本の2倍もあるとのことです。こういうことで会社の経営はうまく行くものなのでしょうか。長期的に見て、どうなんでしょうか。日本も今後はこういう方向に向かうのでしょうか。
 第3章は「ネット先進国の光と陰」です。日本よりも広まっている韓国のネット事情ですが、一方では、ネットで広まったデマで女優が自殺したり、ネット発信のデモや不買運動が起こると聞くと、何か、良識に欠けるように思えてなりません。韓国人は熱しやすくさめやすいのでしょうか。
 第4章は「人口構成急変の歪み」です。日本以上の少子高齢化が進行中です。農村でもさまざまな問題がありますが、国際結婚が半分もあると聞くと、大量人身売買のように思えてきます。韓国のあり方に韓国人自身がNOといっているように思えます。
 第5章は「分裂する韓国社会」です。韓国の中の対立を描きます。特に問題になるのが地域対立です。全羅道と慶尚道の対立などは特に根深いものがありそうです。このようなことでは、国としての統一性にも疑問が出てくるでしょう。
 本書は、このような五つの観点から韓国の現状を描き出します。
 韓国は、サムスンなど、すばらしい勢いで成長している企業があるわけですが、その内実を知ってみると、いろいろな問題を抱えていることがわかってきます。投資先の国としてみた場合、必ずしも全面的に明るいわけではないようです。
 本書は、韓国人もあまり語りたがらないようなところを描いており、韓国に関わる人にはおすすめの本です。
参考記事:
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/1706

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2010年06月27日

水木楊(2004.1)『人生後半戦のポートフォリオ』(文春新書)文藝春秋

 乙が読んだ本です。「「時間貧乏」からの脱出」という副題が付いています。
 大変変わった本でした。時間をお金に換算したり、お金を時間に換算したりして、時間とお金をトータルに考えようという趣旨の本です。
 特に、自分時間(自分の判断で自由に使える時間)を中心に記述します。自分時間が多い人は、幸せな人なのかもしれません。
 表題に「人生後半戦」が出てきます。若い人ではなく、中高年が読者対象というわけです。今まで、会社にしばられてきた人、自分の時間がなくて困っている人には大いに有益なサジェスチョンが得られるでしょう。
 自分はどんな人生を歩んでいくのか。どういう人生が実際望ましいのか。そんなことを考えさせる本でした。
 pp.143-144 では、著者の新聞記者時代のことを振り返って、40代半ば以降の「迷い」について書かれています。いっそのこと、これを「まえがき」に持って行くと、本書のねらいがずばり読者に伝わるように思いました。
 p.150 では、西所沢の 3,500 万円のマンションの話が出てきます。このレベルのマンションを賃貸で借りると、家賃は月10万だそうです。こんなのは比べるまでもなく、賃貸の方がお得に決まっています。10万の家賃では、年間120万円です。単純な利回りを計算すると 3.4% にあたります。この程度では利回りとして低いと感じます。家賃が安いか、買う場合のマンション価格が高いか、どちらかです。本書の中心的な流れとは別ですが、乙はこの部分にかなり引っかかりを感じました。

参考:
http://norafp.seesaa.net/article/151715826.html


ラベル:水木楊
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2010年06月23日

国際通貨研究所・竹中正治編(2009.9)『これから10年 外国為替はこう動く』PHP研究所

 乙が読んだ本です。
 タイトルを見て、最初は為替の高低を予測する本かなと思いました。あまり期待しないで読み始めたのですが、内容はまじめなものでした。
 以下の6章構成です。

第1章 外為相場の長期法則が予想していた円高への揺れ戻し
第2章 「米ドルが凋落する」というのは本当か?
第3章 ユーロはドルに代わる基軸通貨に台頭するのか?
第4章 高金利通貨相場は回復するか?
第5章 中国の台頭と人民元の将来
第6章 オイルマネーは「ドル離れ」をおこすのか?

 その中で、読むべきは、第1章と第4章でしょう。
 要するに、高金利通貨は長期的に下落するので、それに投資したからといって儲かるわけではない(外国通貨安=円高になる)という話です。豊富なデータを示しながら、丁寧に説明されます。納得できます。この点が第1章と第4章で詳述されるので、本書をざっと読むにはここだけ読めばいいということになります。
 もっとも、為替レートの行き過ぎはよくある話なので、うまくがんばれば、それを利用して大儲けも可能かもしれません。しかし、普通の個人投資家では、それは無理というものです。FXで儲ける人がいるのも事実ですが、損失を出す人もきっと多いことでしょう。乙もその一人でした。
 第2章、第3章、第5章は個別の通貨に関する話です。それぞれ興味深いですが、あまり新鮮味はありません。手堅い記述といったところでしょうか。

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2010年06月22日

藤巻健史(2010.3)『日本破綻』講談社

 乙が読んだ本です。「「株・債券・円」のトリプル安が襲う」という副題が付いています。
 メインタイトルとサブタイトルだけを見ると、日本破綻警告論を開陳する本のようで、伝説のトレーダー藤巻健史氏も、とうとうこういう本を書くようになったかなどと思ってしまいました。
 しかし、読んでみると、内容は全然違っていました。これからの日本経済のあり方を論じる書であり、安易な破綻本とはまるで違っています。最後に、日本破綻を避けるための提言まで書いてあり、乙は納得しながら読み進めることができました。
 1章は「「計画経済国家・日本」の終焉」というもので、ここが本書の中心です。
 今後、バブル崩壊を上回る「市場の反乱」が起こり、トリプル安が起こるだろうと予測しています。
 p.67 では、国債の金利が上昇すると金融機関は長期国債を売るという話です。一見すると、反対ではないか(これから金利が上昇するのだから、国債を買った方が儲かる)と思えるのですが、そうではなくて、金利上昇時に固定金利型の資産をたくさん保有していてはいけない(大きな損失をこうむる可能性が高い)ということで売りに回るのだそうです。この結果、国債が売られ、安くなり、つまりは国債の金利がさらに上がることになります。こうして金利の急な上昇(国債の大暴落)が起こることになるわけです。
 p.72 では、日本国債は外国人が売りに回るという話です。日本の国債は外国人の保有の割合が低いから外国人の売りは心配無用という人がいますが、それは間違いだというわけです。なぜならば、今は各種デリバティブが発達しており、現物なんて持っていなくても「売り」は十分可能だからです。ヘッジファンドなどは、日本の国債を虎視眈々とねらっているというわけです。
 pp.74-75 では、日本の国債の格付けが下がると、国債が売られるという話が出てきます。今は、世界中に債券のインデックス投資をしている機関投資家(年金基金など)があります。これらは、インデックス投資ですから、多く発行している国の債券を多く保有するように運用しています。しかし、ここで日本国債の格付けが下がると、世界の年金基金が今までのように買ってくるとは限らない、むしろ売りに回るのではないかというわけです。確かに、そういうシナリオも考えられます。
 というわけで、1章を読むと、日本が財政危機の瀬戸際に立たされていることがわかります。
 2章「グローバル化と、低迷する日本」は日本経済の低迷ぶりをグローバル化の遅れで解釈しています。もっともな議論です。
 3章「拡大なくして何の分配ありや?」では、平等に貧しい国でいいのかと疑問を投げかけ、経済成長を主張しています。郵政民営化見直し問題やJAL問題も、そのような観点から論じられています。
 4章「拡大のための「円安政策」」は、文字通り、日本は円安方向に誘導するべきだという話です。具体的にどうすればいいかまで書いてあり、まったく同感です。
 5章「拡大のための「長期戦略」」は、日本のあり方を論じる章です。資本主義の本質が語られます。
 6章「市場主義の徹底」は5章の延長で、日本をよくするための処方箋を詳しく語ります。
 p.214 では、サブプライムローン問題について、証券化商品の価格が高く評価されてしまったことが原因であるとしています。こういう見方は新鮮でした。

 本書は、大変おもしろい本であり、おすすめできます。日本の将来を憂えるかたは目を通しておくといいと思います。

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2010年06月14日

内藤忍(2009.11)『60歳までに1億円つくる術』(幻冬舎新書)幻冬舎

 乙が読んだ本です。
 今まで内藤氏の本は何冊か読んでみましたが、
2009.2.23 内藤忍(2008.6)『【新版】内藤忍の資産設計塾』自由国民社
http://otsu.seesaa.net/article/114669428.html
2007.8.2 内藤忍(2007.6)『内藤忍の資産設計塾 外貨投資編』自由国民社
http://otsu.seesaa.net/article/50008345.html
2006.9.22 内藤忍(2006.7)『内藤忍の人生を豊かにするお金のルール』アスペクト
http://otsu.seesaa.net/article/24191596.html
2006.4.19 内藤忍(2005.1)『内藤忍の資産設計塾』自由国民社
http://otsu.seesaa.net/article/16754281.html
いつも勉強になったので、今回も期待して読みました。
 しかし、今回は、残念ながら、期待に添うものではありませんでした。
 お金を増やす原則として、収入を増やす、支出を減らす、お金を増やす(投資する)の三つの側面から論じていきます。とはいえ、それぞれの議論は、どこかで読んだこと、聞いたことの繰り返しのように感じました。
 新書だからしかたがないのかもしれませんが、記述が通り一遍のように感じたということです。
 この手の本を読んだことのない人にはおもしろく思えるところもあるのでしょうが、他の本をいろいろ読んできた人間には物足りなく感じます。間違いは書いていないのですが、新しさに欠けるといえばいいでしょうか。

 巻末に、60歳までに1億円を貯めるシミュレーションが書いてあり、現在何歳で、資産がいくらある状態で、今後の利回りを何%と考えるかで、毎月の積立額が明示してあります。確かに、これによれば、60歳で1億円が貯まるということは言えます。しかし、こんなことでいいのでしょうか。
 たとえば、30歳で金融資産100万円の人の場合、1%の利回りで運用すると考えると、毎月積立額は24万円だそうです。そりゃ計算上はそうなるでしょう。しかし、そんな……(絶句)。毎月24万円が積み立てられるような人なら、30歳で金融資産100万円なんてことはないでしょう。毎月の積立額を基準にしたら、たった4ヵ月分で96万円で、四捨五入すれば100万円です。何だか、ずいぶんと非現実的な話のように思えてきました。


ラベル:内藤忍
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2010年06月07日

高橋洋一、竹内薫(2009.12)『鳩山由紀夫の政治を科学する』インフォレスト

 乙が読んだ本です。「帰ってきたバカヤロー経済学」という副題が付いています。
 高橋氏が先生役で、竹内氏が生徒役で、話が進んでいきます。全体にとてもわかりやすい本です。
 ただし、タイトルに「科学する」とうたっているのは誇大広告で、どちらかというと、高橋氏が自分の見方・考え方を開陳する面が強く出ています。
 鳩山内閣の考え方を見事に描いています。基本的に、いくつかの原則でもって全部の政策が読み解けると主張しています。中にはやや強引と感じるところもありますが、そういう解釈でものを見ていくと民主党のやり方がきれいに見えてくるという点は否めません。
 p.73 擁護する省庁は、財務省と経産省だけだといいます。一方、叩く省庁は、国交省、農水省、厚労省、文科省とのことです。単純なようですが、けっこうこんな見方で民主党の行動が説明できてしまうあたりはおもしろいと思いました。
 p.91 では、子ども手当についての解釈です。一部引用します。
 教育関係の補助金が文科省にそのまま入っちゃうと天下り団体に使われちゃうし、族議員も喜んじゃう。だから、直接、家庭に振り込んじゃえ、と。そうすれば天下り団体にも使われないし、文科省の力も弱くなるでしょ。文科省と対立している日教組にしてみれば、これは願ったり叶ったりだよね。

 というわけで、複雑な議論の末に誕生した子ども手当ですが、民主党の支持母体の日教組を持ち上げ、文科省を叩くためだという解釈で、それなりに納得できてしまうあたりが驚きです。いや、実際のところ、こういう解釈でいいかどうか、乙はよくわかりません。しかし、国会などで行われる外向けの議論だけを聞いていても、今ひとつ、子ども手当の性格があいまいだし、何か、奥歯に物がはさまっているような感じでしたが、こういうふうにものの見方を示されると、不思議とモヤモヤが晴れる気分です。
 p.119 のムダの定義なども、あっと驚くような切り口でした。自民党支持者のトクになるような政策は「ムダ」だということです。
 ともあれ、本書は、正しいかどうかはさておき、スパッとした切り口を楽しむ本だと思います。
 鳩山さんが総理大臣を辞任してしまって、もうこの本の賞味期限が来てしまったようです。もっと長く読まれるはずだったのに、こうなるとは、……。

 なお、本文のところどころにコラムが出てくるのですが、これは成功しているとは思えません。本書の記述の流れ、つまりは読者の頭の中にできあがる流れがそこで断ち切られてしまいます。


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2010年05月23日

大前研一(2009.11)『衝撃!EUパワー』朝日新聞出版

 乙が読んだ本です。「世界最大「超国家」の誕生」という副題が付いています。
 半年前の本ですが、ギリシャの危機のことがまったく触れられていないので、果たして、今の世界に当てはまるのか、問題を感じました。
 これは、いうまでもなく、著者の大前氏の問題ではなく、ギリシャの経済状況の隠蔽工作が問題なのですが、とはいえ、本書の読後感として、後味の悪さを感じてしまいました。
 大前氏は、ヨーロッパが EU として一体化することで、巨大な「国家」が成立することになるのだとしています。そして、それがどんなことに影響を与えるのか、さまざまな面を取り上げて順次述べていきます。世界情勢に明るい大前氏ならではの記述で、全体としてはおもしろいと思いました。
 本書中の指摘で乙がおもしろいと思ったことをいくつか書いておきましょう。
 p.32 あたりでは、小国を EU に加盟させるメリットについて述べています。もちろん、加盟する側は、補助金がもらえて、ユーロが使えて、大国の後ろ盾があるのと同じことですから、メリットがあるのは当然です。むしろ、すでに加盟している大国(ドイツやフランス)にもメリットがあるという指摘がおもしろい点です。経済発展途上の国々を EU に加盟させることで、EU 企業は中国と同程度のコストでヨーロッパ内で工業生産できるということです。さすがに、外交関連は、したたかにいろいろと考えてあるものですね。確かに既存の EU 諸国にとってメリットがなければ、申請があっても新しく加盟を認める必要はないわけですから、当然といえば当然の論理です。
 p.58 あたりでは、EU に加盟することがコソボを初めとする各種紛争解決の切り札になると述べています。こういう斬新な発想がおもしろいところです。すごいメリットがあるものですね。
 p.98 では、ユーロとドルが合体する(ユーロがドルを飲み込む)話を書いています。こうなると、他の通貨は決済には不要となりそうだとのことです。それはそうでしょう。しかし、こういう世界の巨大通貨が誕生するかどうかは不透明です。
 p.230 あたりでは、ロシアの天然ガスと石油を EU 諸国が輸入している話が出てきます。EU は、サウジアラビアではなくて、むしろロシアに依存していたのですね。気がつきませんでした。

 さて、ギリシャの経済危機の話です。これはユーロという通貨に対しても大きな影響を与えました。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/3468
のようにユーロは前提が崩れたとする意見もあるくらいです。
 では、この問題に対して、大前氏は今どう考えているのでしょうか。
http://www.ohmae.ac.jp/ex/kabu/magmail/index146.html
では、ギリシャ危機はEU全体の危機になったとしています。
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20100517/226255/
では、ギリシャの財政破綻の原因が前政権のバラマキ政策にあったとして、むしろ日本が危ないとしています。
 こういう言説を読むと、大前氏は現在の EU に対して、必ずしも明るい未来を考えているわけではないようです。
 本書を読んでいると、「EU はすごいなあ」的な感想を持つのですが、それがたった半年で大きく変わってしまいました。「EU はこれからどうなるのか、心配だ」という、いわば正反対の見方です。
 EU の持つさまざまな利点が、ギリシャの経済危機というたった一つの事件ですべてひっくり返ってしまうのでしょうか。
 乙は、本を書くことのむずかしさを感じてしまいました。


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2010年05月16日

城繁幸(2010.1)『7割は課長にさえなれません』(PHP新書)PHP研究所

 乙が読んだ本です。副題として「終身雇用の幻想」が付いています。
 架空の町の一企業に勤めるさまざまな人の考え方を通して、今の日本の「普通の人」が持っている雇用関係の感覚を例示しています。
 著者のいうとおり、終身雇用は限界であろうと思います。しかし、ではどうするかというと、そこがなかなかの難問です。本書のエピローグなどで、雇用問題を解決した明るい日本が登場しますが、本当にそんなふうに解決できるのでしょうか。乙は、むしろ、問題解決ができないままに日本には暗い将来がやってくるように思えます。それくらいに人間は保守的であり、自分の周り(環境)を変えたくないと思うものだということです。
 本書の主張は明解だし、書いてあることも身につまされるような話で、大変わかりやすいと思います。
 でも、最後のほうの解決策を読むと、「こんなふうに問題が解決できるなら、苦労はいらないよなあ」と思ってしまいます。それくらい、雇用問題の解決はむずかしいということです。
 何といっても、特権階級はそのような特権を手放したくないと思うものです。自らがそれを捨て去るなんてありえません。ということで、乙は、日本の将来は今と何も変わらない(したがって暗い)と予想するわけです。
 言い換えると、そのまま次第に没落していく日本といったところでしょうか。
 多くの人が「それではいけない」と思うようになって、はじめて、次の時代を切り開く(場合によっては「革命」などの手段を用いる)ことが可能になると思います。日本がそこまで踏み切れるかどうか。さて、本当にどうなんでしょうかね。
 本書は、雇用問題を中心に、日本の将来を考える本です。新書なので気軽に読めます。


ラベル:城繁幸 終身雇用
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2010年05月14日

松谷明彦(2004.5)『「人口減少経済」の新しい公式』日本経済新聞社

 乙が読んだ本です。「「縮む世界」の発想とシステム」という副題がついています。
 タイトルとサブタイトルで本書の中身が想像できます。そして、その通りです。著者の松谷氏は大学教授(ただしその前は大蔵官僚)というだけあって、各種データに基づいて議論を展開していきますので、説得力があります。
 日本の少子高齢化は、すでに多くの人が知っていることだと思います。それが、今後の日本のあり方にどのような影響を与えるか、我々はどうするべきかを説いた本です。なお、著者は「少子化」ということばを使わないようにしています。
 乙が読んで興味深く思ったところを中心に、内容の一部をかいつまんで紹介しましょう。
 p.21 では、外国人労働者を活用することは、後世代に負担を移転することであり、人口減少問題に対する解決策にならないことが説かれます。もちろん、今から出生率を上げて、子供をたくさん作ったとしても(そのように誘導すること自体が困難ですが)、かえって、非生産人口を増やすだけで、そういう子供たちが生産年齢に達して働き出すまでに二十数年かかるので、今さら日本経済の縮小を押しとどめることはできません。
 というわけで、日本人はそのような「人口減少経済」を受け入れるしかなく、自ら考え方を変え、生活のしかたを変えていかなければなりません。企業も目指すべき方向を変える必要があります。「売り上げを伸ばす」が目標ではなくなるのです。
 p.12 日本は人口の「谷」(産児制限によって人口が少なくなったこと)が高度成長をもたらしたと説明します。ところが、今後は人口の「谷」が経済成長率を押し下げるというのです。こんな簡単な原理で日本経済が動いていたとは驚きです。経済は人口で決まる部分が大きいのですね。
 p.104 で、人口減少高齢化の影響を強く受けるのは、大都市圏だという話です。これまた興味深いものでした。つい、今までの延長で、地方から若い人が都会に出て行く傾向だけを考えてしまいがちですが、年齢別人口構成を考えると、そうではないのですね。
 p.173 豊かな社会をどう作るのかを論じているところですが、賃金が低く長時間働くのが日本だということで、これを改善し、人々が自由に時間を使えるようにすることで、豊かな社会を目指すべきだとしています。これからは、金よりも時間という考え方です。
 p.190 では、終身雇用制がなくなれば、「働かない自由」が得られ、それが新しい生き方を産み出すとしています。そうかもしれません。

 本書は、なかなかおもしろい本です。未来の日本を考える上で示唆的な記述がいろいろあります。日本は「人口減少」が避けられません。そういう社会の変化を見極めながら、各個人がどういう方向に努力していけばいいかを考えるきっかけになりそうです。

 乙は単行本を読みましたが、今は文庫本が出ているとのことです。

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2010年04月28日

河村たかし(2008.9)『この国は議員にいくら使うのか』(角川SSC新書)角川書店

 乙が読んだ本です。「高給優遇、特権多数にして「非常勤」の不思議」という副題が付いています。
 メインタイトルとサブタイトルを読むだけで、本書の中身が推測できます。そして、その通りです。
 国会議員も、地方議員も、いやはやけっこうもらえるものですね。
 乙も政治家になろうかな。いや、選挙に出馬しても、得られる票数は自分と家族だけの数票でしょうから、単なる泡沫候補で終わってしまいそうです。
 ま、それはともかく、本書は、そのような議員特権について赤裸々に記述しています。
 なぜそうなってしまったのかというと、河村説では、官僚たちが自分の給料を上げるために、まずは議員の給料を上げたということだそうです。なるほど、納得できます。
 議会のことを決めるのも議員ですから、給料や諸手当に関していえば自分たちのお手盛りになっているので、議員の報酬を下げるなんてことはなかなかできそうにありません。
 しかし、そこのところは日本の今後を決める上で決定的に重要です。
 まずは、議員数半減、給料半減で、経費を 1/4 にしましょう。日本の赤字財政(国も地方も)に対する貢献になります。そのような痛みを自ら実感した上で、公務員の人件費の削減(民主党のいうように2割でもいいですよ)にも踏み切るべきでしょう。先にこんなことをした上で日本国民に負担(増税のことです)をお願いするのがスジというものです。
 本書中に出てくる矢祭町の実例も興味深いものでした。固定的な給料ではなく、議会に出席したときに手当を払うだけだというのです。骨のある政策を実際に導入している地方自治体があるというのはすばらしいことです。
 次に名古屋市のような大都市で同様のことが実現したら、全国に対するインパクトは大変なものがあります。皆さん「横並び」がお好きなようですからね。
 本書を読んだ後には爽快感が残ります。
 河村たかし、ガンバレ!

参考記事:
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20100328
http://d.hatena.ne.jp/victoria007/20100407/1270657114
http://d.hatena.ne.jp/victoria007/20100216/1266333291
http://d.hatena.ne.jp/aoki0104/20090513/1242161192


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2010年04月22日

遠藤誉(2010.2)『拝金社会主義 中国』(ちくま新書)筑摩書房

 乙が読んだ本です。
 日経ビジネスオンライン連載の「中国“A女”の悲劇」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20080212/147023/
をベースに大幅に加筆したものです。
 連載も非常に興味深く読みましたが、こうしてまとまってみると、今の中国(人)の考え方が手に取るようにわかります。
 全5章構成ですが、やはり第3章「結婚できない「デキル女」たち」が読み物として一番おもしろいと思います。
 さらに、続く第4章「銭に向かって進んだ結果の就職難」も読みごたえがあります。2009年だけで200万人の大卒生が未就労と聞くと、中国はどうなってしまうのだろうかと思います。本書でその答えが描かれます。農村からの出稼ぎ者に向けた求人に大学生が殺到したり、むしろ村に行こうということで、村官の募集に大学生が長蛇の列を作ったり、兵隊になるものまで出ているのです。本書は、そういう中国の現状を余すところなく描いています。
 中国の中の不平等や格差はすごいものですし、一人っ子政策によって少子高齢化が進む現状も従来とは違った考え方が必要になるでしょう。これから中国がどういう方向を目指して変わっていくか、それを知るには、本書は貴重な1冊といえるでしょう。
 もう中国は共産主義の国とは呼べないようです。共産党は、従来のような農民や工員たちを代表するものでもありません。中国は、資本主義を導入したことによって、越えられない一線を越えてしまったような感覚です。
 ということは、別の面から見ると、中国に投資してもいいということになります。政治体制は若干世界標準から離れていますが、経済的には、もう世界の一員になってしまったのでしょう。

 なお、p.209 の表4に間違いがあります。以下のように示されています。

地区  一家庭当たりの平均年収
──────────────────
東部 1万2130.54 元(約 18万2000円)
中部   6124.11 元(約 9200円)
西部   5972.60 元(約 9000円)
城鎮 1万1550.27 元(約 17万3300円)
農村   5284.67 元(約 7900円)
総体   8282.57 元(約 12万4200円)

 たぶん、中部・西部・農村の円換算が間違っているのだろうと思います。10倍しなければなりません。
 また、p.209 の本文ですが、「ここで注目すべきは、内陸では上位 20% の家庭と下位 20% の家庭の年収の比率が約 17:1 であるということだ。もし年収 100 万円の家庭が上位 20% を占めているとすると、底辺にいる 20% の家庭の年収は 17 万円であることになる。」とあります。ここは計算間違いをしているとしか思えません。もし年収 100 万円の家庭が上位 20% を占めているとすると、底辺にいる 20% の家庭の年収は 17:1 ですから、5.88 万円であることになると思われます。

 とはいえ、現代中国を知るために、本書はおすすめです。

ラベル:遠藤誉 中国
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2010年04月19日

マネー・ヘッタ・チャン(2009.11)『ヘッテルとフエーテル』経済界

 乙が読んだ本です。「本当に残酷なマネー版グリム童話」という副題が付いています。
 八つのお話が並んでいます。それぞれは、お金にからむ話で、まあマネーに関するべからず集のような内容です。それぞれのお話の最後に「グリーム婆さんのよくわかる解説」というのが数ページ付いていて、それが一種の教訓集のような感じで書いてあります。
 乙は、一読して、内容が薄いと感じました。この内容を語るのに150ページの本にする必要はないと信じます。
 手軽に読める本ですが、この本を読んで理解することができるのは、いろいろな経験をしてきた大人たちであって、子供向けの本ではありません。さまざまな固有名詞が、それとなくわかる別の語に置き換えられています。こんなのを理解する(そして当該事物を思い出してにんまりする)ことができるのは、相当な大人でしかありえません。
 ということで、この本は、一体想定読者をどのあたりにおいているのか、だんだんわからなくなってきました。大人に対していろいろと有意義なことを述べるなら、こんな童話スタイルを取る必要はなく、もっと端的にズバリ書けば済んでしまいそうです。
 乙の感覚では、本書の試みは失敗していると思います。

 ふと気が付くと、高等遊民さんが本書のことに言及していました。
http://koutou-yumin.seesaa.net/article/144813566.html
乙も同様のことを感じていました。

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2010年04月16日

大前研一(2008.11)『ロシア・ショック』講談社

 乙が読んだ本です。
 大前研一氏の本だということで読んでみました。
 内容は、ロシアがどういう国か、その現状を解説するもので、あまり投資に関連するところは多くなかったように思いました。
 p.64 ロシアの特徴の一つとして極めて高い教育水準があるとしています。乙はこういう見方をしていませんでしたので、ここでの議論は興味深く読みました。ロシアは BRICs の他の国と違った面があるということです。
 p.100 では、ロシア人は無条件に日本が好きだという話が出てきます。これも意外でした。日ロ関係を考える上では、これは考慮に値する事実だと思いました。
 p.132 では、ロシア進出の心得の一つとして「腐敗は生活の一部。うまく対処する術を身につけよ」と説きます。この部分は大前氏のオリジナルな主張ではなく、別の人の引用なのですが、さもありなんと思いました。ロシアは官僚制度が近代化しておらず、給料が安いということで、汚職や賄賂を前提にシステムが成り立っているとのことです。
 これについては、ある程度乙も知っていましたが
2007.4.2 http://otsu.seesaa.net/article/37514559.html
こういうことで対ロシア投資が恐いといっていてはいけないようです。
 p.176 では、ロシアの最近の指導者を取り上げて、政治家としてどうなのかを論評しています。現代ロシア史とでもいうべきところであり、一つの見方として興味深いものがありました。
 p.224 からは「終章◆日ロ関係の未来図」が始まります。ここが一番投資に関連しているところでした。
 まず、長谷川毅氏の『暗闇』(中央公論新社)を取り上げ、北方4島がソ連に占拠された経緯について、戦後、アメリカがソ連に譲ったからだということが書かれています。乙は、こんな話はまったく知らなかったので、驚きました。それはともかく、大前氏はそういうことから日本が北方領土にこだわることはよくないとしています。そして、極東、シベリアを観光地として開発するべきで、そこに日本が投資すれば非常にメリット(日本にとって、かつロシアにとって)が大きいとしています。
 そんな簡単に「観光地」ができるのか、わかりませんが、大前氏の壮大なビジョンの一端をかいま見せてくれました。
 全体として、ロシアを広く眺め渡してその現状を記述しており、現代ロシア入門といった感じの本でした。

 なお、p.230 あたり、何回も「カムチャッカ」という表記が出てきます。また、本書中に何回も「ウォッカ」という表記もあります。しかし、正しくは、「カムチャツカ」および「ウォツカ」です。俗語としては「カムチャッカ」と「ウォッカ」もありますが、本で表記するなら正しい表記にするべきでしょう。ちょっと品位が落ちます。

ラベル:大前研一 ロシア
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2010年04月08日

大宮知信(2009.9)『お父さん! これが定年後の落とし穴』講談社

 乙が読んだ本です。目次は以下の通りです。
第1章 再雇用・転職・独立、どれを選んでもイバラの道
第2章 なけなしの老後資金が水の泡に
第3章 夢の海外移住の現実
第4章 田舎暮らしのスローライフは意外に疲れる
第5章 退屈地獄を乗り切る趣味探し
第6章 定年夫は邪魔な存在か
第7章 脱会社人間! 悔いなき人生を
 こうやって目次を見ると、本書で何が論じられているか、ほぼ明らかになってしまいます。どの章も、苦労する人たちの例が満載で、なかなか思うような「定年後」はないことがわかります。
 221ページの本ですから、これらのさまざまなトラブルに対する対処法まではとても書けません。それはわかるのですが、読んだ後、どうにもいらだち感がありました。もちろん、トラブルはごめんですが、ではどうしたらいいのかということが本書ではあまり書いてないのです。著者に言わせれば、そういうトラブルは千差万別なので、本に書けるようなシロモノではないということなんでしょう。
 この中で乙が直接関心があるのは、第2章の投資関連と、第3章の海外移住でした。
 第2章は、いろいろな落とし穴の紹介にとどまっており、どうしたらそういう落とし穴に入り込まない投資行動が可能になるかがほとんど書かれていません。「投資しない」という態度もあるでしょうが、お金に働いてもらうためには、ちゃんとした投資をしたいものです。しかし、そういう向きの人にはあまり役に立ちません。
 第3章は、失敗例を数多く載せていますが、ここも、うまく海外移住生活を続けるにはどうしたらいいかがほとんど書かれていません。まあ、失敗例から学べることもあるとは思うのですが、いかんせん30ページ程度の記述ではちょっと触れた程度で終わってしまいます。
 第1章は、乙の場合、関係なさそうです。ある程度の歳まで仕事が続けられそうですし、その後はもう働く予定はありません。
 第4章は、乙の場合、田舎の出身で、田舎の人間関係をわずらわしく思っていますので、自分で田舎暮らしをしようとは思っていません。
 第5章は趣味の話ですが、乙は乙なりの趣味(自分でそう思っているもの)があるので、まあ定年後の人生も楽しめるものと考えています。
 第6章は、家庭の中の話ですが、乙の場合、夫婦仲はいいし(乙がそう思っているだけで、妻は必ずしも同じ考えではないかもしれませんが)、結婚以来ずっと共働きでしたから、乙が息子たちの食事当番をしたり保育園の送り迎えをしたりして、それなりに家事をしてきました。その意味では、濡れ落ち葉的存在になることはないと思っています。
 というわけで、通読してみると、タイトルほどにはインパクトのある内容とは思えませんでした。
 著者はノンフィクションライターだそうですが、もう少し専門的に詳しい知識を得てから本をまとめるほうがいいのではないかと思いました。今は、いかにもライターが各種情報を集め、急ごしらえで書いた本という印象です。

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2010年03月31日

岩瀬大輔(2009.10)『生命保険のカラクリ』(文春新書)文藝春秋(3)

 乙が読んだ本です。
 内容面についてはまったく触れないうちに、2回のブログ記事を書いてしまいました。
2010.3.29 http://otsu.seesaa.net/article/144960639.html
2010.3.30 http://otsu.seesaa.net/article/144961187.html
 今日は、内容面について書いておきます。
 本書は、生命保険がどういうものか、きわめて明解に書いています。生命保険の入門書のようなものです。
 生命保険に入る前に、こういう本を1冊読んでおきたいものです。(まあ、読んだ後で生命保険に入ろうと思うかどうか考えると、かなり否定的に思えるでしょうが。)
 著者はライフネット生命を立ち上げた人ですから、生命保険の表も裏もわかって本書を書いています。
 今までの通常の生命保険がどんな状態で売られてきたか、手に取るようにわかります。図表も十分ついており、わかりやすいないようです。
 常識を持って判断すれば、生命保険を勧めるおばちゃんのいうことを聞かずに、ネットでライフネット生命の保険に入るのが正解でしょうね。
 とはいえ、本書は決してライフネット生命の宣伝本ではありません。大変有意義な1冊です。
 p.41 には、図3として、定期死亡保険のコスト構造が示されます。大手生命保険では、契約者が払った保険料の半分以上がコストとして消えてしまうのを知ると、保険に入る気がなくなるでしょう。重要な図です。
 p.62 では、生命保険の不払い問題を取り上げていますが、次のように書いています。
 一連の不払い問題が起きた理由は、表面的には支払管理態勢が不十分だったことにある。しかし、より本質的には「販売至上主義」と、生保のカルチャーとしての「顧客軽視」があったと考える。
 すなわち、誰も理解できないような複雑な商品を、50%という異常な離職率にある営業職員に厳しいノルマを課して押し込ませていたことから、契約内容をよく理解しないまま入っている顧客がたくさんいることに、本来的な問題があるのである。

 まさに、そのものズバリです。言い換えれば、保険業界の体質的問題ということです。こういうことを知ってから保険に入ることが望ましいでしょう。
 p.71 には、表5として、大手生保の主力商品の例が出てきます。きわめて複雑で、いろいろなものがセットされていて、一体、何にいくらかかっているのか、さっぱりわかりません。今は、生保各社がこのようなパッケージで販売する方向に動いているとのことで、契約者も十分理解していないでしょう。もしかすると、生保のおばちゃんも理解できていないのかもしれません。日本の生命保険の現状がこの1枚の表から見えてきます。
 p.97 では、保険商品では「セール」や「割引」が法律によって禁止されているという話が出てきます。乙は知りませんでした。
 ということで、本書の結論の一つは、p.141 に出てきますが、「契約者が取るべき自衛策」として「単品主義」をすすめるとのことです。乙は納得しました。
 他にもいろいろありますが、本書はまさに良書です。
 保険に入ろうと考えている人に、契約前にぜひ読んでほしいと思いました。

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2010年03月30日

岩瀬大輔(2009.10)『生命保険のカラクリ』(文春新書)文藝春秋(2)

 昨日の記事
2010.3.29 http://otsu.seesaa.net/article/144960639.html
の続きです。今回は、PDF ファイルの読み方について考えます。
 ダウンロードした PDF ファイルは、どう読むのでしょうか。
 パソコンの画面に表示させながら読むのでしょうか。そういう人もいるでしょう。しかし、235 ページもの内容をパソコン画面で読むのはしんどいとは思いませんか。
 乙は、こういうものを読むのは、電車の中やトイレの中が多いので、パソコン画面で読む気が起きません。
 というわけで、プリンタで全部プリントして読むことにしました。A4の紙1枚に4ページ印刷するようにしました。片面印刷でしたので、約60枚、6ミリほどの厚さになりました。これくらいならば、ふだん読んでいる程度のものですので、特に問題はありません。コストは計算しませんでしたが、紙代とトナー代で 100 円くらいでしょうかね。
 しかし、実際読んでみた感想では、いくつか問題点があり、あまりよくなかったように思いました。
 第1に、印字がぼやけるところがあったことです。これは PDF ファイルの特性だと思いますが、鮮明に印刷できません。少しだけぼけます。これが場合によっては読みにくいと感じさせました。本そのもののほうが読みやすいです。乙は目も弱り気味なので、特にそう感じたのかもしれません。
 第2に、ページめくりが大変でした。1枚に4ページ印刷したものをダブルクリップで留めて読んだのですが、次の紙に移動するとき、ページめくりがめんどうでした。普段A4の書類を読んでいるときはあまり感じないのですが、4ページ分が収まっていると、めんどうに感じます。縦書きが影響しているのかもしれません。途中で読みかけにするとき、しおりを挟むわけにいかないのも不便でした。4ページのどこまで読んだか、わからなくなりがちなので、線を引いておくほうがよかったです。(自由に書き込みができる点はメリットです。)
 第3に、ページレイアウトと図表の関係で、不都合がありました。
 1枚に4ページプリントすると、右上に 157 ページ、左上に 158 ページ、右下に 159 ページ、左下に 160 ページが配置されます。ところが、本書の場合、表Hが 158 ページと 159 ページにまたがって書かれているのです。新書で読んでいる場合は、これがちょうど見開きになって、読みやすいのですが、PDF ファイルを4ページずつプリントすると、1枚の表が離ればなれになって、読みにくくなります。
 pp.172-173 は、別の紙になってしまいますが、ここにも図7という1枚のグラフがあります。
 p.218 には「左頁の図を見てみよう」などという言い方が出てきますが、実際は、その図は右下に表示されます。
 このあたりは、レイアウトを1ページ分ずらせれば何の問題もなかったように思います。今後、類似の企画がある場合は配慮してもらいたいところです。

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2010年03月29日

岩瀬大輔(2009.10)『生命保険のカラクリ』(文春新書)文藝春秋(1)

 最近、大きな注目を浴びた本です。
 なぜならば、全文が PDF ファイルで無料で公開されたからです。
http://totodaisuke.asablo.jp/blog/2010/02/27/4910657
 4月15日までですので、読みたい方はお早めに PDF ファイルをダウンロードしておくといいでしょう。
http://www.bunshun.co.jp/cgi-bin/book_db/book_detail.cgi?isbn=9784166607235
 乙も、さっそくダウンロードして読んでみました。
 まずは、このような無料戦略について思ったことを書いておきます。内容面については、あとで書きます。
 岩瀬氏は、上記の記事の中で「このように、大手出版社が、書籍を丸ごと一冊無料でダウンロードできるようにしたのは、おそらく国内で初めてのことだと思われる。文芸春秋社の英断には、大いに感謝したい。」とお書きです。
 確かに、乙も、新書が1冊まるまるダウンロードできるというのは初めての経験でした。
 この戦略は、「壮大な実験」でもあります。こういうことをして、出版社は儲かるかというのが一番興味があるところでしょう。
 ついでにいうと、著者は、儲からなくていいと思います。こういうことで名前が知られ、ライフネット生命が知られ、そちらの営業成績が伸びれば、著者としてはまったく問題がないわけですから、無料でいいのです。
 しかし、出版社は別です。こういうことが普通に行われて多くの本が無料になってしまって、それでも儲かるのでしょうか。
 乙は、出版社も儲かると思います。だからこそ、文藝春秋は冷静な判断で PDF ファイルの公開を決めたのです。
 最大のポイントは、期間限定であることです。しかも、新書本が出てから数ヶ月経ってからの公開でした。
 新書は(いや書籍全体がそうですが)出版直後は売れますが、その後、だんだん売れなくなっていきます。
 ということは、この本は 2009 年 10 月に出版され、適当な部数が売れ、出版社としてはもう「元を取った」状態のはずです。無料化してもしなくても、もう儲けたあとなのです。だから、ここで無料化戦略をとったとしても、出版社としては何の懐も傷まないのです。
 さらに、この無料化戦略によって、その期間で(さらにはその後も)大きな話題になることがあります。現実にそうなっています。内容的にも興味深いものをたくさん含んでいます。たくさんの人がこの本を読むと、話題は一層広がり、クチコミの力で広がりを見せます。どこまでいくかはわかりませんが、ベストセラーはそうやって作られるものです。すると、無料期間を過ぎたあとで、「自分も読みたい」という人が多数現れます。そのときには、新書を買うしかありません。(古本屋で安く買うかもしれませんが。)それは、文藝春秋としてもありがたい話です。
 もう一つ、副産物として、この本に対して興味を示す人たちの性別と年齢がわかります。ダウンロードサイトでは、性別と年齢を入れることになっています。こんなところでウソをついてもほとんど意味はありませんから、たいていの人は正直に性別と年齢を入れるでしょう。こうして、出版社は本の読者の性別と年齢という、ふだんならば手にできないデータを入手することができます。これは、今後の販売戦略を考える上で役立ちます。

 ということで、どんな本でも無料化していいというものでもありませんが、内容がおもしろく、多くの人が読みそうなものをあえて無料化する戦略は「あり」だと思います。

 この方法の成否は数ヶ月後ないし1〜2年後くらいにはっきりするだろうと思います。
 もし成功したら(文藝春秋が大きく儲かるようなことがあったら)、出版界に激震が走ることは間違いなしですね。

参考記事:
http://renny.jugem.jp/?eid=1382
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/280
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/288
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20100225/213027/
http://www.j-cast.com/mono/2010/02/28061120.html
http://diamond.jp/series/yamazaki/10120/


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2010年03月28日

菅原琢(2009.12)『世論の曲解』(光文社新書)光文社

 乙が読んだ本です。「なぜ自民党は大敗したのか」という副題が付いています。
 タイトルから判断して、2009 年夏の衆議院選挙のことを書いているのだと即断してしまったのですが、実は、それだけではなくて、2005 年の郵政解散総選挙のあたりからの数年間の政界の動きを扱っています。
 菅原氏がいいたいことは、タイトルによく現れています。
 我々は、世論を正しく把握することがむずかしく、結果的に、一部批評家などが勘違い発言をしているということです。
 本書には、各種統計調査の例が豊富に出てきますし、それぞれの数字の読み方なども丁寧に解説されますので、とても説得力があります。
 巻末には、それぞれのデータの出典が書いてあり、自分の説の裏付けが明記してあります。こういう態度は好感が持てます。
 新書ということになっていますが、中身は濃いです。論述が詳しいのに加えて、図表もしっかり入っています。それぞれを吟味しながら読むと、かなり時間がかかります。結果的に政治学の一部がわかるような気がします。
 それにしても、世論は移ろいやすいものですね。
 今後も選挙のたびにさまざまな誤解・曲解が生まれ、メディアに登場してくるでしょう。そういうものを見極める目を養うことが重要なように思いました。
 本書を読むことで、過去の流れを整理してとらえることができるようになりました。

 それにしても、自民党が大敗して民主党政権が成立したわけですが、その後の経緯を見ると、民主党も信頼できないことが明らかになったように思います。日本はこれからどういう方向を目指せばいいのでしょうか。

ラベル:菅原琢 自民党
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2010年03月26日

岸博幸(2010.1)『ネット帝国主義と日本の敗北』(幻冬舎新書)幻冬舎

 乙が読んだ本です。「搾取されるカネと文化」という副題が付いています。
 ネットには四つのレイヤー構造があると説きます。
 コンテンツ/アプリケーション、プラットフォーム、インフラ、端末です。検索エンジンなどがプラットフォームです。NTT や CATV がインフラです。そして、ネットの現状を見ると、プラットフォームが一人勝ちしていて、コンテンツ産業が疲弊しているということです。その例として、岸氏は新聞と音楽を取り上げます。ネットで何でも無料で手に入るかのような風潮がありますが、それはコンテンツ産業からプラットフォームに資金が移動しているだけで、いわばプラットフォームがコンテンツ産業を搾取していることに相当するとしています。
 一番儲かっているプラットフォームに関連する企業はすべてアメリカにあることから、アメリカが世界を牛耳っているととらえることができます。言い換えれば、日本は敗北しているわけです。
 実におもしろい見方です。
 もちろん、「ではどうしたらいいか」が必要なわけですが、それは第5章「日本は大丈夫か」で述べられます。プラットフォームと端末が融合する動きがあり、そこからプラットフォームを巡る競争の激化があるとしています。そして、そのような変化を踏まえてジャーナリズムと文化をどう守るかを議論し、最後に日本はどうするべきかを述べます。
 岸氏の主張は明解ですが、乙は、新聞も音楽も、そう簡単に復興するとは思えません。
 一度、ネットがある世界に入り込んでしまうと、そこには非常に広大な「フリーの世界」が広がっています。もうそれにどっぷり浸かっている人がたくさんいます。そうなれば、今までの世界をそのまま維持することは不可能です。
 新聞社は、世界各国で減っていかざるを得ません。何社かがつぶれるのは当然です。そうやってつぶれることで、生き残った新聞社に需要が集中し、何とかその新聞社が生き延びるのではないでしょうか。新聞社が全部なくなるとは考えにくいですが、今の日本のように、全国的な規模の新聞社が数社あるというのは多すぎるでしょうね。
 テレビが登場することでラジオの性格が変わって別のメディアとして生き延びたように、ネットでニュースが見られるようになっても、紙の新聞が必要とされる面があると思います。乙の勝手な予想では、紙の新聞は20年くらいは命を保つと思います。
 乙は、音楽文化についてはまったくわかりません。ネットからダウンロードして聞くなんてことをしたことがないのです。自分が保有する CD を繰り返し聞いているだけです。
 本書は、クリス・アンダーソン(2009.11)『フリー』
2010.2.6 http://otsu.seesaa.net/article/140363533.html
と合わせて読むといいと思いました。

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2010年03月20日

岡本吏郎(2009.11)『サラリーマンのためのお金サバイバル術』(朝日新書)朝日新聞出版

 乙が読んだ本です。「家・車・保険、「人並み」な買い物が破滅を招く」という副題がついています。
 第3章で投資の話も出てきますが、むしろ、著者の言いたいことは生活全体の見直しです。サラリーマンが日常生活で直面するさまざまなお金の問題をどう考えるかを述べています。その意味では、副題がこの本の内容をよく表しているように思います。
 全体にとてもよく書けています。新書版のコンパクトさの中に、エッセンスがぎゅっと詰め込まれている感じです。必要なところには必要なグラフや表がきちんと示され、わかりやすくなっています。
 乙が興味を持ったのは、第3章の投資の話です。
 p.152 では、日本の過去50年分の株式リスク・プレミアム推計値のグラフが出てきます。それによると、1955 年ころにはリスクプレミアムが 25% もあったのですね。いい時代でした。最近は1桁になっていますから、あまり儲からなくなっているといえます。
 p.153 では、日本の過去50年の株式市場指数の標準偏差のグラフが出てきます。リスクは50年で減っていないことがわかります。いずれも山口勝業氏の著書からの引用ですが、乙はこういう事実を知らなかったので、とても印象的でした。
 p.189 では、年金積立金管理運用独立行政法人の『平成19年度 業務概況書』からの引用で、期待収益率・リスク・相関係数の表が出ています。
 ただし、今はネットで 2009.7.1 に公開された『平成20年度 業務概況書』が見られます。
http://www.gpif.go.jp/kanri/pdf/kanri03_h20_p04.pdf
その65ページにも同じ表が出ています。
種類
期待収益率リスク
国内債券
3.0%
5.42%
国内株式
4.8%
22.27%
外国債券
3.5%
14.05%
外国株式
5.0%
20.45%
短期資産
2.0%
3.63%

 乙はちょっと意外な感じがしました。
 以前読んだ田村正之(2009.2)『世界金融危機でわかった! しぶとい分散投資術』
2009.6.8 http://otsu.seesaa.net/article/121053721.html
では、同じ年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がまとめた2007年まで35年間の実績の数字に基づいた表があり、そこでの期待リターンは
日本株式=7%、日本債券=2%、外国株式=8%、外国債券=3%
となっていたからです。
 株式の期待収益率がずいぶん違っています。なぜこんなに違うのでしょうか。違っていていいのでしょうか。
 著者は、サラリーマンはインデックス投資と言い切っています。しかし、一方ではアクティブファンドの存在とその意義にも配慮された記述がなされています。
 全体にバランス感覚がとてもいいと思いました。お薦めできる本だと思います。

ラベル:岡本吏郎
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2010年03月17日

池田信夫(2009.10)『希望を捨てる勇気』ダイヤモンド社

 乙が読んだ本です。「停滞と成長の経済学」という副題が付いています。
 池田氏のブログ
http://ikedanobuo.livedoor.biz/
にも書かれているように、経済学の立場から日本社会を見るという点で、池田信夫氏の主張ははっきりしています。
 本書を読みながら、ブログの記述との重なりを感じてしまいました。まあ著者が同一であればそんなものでしょう。
 ブログとは無関係に、本書を単独で読んだ場合、合理的な考え方が随所に見られ、日本が抱えている問題がすっきりと理解できるのではないでしょうか。
 以下、乙がおもしろいと思ったところをいくつか取り出しつつコメントしたいと思います。
 pp.16-18 ちょっと前に問題になった派遣切りは、司法からの要請だとしています。これだけ聞くと「えっ?」と感じるかもしれません。しかし、今のように正社員が保護されている(これも司法の判断)ということの裏返しで、社員のクビを切るときは非正規社員から切るのが当然ということになります。そのものズバリで書いてあると、かえって気持ちよく感じます。
 p.67 日本で、雇用調整を行うメカニズムが、解雇(50年代)、配置転換(60年代)、出向(70年代)、非正社員(90年代)と変化してきたと述べています。なるほど、乙のようにある程度の歳になってきた人間から見ると「昔はそうだったよなあ」と感じます。それが明示されています。
 p.182 トヨタはなぜ危機なのかを示しています。日本を象徴する「すり合わせ」で成立したのが自動車産業なのですが、今直面している事態は、自動車の価格が大幅に下がっていることであり、どちらかというと高級車を指向しているトヨタでは、新興国市場を開拓できないということだと説きます。
 p.191 昨年秋に「事業仕分け」で話題になったスーパーコンピュータについて、戦艦大和と同じく大艦巨砲主義で、時代遅れであり、スパコンの名を借りた公共事業だとしています。
 p.197 政策立案を官僚が独占し、御用学者がその下請けをやっているようでは、日本の政治はいつまでも進歩しないとしています。世界市場で相手にされない日本の各業界を見ていると、まさに的を射た発言です。
 ほんのいくつかの例を示しましたが、本書で述べていることは、これらにとどまりません。もののあり方を考え、日本のこれからを構想するときに、本書の記述は貴重な視点を提供してくれると思います。
 池田氏のような人が政治家になったらどうなのでしょうか。その明解な主張も、回りの魑魅魍魎に絡め取られてしまうのでしょうか。
 本書のタイトル「希望を捨てる勇気」は、ちょっとミスリーディングです。「今持っている希望を、勇気を持って捨てなければならない」というように読めます。内容を正確に反映するタイトルにするなら、むしろ、副題をそのまま使うほうがいいように思いました。

ラベル:池田信夫
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2010年03月15日

竹中平蔵(2009.11)『政権交代バブル』(Voice select) PHP 研究所

 乙が読んだ本です。「重税国家への道」という副題が付いています。
 鳩山政権および民主党に、「こうしてもらいたい」あるいは「こうしてはいけない」などと率直に提言する本です。
 乙は、一読して、そのわかりやすさに驚きました。1冊まるまるわかりやすいのです。書いてある内容も十分説得的でした。
 逆にいうと、それだけ鳩山民主党の政策が危なっかしくてもどかしく感じるということです。
 ごく一部だけ引用しておきましょう。p.119 です。
 「社会保障にお金を使えば経済は成長する」というのは間違いです。長期的に経済を成長させるためには、「資本」か「労働」か「技術」のいずれかのインプットが増えなければならない。お歳暮やお中元を贈り合っているだけでは全体のパイが広がらず、日本経済も成長しません。社会政策もこれと同じことなのです。

 実に明解です。そして、こういうことで鳩山民主党の政策のいくつか(子供手当、高校の授業料実質無償化……)を否定しています。
 本書を読むことで、これからの日本が目指すべき道がはっきりとわかるように思います。
 2005 年の日本株の株価上昇は驚きのニュースでしたが、それは、そのような政策をとったことの必然的結果だったのですね。乙はそんなことはまったく意識していませんでした。


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2010年02月27日

森功(2009.5)『血税空港』(幻冬舎新書)幻冬舎

 乙が読んだ本です。「本日も遠く高く不便な空の便」という副題がついています。
 本書を一読すると、日本の航空行政がいかにゆがんでいるか、手に取るようにわかります。
 静岡空港の開港延期問題、成田空港の問題、羽田の国際化の問題、日本全国で100近くにもなる空港の数の問題、関西の3空港の問題、空港整備特別会計の問題、韓国・中国・シンガポールなどの空港との国際競争の問題、オープン・スカイの問題など、あらゆる面に関して一通りの知識が得られます。
 これからの日本の発展のためにも、空港は必要だと思いますが、現状を見ると、とんでもない事態になっています。そして、政府(国土交通省)には、このような現状をどうするかというビジョンもないのです。
 空港だけが日本の問題ではありませんが、今の日本の諸問題の象徴のようにも思われます。
 これだけねじれてしまった空港問題ですから、簡単に解きほぐすことはできないかもしれませんが、まずは、本書などで空港問題の概観をつかむことが第1歩でしょう。次に、国土交通省あたりが中心となって(ま、民主党でもいいですが)長期的な航空行政のビジョンを固めるべきです。その上で、日本の空港はどうあるべきか、航空会社はどうあるべきかを考えないといけません。
 空港には多額の税金がつぎ込まれているわけですから、空港問題を考えることは税金を考えることでもあり、日本をどうするべきかという問題ともつながってきます。
 本書は、日本航空の破綻の前に出版されていますので、その点はちょっと記述が古いのですが、本書で指摘されている諸問題が解決しているわけでもありませんので、今でも読む価値があると思います。
 乙が一番おもしろく思ったのは、p.242 からのエピローグで、現在のジェット機はエンジン技術の改良で静かになり、YS-11 以下の騒音しかないという話です。これだけで、騒音問題を考慮して海上に作られた関西空港の意味が減少してしまいます。(同じ理由で伊丹が継続的に使われ、関西空港が赤字になったりするわけですが。)
 こういう世の中の変化を受けとめ、きちんと対応していくとなると、確かにむずかしい問題なのでしょうね。

ラベル:森功 空港
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2010年02月06日

クリス・アンダーソン(2009.11)『フリー』日本放送出版協会

 乙が読んだ本です。「〈無料〉からお金を生みだす新戦略」という副題が付いています。350 ページほどの分量で、かなり分厚い本です。
 本書では、無料で提供するということがどういうことなのか、古今東西のたくさんの例を挙げながら考察していきます。もちろん、中心はGoogle を初めとするネット社会でのさまざまな無料戦略です。
 無料とはいえ、その周辺には有料領域が広がっています。理由もなしに〈無料〉であるはずがありません。そのあたりの具体例を出しながら、なぜ無料にしているのか、なぜ無料にできるのかを述べます。
 現代は、〈無料〉が幅広く普及しつつある時代といえそうです。この結果、新しいさまざまなビジネスモデルが登場していて、古いモデルの産業を衰退させているともいえます。我々は、そのような大きな流れの中にいることを自覚しなければなりません。
 それにしても、消費者側は〈無料〉ですばらしいとだけ受けとめていればいいのですが、供給者側は大変です。〈無料〉にし、それを維持するためのコストをどうまかなうかという難問を解決しなければなりません。今までと同様の考え方ではダメです。発想の転換が求められます。とはいえ、そこは人間が判断するものですから、従前の判断の延長で考えてしまいがちです。
 新聞や雑誌、本を無料で提供するべきか、有料のままにしておくべきか、立場によっても意見は異なるでしょうが、無料にする場合、その業界人はどうやって食べていくのでしょうか。食べていけないとなれば、その業界は衰退してしまいます。結果的に消費者側は供給がないということでダメージを受けます。
 本書を一読して、これからの世界のあり方を考えていくことの必要性を感じました。
 なお、本筋とはあまり関係ありませんが、p.92 に「時間とお金の方程式」というところがあります。子どものときは、お金よりも時間を多く持っていて、だから手間がかかっても無料のものを使うのが合理的ですが、年を取って時間とお金の関係が逆になると、お金を使って時間を節約するようになるというのです。乙は、この部分に強い共感を感じました。

参考記事:
http://renny.jugem.jp/?eid=1336
http://diamond.jp/series/brandnew/10250/

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2010年01月29日

副島隆彦(2009.10)『ドル亡き後の世界』祥伝社

 乙が読んだ本です。
 p.3 のまえがきを読み始めると、衝撃的な内容の一部がわかります。「今年(2009年)中は、もうたいしたことは起きない。ただ株がズルズルと下がり、為替でドル安になってゆく。“ドル安”はもう決まりなのだ。【中略】1ドルは60円を目指して落ちてゆく。次の株式と為替と債券(国債)の暴落が起きるのは来年(2010年)3月だろう。」
 いやはや、こんな明確な予想は、なかなかしにくいものですが、副島氏は断言しています。
 p.4 では、こんなふうに書いています。「私がこれまで他の本で書いてきたとおり、アメリカのオバマ政権は長くは保(も)たないだろう。金融危機の責任を取らされて、バラク・オバマは任期半ばで辞任してゆく。次の大統領はヒラリー・クリントンが取って代わる。2010 年末にはアメリカは恐慌に突入する。」
 これまた明解な予測です。そして、その予測の精度について、同じく p.4 でこう書いています。「私はこれまで直球で自分の予測(予言)を書いて勝負してきた。私はこれまでのところ自分の予測(予言)を外していない。このことを私の本の読者は知ってくれている。予測を大きく外した金融・経済評論家は、客(読者たち)からの信用と評判を落として退場してゆくのである。もうあと何人も残っていない。私はこの本でも直球で勝負する。」
 すばらしい話です。自信満々です。
 しかし、副島氏が本当に精度よく予測できるならば、こんな本を書いているヒマはありません。ぜひ、その予測を活かして一財産を築いてほしいものです。確実な予測は預言者に膨大な富をもたらします。映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー Part2」(1989)のビフ・タネンの話を思い出させます。
 本書は、さまざまな予測にあふれています。
 p.49 では、日経平均について、2010 年後半に「大暴落が起きて、5,000 円近辺まで下がるだろう。瞬間的には 4,500 円という最安値をつけるだろう。」と予測しています。その根拠は p.50 に書かれています。
 さあ、大儲けしてください。株を信用取引で思いっきり売ってください。あるいは、ワラント債で日経平均を売ってもいいでしょう。副島氏が株価の暴落で儲ける方法を知らないはずはありません。こんな本を書いているヒマがあったら、ぜひ全力投球で大儲けするべきです。つぎ込む資金にもよりますが、この本の印税の百倍から千倍くらいの儲けが出るのではないでしょうか。
 第2章は「1ドル=10円の時代」というタイトルです。為替レートについては、p.62 で、2012 年に米国債がドン底になり、そのときの為替レートを予想しているわけです。さあ、今度はFXの出番です。FXはレバレッジを効かせた売買が可能です。なるべく高いレバレッジで、ドル売り・円買いに乗り出すべきです。
 副島氏がすでにそのような行動をしているのかどうか、本書中には記載がありませんが、予測を本に書くよりは自分で資金を投入して勝負するべきです。これは「投機」そのものです。それをせずに、本を書いているとしたら、印税収入(および著書執筆で得られるさまざまなメリット)のほうが、各種の投機的売買で得られる利益よりも大きいと断言しているようなものです。

 p.158 では、アメリカのデノミネーションについてこう書いています。
 アメリカがこのあと10年で、最低で 2000 兆円、最高で 4000 兆円を処理するためには、1ドル=10円にすると、ちょうど理屈が合うのである。1ドル=100円を、10分の1にする。すなわちデノミネーションを行う。そうすると魔法の手品にかかって、対外債務(外国からの借金)の分は実質で10分の1に削減されるのだ。アメリカは、対外債務が総額で 4000 兆円ぐらいあるだろうから、その返済の負担が、1ドル=10円になると10分の1で済む。すなわち 4000 兆円が 400 兆円の債務返済で済むのである。

 デノミネーションは、単なる通貨の名称の変更にすぎませんから、借金を実質的に10分の1にすることはできません。そんなふうに1国の判断で借金が値切れるならば、国際取引は成り立たなくなります。
 また、もしもアメリカにそんなことができるなら、日本も同じことをすればいいし、それよりも、日本が 100 分の1のデノミをすればアメリカの体外債務をもっと大きくすることが可能になります。いうまでもなく、そんなことはありえません。
 デノミをすれば、表面上、借金を10分の1にすることはできますが、税金などの収入も10分の1になり、借金を返す負担はデノミの前後で何も変わりません。
 副島氏はここのところ、何か勘違いをしているようです。

 他のことは取り上げませんが、乙は、この本はあまりおすすめではないように感じました。

続きを読む
ラベル:副島隆彦 ドル
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2010年01月24日

橘玲(2009.6)『貧乏はお金持ち』講談社

 乙が読んだ本です。「「雇われない生き方」で格差社会を逆転する」という副題がついています。
 本書は、全体として、マイクロ法人(ひとりが社長であり、同時に従業員であるような組織)を勧めるという内容です。1章と2章がマイクロ法人を活用しようという趣旨です。3章では会計の問題を扱います。4章では税金の問題を、5章ではファイナンスの問題を扱います。以前の橘氏の著作と重なるところもあります。
 普通のサラリーマンがマイクロ法人を作るかという問題では、まず、会社側の考え方が重要でしょう。会社の中に普通に雇用される人とマイクロ法人に所属し、業務委託で働いている人がいて、会社がうまくやっていけるのでしょうか。将来、幹部社員にしたいと思っているような人にマイクロ法人を認めてしまっていいものかどうか、微妙な問題もありそうです。
 実際、マイクロ法人を作るかどうかとは別に、もしも作ったとしたらということを考える上では、大いに参考になる1冊ということになるでしょう。
 そういえば、ずっと前に、乙は妻に会社を作ることを勧めて、「1円で起業する方法」とか何とかいう本をプレゼントしたのですが、無視されてしまいました。実際、妻は会社内で個人会社みたいな仕事をしていたのにです。それくらい、妻は会社べったりだったということです。
 本書には、いろいろとおもしろい記述がありました。
 p.49 あたりで、日本の雇用制度を映画館にたとえている点は秀逸です。すでに映画館に入ってしまった人たちは、そこ出たくないし、入りたい人は列をなして待っているというわけです。これに関して、単純な解決策はありません。
 p.60 あたりでは、アメリカでも 1950-1960 年ころに会社主義(組織人)の考え方があり、今の日本と似たような状況にあったとしています。その後、フリーエージェント化してきたというわけです。したがって、p.66 で述べるように、日本もフリーエージェント化するべきだ(そうなるだろう)ということになります。
 p.88 では、ネットカフェ社長という考え方が語られ、たいへん興味深く思いました。「個人」としては、ネットカフェ難民はそこを抜け出ることがむずかしいのですが、起業してしまえば、「個人」よりもずっと立派に見えるという話です。
 p.99 アメリカのフリーエージェントがマイクロ法人を設立する一番の理由は、個人事業主だと無限責任を負う必要があるが、法人だと有限責任で済むからだとしています。新しい見方でした。
 p.290 では、新銀行東京が行った無担保無保証の融資がなぜ不良債権化したかを述べています。融資先を紹介する信用金庫などにしてみれば、信用保証協会の保証が受けられるような優良企業は、自分の優良顧客だから、新銀行東京に紹介するはずはありません。中小企業にしても、非常に低コストで資金調達ができるようになっているというわけで、新銀行東京が顧客として考えていたミドルリスクの資金がほしい中小企業などはそもそも存在しないということです。明解な説明で乙は素直に納得しました。
 日本の仕組みを考える上で、とても興味深い本だと思います。


参考記事:
http://koutou-yumin.seesaa.net/article/132907762.html
ラベル:橘玲
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2010年01月19日

田村秀男(2009.6)『世界はいつまでドルを支え続けるか』(扶桑社新書)扶桑社

 乙が読んだ本です。「金融危機と国際通貨戦争の行方」という副題がついています。
 巻末に、次のような注記があります。「本書は、SANKEI EXPRESS に2008年4月から2009年4月まで掲載された連載、「国際政治経済学入門」を加筆・修正、再構成したものです。」
 本書の第1部から第4部までは、ほぼ執筆順に収録されています。ここがあまりおもしろく感じられませんでした。いくつかの記述のダブりがあったりします。
 この種の連載は、執筆内容とそのときのできごととの同時性が重要ですが、まとまった本として読むときは、全体として著者が何がいいたいかを理解したいものです。その点で、乙は、やや記述が散漫になっているように感じました。
 書かれている内容も、(たった1年くらいのことなのに)ずいぶん古く感じられます。「麻生総理」が出てくると、今や「そういえば前は自民党政権だったなあ」という感じです。
 さて、タイトルにあるように、世界は基軸通貨としてのドルを支えているわけですが、いつまで支え続けるのでしょうか。本書を読んでも回答は書かれていません。アメリカを中心に、中国やヨーロッパ(それに日本)がどんな態度で為替政策に臨んでいるかが記述されていますが、現状記述的な面が強いようで、著者がどう見ているのか、よくわかりませんでした。
 今、日本がドル建て米国債を大量に保有しているので、もしもドルが暴落する事態になると日本は大損害をこうむることになります。(中国も同じです。)だから日本はドルを支えなければならないわけです。
 しかし、それに対して、p.109 あたりと p.143 あたりで円建て米国債を発行するアイディアが書いてあります。いわゆるサムライ債です。こうすれば、為替リスクはアメリカが負う形になるので、日本にとっては安心して国債が購入できるというわけです。米国債ということで、日本の国債の金利よりは少しは色が付けられる(金利が高くなる)でしょうから、日本円の投資先として考えると、個人投資家としても、有望な金融商品になりそうです。
 アメリカのサムライ債はおもしろいアイディアですが、日本の対米追従外交を見ていると、こんなことは(アメリカにノーといわれて)実現しそうにないように思います。

ラベル:田村秀男 ドル
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2010年01月04日

禹晰熏・朴権一(2009.1)『韓国ワーキングプア 88万ウォン世代』明石書店

 乙が読んだ本です。「絶望の時代に向けた希望の経済学」という副題がついています。320ページほどの、ぎっしりと活字が詰まった本です。
 著者の名前がちょっと読みにくいですが、「う・そっくん」と「ぱく・くぉにる」と読みます。
 「88万ウォン世代」というのは、著者たちの命名によります。月収が88万ウォンの若者層ということです。88万ウォンは、この世代の平均月収だとのことです。88万ウォンがどれくらいかというと、今、1円が 12.85 ウォンですから、日本円で換算すれば、68,500 円ほどになります。これでは生活は大変きびしいものになるでしょう。
 乙は、韓国のワーキングプアの実態を描いた本かと思って手に取ったのですが、中身はまるで違っていました。韓国の20代の若者が世代的に搾取されている(誰から? 中高年世代からです)という話です。個々人の具体的な生活を描くというのではなく、韓国の20代の全体が置かれている厳しい状況を記述します。あたかも韓国の20代の全員がワーキングプアであるようにも読めます。もちろん、中にはリッチマンもいますので、全員に当てはまるわけではないのですが、リッチマンは20代の中の2%程度だと聞くと、残りの98%の人々にそのまま当てはまる話だということになります。
 この問題の解決は簡単ではありません。韓国の社会全体がその方向に動いているわけですから、今の10代が20代になる10年後にも同様に(あるいはさらに深刻に)ワーキングプアが大量に存在していることになります。
 このような若者の大変さを象徴しているのが、出生率といってもいいでしょう。韓国の少子化は日本以上に深刻ですが、これは、20代がいかに貧しいかを物語っています。ひとりでも生きていくのがやっとのときに、結婚して子供をもうけるなんて不可能に近いわけです。
 韓国はなぜこうなってしまうのか。
 詳しくは本書を読むしかありませんが、普通にアルバイトするとき、韓国では時間給で 300 円程度だという話です。日本では 700-800 円くらいにはなりますから、日本のワーキングプアのほうがはるかにマシです。
 p.220 あたりから、韓国の教育問題に触れていますが、まるで学校が子供たちを人質にとっているようだとしています。非常に強圧的な学校のあり方が描かれます。
 p.238 あたりでは、韓国の中小企業が崩壊してしまったことを述べています。この結果、多くの人々は買い物をスーパーでするようになり、ちょっとした商売である自営業(個人商店)が全滅状態になってしまい、結果的に人々の働き口がなくなってしまっているというわけです。スーパーの店員は、もちろん、時給で働く形であり、大した給料にはなりません。
 この問題の解決はきわめてむずかしく、本書を読了して、乙は暗澹たる気分になりました。
 そして、日本のことを考えると、韓国社会のこうした変化が、実は日本の将来を暗示しているように思われてなりません。今の日本は、就職氷河期などといわれていますが、この傾向は、もしかしたら今後10年も20年も続くかもしれません。若い人の中で非正規社員の占める割合がますます高まるかもしれません。大学を出ても、まともな就職の道はなく、フリーターになるしかないかもしれません。本書で描く韓国の姿はまさにこういった状態なのです。
 日本の場合も、解決策はそう簡単に見つかるものではありません。
 若者の奮起が必要なのですが、選挙にも行かないような若者層を見ていると、
2009.12.23 http://otsu.seesaa.net/article/136084374.html
解決ははるかに遠いように思えてきます。


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2009年12月19日

週刊ダイヤモンド 2009.12.19 特集「負けない海外投資全指南」

 乙が読んだ雑誌です。「「本当に買っていいETF・投信」完全分析」という副題がついています。
 特集自体は、pp.34-83 ということで、50ページもあります。かなり大部な感じです。
 Part1では、「「世界経済の成長」を買う!」と題して、世界の各国が10年後にどうなっているかを予測しています。
 興味深いのは、p.41 の表です。2020年の各国の株価予測が載っています。これがどうやって計算されたかというと、「注」に書いてありますが、「各国の代表的指数の08年12月1日から09年12月4日までの平均値を算出。門倉氏の予測に基づいてIMFの09年の名目GDPの予測値を1とした場合の、それぞれ15年、20年の名目GDPの水準の倍率を平均値に掛けたもの」となっています。つまり、各国の株価は各国のGDPの成長率に単純に比例するという考え方が基礎になっています。この考え方は、まさにジェレミー・シーゲル氏のいう「成長の罠」そのものであり、シーゲル氏によれば、まったく当てはまらない(むしろ逆の傾向がある)ということになっています。
 乙は、「成長の罠」が当てはまるか当てはまらないか、疑問だと考えていますが、当面、成長率の高い国に投資しても儲かるわけではないと考えています。
2009.12.7 http://otsu.seesaa.net/article/134909389.html
2009.12.5 http://otsu.seesaa.net/article/134738480.html
2009.12.3 http://otsu.seesaa.net/article/134565332.html
2009.12.2 http://otsu.seesaa.net/article/134477485.html
2009.11.30 http://otsu.seesaa.net/article/134292992.html
2009.11.29 http://otsu.seesaa.net/article/134198101.html
2009.11.26 http://otsu.seesaa.net/article/133921112.html
つまり、乙は p.41 の表は、間違いであると考えています。
 Part2は「低コストと分散で負けない!」というものです。
 pp.47-49 の「コストの重みを知る」はとりわけ重要な記事でした。ファンドの信託報酬はまだまだ下げられるという話です。業界の事情の裏側まで書いてあり、個人投資家はぜひこういったところも知っておくべきことでしょう。
 それをデータで検証するかのような p.50 のコラムがあります。中国株、新興国株、インド株のグラフを出して、低コストのETFと高コストの投信の運用成績を比べたグラフです。記事の主張はわかりますが、乙の感覚では、これらのグラフは失敗していると思います。なぜならば、グラフにした期間が3年程度しかないからです。低コストのETFと高コストの投信と言ったって、そのコストの差は1年で1%程度しかありません。新興国株のところは、最低と最高で2%近くの違いがありますが、これは例外です。1年で1%ですから、3年経ってもたかだか3%しか違わないのです。ある日を基準にして100として、それから3年経った場合でも、数本の折れ線のグラフは3程度しか違わないのです。一方で指数の上下のブレはきわめて大きく、中国株などは100から出発して、340を越えるときもあれば、60を下回るときもあるといった調子で、そんなグラフで3程度の違いは見えなくなってしまいます。いや、グラフで確かに違いが見えると主張する人もいるかもしれません。それは、たまたまグラフがそうなったのであって、本来は違うのです。
 つまり、p.50 のようなグラフを書く場合、3年程度では意味がないのです。10年もすれば、1%のコスト差でも結果に大きく響いてきて、10%以上の差がつきますから、100を基準にすれば10程度の差ということで、グラフではっきり違いが確認できるでしょう。しかし、そんなに長期の運用をしているETFなり投信なりがそうそうあるわけではありません。ですから、グラフ化して、目で確認するというのでは不十分であり、むしろ誤解を与えるものなのです。頭でよく考えなければなりません。そうすれば、ちゃんと結論が出ます。
 記事の意気込みは買いますが、空振りしています。
 Part3は「何を買えばいい? 全ガイド」ということで、ETF や投信の一覧が掲載されています。これはなかなかの力作です。こういうのを見ながら相互に比較して、必要なものを買うことができます。
 Part4は「「買い時」はいつ? 大予測」ということで、相場観を掲載しています。週刊誌としては、こういう記事にしておかないと、雑誌自体の売り上げが伸びないのでしょうが、ムダな記事です。実際、記事を見れば、「識者」の相場観が大きくずれていることが見てとれます。仮に一致する場合だって、それが正しい(本当にそうなる)とは限りません。いや、むしろ当たらないのが当たり前と見るべきです。こういう記事を掲載するあたりは、特集の企画者は本当の意味で投資の本質をわかっているわけではないことを示しています。

 なお、乙は、今回の記事で「書いてなかったこと」も気になりました。それは、国内で行う投資だけでなく、海外の証券会社や銀行を通じて行う海外投資のことです。50ページの中で書くことは無理かもしれません。でも、それで「全指南」とは羊頭狗肉的だなあと感じてしまいました。国内の証券会社や銀行の高コスト体質にも切り込んでほしかったです。
 この雑誌の特集に関しては、あちこちの投資ブログで話題になっています。
http://blog.livedoor.jp/tsurao/archives/1251751.html
http://fund.jugem.jp/?eid=1244
http://www.lay-up.net/archives/blog-entry-733-0912142250.html
http://renny.jugem.jp/?eid=1284
http://randomwalker.blog19.fc2.com/blog-entry-1259.html
http://nightwalker.cocolog-nifty.com/money/2009/12/1219-f6f8.html
皆さん、高い評価が多いのですが、乙は、そんなに諸手をあげて賛同する気にはなれませんでした。

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2009年12月16日

高橋洋一(2009.9)『恐慌は日本の大チャンス』講談社

 乙が読んだ本です。「官僚が隠す75兆円を国民の手に」という副題がついています。
 タイトルにある75兆円はどこに隠されているのでしょうか。25兆円は政府紙幣で、25兆円は金融緩和で、そして残りの25兆円は埋蔵金で調達しようというのが本書の基本的アイディアです。
 本書を読んでいくと、日本の政治(家)の問題点などが浮かび上がってきます。著者は、元内閣参事官というだけあって、そのあたりの記述はきちんとしています。
 序章「埋蔵金を埋め戻す官僚」では官僚たちがどんなことを考えているのかを描いています。自分たちの天下り、そのための基金の設立などが話題になります。p.43 では、電波オークションが提案されています。テレビ放送が地デジになるということは、実は、そのためにあいた帯域を売ることができるのですね。1兆円から数兆円になるという話で、それを特定のテレビ局に無料で免許を与えて使わせるのは大変な補助金を与えているようなものだと説きます。
 第1章では「史上最大の恐慌の足音」ということで、今の日本の現状を述べます。
 第2章「政府紙幣は麻薬なのか」が政府紙幣論の根幹です。なかなかおもしろい話で、乙も政府紙幣には賛成なので、興味深く読みました。p.105 では、1枚だけの政府紙幣を発行し、それを日銀に引き取らせるなどというアイディアも出てきます。驚きました。そんな手もあったんですね。
 第3章は「世界大恐慌の教訓」で、戦前のことを回顧して述べています。
 第4章「インフレ目標政策という世界標準」では、今の経済状況の中で財政や金融をどう考えるべきかを述べます。
 p.180 では、日本の1990年代の経済政策を間違いの例としています。「景気対策に財政政策が効いたのは、為替が固定相場制だった頃までで、変動相場制の下では、ほんの少ししか効かないというのが、当時から既に世界の常識だった。」とあります。日本は公共事業などの財政出動に頼っていたので、赤字国債の発行は行ったものの景気浮揚はできなかったとしています。それはそうかもしれません。しかし、このような世界の常識が日本の政治家に受け入れられなかったのはなぜなんでしょうか。高橋氏は、事前に、身を持って、政治家に説明するべきだったように思います。(もしかしたら、したのかもしれませんが。)
 この章は、インフレ目標論について述べるのですが、p.192 から、インフレ反対論への反論が書いてあります。いろいろなタイプの反論に逐次答えていく形になっています。ここはおもしろかったです。乙も、経済はややインフレにしておくのが望ましいと思っていますので、ここの議論を興味深く拝読しました。
 第5章「構造改革の真実」では、今までの政治の流れをきれいに説明したものになっています。
 pp.231-233 で、安倍政権下で、事務次官会議を経ないで政府答弁を閣議にかけるという大改革をやった話が語られます。乙はまったく意識していませんでしたが、すごい事件があったのですね。マスコミではまったく報道されませんでした。このあたり、日本のマスコミが病んでいます。
 p.241 では、旧厚生省と旧労働省とのセクショナリズムが描かれます。5兆円のぶんどり合戦というわけで、凄まじい話です。乙は労働保険特別会計に5兆円もの埋蔵金があるとは知りませんでした。こういう話を聞くと、事業仕分けなどという1兆円にも届かないパフォーマンスをしていること自体、ずれているとしか思えません。
 第6章は「強国として甦る千歳一遇の好機」です。日本をこんなふうにしたいという見取り図です。こういうのを読むと、なるほどと思ってしまいますが、もしも本当に実現するとなると、今の諸制度と比べてどちらがいいか、よくわかりません。
 本書は、日本経済を捉え直すという点で、興味深い1冊といえるように思います。

ラベル:高橋洋一
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2009年12月14日

増田茂行(2008.11)『100円ショップの会計学』祥伝社

 乙が読んだ本です。「決算書で読む「儲け」のからくり」という副題がついています。
 キャンドゥと九九プラスの財務諸表を題材に、どんな考え方で儲けを出しているのかを解説した本です。
 これから自分のお店を出そうと考えているような人を読者として想定しているようで、自分で帳簿を付けるようなことも解説してあります。
 100円ショップでは、こんなものまで100円で買えるんだと驚くようなことがしばしばありますが、一方では、最近は200円や300円のものを売っていたりします。なぜそのようなことになるか、平易に述べてあって、納得できます。同じ店内に儲かる商品とあまり儲からない商品があるという話などは、おもしろい話でした。お店の側ではわかっていてやっていることなんですね。
 立ち食いそばやバイキングレストランなどを会計学の視点から眺めて、どう儲けているかを説明しているあたりもわかりやすい実例でした。
 しかし、全体として、常識的な見方から大きく変わるものでもなく、まあこうだろうなと感じていることをしっかりと具体的に指摘してくれたような記述です。

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2009年11月22日

浅川夏樹(2009.8)『ETF』パンローリング

 乙が読んだ本です。「世界を舞台にした金融商品」という副題が付いています。
 本書をひとことでいえば、ETF の総合解説書です。今まで、こんな詳しい解説書は見たことがありません。
 ただし、日本で購入できないものも多数含まれているので、海外で口座を開き、そこで購入するしかないような場合も多いと思います。本書中には、そのような海外口座の開設法も説明されています。
 こういう多彩な投資手段がある世界(日本の国外)を見ると、日本国内で限られた投資手段しか提供されない現状が実に嘆かわしく感じられてしまいます。
 p.60 からは景気循環型ということで、セクターローテーションを取り入れている ETF の紹介があります。乙はこんなアクティブ・ファンドみたいな ETF があるとは知りませんでした。
 他にも、ファンド・オブ・ファンズ型の ETF やら、CDS に連動する ETF やら、VIX に連動する ETF まで解説されています。
 今後もさまざまなタイプの ETF が登場してくると考えられます。純粋にインデックス投資を行う場合には、現状でも十分かもしれませんが、少しは投資を楽しみたい人にはこういう選択肢も考えておいていいのではないでしょうか。
 世界に対する目を開かせてくれる1冊だと思います。
 もっとも、本書で紹介されている ETF を実際に買うかどうかは別問題で、悩ましい問題であることは事実ですが。
 自分自身で投資を実践してきた人らしく、具体的な記述にあふれる本です。その辺の投資本とは一線を画します。

ラベル:浅川夏樹 ETF
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2009年11月18日

水野和夫(2007.3)『人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか』日本経済新聞出版社

 乙が読んだ本です。
 本文は 300 ページほどですが、その後ろに巻末の注記が 62 ページも付いています。参考文献も 11 ページにおよび、本格的研究書になっています。
 ただし、実のところ、読みにくかったです。注が巻末にあり、しかもかなりの数の注が付いているということで、注まできちんと読もうとすると、本文の流れが断ち切られるし、しかも注の位置を探すのも大変になります。
 本書でおもしろいのは、きわめて長期の視点で経済を見渡しているところです。ざっと 500 年を見据えて議論していきます。こんな超長期のデータはどれくらいきちんと揃っているのか、疑問に思う面もないわけではないのですが、一応、著者の姿勢は一貫しており、乙はかなり信頼できると見ました。
 p.72 では、アジアの近代化を「収斂仮説」で説明しています。簡単にいえば、生活水準の低い国は豊かな国よりも平均して早く成長し、最終的には先進国の生活水準の7割から9割に収斂していくとのことです。過去 500 年の歴史で当てはまってきた考え方だというわけです。1600 年当時の先進国イタリア・スペインに対して、貧しい国・アメリカやオーストラリアがそうなっていきました。他にもたくさんの例が挙がっています。歴史は繰り返すといいますが、乙は、こんな長期的視点は持っていなかったので、驚きました。
 p.113 では、グローバル経済圏企業(IT企業、鉄鋼、輸送用機器)とドメスティック経済圏企業(情報通信と電力以外の非製造業)にわけ、前者が一人あたり GDP できわめて大きく(つまり生産性が高く)、後者はそうでないことを示します。今の日本でドメスティック経済圏企業(中小企業のかなりがこれに該当しそうです)が成長せず、各種の問題の原因になっていると指摘します。この二つを区分する見方も新鮮でした。現代日本の状況をわかりやすく説明してくれます。読んでいて腑に落ちます。
 p.182 では、インターネットの登場によって、それまでの国境線で区切られた「土地」という富の源泉を変えてしまったとしています。したがって、現在の成長物語は、pp.185-6 で述べられるように、小さな政府によってのみ達成可能になっているとしています。ここの記述も現代日本を考える上で重要な見方です。
 pp.194-5 で述べられる3回の歴史的断絶(1回目は紀元前 8000 年の新石器革命、2回目は16世紀の大不況を中心とする(ヨーロッパの)経済変動、そして3回目が現在のIT革命)の話もおもしろかったです。今が3回目なのかどうかは、もっと時間が経ってから検証するべきでしょうが、そういう見方があるということ自体が興味深いのでした。
 p.264 では、日本の就学援助率(生活保護を受ける家庭並みで、修学旅行費や給食費などが支給されるのが就学援助)を見ると、全国平均よりも高い地域として東京と大阪があるそうです。地方では職がないため、就職の機会が多い都会に若い人が集まり、最初は家賃の安い地区に住むことになります。東京のある区では就学援助率が 43.1% になるとのことで、驚きます。この区は足立区でしょう。
http://www002.upp.so-net.ne.jp/kyoiku-gifu/gakushukai-siryo9.pdf
このように、日本社会の中で二極化が起こりつつあるということです。
 いくつか、乙がおもしろいと思ったところを抜き出しましたが、まだ他にもあります。本書は図表をかなりたくさん使い、数値などの裏付けを持って語っていきます。その意味で、信頼性がある本です。今の日本をどう眺めたらいいかを考える上での好材料であるともいえるでしょう。
 直接投資に関わることではありませんが、視野を広げる意味では読んでも損はないように感じました。

ラベル:水野和夫
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2009年11月15日

岡本和久(2007.6)『100歳までの長期投資』日本経済新聞社出版局

 乙が読んだ本です。「コア・サテライト戦略のすすめ」という副題が付いています。
 内容は、スタンダードな投資入門書といったところでしょうか。
 対象読者は団塊の世代です。p.80 では、団塊世代用の本だと明記されています。60歳前後の人にお薦めの本です。たとえば、本書中に登場する架空の投資家はちょうど60歳。退職金を得て、6150 万円を運用しようとしています。大変身近な例であり、退職者としてはちょうどピッタリの例なのではないでしょうか。
 p.13 では、人生を30歳と60歳で区切って3段階に分けて考えるとよいとしています。学校を卒業するのは20代前半としても、就職した後は、まずは仕事を覚える時期があり、30歳くらいで一人前になるという考え方です。妥当な考え方です。そして、60歳は退職時で、これは当然でしょう。60歳を過ぎた時期がサード・エイジというわけです。これを 100 歳まで生きると仮定して人生を設計するのがよいというわけです。
 p.68 には、資産クラスごとのリターンとリスクが書かれています。
資産クラスリターンリスク
国内債券
2.50
5.00
国内株式
7.50
21.00
海外債券
3.50
12.50
海外株式
7.50
19.50

 データの出所は企業年金連合会のホームページで、1970 年以降のデータに基づいた円建てによる計算結果だそうです。
 以前だったら、「ふうん」という感じで、こういうデータを見ても当たり前のように感じて、通り過ぎていたでしょう。
 しかし、今は、この数値が違って見えます。
 海外債券が 3.5%、海外株式が 7.5% と国内並み(あるいはそれ以上)の成績を残していますが、これが円建てによる計算ということに注目するべきです。
 ドル/円の為替レートを考えると、1970年ころは、1ドルが 360 円でした。2007年ころは1ドルが 120 円でした。37年間で3倍の円高になったわけで、年率に換算すると、ざっと 3% 程度の円高です。つまり、現地通貨建てだと債券が 6.6% (1.035×1.03×100-100)のリターン、株式が 10.7% のリターンということになります。
 もちろん、米ドルだけが通貨ではなく、他の通貨と円の為替レートも考慮するべきですが、世界の経済のかなりの部分をアメリカが占めていることを考えれば、ドルだけを考えても、まあまあの線になるでしょう。
 つまり、円建てで見ると、海外の債券も株式も、国内のものと同様に見えるのですが、海外の視点で見ると、実はかなり高いリターンがあったのです。円高でそれが相殺されて見えているのです。
 海外から日本株を見ても同様で、単純な株価の上昇に加えて、円高もありましたから、日本株に投資しておくことで大きなプラスになったものと思われます。(実際、1970 年ころに外資が自由に日本株の売買ができたのかどうか知りません。たぶん規制があってできなかったのではないかと思います。)
 p.183-184 では、人気のある投信を買うのはまずいということが述べられています。乙は、以前、人気のあるものを買ったりしたのですが、それではダメだというのは自分の経験で痛感しました。本を読んで失敗を避けるのもいいでしょう。失敗を経験して痛みとともに学ぶのもいいでしょう。自分の失敗がないと、こういう本を読んでもなかなか納得できないのではないかと思います。
 巻末には索引が付いています。しかし、参考文献は挙がっていません。ちょっとだけちぐはぐな感じがしました。
 投資の入門書としては良書だと思います。乙は団塊の世代ではないのですが、割と近い年齢なので、本書は親しみを持って読むことができました。

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2009年11月04日

山崎元(2009.5)『資産運用実践講座T 投資理論と運用計画編』東洋経済新報社

 乙が読んだ本です。
 お金の運用に関する「中級」のテキストブックだとのふれこみです。
 まえがきにあるように、本書は、もともとフィナンシャルプランナー向けの解説だったものに手を加えて1冊にしたものだとのことです。それはわかるのですが、一読して、前半の第1章から第4章までがどちらかというと投資の考え方を述べたもので、FP向けの内容に感じました。一方、後半の第5章から第7章は投資家向けの内容のように感じました。個人投資家としては後半だけ読んでもいいのではないかと思いました。(それでは、著者の意図が伝わりませんが。)
 後半に書かれた内容は、山崎氏の以前の著述と重複するもので、やや新鮮味に欠けますが、しかし、変わらぬ真理はその通りにしか書けないので、これでいいのではないかと思います。個人投資家として心得ておくべきことはこれで尽くされているようにも思います。(乙は、以前、山崎氏とやや違う考え方を持っていたのですが、最近は、山崎氏の主張を正しいと考えるようになりました。)
 本書で乙がおもしろかった点を一つあげておきます。p.12 ですが、「年金生活者の資産運用方針」を述べたところです。110 歳まで生きることを仮定して、今の資産を取り崩しつつ 110 歳まで継続的に生活していく(70歳なら40年間で取り崩す)ように計算して、その金額を取り崩すという考え方です。毎年1回資産総額をもとに、取り崩し額を計算し直しながら生活していくというものでした。具体的な考え方を示されて、乙は「そうだ」と思いました。
 読んだ後、「本書の内容は確かに中級だ」と思いました。しかし、こういう本を読む人はどんな人だろうと思いました。具体的なイメージがわきませんでした。個人投資家で本書が役立つ人がいるのでしょうか。
 やや歯ごたえのある内容でした。

 なお、本書 p.132 の注1)では、「運用期間とリスクに関する数学的な議論は専門書(例えば『金融工学』野口悠紀雄・藤井眞理子著、ダイヤモンド社、pp.127-129)などを参照してください。」とありますが、そこを参照すると、ランダム・ウォークの極限としてのブラウン運動を定式化しているだけで、運用期間とリスクに関する議論ではないように思います。山崎氏の勘違いなのか、乙の読み取りが不十分なのか、わかりませんが。

ラベル:山崎元
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2009年11月02日

門倉貴史+賃金クライシス取材班(2008.6)『貧困大国ニッポン』(宝島社新書)宝島社

 乙が読んだ本です。「2割の日本人が年収200万円以下」という副題が付いています。
 たくさんのワーキングプアに取材して、その生き様の具体例をちりばめた本です。大変きびしい生活が赤裸々に描かれます。中でも、pp.70-90 あたりでは、貧しさの故に売春するしかない(地方の)女性が登場します。いやもうどうしようもない感じです。また、男性の例では、pp.127-150 で闇職系若者を取材していますが、犯罪に手を染めるとなると、一線を越えたことになります。今の日本で、売春や犯罪と結びつくほどに、貧困が蔓延しているということです。貧しさ故にこんな人たちがいるのだと知るには、こういうルポ風の本が適していると思います。投稿する証言は全部匿名ですが、きちんと取材した結果だろうと思われます。
 本書では、最低賃金を引き上げることでこうしたワーキングプア問題を解決しようという提案をしていますが、話はそう簡単ではなさそうです。働き方を含め、日本社会のさまざまな事情が絡み合っており、それに対する簡単な解決策はないだろうと思います。
 多数のワーキングプアがいる日本の現状も問題ですが、日本社会の将来を考えると、さらに暗澹たる気持ちにさせられます。
 乙は、どうしたらいいか、まったく見当も付きません。マクロな日本社会の問題もさることながら、ミクロなワーキングプア個人のケースでも悩みは深いものがあります。
 乙の回りにも、働いていない若い人がいたりするのですが、そういう人をどうしたらいいか(どう働きかけをしたらいいか)、考えてもよくわかりません。困ったことだと腕組みするだけで、時間がどんどん流れ、そういう人たちが社会から取り残されていきます。10年、20年と経つと、みんなそれだけ年を取りますから、今のままでは成り立たないのですが、さりとて、展望はまったくありません。

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2009年10月31日

大前研一(2009.6)『最強国家ニッポンの設計図』小学館

 乙が読んだ本です。
 タイトル通りの本で、日本をどうするといいのか、明解に語っています。
 こういうのを1冊読むと元気になります。
 第1章「「年金と税金」で国民の「安心と意欲」を作り出せ」では、年金と税金をどうするべきかを論じています。
 p.31 から、高齢者に年金を辞退させる案が書いてあります。「えっ」と驚く新発想です。辞退してくれる人には所得税を安くしたり相続税をゼロにするという考え方です。こうすると、確かに、資産家などは年金を辞退するかもしれません。しかし、辞退する人は、辞退することで結局トクをすると考える人たちですから、国家レベルで見ると、年金か税金かのどちらかが安くなって、結局、国としては実入りが少なくなるように思うのですが、それでいいのでしょうか。
 p.34 では、年金を3割カットという案が出てきます。あるいは毎年5%減です。これまた思い切った提案です。今のように高齢者が若年層よりも多く、かつ選挙のときの投票率が高齢者のほうが若年者よりも高い場合は、こういう提案が通ることはなさそうです。しかし、データを示して、これが筋道だと説く大前氏の議論には説得力があります。
 p.68 からは「50兆円国家ファンド」を創設し、日本人すべてが「10%利回り」を手にする社会を実現せよと説きます。確かに、そうできれば言うことなしですが、「10%」の利回りは不可能だと思います。大前氏は、外国での大規模・長期投資や株式、不動産、デリバティブなどで運用すれば可能だと考えているようですが、乙はそうは思いません。それらの期待リターンは10%まで行かないはずです。p.72 では、実際10%が実現できた例を挙げていますが、それらは全部ドル建てであり、円建てならば、この間の円高傾向を考慮すると、プラスになっているかどうかさえあやしいものです。国家間で金利差がある場合、長期的には高金利国の通貨は下落し、低金利国の通貨は上昇するので、ドル・円の金利差が数%ある状態が今後も長く続くならば(今まで長く続いてきたのですから、そう考えるほうがいいと思いますが)、それだけで10%の利回りは不可能ということになります。
 第2章「経済を復興し、産業を興せ」もおもしろい話がたくさん出てきます。
 p.106 から、食糧安保の話が出ます。基本は「真の食料安保は「世界に打って出る農業」で実現せよ」ということで、日本人が、その知識と技術を持って外国で穀物などを生産し、それを日本に輸入するというアイディアです。第4次農業基盤整備事業費として、1993-2006年に41兆円も使ったとのことですが、それで農業がどうなったか、さっぱりわからないと述べています。だったら、そのカネを使って、世界中の農地と穀物メジャーを買うほうがいいというわけです。4大穀物メジャーを全部買っても 8.8 兆円程度だろうと推計しています。乙も、日本国内の農業を見ていると産業として成り立っていないと思うので、大前提案には同感しました。
 なお、最近、日経ビジネスONLINEで連載の始まった「漂流するコメ立国」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20091013/206964/
も、関連して興味深いと思います。
 第4章「憲法改正と道州制で「新しい国家のかたち」を作れ」では、道州制のあり方や国会のあり方など、根本的な改革案を示していますが、その中に、p.214 で、重要案件については国民投票で決めるとしています。これはうまくいかないのではないでしょうか。技術的には、国民投票は可能ですが、今の国民の関心と知識のレベルでは、国民投票はとんでもない結果になりそうです。いくつかの国民投票では矛盾した選択がなされるでしょう。たとえば、増税には反対、各種財政支出には賛成、国債の追加発行には反対というような結果になりそうです。そんなことで国家が運営できるとも思いません。
 本書では、いくつか問題に思うところもありますが、こういう大きなビジョンを全体として示されると、なるほどなあと思える面があります。まあそう簡単に実現できるとも思えませんが。
 こういうビジョンが示せる人が政治家(国のリーダー)になるべきでしょうね。とはいえ、日本の選挙の実態を考えると、こういう人はなかなか当選できないでしょうが。
 それこそが日本が衰退していく道なのですが、誰も気がついていません。

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2009年10月23日

竹田和平・澤上篤人(2009.3)『投資の極意は「感謝のこころ」』PHPパブリッシング

 乙が読んだ本です。
 投資家として有名な竹田和平氏とさわかみファンドの創立者の澤上篤人氏の共著ということで、期待して読みました。
 結果としては、おすすめできない本だと思います。
 2回の対談(それに+αとしての付録)を本にまとめたものなのですが、対談は、考え方などを述べあうにはいいものの、そのような考え方の裏にある具体的なデータなどを示すことはむずかしく、実際、本書中にもそういう話はほとんど出てきません。そのため、すらすらと読むことはできますが、それだけで、いくつかのエピソードが記憶に残る程度です。
 投資に関する本ではなく、読む必要はないものと思われます。
 乙がおもしろいと思ったのは、p.28 から p.30 の澤上氏の発言で、農地解放で「家」が破壊されたマイナス面を指摘しているところでした。戦後の農地解放を「おかしい」としています。以前の地主と小作人の社会でも、地主は小作人のことを考えていたし、持ちつ持たれつで田舎が成り立っていたとしています。それを農地解放で破壊し、小作人が農地のオーナーになり、突然、自分で農業経営をするようにいわれたわけで、これはうまくいかないというわけです。多くの人は自立して農業をやっていく勉強も準備も十分にできておらず、結局役所の規制や保護が行われ、農家がダメになったという見方です。
 今でも、日本の農業は問題視されていますが、その発端は農地解放にあったようです。

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2009年09月27日

冨山和彦・松本大(2008.12)『この国を作り変えよう』講談社

 乙が読んだ本です。「日本を再生させる10の提言」という副題がついています。
 著者二人がそれぞれの章を書き、最後にそれらをまとめて10の提言とするというスタイルで書かれています。
 提言の中のいくつかについて、乙の意見を述べます。

2 世代別選挙制度の実現
 基本的認識として、今の中高年世代が若者世代(さらには今後生まれてくる人たち)からカネを奪っているという立場に立っています。そのような現状を変えていくために、20代から60代まで年齢で選挙区を変えて各世代の議員定数を人口比とするというアイディアです。
 本書には書かれていませんが、当然、20代選挙区に立候補できるのは20代の人なのでしょうね。
 70代の人はどうするのでしょうか。80代の人は? 90代の人は? 「何歳から上」はひとまとめというわけにはいかないと思います。(衆議院の?)全体の議員定数を人口の年齢構成比で案分して、選挙区定員が1以上になるならば、当然、その世代の選挙区がもうけられてしかるべきです。それを無視する案はまずいと思います。
 年齢別に考え方が違うし、将来への展望なども異なるので、世代別選挙区をという趣旨は理解できるのですが、だったら、国内で人々の間の大きな差を生むもう一つの要因=性別についても考慮するべきでしょう。男性と女性では興味や関心も異なるので、選挙区も男女を分けることにしたいと思います。
 とすると、20代男性選挙区、20代女性選挙区、……ということになりますが、これはこれでいいのかもしれません。結果的に議員の約半数が女性になり、先進国としては政治への女性の進出度が極端に低い現状をあっという間に解消できます。
 今の地域別代表の仕組みを根本的に変えるやり方なので、各種抵抗も大きいと思いますが、地域別選挙区の1票の重みの不平等を考えると、いっそのこと、世代別選挙区にしてしまうというアイディアもおもしろいと思います。実現すれば日本の社会が大きく変わるでしょう。

10 戸籍制度の全廃と婚外子の権利制限撤廃
 抜本的な少子化対策として戸籍制度を全廃するという案ですが、乙は賛成できません。婚外子の権利制限撤廃の方は納得できます。
 具体的な議論は、p.104 から書かれていますが、戸籍を撤廃する理由が不明確です。なぜ戸籍を撤廃すると少子化対策になるのでしょうか。戸籍制度に問題があるから少子化だという議論は説得的ではありません。
 戸籍制度がなくなると、マイナス面がたくさん出てきます。まず、親子関係が記録されませんから、遺産相続問題が真っ先に問題になるでしょう。また、夫婦関係も記録されませんから、結婚・離婚制度も意味がなくなります。となると、夫婦間で扶養の義務もなくなり、夫婦のうちの収入の少ない側(ほとんどは妻側)が多大な不利益を被ることになるかもしれません。これらに関連して、訴訟が頻発して裁判制度が機能麻痺になる可能性もあるでしょう。次に、諸外国との関係において、パスポート(外国に対する当該人が日本人であることの証明書)の発給の問題が生じます。戸籍がないと、「日本人であることの証明」がしにくくなりますから、パスポートの交付の手間が増えると思います。それ以外にも、破産の処理、犯罪の記録、住民基本台帳との関係など、各方面での混乱は膨大なものになり得ます。戸籍制度が日本社会を安全な(不安のない)社会にしている面は非常に大きいと思います。
 戸籍がないことのマイナスを考えると、戸籍をなくすというのは、乙には暴論のように思われます。

 本書の提言はおもしろいと思うようなものもあるのですが、ちょっとした思いつきのようなものも含まれ、10個の提言がバラバラな提言にとどまり、全体として日本をどの方向にリードしていこうとするのか、理解できない部分もあります。
 こんなことをマニフェストに書く政党があったら、きっと全議員が落選するだろうと思います。

ラベル:冨山和彦 松本大
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2009年09月23日

森木亮(2009.2)『日米同時破産』ダイヤモンド社

 乙が読んだ本です。「中国覇権による恐ろしい時代がやってくる」という副題が付いています。
 タイトルからして強烈です。これからの世界の大混乱を予測する本です。
 p.188 では、世界が恐慌に突入する時期として平成22年(2010 年)と予測しています。そして、今、世界で行われている金(ゴールド)投資もそれを見越した動きだとしています。
 世界恐慌は来年です。あと数ヶ月で世界が恐慌になるでしょうか。乙にはとてもそんなふうに見えません。
 p.192 では、2010 年までには、二度目の金融危機がアメリカを襲うことは確実だと述べます。その発端は、クレジットカードの焦げ付きだそうです。
 そうなるかもしれません。ならないかもしれません。
 もしもそうなって、アメリカ株が暴落したら、……。乙はこのときぞとばかりアメリカ株を買うでしょう。
 p.211 では、2009 年に為替が1ドル=70円台に突入することを予測しています。円高の傾向はあるかもしれませんが、70円台までの円高はどんなものでしょうか。
 そうなるかもしれません。ならないかもしれません。
 もしもそうなって、ドル安・円高になったら、……。乙はこのときぞとばかりドルを買うでしょう。
 こういう暗い世界を予測していますので、森木氏によれば、p.238 にあるように「個人投資家は現金を持て」という結論になります。株価の暴落を予測する以上は、当然の結論です。問題は、このような大暴落があるかということです。本書を読んでも、乙は、恐慌になるという予測を信じることはできませんでした。
 p.253 のあとがきによれば、森木氏は国家破産予測を25年続けてきたと述べています。主張が一貫していてぶれないのはすばらしい話ですが、森木氏の主張に反して、過去25年、日本は破産していないという事実もまた重いものです。
 こういう考え方もあるというくらいに受けとめておけばいいのではないかと思います。
 乙は、森木氏の本をいろいろ読んできました。

2008.8.3 森木亮(2008.4)『日本国増税倒産』光文社
  http://otsu.seesaa.net/article/104024879.html
2008.2.21 森木亮(2007.12)『日本はすでに死んでいる』ダイヤモンド社
  http://otsu.seesaa.net/article/85113371.html
2008.1.25 森木亮(2006.2)『日本国破産への最終警告』PHP研究所
  http://otsu.seesaa.net/article/80486553.html
2007.6.5 森木亮(2007.3)『2011年 金利敗戦』光文社
  http://otsu.seesaa.net/article/43904848.html
2007.2.27 森木亮(2007.2)『ある財政史家の告白「日本は破産する」』ビジネス社
  http://otsu.seesaa.net/article/34777467.html
2006.4.16 森木亮(2005.2)『2008年 IMF 占領』光文社
  http://otsu.seesaa.net/article/16624855.html

 それぞれの記事を合わせて読むと、森木氏の著書に対する乙の考え方がわかるような気がします。(もっとも、乙自身、過去に読んだ本の内容など、覚えていない部分もたくさんあるのですが。)


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2009年09月16日

山岡道男・淺野忠克(2008.10)『アメリカの高校生が読んでいる資産運用の教科書』アスペクト

 乙が読んだ本です。
 「アメリカの高校生が読んでいる」ということから、どのようなことが書かれているのか、興味を持ちました。
 結果的には、乙にとって読む必要はほとんどありませんでした。内容がやさしすぎたのです。
 目次は以下の通りです。
第1章 「お金を稼ぐ」かしこい方法 収入の巻
第2章 「お金を貯める」かしこい方法 資産運用の巻
第3章 「お金を借りる」かしこい方法 ローン&クレジットの巻
第4章 「お金を増やす」かしこい方法 投資の巻
第5章 「お金を守る」かしこい方法 リスクマネジメントの巻
 個人の立場から、それぞれ正しい考え方が書いてありますが、どうも全体に突っ込み不足な感じでした。まあ高校生むけの本をいい大人が読むことの違和感なのかもしれません。
 おもしろかったのは、p.130 からのライフプランのところです。「日本のほとんどの一般家庭は、計算上では、少なくとも2回は破産の危機に見舞われる時期があります。その2回とは、住宅購入と子どもの教育費です。」と書いてあります。そういえば、確かに、乙の経験でもこの2回は大変な時期でした。
 乙が知らなかった話としては、p.147 にアメリカの個人の信用の4ランクが出てきます。上から順に、プライム、ニアプライム、ノンプライム、サブプライムです。サブプライムの定義は「クレジット情報に問題がある。また、職業が安定せず、賃貸住宅に住み、住所を転々とする。」です。サブプライム・ローンというのは、ずいぶんと信用度の低い人に金を貸す仕組みだったことがよくわかります。
 本書中には、一つ誤記がありました。p.193 ですが、グロソブのことを「グローバル・ソブリン・ファンド」と書いています。ただし、p.196 では「グローバル・ソブリンオープン」と書いていますので、著者が間違って覚えているわけではなさそうです。(「グローバル・ソブリン・オープン」が完全な表記ですが。)
 日本の高校生でも、本書程度の常識は身につけてもらいたいものだと思いました。早めに知っておいて悪い話ではありません。若者の中でクレジットカードの使い方を間違えたりする(リボ払いなどという高金利を平気で払う判断をする)人が多いことを見ていると、高校生くらいから金融の仕組みの一部を知っていれば、大人になってからも間違った判断をすることが減るだろうと思いました。
 もっとも、学校のカリキュラムの一部に組み込まれていないと、高校生はこういう知識を身につけないでしょうし、カリキュラム編成の変更はそれはそれはむずかしいでしょうが。

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2009年09月14日

永野良佑(2007.10)『ダマされないための投資家術』東洋経済新報社

 乙が読んだ本です。「儲ける投資家はまっとうな金融商品を買っている」という副題が付いています。
 内容は、タイトル通りの本で、読んで損はないものと思います。
 第1章が株、第2章が投資信託、第3章がデリバティブ、第4章が保険、第5章が債券、第6章が外貨建て商品、第7章が不動産、第8章が預金というわけで、一通りの金融商品を取り上げています。
 一読すると、吉本佳生(2007.11)『金融商品にだまされるな!』ダイヤモンド社
2008.4.28 http://otsu.seesaa.net/article/94842594.html
に近い印象を持ちました。
 乙が興味深く思ったのは、p.186「個人向け外債はどう作られるか」です。結論は、個人向け外債は買わないということです。個人向け外債がこんな形で作られていることを知ると、なるほど、投資するべきものではないと思います。
 乙はちょっとだけ個人向け外債を買っているのですが、今は反省しています。
2009.4.11 http://otsu.seesaa.net/article/117253628.html
 もう一つ、こちらは気になったことですが、p.163 で外国為替レートの決まり方を説明しているところで、ゴチックでこう書いてあります。「総合的には、実質金利の高い国の通貨は高くなりやすいと言えます。」
 一方、p.165 の図では吹き出しふうの結論のところで「金利の高い通貨に対しては、円高になりやすい」と書いています。円高とは、現地通貨安のことですから、言い換えれば「金利の高い通貨は安くなりやすい」ということで、p.163 の記述と矛盾しています。たった3ページのところで矛盾があるというのはいかがなものでしょうか。
 ちなみに、乙は、この問題に対して、p.165 の記述が正しいと考えています。つまり、p.163 の記述は間違いなのですが、短期的には p.163 が成り立つかもしれません。p.165 は長期的に成り立つと思います。
 本書は、金融商品に関する真っ当な考え方が述べてあり、全体としては良書だと思います。


ラベル:永野良佑
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2009年09月06日

小宮一慶(2008.8)『お金を知る技術 殖やす技術』(朝日新書)朝日新聞出版

 乙が読んだ本です。「「貯蓄から投資」にだまされるな」という副題が付いています。
 小宮氏は経営コンサルタントであり、明治大学大学院会計専門職研究科特任教授ということですから、専門家です。そういう人の書いた本ということで、どんな内容だろうと思って読んでみました。
 p.42 リバランスを定期的に行ってはダメで、むしろ、景気の転換点で行うべきだとしています。p.204 でも、1年ごとの定期リバランスを否定しており、小宮氏の持論なのでしょう。
 乙は、「景気の転換点で」というのがむずかしいように思いました。まずは、転換点をちゃんと知ることができるかという問題があります。次に、株価は景気の動向を半年くらい先取りするといわれており、景気の転換点では遅いのではないかという問題です。投資に時間が充分割けない人(現役のサラリーマン)にとっては、こういう作業はかなりむずかしいので、妥協して年1回のリバランスなどが推奨されるのではないでしょうか。
 p.64 アメリカはごく一部の金持ちが株をたくさん持っているという話です。むしろ、日本人のほうが(そんなに金持ちでなくても株を買っているという意味で)株が好きなのだそうです。グラフトン通りさんのブログ
http://fortheopensociety.blog17.fc2.com/blog-entry-161.html
でもこの議論が出てきます。これは驚きでした。本書で一番おもしろい点かもしれません。
 p.196 では、アクティブファンドは株価の上昇時にベンチマーク(平均株価)に勝つことがあるけれども、株価の下落時に負けることが多いと述べています。その理由として、p.197 では、ファンドのトレーダーは短期で評価されるから、株価が行き過ぎてしまうためだとしています。
 そうかもしれません。
 しかし、そんなふうに考えなくても、説明はできそうです。
 アクティブファンドは、株価の上下が激しくない株(電力株とか?)を対象としないと仮定します。株価が上がらないのではおもしろくないからです。すると、それ以外の株を買うことになり、結果的にβ値(平均株価との連動性)は 1.0 より大きくなります。つまり、平均株価の値動きよりも大きな変動を示すことになります。これでいいと考えられるのは、株価が長期的には上昇すると考えられるからです。つまり、投資信託が勝ったり負けたりしていても、長期的に勝つとすれば、β値を 1.0 以上にする戦略をしていれば、最終的には儲けになります。
 p.201 で、投資信託の選び方として、過去からの運用成績がよいものを選ぶべきだとしています。乙は、以前はこう考えていましたので、気持ちがよくわかりますが、今は、こういう考え方をしていません。過去の運用成績は、今後を保証するものではなく(まさに目論見書に書いてあるとおりです)、むしろ、値上がりを享受してきたからこそ、今後は運用成績が悪化するという考え方だって充分成り立つと思います。
 p.229 エピローグでは「「低金利」が日本をダメにする」ということで、利上げをするように説いています。低金利を止めることでいろいろなメリットがあるのはその通りですが、一方デメリットもあります。中でも一番の問題は、国債の償却をどうするかという日本の財政赤字の問題です。
http://www.kh-web.org/fin/
によれば、日本全体の債務残高は 1090 兆円を超えています。
 金利が上昇すれば、1% でも 10 兆円の利払いが必要になります。今すぐに必要になるわけではないけれども、次第にそうなります。今の日本の税収は 40-50 兆円くらいですから、10 兆円も利払いに消えてしまえば、予算編成が大変なことになります。
 この点は本書に書かれていませんが、書かなくていいものでしょうか。
 本書は、預貯金や投資について、ざっと知るには手頃な1冊です。しかし、内容的には、初心者向けではありません。現実に投資しているような人が読むといいでしょう。

ラベル:小宮一慶
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2009年08月22日

山田昌弘(2009.6)『ワーキングプア時代』文藝春秋

 乙が読んだ本です。「底抜けセーフティーネットを再構築せよ」という副題が付いています。
 ワーキングプアのさまざまな実態と、そのような日本社会における社会保障のあり方を提案する本です。
 いろいろ興味深いワーキングプアの例が挙がっていました。
 2章では、年金パラサイト・シングル(壮年・親同居未婚者)という例が紹介されています。年金をもらっている親(当然高齢です)と同居して生活を養ってもらっている独身者のことです。高齢の親が子どもの社会保障をしているわけです。こんな人が現実にいるんだと思うと、不思議な感じがしました。こういう人は、もちろん、親が死んだときが人生の危機です。
 3章では高学歴ワーキングプアが描かれます。乙の回りにもこういう人たちがいるので、生々しく受けとめました。その具体例は、次のようなものです。スクール・カウンセラー、オーバードクター、獣医師、歯科医師、ピアノ教師……。獣医師や歯科医師がワーキングプアだというのははじめて知りました。
 4章は、年金保険料を払う専業主婦の話です。サラリーマンの妻は、年金保険料を払わなくていいと思っていたのですが、夫が非正規雇用者の場合は、そもそも厚生年金に加入できないので、妻は国民年金に加入しなければならないということです。収入が少ない人が年金保険料を払わなければならない(一方、高収入の正社員の妻は払わなくていい)などというあたり、明らかに変です。
 5章では、遺族年金を利用して一生楽に暮らす方法が書いてあります。女性の場合、30歳を過ぎて結婚相手が見つからない場合は、60歳以上の不健康な高齢男性と結婚して扶養家族になるといいという話です。どうせ男性が先に死にますが、男性が年金を受給していれば、妻は自動的に遺族年金の受給者になり、死ぬまで年金をもらい続けることになります。遊んで暮らせます。これはすごい話です。実際、発展途上国の外国人女性が20歳以上も年上の男性と結婚して3児をもうけ、その後10年くらいして男性が死亡したため、その女性に毎年300万円が支給されているというのです。女性は出身国に子どもと帰ったのですが、当該国の平均年収の10倍の年金を日本から送金してもらうという生活をしているとのことです。
 乙は、妻と仲良く暮らしていますが、もしも妻が先立ったら、30歳過ぎの女性にねらいを定め「自分が死んだ後も、一生あなたのめんどうを見る」と約束して結婚相手を探してみましょうか。
 とにかく、今の日本の社会保障制度はおかしくなっています。それは、サラリーマンと専業主婦という標準家庭モデルと自営業の夫婦というモデルに当てはまらない人が多くなったからなのです。
 では、これからそのような多様化した日本をどうしたらいいでしょうか。
 著者の結論は、ミニマム・インカム(資力調査なしの現金給付システム)の導入です。その例として、「ベイシック・インカム」や「負の所得税」が考えられます。また、年金マイレージ制も提案されています。
 著者の構想が本当に実現するかといわれると、自信がありませんが、日本の現状のおかしいところをきちんと指摘し、それを解決するためには、これしかないということを知った上で、当面の年金制度や失業保険、介護保険などの問題を見ていく必要があるでしょう。
 大変おもしろい本でした。

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2009年08月21日

アレクサンドラ・ハーニー(2008.12)『中国貧困絶望工場』日経BP社

 乙が読んだ本です。「「世界の工場」のカラクリ」という副題が付いています。
 日本語のタイトルは、ちと大げさです。英語の原題「The China Price」のほうが内容にピッタリです。
 参考文献も含めて 450 ページほどの分量で、だいぶ長いです。読み切るのに一苦労します。
 中国の工場では、なぜ安く品物が作れるのかを解明した本です。つまりは、低賃金で長時間働く労働者を使っているということです。
 p.64 では、ウォルマートの工場監査の話が出てきます。ウォルマートは、自社が購入する物品がきちんと管理された工場で、ちゃんと賃金の支払いを受け、残業などのない労働者によって生産されたものであることを要求しています。そのため、「工場監査」があるのです。労働者の勤務時間など徹底した監査があります。賃金はもちろん最低賃金以上でなければなりません。
 しかし、ここで語られるのは、工場監査で見せる工場と、見せることのない第2工場の存在です。もちろん、後者のほうが生産量が多いわけです。中国ならではのだましあいが展開されているわけです。第2工場の勤務のあり方は、それはひどいものです。
 p.77 では、ウォルマートの監査対策としてどんなことをやっているかが語られます。タイムカードの偽造や賃金台帳の捏造など、考えられることが全部行われているのです。
 p.292 からは、ウォルマートの監査のしかたが説明されます。なかなかきびしいものです。しかし、これをかいくぐる工場が後を絶たないというのも実態の一側面なのです。
 p.307 では、監査で評価されるのは偽造技術だということが書いてあります。せっかくの厳しい監査も偽造によってまったく無意味になっています。
 p.315 にあるように、結局、監査もワイロで決まってしまうとのことです。役人も、工場主も、労働者も、みんなが満足しているのに、ウォルマートは一体何をやっているのかといった論調です。
 なぜ、こんな工場がたくさんあるのか。その原因は、いろいろなものが複合しているのは明らかです。中でも、p.340 にあるように、「投資家の責任」も大きいとのことです。また、p.344 では、安いものを求める消費者(つまり世界中の人々)も問題だとしています。
 本書を読んで、中国の工場のひどさにあきれてしまいました。今、労働者も目覚めつつあり、今後は勤務条件などの向上が見込まれるとのことですが、中国は、本当にそういう状態になれるのでしょうか。
 こういう本を読むと、中国投資に及び腰になってしまいます。
 とはいえ、エマージング諸国に投資するインデックスファンドを持っていれば、当然、しかるべき比率で中国にも投資していることでしょう。まあ、投資家としては、中国を無視することはできないと思っています。でも、そういう小さい気持ちが集まって、「資本」として中国に流れ込むと、こういう社会問題を引き起こしてしまうわけで、何ともいえない気持ちになります。
 膨大な参考文献が挙がっており、著者の徹底ぶりがわかりますが、できたら、もう少し記述を少なくしてくれたほうが読みやすくなったように思います。


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2009年08月13日

田中淳(2008.12)『中国ニセモノ社会事情』(講談社プラスアルファ新書)講談社

 乙が読んだ本です。「「ひ弱な途上国」の仮面を剥ぐ」という副題が付いています。
 中国ではいかにニセモノが横行しているかを丹念に追いかけた本です。絵画の贋作をはじめ、秋葉原流のメイド喫茶、即席ラブホテル、レンタル恋人、人口処女膜、大学入試のニセ成績など、驚きの連続です。
 中でも乙が一番驚いたのは、pp.141-142 に出てくる「レンタル悪女」です。離婚を幇助するというのですからすさまじいものです。もちろん違法行為です。レンタル悪女の多くは探偵会社に雇われた美人学生で、クライアントの多くは社長夫人です。こうして、レンタル悪女がターゲットの男を誘惑し、これで男が引っかかれば、高額の離婚慰謝料をもらって離婚することができるという話です。
 まさに中国には何でもあるという感じです。
 こういういろいろなことがビジネスになっているところがすごいです。中国人のたくましさを物語っています。しかし、多くの違法行為(あるいは違法すれすれの行為)が行われているわけで、中国はどうなってしまうのだろうと心配になります。こういう国に投資していていいのでしょうか。
 まあ、投資は、それなりのリターンがあれば、行ってもいいものでしょうが、こういう汚い側面を見せられると、投資意欲が減退します。


ラベル:田中淳
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2009年08月01日

川崎昌平(2008.6)『若者はなぜ正社員になれないのか』(ちくま新書)筑摩書房

 乙が読んだ本です。
 乙は、タイトルに引かれて読んでみたのですが、「若者は〜」ではなく「私は〜」という内容でした。つまり、本書はひとりの就職活動記です。自分で経験したことを書いているという意味でドキュメンタリーです。
 さて、著者は26歳。大学院修士課程を出てから2年間、無職でした。こういう人が就職できるでしょうか。最後まで読むと、結局就職には失敗したようです。そこまでの顛末を語った本というわけです。
 p.43 あたりでは、とにかくいろいろな会社に応募しても、片っ端から落ちるという経験を書いています。p.147 からはハローワークにいって職探しをしています。普通の求人とは違うということが書かれています。
 しかし、最終的には就職できなかったのです。
 なぜか。
 乙には本質的な理由はわかりませんが、現実はこんなものかもしれません。
 26歳ともなると、いわゆる新卒ではないし、かといって就職していたわけではないから何らかの技術を持っているわけでもないということです。毎年のように新しい人たちが大学を卒業して就職していきます。そのような大きな流れの中で26歳の無職青年を雇おうとする会社がどれくらいあるでしょうか。もちろん、何かの「売り」がある場合は別です。しかし、著者にはそういうものがなさそうです。
 面接のようすなど、かなり具体的に書かれている部分もありますが、そういうのを読んでみると、ちょっとこの人は雇いにくいなと感じてしまいました。
 乙は、勤務先でたまに人事に携わることもありますが、そういうわずかな経験から見ても、この人は積極的に雇いたくなる面が少ないように思えます。
 p.63 には、年齢階級別フリーター数の推移(総務省統計局による)が書いてありますが、200万人もいるとのことです。15-34歳の統計ですから、1歳あたり10万人です。日本の人口統計
http://ja.wikipedia.org/wiki/日本の人口統計
を見ると、1歳あたり 150 万人くらいいますから、10万人はその7%にあたります。学校で30人のクラスがあれば2人です。30人のうちで、就職しようと思ってもできない人がいるかと思いをめぐらすと、2人くらいはいそうに思います。10万人という数字は、妥当な数字かもしれません。
 個人的な顛末記ですから、あまり読む価値はないように思います。
 前著『ネットカフェ難民』
2009.7.29 http://otsu.seesaa.net/article/124492008.html
を読んだ編集者が持ちかけた安易な企画という感じがしました。

ラベル:川崎昌平 就職
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2009年07月29日

川崎昌平(2007.9)『ネットカフェ難民』(幻冬舎新書)幻冬舎

 乙が読んだ本です。「ドキュメント「最底辺生活」」という副題がついています。
 ネットカフェ難民がどんな生活を送っているのか、ネットカフェ難民自身が書いた本ということになります。いろいろと興味深い「生活の知恵」が出てくるので、これからネットカフェ難民になろうとする人には必読書でしょう。初めからそう思う人はいないと思いますが、結果的にネットカフェ難民にならなければならない人はいそうです。
 p.38 では新聞紙の使い方が開陳されます。応用の広さに驚きます。
 p.59 では、ネットカフェでの寝方(寝るときの姿勢)が論じられます。ここにもいろいろな工夫があります。
 p.88 では、シャワーの使い方です。びっくりするような使い方も書いてあります。
 p.144 では、オナニーの話まで赤裸々に描かれます。
 p.158 は、洗濯のしかたです。コインランドリーを使うよりも、シャワーを浴びる際に一緒に洗濯してしまうというようなやり方が説明されます。
 たしかに「ドキュメント」かもしれません。まあ、ネットカフェ難民はこんな生活をしているのでしょう。
 こういう生活でも充分成り立ちます。自分(若い男性?)がひとりで生きていくには充分かもしれません。
 しかし、多数の人は、そういう生活をしていません。自分ひとりで食べていくなら、ちょっとアルバイトすれば生きていけるのは事実です。しかし、結婚しようとか、さらに子供をもうけようとすると、自分ひとりが生きていくのとは違った費用がかかるものです。子育てには住宅が必要です。お金は、自分自身で食べていくためではなく、妻や子どもを食べさせるために、さらには、子どもに教育を受けさせるためにこそ必要になってきます。つまり、ネットカフェ難民では、子どもがもうけられないのです。
 著者の川崎氏は、ネットカフェ難民の実態を描いていますが、乙には、自分の能力(妻や子どもまでを養っていけるだけの力)があるのに、それを発揮せずに、何となく非生産的で怠惰なライフパターンを選んでいるだけのように見えます。本書中に書いてあることが事実ならば、「もう少し他にやるべきことがあるだろうに」と思います。
 最近は、こういう生活を選ぶ若者が増えているようで(自分から主体的に選んでいるのか、他人から強制されるのか、知りませんが)、こんなことでは、日本全体がどうなっていくのか、将来が本当に心配になってしまいます。

ラベル:川崎昌平
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2009年07月17日

鳥居祐一(2007.5)『MILLIONAIRE BIBLE お金持ちにはなぜ、お金が集まるのか』青春出版社

 乙が読んだ本です。
 pp.30-38 で鳥居氏が経験したお金持ちのなり方が書いてあります。おもしろい話です。鳥居氏はこれをそのまま信じているようです。自分の経験したものだから絶対だというわけでしょう。
 しかし、それは一個人の経験でしかありません。みんなが同じようにやったら、同じように金持ちになれるかというと、それは違うと思います。なぜ鳥居氏が成功したのかはわかりませんが、この本に書いてあることに加えて、「何か」があったのだろうと思います。それは自分自身では気がつかないものだろう(したがって本に書けるものではない)と思います。
 乙が読んだ本の中で、何冊か、お金持ちに関する本がありました。それらは大量のインタビューなどに基づいて書かれています。そのようにしてお金持ちを客観的に見ようとしています。鳥居氏は、そのような見方とは対極に位置します。
 本書での記述の中心は、金儲けの話ではなく、お金の使い方です。
 第2章では、「見えるモノ」ばかりにお金を使ってはダメで、「見えない価値」にお金をかけることが重要だと説きます。そして、自分を成長させるための「投資」として、3点をあげています。
(1)人と会うことに投資する
(2)学ぶことに投資する
(3)健康に投資する
 記述はいずれも具体的でおもしろいものでした。(1)では、各種セミナーへの参加のしかたが参考になります。講師の人への近づき方といったものです。(2)では本や映画、セミナーにお金をかけることを述べています。そして(3)では体形の維持や「歯」に投資することを述べています。新鮮な観点でした。
 第3章では「空間」や「時間」にお金を惜しまないことを述べています。ビジネスクラス、グリーン車、一流ホテルのラウンジ、高級レストランなどを使うことの意味が明解に書いてあります。乙はこういう視点を持っていなかったので、新鮮な感覚で読むことができました。
 本書の後半は記述がやや抽象的で、ややつまらない感じがします。ビジネスの話は、一般論として述べようとすると抽象論になってしまいます。具体的に書くとおもしろいのですが、やはりいろいろ差し障りがあるのでしょう。
 しかし、第3章までの記述だけで充分本書を読む価値があると思います。

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2009年07月15日

山本昇(2008.11)『ニッポン式ビジネスを変える グローバル仕事術』明治書院

 乙が読んだ本です。
 著者の山本氏は、長年イギリスを中心に働いてきた人で、世界を飛び回ってきたとのことです。本書は、グローバル企業での働き方・ものの考え方が日本式のやり方と大きく違うということを述べた本です。ユニークな本だと思います。
 著者の意図はわかるのですが、一読した感想では、著者の試みは失敗していると思います。
 この本に出てくる話は、みんな抽象的なのです。第6章「国際ビジネスの舞台裏」は具体的な名前や事件が出てきますので、なるほどと思いながら読み進めることができますが、(とはいえ、p.219 の注にあるように、「本章の社名やサービスの名称および数値は、架空のものである。」とのことです)それ以外は、具体性がなく、著者のいいたいことはわかるのですが、記述に迫力がありません。
 まあ、具体的に書くとあちこちに差し障りがあることは理解できるのですが、そこが著者の腕の見せ所ではないでしょうか。架空の名前で書くとか、ちょっと別の分野の話に仕立て上げるとか、さまざまな方法があると思います。そこからさまざまな経験を読み解くのが読者であるべきです。今は、著者がこれこれこういう違いがあると述べているわけですが、そのような抽象的なお話だけでは、単なる異文化論程度にすぎないのです。せっかくの著者の経験が活かされているとはいえません。
 グローバル企業では個人の間でも契約の概念が浸透しているそうですが、そういう契約の中に、著者が企業内で勤務している間に知った事実について退社後は一切口外できないというような条項が入っているのでしょうかね。
 でも、そこをうまくかいくぐって、著者の直接経験を活かした話を書かないと、おもしろくありません。
 p.196 では、奥さんの山本麻子さんの本を紹介しつつ、イギリスやアメリカのビジネス・エリートたちは、幼いときから英語の勉強には大変な力を入れており、イギリスやアメリカでは英語ができる子が「頭が良い」とされることが書かれています。意外な一面でした。ここは日本の国語教育(という名の文学もどき教育?)を批判しているようにも受け取れます。

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2009年07月12日

野口悠紀雄・藤井眞理子(2000.6)『金融工学』ダイヤモンド社

 乙が読んだ本です。「ポートフォリオ選択と派生資産の経済分析」という副題がついています。
 本書は、二つの部分に分かれています。第1部が「ポートフォリオ選択理論」で、どんなポートフォリオにするといいかというようなことを扱います。第2部が「派生資産の価格理論」で、オプションの価格をどのようにして決めるかというようなことを扱います。
 乙は、「金融工学」とは何か、よく知らなかったので、勉強してみようというつもりで読みました。
 しかし、本書を一読して、やっぱり金融工学はわからないと感じました。
 本書中に出てくる話は、それなりに理解できるつもりです。問題は、その上で、金融工学とは何か、なぜ本書で解説されるよう内容が「金融工学」と呼ばれるのかがわからないというところです。
 むしろ、「はじめに」の中にその回答が書いてありました。p.vi ですが、金融工学とは「経済・社会的問題に取り組むための技術」とのことです。「技術」を「工学的アプローチ」に言い換えてもいいと思います。
 つまり、理論を追求するよりも、理論を現実の経済・社会にあてはめて、いくつかの問題を解明しようとしたととらえるといいでしょう。したがって、本書の各章が扱うような問題を扱うのが「金融工学」なのだと考えればいいように思います。
 というわけで、本書は全体として「現代ファイナンス経済学の解説書」(「はじめに」の1行目)ととらえるほうがいいように思います。数式が出てきて、ちょっとむずかしい感じのところもありますが、何がいいたいのか、ざっととらえるような読み方をすれば、そんなにむずかしくはないように思います。各章の最後に「まとめ」があって、頭の中が整理されるようになっています。

 参考までに、乙が今までに読んできた「金融工学」を標題に含む本を挙げておきます。
吉本佳生(2000.4)『金融工学 マネーゲームの魔術』(講談社+α新書)講談社
 2007.12.31 http://otsu.seesaa.net/article/75410576.html
吉本佳生(1999.9)『金融工学の悪魔』日本評論社
 2007.12.22 http://otsu.seesaa.net/article/74013494.html
真壁昭夫(2005.4)『はじめての金融工学』(講談社現代新書)講談社
 2007.12.3 http://otsu.seesaa.net/article/70624375.html
野口悠紀雄(2000.9)『金融工学、こんなに面白い』(文春新書)文藝春秋社
 2007.11.27 http://otsu.seesaa.net/article/69519485.html

これらの本を読んで、金融工学について知りたいと思い、1年半ほど前に買ったのですが、少しずつ読み進めたところ、特におもしろいところもないように感じました。(読むのにあまりに長時間かかったので、読み終わるころには初めのほうの内容を忘れていました。)
 「おもしろいところがない」などというと、著者に失礼な気がします。
 しかし、この場はブログであって、書いているものも書評ではありませんから、客観的な目を持たずに、主観的にとらえて感想を述べてもいいだろうと思います。

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2009年06月23日

大村大次郎(2009.3)『脱税のススメ-改訂版-』彩図社

 乙が読んだ本です。著者の大村氏は元国税調査官とのことですから、「脱税をススメル」はずがありません。書名は皮肉でつけられているのです。
 どんな脱税があるのか、事細かに網羅的に書いてある本です。しかし、すべて摘発されたものが基になっています。まだ摘発されていない脱税もあるのでしょうが、これだけさまざまな例が挙がっていると、だいたい手口は網羅されているように思えてきます。
 個人投資家としては、p.152- の「個人向けの脱税方法」が一番おもしろいと思います。相続税、贈与税、源泉徴収税、などなど、身近な話題について触れられています。
 また、p.162 から『無税入門』
2008.5.3 http://otsu.seesaa.net/article/95470875.html
の話が取り上げられているのも興味深かったです。なかなか個人では実現しにくいスキームであることが述べられ、さらに、たとえ37年間無税だったとしても、税務署がそれを認めたということではなく、たまたま税務署が摘発しなかっただけかもしれないとしています。
 税金をめぐる国税庁などの考え方を知る上では意味のある1冊といえるでしょう。
 それにしても、こんなタイトルをつけるのはいかがなものでしょうか。乙のように、勘違いして読み始める人がたくさんいそうです。まあ、それが出版社のねらいなのでしょうが、……。
 参考記事:
http://fund.jugem.jp/?eid=999

ラベル:大村大次郎 脱税
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2009年06月21日

前田和彦(2009.2)『日経平均3000円でも資産が守れる方法』フォレスト出版

 乙が読んだ本です。
 タイトルに引かれて読んでみる気になりました。
 日経平均が 3,000 円になるというと、大事件のような気がしますが、では、具体的にどんな方法で資産が守れるのでほうか。
 本書の結論からいうと、子どもへの教育投資を重視しているようです。それに加えて、p.194 で外貨 MMF をあげています。また、p.195 では、マンの ADPを、p.196 では金(ゴールド)への投資を説いています。前田氏はこういうものを組み合わせることで「日経平均 3,000 円」を乗り越えようとしています。
 しかし、前田氏は p.68 で円高になること(1ドル=50円)も予想しているので、もしもそうならば、外貨 MMF にしておいても資産が目減りするだけではないでしょうか。
 p.127 以降では、デノミの説明が出てきます。円が暴落して、1ドルが1万円になるような場合、1ドル=1新円にすることを書いています。すると「1億円の価値は実は1万分の1に減ってしまうのです。」というのですが、デノミは単なる通貨の呼称の変更にすぎませんから、1億円の価値が(いや、いくらであっても)1万分の1になると同時に、我々の(国家も同じですが)収入も支出も1万分の1になりますから、元々の1億円の価値が変わるわけではありません。国債の価値がほぼゼロになる話も出てきますが、これはデノミとは別の話で、デノミをしたから国債の価値がなくなるわけではありません。
 p.136 では、日本の少子高齢化を解決するためには移民の増加しかないとしています。安易な低賃金労働者を導入するのでなく、日本語ができるとか、日本国債を1億円以上買ってくれる人とか、条件をいろいろ付ければいいというわけです。そうかもしれません。しかし、そういう一部富裕層が日本に移住してくるでしょうか。相続税を初めとする税金が高く、物価も高く、投資機会があまりない(今後の日本経済の先行きに安心できる人は少ないでしょう)日本にどういう魅力があるのか、乙にはわかりません。
 p.140 から大量失業時代に突入する日本を描いています。企業も個人も日本脱出なのだそうです。そうかもしれません。しかし、その先には滅び行く「日本」があるだけです。海外に脱出した日本人たちは、根無し草的になってしまうだけのような気もします。日本語が通じることが日本の最大の魅力であり、母語として日本語を身につけた人にとっては日本が一番安心できる場所であると思います。やはり、日本を脱出できるのは、富裕層だけになりそうです。
 p.181 では、金本位制に戻るという大胆な予想が書いてあります。これは大問題で、金本位制から抜け出してしまったら、もう元に戻れないように思いますが、どうなのでしょうか。
 一読して、前田氏のお話はおもしろいところがあるものの、それを裏付けるデータや資料が不足しており、説得力がなく、自分勝手な主張の域を出ないように思いました。
 乙は今までも前田氏の本を何冊か読んできました。

2007.8.15 前田和彦(2007.8)『5年後にお金持ちになる海外投資』フォレスト出版
http://otsu.seesaa.net/article/51438133.html
2006.9.20 前田和彦(2006.8)『5年後にお金持ちになる資産運用』フォレスト出版
http://otsu.seesaa.net/article/24035583.html
2006.6.6 前田和彦(2004.8)『借金国家から資産を守る方法』フォレスト出版
http://otsu.seesaa.net/article/18894635.html

 本書も類似した本のように思います。世界経済の危機を煽って、プライベート・バンク(あるいは前田氏個人)に目を向けさせようとしているだけかもしれません。
 普通の人が資産運用する場合は、この本に頼ることは危ないように思いました。

ラベル:前田和彦
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2009年06月20日

藤巻健史(2009.5)『100年に1度のチャンスを掴め!』(PHPビジネス新書)PHP研究所

 乙が読んだ本です。「サブプライム・ローン問題後のマーケットはこう動く」という副題が付いています。
 読み始めてすぐの p.16 で、藤巻氏が 2008.10.6 の段階で、持っていた日本株全部と米国株の半分を売却したということが書かれています。そして、p.18 では、10月下旬に日米株を買い戻したとのことです。
 日経平均の10月6日の終値は 10,473 円でした。10月31日の終値では 8,577 円でした。その後の経緯を見ても、藤巻氏の判断はなかなか優れていたと思います。
 こんなふうに、藤巻氏は積極的に経済の動きを読み、それに対応した戦略で臨んでいます。
 現在の状況をどう把握するべきか。そういう見方を知るために、本書はおもしろいと思います。
 ところで、こういう本を読んだ人は、藤巻氏と同様の行動をするべきか。乙は、とてもではないけれど、真似できないと思いました。
 まずは、日米を中心とした経済の動向を正確に把握することがむずかしいと思います。そのためにはかなりの時間もかかるでしょう。個人投資家がそういう情報収集をおこなうことは、不可能ではないけれど、かなり大変なことです。
 そして、さらに重要なのは、判断したら即実行することです。乙は、最近、仕事が忙しくて、投資に割く時間がなくなってきました。持っている株を全部売却するなんて、けっこうな時間がかかり、不可能に近いとさえ思います。
 というわけで、藤巻氏はエライと思いますが、多くの投資家は真似できないだろうと思います。乙自身もそうでした。
 あとからこういう本を読んで「なるほどなあ」と思うくらいが関の山です。

 p.149 あたりでは、今後の日本には資産インフレがやってくると予想しています。乙も同じように考えていますので、このあたりは共感を持ちながら読みました。

 本書は、新書サイズで 200 ページほどですから、あまり長くはありません。しかし、12章構成で、各章が見開き左側から始まるようになっていて、章のタイトルだけで1ページとるようになっています。前の章が左側のページで終わると、章のタイトルの右側のページも空白になります。ということで、約 20 ページ分の空白があるようなものです。何か、かなりもったいないような気がしました。

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2009年06月16日

城繁幸(2009.3)『たった1%の賃下げが99%を幸せにする』東洋経済新報社

 乙が読んだ本です。「雇用再生へのシナリオ」という副題が付いています。
 題名の意味がわかりにくいですが、中高年層は人口が多く、給料が高いので、給料の1%を下げるだけで、多数の若者を雇ったりして、大部分の人が結果的に幸せになるという趣旨です。単純にいえば、賃下げが幸せをもたらすのです。このように、本書は日本の雇用問題を論じたものです。
 p.67 では、自分の給料を下げてまでも、職を求めようとすると、労働組合が横並び至上主義なので、そういうことを認めないとしています。つまり、ディスカウントはできず、結果的にある程度の年齢以上では転職ができないということになります。今の日本の年功序列主義の問題点を指摘しています。
 p.80 から、21世紀型エリートが描かれます。ビジョンを持っている人ということです。
 p.84 では、今の会社の正社員採用方針を述べています。幹部候補たりえる人材だけだということで、あとはアウトソーシングや非正規雇用で代替するわけです。まさに日本の現状がこうなっています。
 第3章「年功序列は日本社会も蝕む」では、年功序列の問題点をこれでもかという感じで記述しています。そして、年功序列を打破する方向へ舵を切るべきだとしています。
 第4章「雇用再生へのシナリオ」で、将来の日本のあり方を論じます。
 おわりに p.197 では、日本型雇用はあと5年で完全に崩壊すると予想しています。この点に関しては、まさかたった5年で日本に大変化が起こるとは思えません。乙は、日本人がぬるま湯に浸りながら、国としてだんだん衰えていくのではないかと予想します。
 まあ予想はともかく、読んでいて痛快な感じのする本でした。提言も興味深いものがあります。ただし、それが実現するかと考えれば、乙としては否定的に思うということです。根拠は、あまりありませんが、社会の変化はそんなに急激には起こらない(保守的な傾向が継続する)だろうということです。

参考記事:
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/51509393.html

ラベル:城繁幸 年功序列
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2009年06月14日

北村慶(2009.3)『ETFとは何か』(PHPビジネス新書)PHP研究所

 乙が読んだ本です。「個人マネーをひきつける新商品のすべて」という副題が付いています。
 新書版ですが、ETF に関する一通りの知識が詰まっています。
 第1章「世界中の投資家が注目する「ETF」の魅力」は、入門の入門編です。どのように ETF が優れているかを述べています。
 第2章「「ETF」はなぜ超低コストなのか?――「ETF」の仕組み」は ETF の仕組みを述べ、第1章の解説をさらに詳しくしたような感じです。p.83 では、インデックスに追随する手法について解説していますが、コストを抑えながらインデックスに追随する技術がいろいろ開発されていることに驚きました。投資家の立場からは、具体的な手法まで知る必要はないとも言えますが、しかし、そこまで知って ETF が理解できるものになるようにも思います。
 p.90 には、さらりと ETF 投資のコツが書いてあります。「人気のある ETF を選ぶ」ということです。
 第3章「初めての株式投資に最適な「ETF」投資」では、各種の ETF を紹介しています。ここまでが入門編です。
 第4章“アクティブ投資家”のための「ETF」活用法」では、通常の ETF と性格の違うアクティブ型の ETF などを紹介するとともに、一歩進んだ ETF の使い方を述べています。応用編とでも考えればいいでしょう。
 p.139 では、アクティブ型の ETF の具体例を出していますが、ずいぶんと頻繁な売買をするものです。ファンドの規模が小さいうちは、こういう運用もありかもしれませんが、規模が大きくなると、株価を左右するほどの力を持つことになるかもしれません。そういう場合、ファンドの銘柄入れ替え情報が事前にわかってしまうことから、それをカモにしようとする作戦が有効になってきます。こんなことまで考えてアクティブ型にしているのでしょうか。ちょっと考えさせられました。乙は、アクティブ型の ETF は邪道のようにしか思えませんでした。
 第5章「“相場下落時に利益が上がる ETF”などユニークな ETF たち」では、さらにさまざまな ETF を紹介しています。こんなのもあるということを知っておくと、何かの際に役立つかもしれません。
 第6章「日本市場に求められること」では、日本が ETF の後進国であることを論じ、今後の望ましい方向性について述べています。具体的に日本に上場するべき ETF を指名して書いていることには納得しますが、果たして、日本の ETF がその方向に変化していくのでしょうか。乙は、かなり懐疑的になっています。
2009.3.16 http://otsu.seesaa.net/article/115718784.html
2009.3.15 http://otsu.seesaa.net/article/115670077.html
日本はずっと遅れたままになってしまうのではないでしょうか。

参考記事:
http://fund.jugem.jp/?eid=1048

ラベル:北村慶 ETF
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2009年06月12日

鈴木亘(2009.1)『だまされないための年金・医療・介護入門』東洋経済新報社

 乙が読んだ本です。「社会保障改革の正しい見方・考え方」という副題が付いています。
 一読して、年金・医療・介護の諸問題がすっきりと頭に入ったような気がしました。
 「だまされないための」という題名は刺激的です。だまされないのは「読者」ということですが、では、誰がだますのでしょうか。「はじめに」に出てきます。政府、政治家、厚生労働省、社会保険庁などです。つまり、本書は、今普通に考えられている社会保障制度を批判し、基本に立ち戻ってどうあるべきかを論じたものなのです。
 本書中で一番おもしろいのは第3章「年金改革の現状と問題点」でしょう。現状をどうとらえるのでしょうか。答えは p.145 に書いてあります。「現在の高齢者への既得権保護・利益供与」、「先送り主義」、「情報操作」、「本質的でない論点へのすり替え」だと喝破しています。いかにも鋭い指摘です。
 第4章「医療保険・介護保険改革の現状と論点」も興味深い記述がたくさんあります。
 p.205 あたりでは、医師不足対策は診療報酬の決め方で解決できるといった、「経済」的な観点で割り切った議論が展開されます。痛快です。「経済」という観点から快刀乱麻を断っています。
 第5章「最初で最後の社会保障抜本改革」もすばらしいところです。年金を、賦課方式から積立方式にするというものです。世代間の不公平をなくすには、これしかないということです。乙はこの議論を大変おもしろいと思いました。一見すると不可能なように思えますが、本書を読むと、積立方式が実現可能なように思えてきます。
 p.252 で、相続資産からの負担徴収もあり得るという指摘にも感心しました。
 本書の描く「改革」こそが真の意味の改革であり、これが実現するような政治が行われるようでないと日本の未来は危ういように思いました。
 巻末には参考文献もあげてあって、著者の勉強ぶりが見てとれます。
 本書を一読して、年金・医療・介護について考えておくことは、老後の生活を準備する上で必須のことだろうと思いました。
 p.154 l.10 で、福利(正しくは「複利」)の間違いがあったのは残念でした。

 他の人の記事も参考になると思います。
http://angel.ap.teacup.com/newsadakoblog/1240.html
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/44ee1862b7436fea185cbf4f85428c27


ラベル:鈴木亘 年金
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2009年06月10日

大前研一(2009.1)『「知の衰退」からいかに脱出するか?』光文社

 乙が読んだ本です。「そうだ! 僕はユニークな生き方をしよう!!」という副題が付いています。
 本書は、現代日本を「知の衰退」つまりものを考えなくなった社会ととらえ、きちんと考えれば、こんなのが日本のあり方になるというようなことを述べたものです。さまざまな提言を含み、おもしろく読みました。
 第2章で官製不況の根が「知の衰退」だと説いています。第4章では政局も「知の衰退」でとらえることができるとしてます。第5章はネット社会をどう見るかを論じています。第6章は無欲な若者と学力低下の問題を扱います。第7章は教育改革です。第8章は「低IQ社会」で得をしている人として、政治家、役人、などをあげています。第9章は勝ち組の話、第10章は教養論です。
 実に幅広く何でも論じてしまうあたり、大前氏らしい語り口です。p.74 では、自身の講演料が5万ドルであることを明示しています。けっこうな額です。大前氏は世界をあちこち飛び回っているとのことですから、1年間に 60 回講演すると想定すると、それだけでざっと3億円の収入があるわけです。大前氏の場合、講演だけでなく、本の印税や大学教員としての給与所得、会社経営者としての収入もあるようですから、支払っている所得税もさぞや多いことでしょう。(それにしては高額納税者ランキングなどでは大前氏の名前などは聞いた記憶がありませんが、……。)
 それはともかく、こんな中で、一番興味深いのは、第3章「1億総「経済音痴」」でしょう。ゼロ金利でも銀行に預け続ける国民を批判し、海外の高金利を紹介し、高金利の国に資金をシフトして、積極的に投資するべきだと説きます。
 p.127 では、日本国債をもっともリスキーな金融商品として、そんなものを買う人間が経済音痴なのだとしています。
 高金利の国に投資すればもうかるかという問題については、
2009.4.11 http://otsu.seesaa.net/article/117253628.html
2008.5.23 http://otsu.seesaa.net/article/97628420.html
で乙の考え方を示しましたが、高金利でももうからないと思います。
 以前の乙は大前氏と同じように考えており、したがって、海外投資を積極的に考えていたのですが、最近はそうでもないと考えるようになりました。
 乙は、日本国債についても、
2008.5.23 http://otsu.seesaa.net/article/97628420.html
で、投資を考えてもいいのではないかとしています。
 というわけで、大前氏の話を全部信じているわけではありませんし、第3章は特に問題があると思うのですが、それはともかく、読み物としてはおもしろいと思います。
 読後感としては、大前氏は強い人だということです。とてもマネはできません。



ラベル:大前研一
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2009年06月08日

田村正之(2009.2)『世界金融危機でわかった! しぶとい分散投資術』日本経済新聞出版社

 乙が読んだ本です。
 とてもおもしろい本でした。
 インデックス投資をどう行うか、その具体論を書いたものです。考え方から具体的な手順まで、細かく書いてあり、大いに参考になりました。
 p.88 には、日本の公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がまとめた2007年まで35年間の実績の数字に基づいた表が出てきます。
期待リターンリスク
相関係数
日本株式日本債券外国株式外国債券
日本株式
7.00%
22.15%
1.000
-
-
-
日本債券
2.00%
5.40%
0.160
1.000
-
-
外国株式
8.00%
19.59%
0.270
-0.050
1.000
-
外国債券
3.00%
13.25%
-0.250
-0.060
0.560
1.000

 この表で、外国株式は MSCI コクサイですが、外国株式それ自体が分散投資になっているので、日本株式よりもリスクが小さくなっているところがおもしろいところです。これはプロの常識だそうですが、乙は知りませんでした。いわれてみればなるほどといったところです。
 この表では、外国株式と外国債券の相関係数が 0.560 とかなり高いことが気になりました。もともとの指数は、円建てで計算しているわけではなく、それぞれの国の通貨別に計算してそれを合成しているはずですから、(円との)為替レートの動きを反映しているわけではないと思います。相関がある程度高いと予想される日本株式と外国株式でさえ 0.270 なのですから、ここだけいやに相関係数が大きいということになります。
 p.18 にあるように、株式と債券は異なる値動きをします。日本株式と日本債券の相関係数は 0.160 とかなり低いわけです。だったら、外国株式と外国債券の相関係数も、0.560 というよりは、もっとずっと低くなってほしいところです。
 なぜ、こういう結果になるのか、乙にはわかりません。
 p.128 では、ETF がインデックス投信に負けることがあると述べています。ETF は、1日の間でも値動きがあるから、変に高値で買って安値で売るようなことをすれば、インデックス投信に負けてしまうということです。ETF 投資で注意するべき点でしょう。
 p.133 では、米国上場の ETF の理論価格を調べる方法が示されます。
http://finance.yahoo.com/
にアクセスして、GET QUOTES のところに、ETF のコード番号+「.iv」(たとえば「tok.iv」)を指定するだけです。これまた乙は知りませんでした。米国は進んでいますね。投資家はこれで計算して、理論価格をもとに売買をするとのことです。証券取引所はこういうところまできちんとやらないといけません。東証の ETF は、それに比べたら、はるかに劣ります。
 pp.135-136 では、新興国株式に投資するためには、バンガード・エマージング・マーケット ETF を勧めています。それはそれでわかるのですが、細かいことですが「VWO」というコード番号を入れておくほうがいいのではないかと思いました。乙もこれを購入していますが、
2007.4.25 http://otsu.seesaa.net/article/39977369.html
確かに、新興国投資ではこれを使うのがよさそうです。
 pp.184-185 では、購買力平価を基に、ドルとユーロの為替レートが円高か円安かを見る方法が示されます。
http://www.iima.or.jp/research_gaibu.html
を見ればいいのですね。こんなことも乙は知りませんでした。外貨投資を考える際には大変参考になります。
 もっとも、円安だから外貨投資を控えようなどと判断するのもむずかしそうです。為替レートの上下は誰にも予測できないし、インデックス投資の考え方からすれば、為替レートが高かろうが安かろうが、余裕資金ができたらしかるべき比率で投資するのがよさそうで、円安だから日本株に投資する(円高だから外国株に投資する)というのは変な考え方のように思います。まあ、投資先を考える上で少し参考にする程度がいいのかもしれません。
 ともあれ、1冊読んで、乙は大いに満足しました。良書です。
 モンチさんもオススメの本です。
http://m0nch1.blog.shinobi.jp/Entry/598/



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2009年05月23日

廣宮孝信(2009.2)『国債を刷れ!』彩図社

 乙が読んだ本です。「「国の借金は税金で返せ」のウソ 」という副題が付いています。
 簡単にいえば、もっと国債を発行して、その金で日本経済を進展させようという主張です。
 本書中にはさまざまな図表が豊富に収録され、著者の主張を客観化しようとしているようすがわかります。好感が持てます。
 第1章は「「国が借金で大変」の大ウソ」です。60ページほどですが、ここが本書の中心です。
 第2章「国の借金をゼロにする秘策」もそれに次ぐ内容で、たいへん興味深いです。
 第3章「日本の GDP が伸びない本当の理由」は政府が支出を増やさないためで、だから国債を発行して政府支出を増やそうという主張です。第1章〜第2章を踏まえた提言の章です。
 ポイントは、pp.177-179 で、日本政府がジンバブエのようにハイパーインフレに持っていって国の借金をチャラにしようとするかということを論じています。結論として、日本はデフレだから、通貨を過剰に発行してもインフレにはならないとしています。
 第4章「財政政策が国の命運を分ける」では、政府や日銀の考え方を、世界の各国と比べつつ、その妥当性について論じています。
 第5章「日本の目指すべき道」は結論のような内容で、将来展望・提言を述べています。
 一読して、かなり説得力のある本だと思いました。
 乙は、政府発行紙幣について、賛成だと述べたことがあります。
2009.2.11 http://otsu.seesaa.net/article/114032329.html
国債の発行は、政府が使えるお金を用意する点で、政府発行紙幣と似た側面を持ちます。政府発行紙幣を永遠に流通させるのでなく、ある期間だけにとどめようとすれば、国債の発行とさらに似てきます。国債は利子を払うけれど、政府発行紙幣は利子を払わないというくらいの違いしかありません。
 しかし、本書の中で、一番問題なのは、もっと国債を発行せよと主張している割には、その総額についてまったく論じていない点にあります。
 日本の最近の税収と国債の発行高はどれくらいなんでしょうか。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090523-00000007-mai-bus_all
によれば、2008 年度の場合、税収が 44 兆円程度、2009 年度の新規国債発行額は 44.1 兆円だそうで、今や国債の発行額が税収を上回る事態になっているわけです。
 ここで、国債を 50 兆円追加発行せよというなら、そんなに発行して大丈夫かと心配になります。いえいえ、著者によれば問題ないはずです。しかし、200 兆円ではどうでしょうか。大丈夫だというなら、1000 兆円はどうでしょうか。単年度で 1000 兆円も発行する事態になったら、国債の発行総額は 1.5 京円を越えているはずで、利率が 1.5% としても、国債の償還に1年あたり 200 兆円も必要になります。そんな税収はありませんから、国債の償還のための国債の発行ということになります。つまり、自力で償還できないということで、永遠に返せない借金となります。こんな事態になれば国債に信任がなくなります。国債の利率が上昇し、いよいよ首が回らなくなり、最後は「国債が償還できない」となります。これが財政破綻です。
 本書では、いくらまでなら発行して大丈夫かという問題を避けています。しかし、これが実は一番の問題なのではないでしょうか。もちろん、はっきりとしたところは誰にもわからないでしょう。でも、50 兆円と 1000 兆円では、話がまったく変わってきます。それがだいたいいくらくらいなのか、±2倍程度の誤差(「200 兆円」という場合は「100 兆円〜400 兆円」という意味)があってもいいので、ひとこと述べてほしかったと思います。
 まさか、国債を無限に刷っても大丈夫という主張なのでしょうか。
 もしも、金額で示すのが不適当だというなら、GDP の何倍程度というのでもいいです。
 ちなみに、乙が政府発行紙幣のことを考えていたときは、総額はせいぜい50兆円程度かなと思っていました。


ラベル:廣宮孝信 国債
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2009年05月20日

細野真宏(2009.2)『「未納が増えると年金が破綻する」って誰が言った?』(扶桑社新書)扶桑社

 乙が読んだ本です。「世界一わかりやすい経済の本」という副題が付いています。
 読んだ後で、少し後悔した本です。
 本1冊が年金未納問題を扱っているわけではありません。それは第4章であり、全 206 ページ中の 73 ページほどです。最近流行の、一部の章の題名をそのまま書名にする手法です。
 第1章「学力や思考力は日常の会話方法で飛躍的にアップする!」、第2章「なぜ人は「宝くじの行列」に並んでしまうのか」の二つは、数学ないし確率論の世界を描きます。本の主題とはあまり関係しないように感じました。
 第3章は「なぜアメリカの住宅ローン問題で私たちの給料まで下がるのか」で、今回の経済危機の話をわかりやすく述べています。しかし、ここもあまり新鮮味がないように思いました。
 第4章は書名と同じです。いうまでもなく、ここが記述の中心です。
 p.138 では「国民年金に加入すると損するって本当?」とあります。そして、現在20歳になる人でも、今年生まれた赤ちゃんの場合でも、実際に国に払う「保険料」よりも平均的に将来もらえる「年金」が 1.7 倍になるということを示し、だから損することはないと主張しています。しかし、乙は、これは比較の対象がずれているように思いました。たとえば、長期金利が 1.5% あるとすると、72の法則で、72/1.5=48 年で2倍になってしまう計算です。20歳の人が65歳で年金をもらうまでには45年の長期運用が可能ですから、比べるものはきちんとさせておかなければなりません。1.7 倍に増えたとしても、まあそんなものなのかもしれません。
 pp.153-155 で、国民年金の未納者が増えても減っても、給付される金額にはほとんど差がないというデータが示されます。しかし、なぜ、こういう計算になるのか、ここを読んだだけではよくわかりません。
 この種明かしは p.159 でなされます。国民年金は、第1号加入者だけでなく、第2号加入者(会社員や公務員など)、第3号加入者(第2号の配偶者)が大量にいるから、第1号保険者の未納率が増減しても、国民年金にはほとんど影響がないというわけです。
 p.172 では、したがって、未納者が増えると、年金が破綻するから困るのではなく、未納者は無年金者なので、そういう人が増えると社会的な問題が起こって困ることがあるということです。
 国民年金は、そもそも給付の比率が低く、未納率があがっても破綻はないということですね。
 書かれている内容は正しいと思いますが、これをいうのに新書1冊はスペースのとりすぎのように思いました。もっと薄くてもよかったでしょう。もっとも、それでは新書として成立しないでしょうが。
 というわけで、乙の感想としては、内容があまりないものを読んでしまったということです。
 なお、本書はイラストが多用されていますが、乙は、これは必ずしも成功していないように思いました。イラストで描かれた内容は本文でもそのまま書かれていることの繰り返しが多いからです。これまた、内容を水増ししているにすぎません。


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2009年05月18日

山崎元(2008.12)『超簡単 お金の運用術』(朝日新書)朝日新聞出版

 乙が読んだ本です。
 とてもおもしろい本でした。この本を読むと、99%のマネー運用本が無効になってしまうというのですが、確かにそうかもしれません。
 山崎流の投資術が書いてあります。しかも、結論から書いてあって、引き込まれます。
 結論は三つです。ここに書いてしまっても、この本の売り上げが落ちることはなさそうですから、書きましょう。
 @当座の生活に必要なお金を銀行の普通預金に置く。
 A残ったお金は、全額 ETF に、国内株4割、外国株6割の比率で投資する。
 B大きな支出の必要が生じたらAを躊躇なく部分解約してこれに充てる。
 これで全部です。簡単です。しかも、この本によれば、Aの ETF は、国内株が 1306、外国株が TOK と銘柄まで書いてあります。
 本書では、この基本型に加えて発展形としてリスク調整型というのも出てきますが、基本型をもう少し複雑にしたものにすぎません。
 第1章は約40ページですが、この投資法をきちんと述べます。
 第2章は50ページほどをかけて、なぜこの投資法でいいのか、その根拠を解説します。
 ここまでが本書のメインです。
 確かに、これから投資を始めようとする人にとっては、このやり方でいいと思います。p.210 のあとがきでは「他の入門書がいらなくなるような、お金の運用の本を作りたい」というねらいを語っていますが、このねらいは成功していると思いました。もっとも、一番の問題は、投資を始めようとする人が本書を最初に手に取るかどうかということと、もしも手に取ったとして、山崎氏の主張に納得するかどうかということにあります。書店にはさまざまな本があふれているわけですし、それが間違っているということは、初心者にとって、なかなかわからないわけですから。
 第3章は「お金のあれこれ簡単レクチャー」と称して、10個のレッスンを述べています。
 その中では、レッスン9「パニック論をどう考えるか(たとえば財政破綻)」がおもしろかったです。山崎氏は、政府全体の資産が大きくて、純債務で考えれば大した赤字ではないということと、国内で国債が消化されているから問題にはならないということから、パニック論を排しています。
 しかし、一方では、p.196 に書いているように「日本政府の債務の最適残高はどれくらいか」という問いに誰も満足できる答えを持ち合わせていないという現状があるわけで、気が付いたら国家破綻になっていたという可能性も捨てきれません。しかし、山崎流投資術では、外国株に6割を投資していますから、国家破綻があっても大丈夫だといえるように思います。
 何はともあれ、最近読んだ本の中では一番おすすめできる本だと思いました。乙も最初にこの本に出会っていれば投資のしかたが相当に変わっていたことでしょう。

 本書を一読して、乙は自分の投資戦略を根本から改めるほうがよさそうに思えてきました。
 これから投資を始める人にとっては、本書の説く方法でいいと思います。すでに投資をしている場合も、順次、この方向に舵を切ればいいということです。しかし、それにはかなりの手間がかかります。そうでなくとも忙しい生活を送っている状態で、そんな「調整」を行うのは大変な気がします。しかし、やらなければなりません。
 今年は、乙にとって大変動がありそうに思います。


ラベル:山崎元
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2009年05月12日

池尾和人・池田信夫(2009.2)『なぜ世界は不況に陥ったのか』日経BP社

 乙が読んだ本です。「集中講義・金融危機と経済学」という副題が付いています。
 一読した結果からいうと、乙にはむずかしすぎて手に負えませんでした。
 むずかしい用語は太字で表され、巻末に用語解説があります。それでだいぶわかるのですが、解説がいらない程度の用語でも、乙は必ずしもよくわかっているわけではないようなものがポンポン出てきます。
 ちなみに、エイヤッと開いた p.149 で、乙がよくわからなかった用語(特に説明されているわけではないもの)をあげてみると、次のようなものです:オリジネーター、劣後部分、オフバランス化、自己資本比率規制、資産規模圧縮。これはエイヤッの一ページを取り上げたのですが、どこのページでもこんな調子で、これらをすでに知っている(説明なしで十分わかる)ような読者が読むべき本だということになります。
 「集中講義」と銘打っていますが、学生などに向けた集中講義ではなさそうです。プロローグによれば、二人が互いに教え合うような形で集中講義を行ったようで、ある種の対談集のような感じにできあがっています。しかし、その話される内容は、二人とも経済学の専門家ですから、相当に高度なものになります。
 統計や図表類を示して現状を解説するというよりは、経済学の考え方を語るといった感じで、抽象的な議論が多いように思いました。世界標準の経済学を語るという趣旨はいいのですが、それを理解するのが大変です。
 p.49 では、次のような発言があります。「池尾:金融危機への政治的対応というのは、民主主義的な体制とは矛盾しかねないような難しさがあります。例えば、公的資金の投入を国民に認めてもらうためには、いかに金融危機が深刻な状態にあるかを説明しなければなりませんが、公的資金の投入を含む危機解決の準備が整っていない段階で、一国の政治的責任者が、金融危機が深刻であると明言してしまうと、それこそパニックの引き金を引くことになりかねません。
 責任ある政治家が金融は危機的状態にあると言ってよいのは、それに対処する万全の準備が整った後でしかない。逆にいうと、そうした対処の準備を金融が危機的状況にあると言い切ることなく進めなければならない。これは、ジレンマにほかなりません。」
 なるほど、だから政府関係者などは大々的に発表したりしないのでしょう。今回の金融危機が突然起こったかのように見えるのはこういうことだったのですね。乙は、もっと先にしかるべき人から「警告」が発されてもよかったはずなのになどと考えていましたが、それは間違っていたということです。
 p.283 (エピローグ)で、19ヵ国のデータで、起業活動従事者のシェアと実質GDP成長率の相関関係を示すグラフが出てきます。日本は左下の隅にあります。つまり、日本は起業活動従事者が少なく、実質GDP成長率が低いというわけです。日本の特徴をよく示しています。相関関係は因果関係ではありませんが、通常の解釈では、前者が原因で後者が結果でしょう。
 こんなことで、乙が部分的に理解でき、またおもしろいと思う部分もあったのですが、全体は難解な本だったという感想です。自分のレベルの低さ(「お前はまだ勉強が足りないよ」)を指摘されたような感じでした。
 もっと経済学を勉強してからこの本を読めばよかったのでしょう。
 こんなことしか書けずに、まことにスミマセン。



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2009年05月07日

上杉隆(2009.1)『宰相不在』ダイヤモンド社

 乙が読んだ本です。「崩壊する政治とメディアを読み解く」という副題が付いています。
 最初に断り書きがあり、「本書は「ダイヤモンド・オンライン」の連載「週刊・上杉隆」の記事に加筆修正を施して編集したものです。」と書いてあります。
 この連載は
http://diamond.jp/series/uesugi/
に載っています。
 連載のバックナンバー
http://diamond.jp/series/uesugi/bn.html
を見ると、なるほど、本書の元になった記事が残っています。
 では、ネットで読めばいいか。まあ、それも一つの考え方ですが、書籍の形にしておくのも意味があります。パソコン環境がないところでも読めるからです。実際、乙も、ちょっとした小旅行に本書を持参して、移動時間などのときに読んでいました。
 本書は、2007.10.17 から 2008.12.25 までの連載をまとめたものです。この間の政治の動きをリアルタイムで描いています。上杉氏の見方はなかなかおもしろいものです。
 上杉氏はフリーのジャーナリストですから、巻末に参考文献が載っているわけではありません。しかし、その「目」には、なかなか鋭いものを感じます。こうやってさまざまな政治上の諸問題をスッパリ切り分けて見せられると、「なるほどなあ」と思う部分がたくさんあります。ホントかどうかはわかりませんが、そういわれれば納得するという感じです。
 乙が一番おもしろいと思ったのは、p.97 からの新銀行東京の問題点を語っているところです。
 ダイヤモンド・オンラインでは、
http://diamond.jp/series/uesugi/10022/
で読めます。
 新銀行東京については、乙も一度口座開設を検討したことがあり、それからというものは、この銀行にいろいろと興味を持ってきました。詳細は、以前のブログ記事
2008.10.29 http://otsu.seesaa.net/article/108757638.html
から古いものをたどってみてください。
 上杉氏によれば、新銀行東京の旧経営陣とともに、東京都議会は「共犯者」だということです。そういう視点でこの間の経緯を見てみると、腑に落ちることがたくさんあります。


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2009年04月27日

門倉貴史(2009.1)『貧困ビジネス』(幻冬舎新書)幻冬舎

 乙が読んだ本です。
 あまり「投資」とは関係ないような本です。
 今や、貧困層をターゲットにしたビジネスがあるというわけで、著者はいろいろなビジネスを紹介しています。日本が中心ですが、外国の例もあります。臓器売買や子供の手足を切断して物乞いをさせる話を聞くと、本当にぞっとします。それ以外にも、乙が知らなかったようなビジネスもいろいろ含まれ、たいへん興味深く読みました。
 p.16 では、貧困ビジネスの方が富裕層をターゲットにするビジネスよりもマーケットが大きいという話が出てきます。驚きです。だから貧困ビジネスが成り立つわけです。
 p.188 では、クレジットカードの規制で韓国は景気が急速に悪化したという話があり、政府の判断のちょっとしたことが経済に大きな影響を与えるものの例として、おもしろかったです。
 その他もろもろのビジネスが紹介され、ふだん見ることのない別世界をかいま見るような気分になれました。

 なお、同じ著者の書いた関連本として、以下のようなものがあります。
『「夜のオンナ」はいくら稼ぐか?』
2008.9.26 http://otsu.seesaa.net/article/107150566.html
『ワーキングプア いくら働いても報われない時代が来る』
2007.7.30 http://otsu.seesaa.net/article/49698493.html
 門倉氏は、この方面でずいぶんいろいろな取材をしているようです。

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2009年04月24日

石渡嶺司・大沢仁(2008.11)『就活のバカヤロー』(光文社新書)光文社

 乙が読んだ本です。
 就活(=就職活動)について、学生、大学、企業、インターンシップ、就職情報会社の五つの観点から総合的に眺めたものです。
 乙は、就活とはあまり縁がなく、自分の活動はずっとずっと昔のことでしたし、息子たちの就活も終わってしまったし、ということですが、最近は、学生たちが就活に一生懸命なのを見聞きするので、気になって読んでみました。
 一読して、日本の就活はゆがんでいるなあという感想を持ちました。まさに題名通りに「就活のバカヤロー」といいたくなる気分です。「はじめに」に出てくる「焼肉の生焼け理論」は、「その通り!」という感じです。焼肉は、十分焼いた方がおいしいのはわかっているけれど、さっさと食べないと他の人に食べられてしまう、したがって、みんなが急いで生焼けの焼き肉を食べるようになるという理論です。就活もまったく同じです。乙の就職活動は、卒業の半年前になってから始めたくらいですから、今とはまったく違っていました。(まあ、当時でも遅い方だったですけれど。)今や、3年生の夏休みのインターンシップ(その申込は5月〜6月)あたりから実質的に就活が始まるようですから、学生生活の半分は就活に取られてしまうようになっています。
 第1章「就活生はイタすぎる」では、就活をする学生の実態を描いています。変な学生もいるのですね。でも、就活する学生はみんな初体験なのですから、どう対処したらいいのか、わからないのが当然なのです。
 第2章「大学にとって「就活はいい迷惑」」では、大学側を記述します。就活で授業が妨害されると叫ぶ教授。しかし、一方では、入学者向けパンフレットなどで優れた就職実績を誇る矛盾。いやはや、こちらも大変な実態があります。
 第3章「企業の「彩活」真相はこうだ」では、企業側から見ます。乙は、企業の中の人事部などの考え方をまったく知らなかったので、ここが一番興味深かったです。
 第4章「インターンなんてやりたくない」では、インターンシップが、本来の就業体験というあり方からそれて就活の一部になり、しかも、それへの参加は就活の成果にはまったく結びつかないという変な実態を描きます。
 第5章「マッチポンプで儲ける就職情報会社」では、リクナビやマイナビなどのナビサイトの裏側を描いています。これまた、乙が知らないことがたくさん書いてありました。

 本書は、「取材」を通して得られたことをまとめて書いています。そういう書き方だからかもしれませんが、これからどうするのかというような視点はほとんどありません。現状の記述が大部分です。取材元の人は、すでに知っていたわけですから、つまりは、すでに知られていることをまとめ直した本ということになります。

 それにしても、こんな就活をやっている日本という国は、いったいどうしたんでしょう。「バカヤロー」と叫んでも何も解決しません。
 乙は、こういう「茶番」を演じている日本企業の、また日本そのものの将来に不安を覚えました。


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2009年04月22日

竹中正治(2008.12)『今こそ知りたい資産運用のセオリー』光文社

 乙が読んだ本です。「まず「投資の魔物」を退治しよう」という副題がついています。
 著者は、(財)国際通貨研究所 経済調査部長というエコノミストです。
 出版の時期が時期だけに、資産運用を独自の観点から語っています。全体におもしろく読めました。
 第2章「「投資のプロ」には任せるな」で、インデックス投資をすすめています。pp.46-49 で、相場の予想がなぜ当たらないかを説明しています。その中で、ある人の(「ある手法の」でも同じですが)予想が当たるとすれば、市場参加者はその人の予想に従って売買をするので、結果的に予想が外れるという例を示しています。わかりやすい説明です。
 p.68 では、アクティブ投信は、投資のプロがプロどうしの狭義の市場では持続的に勝ち越すことができないので、個人投資家層を相手に、手数料を頂戴するという形で「継続的に出し抜く」仕組みであると述べています。なるほど、投信の手数料が高いのは、こういう理由だったんですね。
 第3章は「ギャンブルの誘惑とリスク・リターン」です。p.98 と p.99 に興味深いグラフが掲載されています。日本の TOPIX と米国の S&P500 の60年以上の値動きを示したものですが、単純に金額で表示すると、最近の株価が大きく変動するようすが見てとれます。しかし、それを対数で表示すると、あら不思議。わずかに上下しつつも、大まかには安定して上昇しているではありませんか。どちらが大事かと言えば、やはり対数でしょう。我々の見方は、つい単純な「価格」で見てしまいますが、それではまずいことがわかります。
 第4章は「高金利外貨投資の罠を見破る」です。p.131 では、高金利通貨の金利差は長期的には為替の下落で相殺されると述べています。この点については、乙も最近そのような趣旨のブログ記事を書いたので、
2009.4.11 http://otsu.seesaa.net/article/117253628.html
納得しながら読みました。
 また、p.137 では1996年から2006年までの主要国の米国との経済成長率格差と対ドル為替相場の変化を示しています。そして、結論として、「低成長だから為替安」とはいえないと述べています。日本経済の今後が、少子高齢化で長期にわたって低成長が続くとしても、それがすなわち円安になるということではないのです。つまり、それを理由にした外貨投資はアヤシイということになります。これまたおもしろい指摘でした。
 p.144 では、「1980 年以降、ドル円相場は年率平均3%で下落してきた。」とあります。これについても、乙は関連する記事を書きましたので、
2009.4.16 http://otsu.seesaa.net/article/117541364.html
話が意を得たりと思いました。つまり、1980 年以降の10年ものの米国債の利回りの平均が 7.5% だったとしても、3% くらいは為替でマイナスになるので、4.5% 程度の利回りになるということで、同時期の10年ものの日本国債の利回りの平均 4.2% とあまり変わらないということです。
 pp.153-155 の米国凋落論議の落とし穴というコラムもおもしろかったです。米国はダメになるという話は過去に何回もあったけれど、それで投資しなかったならば、投資機会を逃がしてしまっていたことになるというわけです。乙の感覚では、今後数十年くらいは米国の凋落はないものと思います。根拠のない単なる予想で、外れるかもしれませんが。
 第5章はFXの話、第6章は不動産投資の話で、具体的ではありましたが、乙はあまり興味がないので、いい加減に読んでしまいました。
 第7章「「新金融仕組み商品」に手を出してはいけない」は、当然のことですが、タイトルだけを読んで意味がわかってしまいそうです。
 通読してみて、興味深い本だと思いました。初心者向きではないような気もしますが、インデックス投資の本などを読んだ後くらいに読むといいのではないでしょうか。

参考記事:
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20081226/181418/


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2009年04月08日

水島宏明(2007.12)『ネットカフェ難民と貧困ニッポン』日本テレビ放送網

 乙が読んだ本です。「ワーキングプア」とも重なってくるテーマです。
 著者の水島氏は日本テレビのチーフディレクターとしてドキュメンタリーなどを製作してきた人です。そういう人が「ネットカフェ難民」を取材してできあがったのが本書です。
 ちなみに「ネットカフェ難民」は水島氏の造語だそうです。
 本書では、取材に応じた人の話が詳しく語られます。その実態を知ると、何ともいたたまれないような気分になります。現実に悲惨な人がいるわけです。全体を読み終えて、暗い気分になってきました。
 しかし、だからといって、乙が個人として何かできることがあるかと考えれば、なかなか簡単にできることはないわけで、まじめに働いて税金を払うことで、間接的にそういう人の手助けをしているに過ぎません。
 乙が本書中の記述で驚いたこともいくつかありました。
 まずは、p.114 で、日雇い派遣に従事する人に対して、会社側はかなり細かい風貌チェックを行っているということです。「容姿優、容姿老、不潔感、言葉遣い、ヒゲ、茶髪、長髪、太め、虚弱体質、メガネ、40歳超」などを見ると、さもありなんとも思えますが、ここまで細かく記録するものかという気もしました。人材を派遣する会社としては、派遣社員がどんな人かを知らずに派遣するわけにはいかないでしょうから、こういうデータをインプットしておいて、応募してきた人の中から、派遣先に合いそうな人を選んで派遣するのは当然のように思います。それにしても、徹底して個人情報を集めているのですね。
 本書中では、こういう分類を廃止するよう要求したとありますが、会社側は応じるものでしょうか。こういう情報をためておいて、募集条件にピッタリの人を探して派遣することで会社としての存在価値が出てくるわけで、誰でもどこでも派遣するのでは、会社の意味は少なくなります。
 pp.118-119 では、あるテレビ局が、ネットカフェ難民で日雇い派遣をしている人を取材として撮影しようとしたところ、会社が驚いて、その人をクビにしてしまったという話です。こんなことで職を失うことになったその取材対象者が気の毒ですし、テレビ局の暴力性さえ感じられます。
 本書は、ネットカフェ難民をあるがままにとらえることに成功していると思いますが、次のステップとして「ではどうしたらいいか」までは述べられていません。ジャーナリズムの限界のようなものを感じました。まあ、誰が考えても易しい解決策などはあるわけないと思うのですが……。



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2009年04月06日

城繁幸(2008.3)『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか』(ちくま新書)筑摩書房

 乙が読んだ本です。「アウトサイダーの時代」という副題がついています。
 本書は、城繁幸(2006.9)『若者はなぜ3年で辞めるのか?』
2006.10.14 http://otsu.seesaa.net/article/25446099.html
に続く本です。
 内容は、大きく3章に分かれていますが、細かくは22の節(と三つのコラム)に分かれています。
 それぞれの節は、たとえば、昭和的価値観1「若者は、ただ上に従うこと」のように、昭和的価値観を表す言い方が題名としてつけられています。そして、書かれた内容は、いろいろな人にインタビューした結果です。昭和的価値観に反発する若者を描いています。
 確かに、3年で会社を辞めた若者がその後どうなったかを描くには、これで十分なのかもしれません。しかし、不十分なのかもしれません。インタビューができる人というのは、一般に自分をさらけだしてもいいと考える人で、それは、成功者の場合にはそういう人の比率が高いでしょうが、成功者でなかった場合は、なかなかインタビューに応じようとしない人もいるでしょう。
 そのようなバイアス(偏り)を考慮すると、若者のうち、比較的うまく転職した人(転職して給料が下がっても、それでいいと考え、別の面で満足感を持っている人)を描き出しているのではないでしょうか。
 乙としては、統計資料などを駆使して、もう少し全体を概観するような量的側面も描けていたらよかったのにという印象を持ちました。
 これは乙が疑り深い性格を持っているためかもしれませんので、そのような偏りを考慮して、受け止めてください。
 本書は全体として、平成的価値観とも言うべき「多様性」を前面に出し、昭和的価値観で若者を縛り付けてもダメなんだというメッセージを強く打ち出しています。
 乙は、中高年者に属しますから、描かれている若者たちを見ていると、かなりたるんだように見えるという面もあります。一方で、こういう若者が増えているのは事実ですから、それに対応した見方をしなければならなくなったんだという、ある種感慨深いものもありました。
 乙がおもしろいと思ったのは、p.170- のコラム「21世紀の大学システム」です。社会の多様化にともない、大学もまた多様化しなければならないというわけで、今後の大学教育を考える上で参考になります。自分は大学を卒業してしまったという場合でも、子供が、孫が、さらにその先の子々孫々が大学に進学することを考えれば、誰でも無関心ではいられないはずです。
 pp.178-179 では、就職しようとする若者から日本企業が見捨てられており、外資系企業が注目の的になっているというのです。いやはや、変わろうとしない日本企業を見捨てようという発想はすばらしいです。ぜひそういう心意気で、若者には自分なりの人生を歩んでいってほしいと思いました。みんなが自分の立ち位置で努力することで、結果的にお互いがお互いにいい影響を与え、社会全体としてプラスになっていくはずですから。(単純な楽観論に過ぎませんが。)



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2009年03月29日

水野和夫(2008.12)『金融大崩壊』(生活人新書)日本放送出版協会

 乙が読んだ本です。「「アメリカ金融帝国」の終焉」という副題がついています。
 今の金融危機の時代を考える上で有用な本かと思って読んでみました。
 「アメリカ金融帝国」がなぜ生まれたかという問題はおもしろいと思いました。p.86 によれば、「強いドルが国益だ」というルービン財務長官の主張が基本となったようです。強いドルでどんどん輸入をしようということです。こうして、p.89 で述べるように、グローバル化で貯蓄が国内になくても他国の貯蓄を使えばいいという考え方が出てきます。日本は貯蓄率が高いわけですが、そうやって貯め込んだお金をアメリカが使ったということになります。
 このあたりはおもしろかったのですが、2点ほど間違いがあり、乙はこの段階で興ざめしてしまいました。

(1) ドルコスト平均法の間違い
 p.174 では、ドル・コスト平均法の説明が出てきます。しかし、それが間違っています。「ある投資家が1年間、毎日、ある会社に投資し、継続して1株ずつ購入している」ことだというのです。違います。「1株ずつ」ではなく「一定の金額ずつ」です。購入できる株数は、株価の上下によって変わってきますが、そこがドル・コスト平均法のいいところなのです。
 こうやって株を買うと、1年経てば購入価格は1年移動平均線と一致するというわけです。それはそうですが、ドル・コスト平均法ならば、(全体で買った株式数ないし資金量が同じであれば)1年移動平均よりもコストが低くなったと考えられます。

(2) 日経平均を買い続けた場合の損失の計算
 pp.175-176 では、88年以降、毎月、日経平均を一定単位で購入することにした仮想投資家を考えています。そして、20年に渡って買い進めたとして、08年11月に株をすべて売ると、49% も損失が出るというのです。
 これまた間違いです。配当が計算に入っていません。配当は、株価を基準に考えると、たいてい 1% とか、2% とか、一見大した金額ではないけれど、20年も経つとかなりのものになります。それを考えれば、20年投資を続けた仮想投資家が単純に 49% の損失になったとはいえません。
 こういう計算をするときの配当の大きさについては
http://blog.livedoor.jp/tsurao/archives/1045153.html
が参考になります。


 奥付によると、著者の水野和夫氏は三菱UFJ証券参与・チーフエコノミストで、早稲田大学大学院経済学研究科修士課程修了とのこと。ちゃんとした知識を学んだ専門家のはずですが、こんな間違いをしていていいのでしょうか。乙はかなり気になりました。
 というわけで、いいところもある本なのですが、乙は読み進める気力をなくしました。



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2009年03月24日

高橋洋一(2008.12)『この金融政策が日本経済を救う』(光文書新書)光文社

 乙が読んだ本です。
 タイトルに引かれて読む気になりました。今の不況をどうするべきか、高橋氏の考えを知りたいと思いました。
 プロローグを読み始めてすぐ、p.8 には「日本経済の先行き不安の原因は、サブプライム問題ではありません。」と太字で書いてあります。まさに驚きです。そして、日本の景気低迷の原因は06年から07年にかけての金融引き締めだというのです。確かに、このころ日銀は誘導金利を引き上げました。それにしても、たった 0.5% です。金利というのは、5% くらいあるのが当たり前だと思いますが、それが 0.5% くらいの引き上げで経済にダメージを与えるものでしょうか。乙は疑問に思いました。
 これについては、p.37 あたりで再度取り上げられますし、第5章「金融政策と株価の関係」が詳しく論じているところなので、高橋氏の主張を理解するためには、そちらを読むべきです。
 pp.75-77 で個別物価と一般物価の違いについて説明しています。個別物価は個々の商品などの物価のことで、一般物価はその平均です。そこで、個別物価が上がれば一般物価も上がると思いますが、それがそう簡単な話ではないというのです。2007 年に値上げされた即席麺や食パンは、それぞれの業界が値上げできる環境にあったからメーカーが値上げしたのだとしています。そういわれればそうかもしれませんが、やはり原料が高くなれば値上げするしかない(そうしなければメーカーとしてやっていけない)ように思うのですが、どうなのでしょうか。
 第4章「インフレ目標」では、日銀の金利政策のおかしさを述べています。この章は納得しました。物価上昇率に一定の目標を設けるほうがいいという話も、説得力がありました。
 エピローグの中ですが、p.199 から財政再建について述べています。日本政府の借金 981 兆円は、国民ひとり当たり 800 万円にあたるという説明もよく聞きます。しかし、高橋氏によれば、国の借金を個人や家計にたとえるのはまずく、むしろ、企業にたとえるべきだとのことです。借金をしていても、それが当たり前の状態なのです。そして、借金 981 兆円が世界最大であると同時に、政府が 690 兆円もの資産を持っており、こちらも世界最大であると述べています。というわけで、国債がデフォルトになることは(しばらくは)なさそうです。
 p.204 では、現在の非常時に対する具体的な提案が書いてあります。25兆円の量的緩和と25兆円の政府紙幣発行です。高橋氏が政府発行紙幣の賛成論者であることは以前から知っていましたが
2009.2.11 http://otsu.seesaa.net/article/114032329.html
それにしても、大きな構想です。実現はそう簡単ではないと思いますが、ぜひ、こういう話を政府に考えてもらいたいものだと思いました。
 本書は、新書サイズですから手軽に読めます。今の日本経済を考える上で有意義な本だと思いました。

 余談ですが、p.25 最後の1行に「株式などの債券」という言い方が出てきます。とんでもない間違いですが、著者の単純な勘違いなのでしょうね。



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2009年03月22日

大前研一(2009.1)『マネー力』(PHPビジネス新書)PHP研究所

 乙が読んだ本です。「資産運用力を磨くのはいまがチャンス!」という副題がついています。
 序章「世界は大変だが、日本はチャンス!」では、今の金融危機をどう見るかが述べられています。
 p.24 では、アメリカ経済のエンジンが壊れたとしています。爆弾が三つあるのだそうです。第1がサブプライムローン、第2がCDS、そして第3がクレジットカードそのものということです。乙は、クレジットカードそのものなどと思ってもみなかったので、驚きました。今やアメリカではローンを払えない人が多数いるのですね。
 p.26 では、アメリカの住宅が経済のエンジンになっていたことを説明します。アメリカでは住宅を担保に借金して消費するというわけですね。それが大きく狂ったわけですから、今回の金融危機の根が深いことがわかります。
 p.29 からはユーロの問題点を指摘しています。ユーロは16ヵ国の共同通貨なので、それを支える「国」がないというわけです。ユーロが安い方がいいという国と高い方がいいという国があり、ECB(ヨーロッパ中央銀行)は通貨防衛の力がないとしています。なるほど、こういう側面があるとは意識していませんでした。
 第1章「世界を見て、マネー力を磨け」では、日本の中だけを見るのでなく、世界を見ようと呼びかけています。マネーの動きも、世界を眺めれば理解できるとのことです。話はわかりますが、実際はそういう視野を持つこと自体がむずかしそうです。
 第2章「自分の資産は自分で守れ」では、世界のさまざまな経験を紹介し、世界の通貨を同時に考えることで、資産を守ろうとしています。
 p.87 では、2004 年の新札発行に際して、新札と旧札の交換比を1対1でなく、新札のほうを強くしてしまおうという話が実際にあったようだと述べています。一種の切り上げです。実際には、新円切り換えを秘密裏に行えなかった(情報が漏れてしまった)ので、そのままになっているというわけです。乙は、この話はまったく知りませんでした。
 p.88 では、日本の国債のデフォルトがあるとしています。その可能性はかなり高いのだそうです。乙は、なかなかこうはならないだろうと考えています。
 p.95 では、石油産出国がドルを見限る可能性があり、そうなるとドルが大暴落するとのことです。石油産出国の通貨はドルと連動していますが、そのようなドルペッグ制を維持するかどうか、2007 年末には真剣に検討されていたのだそうです。ドルはこれからその地位を下げることになるのでしょうか。すでに資産の一部をドルの形で持っている身としては、このような議論は注目に値します。
 p.98 では、ドルが基軸通貨から外れ、ユーロにシフトしていくと、ドルがユーロと一体になることも考えられるとしています。そんなことは本当に可能でしょうか。乙にはとても考えられません。
 第3章「資産運用力は世界に学べ」でも、日本の中だけを見ないで世界に目を広げることを説いています。
 p.115 では、「日本の金融機関には期待しない」と明言しています。乙もこの点は賛成です。
 pp.120-123 では、欧米で住宅が資産になっている例を説明します。一方、p.124 では、日本の住宅はまったくそれと違ってしまっており、制度上、ひどい住宅にならざるを得ないとしています。国をどう設計するかという初期アイディアが悪ければ、あとはどうしようもなくなるのですね。
 第4章「マネー脳の鍛え方」では、マネー力の強化にはITと英語が不可欠としています。英語でビジネスができることが必須なのだそうです。しかし、日本の現状はそれとほど遠いし、日本はそういう経験がないのではないでしょうか。
 p.136 では、ニートやフリーターをなくしても経済力は上がらないと述べています。ニートやフリーターに職業訓練をするよりも、世界で通用する人材を育てるべきだとしています。大前氏の意見は理解できるのですが、今の日本ではなかなか受け入れられない考え方でしょう。
 第5章「大前式資産形成術」と第6章「マネーの達人たちに学ぶ」は、大前氏の書き下ろしではないとのことで、実際読んでみるとややつまらないように思いました。
 終章「いよいよ日本の出番」は、これからの日本を展望する章です。
 p.199 では、オバマ大統領の取る景気浮揚策を予想していますが、景気浮揚の方法は基本的に二つしかないそうです。公共投資と戦争です。こういう割り切った話し方は、いかにも大前流の議論です。
 p.204 では、アメリカで相続税が下がっている状況を説明し、2010 年にはゼロにするのだそうです。日本でも、1年か2年だけ相続税をゼロにしてみてはどうかとしています。アイディアはおもしろいですが、「相続」が発生するタイミングで、高額な相続税を取られたり取られなかったりということでは、国民の間に不公平感が生まれてしまうように思います。
 ともあれ、大前流の割り切った考え方を知るには適当な1冊といえるでしょう。



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2009年03月18日

角山智(2009.1)『資産運用の強化書』パンローリング

 乙が読んだ本です。「銘柄選びよりも大切な投資の基本」という副題がついています。
 角山氏といえば、バリュー株の投資家だとばかり思っていました。
 『株価4倍「割安成長株」で儲ける収益バリュー投資術』
2006.8.4 http://otsu.seesaa.net/article/21894584.html
あるいは『超特価バリュー株「福袋銘柄」で儲ける週末投資術』
2006.8.2 http://otsu.seesaa.net/article/21794517.html
といった本を書いている方です。
 本書は、アセット・アロケーションに重点をおいた書き方になっており、以前の本とは立場が大きく異なっています。分散投資が中心です。
 これについて、まえがき中の p.6 で、次のように述べています。「私は、13年間投資を行ってきました。日本新興市場の小型株を好んで売買するという、よくあるタイプの個人投資家です。【中略】2006 年から、以前より興味を持っていたアセット・アロケーション重視の投資に切り替えたのです。債券や REIT を組み入れ、株式については ETF を活用した国際分散投資を行っています。」なるほど、角山氏は宗旨替えをしたのですね。
 本書に書いてある内容はまともなことですが、ある意味で退屈しがちかもしれません。分散投資の本というと、だいたい似たような内容になってしまうものです。
 乙は、第6章の「【株式】エマージング市場」が気になりました。はじめに、BRICs ブームがあったけれど、最近はめちゃくちゃになっていることが述べられています。それから、1990年代の「アジアの4匹の虎」(韓国、台湾、香港、シンガポール)でも同様で、ブームは怖いとしています。p.141 では、メキシコの IPC 指数の推移を載せ、メキシコ通貨危機の傷跡が残っているとしています。また、p.143 では、香港のハンセン指数の推移を載せ、アジア通貨危機のようすがわかるとしています。確かに大幅な下落が見てとれます。しかし、2枚のグラフを見ると、通貨危機があっても、その後は持ち直し、それ以前よりも株価は上昇しているのです。つまり、著者が説くように、「エマージング株式市場は危ない」のではなく、大きな価格変動があることもありますが、結果的には長期間保有を続ければ大きなプラスになったといえるのではないでしょうか。
 p.145 のタイの SET 指数では、大きな落ち込みのあと、株価が回復していませんし、p.147 のベトナム VN 指数でも、大きく落ち込んだままになっていますが、これらも、今後時間が経てば回復するのではないかと思われます。BRICs についても、同様に考えられるのではないかと思います。
 こんなことで、乙は、著者のいうほどエマージング市場が危ないとは思えませんでした。
 第12章「炭坑のカナリア」も気になりました。著者によれば、株価の変調は前もってわかるというのです。注意するべき指標があるというわけです。本書では六つの指標(長短金利差、イールドスプレッド、商品市況、銀行株指数、クレジットスプレッド、恐怖指数)を紹介しています。
 p.262 では、日本株でシミュレーションをしており、逆イールドが生じた場合、翌年は投資を行わないようにすると、何もせずにじっとしているよりは成績が大きく上昇するというわけです。これは本当でしょうか。こんなことで運用成績が上がるならば、プロのファンドマネージャーたちがそういう戦略を採らないのはなぜなんでしょうか。日本株ファンドでありながら、1年間も株をまったく保有せずにキャッシュポジションのままにしておくのは、本来、ありえないことかもしれません。しかし、それが正しい運用ならばそうすべきです。あるいは、一部のヘッジファンドのように空売りも行うような運用方針であれば、ここぞとばかり空売りで勝負するべきです。なぜ、プロがそうしないのでしょうか。乙はここがわからなかったです。
 六つの指数があるといったって、それらが相互に矛盾するとしたときどうしたらいいかという難問もありそうです。
 著者はタイミング投資はありではないかとしていますが、一般の個人投資家にとって、タイミング投資はきわめてむずかしいものと思います。
 本書は、海外分散投資の本ではありますが、全面的に信用していいかと考えてみると、少しだけ疑問を感じました。
 余談ですが、p.205 では、相関係数について「0.1%」と書いてあります。「%」が余分です。単なるミスプリであることを祈っています。



ラベル:角山智
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2009年03月13日

堺屋太一(2008.12)『大激震』実業之日本社

 乙が読んだ本です。
 出版時期から考えて、今回の金融危機に関する本だろうと考えて読んでみることにしました。しかし、もっと壮大なスケールの内容が詰まった本でした。
 第1章「日本の凋落」では、今の日本は通り一遍の改革でなく、明治維新的な大変革をしなければどうしようもないと論じます。p.26 では、日本が規格大量生産を目指したけれど、それは人類文明の方向と違っていて、そのために90年代以降に日本が凋落したのだと説明しています。目が覚める思いがしました。
 では、どんなことがこれから必要になるでしょうか。堺屋氏は、自由貿易協定(FTA)と外国からの移民で開国せよとのことです。そして、公務員制度を改革して天下り全廃、道州制の導入、金融・財政の発想の転換、教育改革(規格大量生産向きの人材育成でなく、独創性と個性のある人間を育成しよう)などが説かれます。もっともな提言のようにも思いますが、こんな大きな改革が実現できるでしょうか。どうやって実現できるでしょうか。今の政治家を見ていると、到底不可能としか思えません。
 第2章「日本とは何か」では、歴史分析から日本のあるべき姿を探ります。ここも雄大な話が展開されます。
 第3章「「団塊の世代」が日本を変える!」では、団塊の世代に期待を表明しています。高齢者をうまく活用しようという趣旨です。これまた、ちぢみ行く日本に対して、興味深い提言でした。なお、p.85 では、合計特殊出生率のグラフが示されますが、3箇所で「%」が付いています。たとえば、2006 年は 1.32% というような具合です。もちろん、単位は「人」ですから「%」を付けてはいけません。堺屋氏の勘違いでしょう。しかし、3箇所もあるとなるとミスプリでは済ませられません。
 第4章「知恵の時代こそ、「個性」が大切」では、アイディアによる地域興しを説いています。p.139 では、そういうアイディアなしでは日本はアジアの田舎になってしまうと警告しています。では、どんな地域興しのアイディアがあるのでしょうか。あくまで一例ですが、p.144 では、原子力発電所の廃熱を利用して、2km の長さのコースを持つプールを作ろうと述べています。あっと驚きますが、実現は可能だし、乙はけっこうおもしろい話ではないかと思いました。
 第5章「大きく人類文明が変わる局面に来た」と第6章「世界を創った男チンギス・ハンに学ぶ」は、全世界の歴史を見ながら、今後の展望をしています。p.225 では、チンギス・ハンの孫のフビライ・ハンは、史上初めて不換紙幣を発行したと述べています。現在の米ドルにも通じる話です。そして、米ドルは80年くらいは保つのではないかとしています。1971年に米ドルがペーパーマネーになったわけですから、2050 年ころまではドルが大丈夫だとしています。そんなものでしょうか。乙はそのころには死んでいると思いますので、まああまり影響は受けないと思いますが、歴史を知ることは未来を考える上でおもしろいと思いました。
 最終章「新代「知価社会」の誕生」では、知価社会こそが世界危機脱出の唯一の方法だと説きます。大きな文明の流れが変わったのだから、それに適した方向に変わらざるを得ないというわけです。上述のように、乙は今の日本では、そういう「変化」はきわめてむずかしいように思います。このまま「凋落」が続いていくのではないでしょうか。
 本書は、スケールの大きさが一番の売りでしょう。ただし、書かれている内容は、著者の以前の本を読んでいる人には繰り返し的な印象を受けるのではないでしょうか。乙は、きちんと堺屋氏の本を読んでいるわけではないですが、いろいろなところで(雑誌記事などで)見かける堺屋氏の主張などと一致していて(それは当然ですが)既読感がありました。まあ、まとめて読んで堺屋ワールドにひたるのも悪くないと思います。



ラベル:堺屋太一
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2009年03月07日

野尻哲史(2008.11)『退職金は何もしないと消えていく』(講談社+α新書)講談社

 乙が読んだ本です。「60歳から「経済的自由」を手にする投資勉強法」という副題が付いています。
 第1章「「団塊の世代」は逃げ切れるか?」では、団塊の世代も「逃げ切れない」ということを述べています。p.31 あたりでは、退職後の経済生活のアンケートに基づき、世代別の態度を次のように規定しています。
・おびえる20代
・運用できない現役
・反省するシニア
 なるほど、ポイントを突いています。それぞれにうまくいかないものなんですね。
 では、実際退職後の生活はどの程度なのでしょうか。年金に加えて、推定退職金と手持ち資産を余命35年で割るという計算をしています。その結果、退職後に使えるお金は、平均で1年間に328万円だそうです。退職前に700万円くらいの収入があったことを基準にすると、なかなか厳しい現実が待っているようです。
 第2章「人生を左右する「五つのリスク」」では、退職後のリスクとして次をあげています。
(1) 思った以上に長生き
(2) 減らない退職後の生活費
(3) 忍び寄るインフレ
(4) 「引き出しすぎ」の恐さ
(5) 偏った資産構成
 かなりのページ数を割いて、それぞれのリスクを説明しています。
 p.66 で「平均寿命を全うできる確率は「50%」ということになります。」と書いていますが、これは厳密には間違いです。平均寿命が「中央値」ならば、正確に50%になりますが、「平均」であれば50%ではなくなります。平均寿命が 79.19 歳であれば、平均よりも若いほうで0歳から79歳まで死ぬ確率があって、一方では、79歳以上で死ぬ確率もありますが、100 歳を越えて生き延びる確率はそんなに大きくなく、だいたい80〜90歳くらいで死ぬとします。平均を計算するとき、若い人が1人死ぬと、(平均の)79歳から大きく外れます(小さな値になります)。一方、79歳以上の人は+10年くらいのところに集中して死にます。つまり、死ぬときの年齢分布は正規分布のような山型分布でなく、若いほうに裾野が伸びた形(そして高齢のほうはストンと切れる形)をしています。ですから、平均寿命よりも年長の人のほうが50%以上になり、年少の人は50%未満になるのです。
 pp.113-115 では、引き出しすぎの恐さを説明していますが、引き出しながら使っていくときは、マイナス運用があると、早く資金が枯渇することがあるとのことです。p.113 の表が印象的です。同じ収益率の表なのですが、21年間にわたって平均収益率 10.4% でシミュレーションしています。そして、21年にわたる収益率を前後を入れ替えて表にしています。すると、最初の3年にマイナスが集中して現れるような不幸な場合、途中で残額ゼロになってしまいます。これはなかなかおもしろい話でした。はじめにマイナスにならないことが重要だというわけです。
 p.124 では、アメリカの年齢別の株式保有率のグラフが出ています。それによると、高齢者でも資産を株式に振り向ける割合が高いことがわかります。70歳くらいからはさすがに株式の比率が下がってきますが、60代まではけっこう高いと思いました。「100-年齢」が株式の比率だなんていえません。興味深いデータでした。もっとも、アメリカは格差社会ですから、株式に投資しているのは金持ちが多いということかもしれません。「普通の人」がどれくらい株式に投資しているかはよくわかりません。
 pp.128-130 では、アンケート調査で1年間で年金以外にどれくらいのお金が必要かと聞いています。平均値は186万円です。また、総額ではいくら必要ですかと聞くと、平均3044万円だったとのことです。割り算してみると、たった 16.4 年分でしかないのです。これでは(退職を60歳とすると)76歳で資産が尽きてしまうのです。多くの人はまじめに退職後のことを計算しているわけではないことがわかってしまいます。
 第3章「経済的自由を掴む資産設計術」では、投資の話です。
 p.147 では、75歳まで運用するという話が出てきます。現役時代は「働きながら運用する時代」、60歳から75歳までは「使いながら運用する時代」、75歳以上は「使う時代」です。乙は、退職までの15年くらいを考えて投資を始めたのですが、もっと先のことを考えておくべきだという意見です。なるほど、その通りですね。
 p.175 あたりでは、国内移住(都市から地方へ)も考えるといいという話で、確かに、そういう面もありそうです。乙は、海外移住を考えたりしましたが、
2008.2.19 http://otsu.seesaa.net/article/84738236.html
2008.2.18 http://otsu.seesaa.net/article/84564177.html
それよりも現実的かもしれません。選択肢の一つとして考えておきたいところです。
 本書は、新書でありながら中身が濃い本です。退職後(老後)の生活のことを考える上で大いに参考になりそうな本です。誰でも経験する「老後」ですが、それがどういうものかは、実際そうなってみないとなかなかわからないものです。



ラベル:野尻哲史 退職金
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2009年03月05日

野口悠紀雄(2008.12)『世界経済危機 日本の罪と罰』ダイヤモンド社

 乙が読んだ本です。野口氏の「現在」をどう見るかが書かれていて、大変おもしろい本でした。
 5ページほどの「まえがき」を読むだけで、1冊読んでみようという気にさせます。
 「日本の罪と罰」というタイトルも意味深長です。まえがきにありますが、今回の金融危機は、主犯がアメリカであることは事実ですが、実は、日本(それと中国と産油国)が共犯者であり、大量の資金をアメリカに提供したという「罪」があると論じます。日本は低金利政策を取り、為替介入を行って円安に誘導したので、円キャリー取引が行われ、低コストの資金を全世界(特にアメリカ)にばらまいたという「罪」です。そして「罰」ですが、対外資産の巨額の為替差損がそれに相当します。また、これから日本を未曾有の大不況が襲いますが、これも「罰」ということになります。
 第1章は「崩壊した日本の輸出立国モデル」というものです。ただし、この章は若干読みにくいと思います。文章の途中で、3章や4章で論じることを先取りしつつ、図表などを参照させている点です。たぶん、他の章を書いたあとで第1章を書いたのではないかと推測しますが、本は、そこまで読んできたことを前提にしつつ話を展開するようにするべきで、読んでいく途中で後ろから出てくることを参照するのは読みにくくなります。ただし、このような態度は第1章だけですので、本書全体としては読みにくいわけではありません。(まあ、2回読めば、何の問題にもならないわけですが。)
 p.107 では、アメリカの住宅価格とトヨタの車の売れ行きの関連を論じていて、まさにその通りだと思いました。アメリカでは住宅を担保に自動車ローンを組む人が多いわけです。したがって、「日本の自動車産業は、円安に乗ってアメリカでの自動車販売を増加させ、そこで得たドルをアメリカに投資し、(結果的には)住宅ローンを支援し、住宅価格バブルの増殖に手を貸したことになった。」ということになります。住宅価格が下落すれば、信用収縮がおき、クルマが売れなくなるのは当然です。今がまさにその状態だというわけです。
 p.133 では、2001 年に導入された量的緩和政策について、表向きは「デフレに対処するため」とされたが、真の目的は「為替介入による貨幣供給量の増加を放置すること」だったとしています。これまた鋭い見方でした。
 p.169 あたりで、食糧自給率の問題を論じていますが、野口氏は一貫して食糧自給率を上げる必要はないという立場を取っており、本書でも持論が展開されています。乙も、こんなふうに考えているので、興味深く読みました。

 本書は、各節末に内容の要約が書いてあり、大変読みやすくなっています。短時間で読みたい人は、その要約だけを拾い読みすればいいでしょう。(やっぱり本文を読みたくなるでしょうが。)
 本書は、今の経済の動きを解釈して見せており、なるほどなあと思わせるところが多くありました。本当は、こういう経済危機が起こる前に読みたかったのですが、なかなかそういうことはできないのでしょうね。しかし、後講釈でも納得できるところが多々あるという点でおすすめできる良書だと思いました。



ラベル:野口悠紀雄
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2009年02月23日

内藤忍(2008.6)『【新版】内藤忍の資産設計塾』自由国民社

 乙が読んだ本です。「あなたとお金を結び人生の目標をかなえる法」という副題が付いています。
 乙は、すでに旧版を読んでいましたが、
2006.4.19 http://otsu.seesaa.net/article/16754281.html
もう一度読むつもりになりました。
 ちなみに、上記ブログ記事を今読むと、我ながらずいぶん変なことを書いているなあと思います。この3年間で乙の考え方が相当に変わってきたことを感じます。
 なお、乙は内藤氏の著書を他にも読んでいますが、
2007.8.2 内藤忍(2007.6)『内藤忍の資産設計塾 外貨投資編』自由国民社
http://otsu.seesaa.net/article/50008345.html
2006.9.22 内藤忍(2006.7)『内藤忍の人生を豊かにするお金のルール』アスペクト
http://otsu.seesaa.net/article/24191596.html
それぞれにいい本だと思っています。
 本書も、手堅い本で、資産運用の教科書ともいえる良書です。この1冊で資産運用は完全に理解できるように思います。
 p.29 で、老後資金の目標はまず 2000 万円という話が出てきます。意外と少額です。公的年金を考慮すれば、これで十分という話ですが、乙は、この10倍くらい必要ではないかと思っていました。まあ、生活のスタイルにもよりますから、一概に言えませんが。
 p.50 では、内藤式標準的アセットアロケーションが出てきます。p.171 で、なぜそう考えるかも説明されます。日本株式 30%、日本債券 10%、外国株式 20%、外国債券 20%、流動性資産・その他 20% というものです。(これは旧版と変わっていません。)もちろん、アセットアロケーションに正解はありませんが、これはこれで一つの考え方だなあと思いました。
 p.57 では、先進国では市場の効率性が高いのでインデックス運用、新興国では市場の効率性が低いので、アクティブ運用が基本だと説きます。なるほど、もっともです。乙は、特にこういう考え方を持っていたわけではありませんが、言われてみると確かにそうだと感じました。
 本書では、第3章「個人投資家が使える12の金融商品」が一番充実しています。100 ページ近くあります。全体が約 240 ページですから、その中のかなりの割合を占めます。ここを一読すれば、どんな金融商品がどんな特徴を持つのか、全体を概観することができます。
 p.184 から、運用金額に合わせたポートフォリオ例が出てきます。10万円から始まって、50 万円、100 万円、300 万円、1,000 万円の5種類です。10 万円で資産運用を考えるべきかどうか、乙は疑問に思いましたが、まあ、そういう場合も考慮しておくのはいいことかもしれません。誰でも最初は少額からスタートしますから。しかし、1,000 万円までで終わりというのは、ちょっともったいない気がしました。3,000 万円や1億円の場合、内藤氏はどう考えるのでしょうか。1,000 万円をそのまま比例倍していいのでしょうか。たぶんそうでしょうね。でも、もしかすると、ちょっと違う考え方ができるかもしれません。
 なお、資産配分例で、100 万円以下の場合は外国債券として、外貨 MMF を例に挙げていますが、300 万円を越えると、FX(外国為替保証金取引)を使うとしています。これは興味深い考え方でした。

 ともあれ、この1冊を読めば、資産運用に関して標準的なことがわかります。その意味で良書であり、おすすめできます。



ラベル:内藤忍
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2009年02月18日

吉本佳生(2008.11)『クルマは家電量販店で買え!』ダイヤモンド社

 乙が読んだ本です。「価格と生活の経済学」という副題が付いています。
 とても面白い本で、乙は一気に読んでしまいました。
 本書は、いろいろな商品やサービスの「価格」がどうなっているのかを見ながら、経済学的に考えていこうとするもので、著者の視点の広さが感じられます。
 第1章は「クルマとプリンターとPB商品、価格の決まり方はどうちがうのか?」です。価格の決まり方をめぐって、具体的な題材を取り上げながら論じています。なるほどなあと思わせる記述がたくさん出てきます。
 第2章は「高級レストランの格安ランチが、十分に美味しいのはなぜか?」です。「追加コスト」という考え方できれいに説明しています。p.78 では、店が混むからランチが安くなるという話が出てきて、なるほどと思わせます。
 話には納得できるのですが、一消費者としては、同じものがランチで 1000 円で、ディナーで 3000 円で提供されていたら、それはやっぱりランチで食べる方がいいと思うでしょう。ですから、ランチの方がディナーよりも少しだけ品質を落としている場合が多いと思います。しかし、それでも、ここで述べられている説明は当てはまります。高級レストランの味を楽しむには、ランチが一番いいということですね。
 また、pp.78- では、タクシー料金についても、もっと規制緩和をすることで安くなることがあると論じています。pp.85- では、高速道路料金についても、もっと工夫することができるとしています。いずれも貴重な提言だと思いました。
 第3章は「パチンコや金取引で必ず儲ける方法は、ときに本当に存在する?」です。タイトルに引かれて、手軽に正解を求めようとすると、がっかりすると思います。しかし、さまざまな裁定取引の例が出てきて、この章も興味深いです。
 pp.102-106 では、パチンコ屋が1玉1円と1玉4円の2種類の玉を売る話が出てきます。こういうときに「裁定」が効くんですね。パチンコ屋の話かと思っていると、p.106 から、金と銀の交換レートと同じことだということになり、さらには金とドルの交換(金本位制)の話になります。こういったふうに、身近な話題とマクロな経済学の話を結びつけて説明するあたりは、本書の大きな特徴でしょう。
 p.130 では、中国での偽ブランド販売が銀座を潤しているという話が出てきます。こんなものの見方は乙は全く気がついていなかったので、「へえ!」でした。
 p.140 では、フードマイレージという考え方のおかしなところを指摘しています。何となくもやもやと感じていたものをずばりと指摘されたような気分です。
 第4章は「ライバル企業が、互いに不幸になる競争を止められないのはなぜか?」です。オークションや価格設定での駆け引きを説明しています。この章も面白かったです。p.153 では、セカンドプライスオークションという考え方が説明されますが、これも乙が知らなかったことなので、とても興味を持ちました。最高額で入札した人に、2番目に高額に付けられた値段で売るということです。とてもいい制度だと思いました。
 第5章は「大学の授業料は、これからも上昇を続けるのだろうか?」です。実際、今の大学の授業料(特に私立理系)はずいぶん高いので、ぜひ、安くしてほしいものですが、著者によれば、そういうことも不可能ではなさそうです。それを実現するための具体的な提案も書いてあります。しかし、日本社会では、なかなか受け入れられない考え方でしょう。大学をどうするかは、文科省だけでなく、さまざまな立場の人がそれぞれの立場から発言するので、国民的合意が得られにくいテーマだと思います。
 第6章は「地球温暖化対策に、高すぎる価格がつけられようとしている?」です。排出権取引についての考察です。ここでも、排出権取引に関する著者の具体的な提案が盛り込まれ、なるほどと思いました。
 p.279 からの「おわりに」では、本書で出てきたさまざまな題材が金融と深く関係しているということが書かれています。確かにそうです。
 この本は投資を心がける人が読んでも役に立つものだと思います。おすすめに値する良書だと思います。



ラベル:吉本佳生
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2009年02月06日

森永卓郎(2008.11)『年収防衛』(角川SSC新書)角川書店

 乙が読んだ本です。「大恐慌時代に「自分防衛力」をつける」という副題が付いています。
 第1章「「年収崩壊」から「年収防衛」へ」は、前著『年収崩壊』(2007)から現在までの変化を描いています。p.27 で、新自由主義は英・米・日(小泉政権)だけだとしており、世界的に見て特殊な考え方だとしています。また、p.29 でオランダの社会民主主義の考え方を説明し、好ましいあり方のモデルとしているようです。パートタイマーでもフルタイマーと同じ給与水準だそうです。働く時間が短いので、その分収入は少ないのですが、それだけの違いだというわけです。確かに、こういう働き方も興味深いのですが、みんなが一生懸命に働く日本ではこの種の政策は採りにくいでしょうね。
 第2章「「年収防衛」時代の働き方」は、今の時代に合わせた働き方の提案ですが、あまり新鮮味はありません。正社員の終身雇用が理想だとか、次を決めてから辞表を出すとか、当たり前のことが並んでいるように感じました。今は、そういうことができない人が多いから社会問題になっているというのに、森永氏の書いていることはどこかずれている感じです。
 第3章「モリタク流発想術」では、トピック的にさまざまな話題を取り上げます。昭和の町、高齢者の恋愛、非婚など、現代社会を見る「目」が感じられます。しかし、だからどうせよというのか、趣旨が今ひとつよくわかりません。
 第4章「モリタク流資産運用術」は、一番投資に近いところですが、たった13ページで、あまり突っ込んだ話にはなっていません。もう少しページ数を増やしてもらいたかったところです。
 第5章「モリタク流節約術」では、さまざまな小手先の技術で生活費の節約を説いています。しかし、この多くはすでに知られていることの繰り返しであり、乙はつまらなく感じました。
 第4章と第5章は、個人が行う話で、第3章までの社会を見る目とはかなり異なります。乙はかなり違和感がありました。
 本書の末尾には、本書の内容がいくつかの雑誌の連載から構成されていると書いてありました。それで何となくわかりました。本書は、あまりつながりのない話の寄せ集めになっていたんです。
 読了後、振り返ってみると、第1章が一番おもしろかったと思います。しかし、あとはどうも2番煎じのような気がしました。

 乙が読みたくて買った本ではなく、飛行機に乗るときに、手持ちの読み物を読み終えてしまったので、空港の本屋さんで目に付いたものを購入しただけです。時間つぶしにはなりましたが、さて、こういう本を読む人というのはどんな人なのでしょうか。どうにもイメージがわきにくかったように思います。

参考記事:
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20090130/184448


ラベル:森永卓郎
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2009年01月27日

倉都康行(2008.7)『投資銀行バブルの終焉』日経BP社

 乙が読んだ本です。「サブプライム問題のメカニズム」という副題が付いています。
 この本も、本格的な株価の値下がりの前に書かれています(執筆時期は2008年4月とのこと)ので、内容的に古く感じる部分があります。
 奥付のところの著者紹介によると、著者の倉都氏は、東京銀行の香港、ロンドン支店で国際資本市場業務を担当し、チェースマンハッタン銀行のマネージングディレクターなども経験したとのことですから、いわば、投資銀行の業務を自ら経験してきた人ということになります。
 本書は、専門用語が解説なしで使われますから、ある程度金融の知識がある人を対象にして書かれた本ということになります。
 p.32 あたりで、投資銀行と商業銀行がどう違うかを説明しているくだりは参考になりました。同じく「銀行」と名乗っていても、両者はまったく別物です。
 その後、pp.199-200 では、商業銀行は公的資金投入などで再生できるけれども、投資銀行は新しいタイプの資本毀損なので、同じようにできるかどうか、疑問であるとしています。
 この2点は面白かったのですが、その途中の百数十ページの記述は、乙にとってかなり退屈に感じました。
 p.208 では、FRB の対応として、実態的に投資銀行(ベア・スターンズ)を救済対象とした以上、FRB が商業銀行だけでなく投資銀行をも規制対象にすべきだという議論が起きていると書いています。こうなると、投資銀行は投資銀行らしくなくなります。つまり、これが投資銀行の終焉ということです。
 p.211 では、新自由主義の考え方と投資銀行の関連を、サブプライム問題を例にしながら解説しています。なるほどと思いました。

 本書は、アメリカに多くある投資銀行がどんなものかを記述しています。しかし、参考文献が1冊もあげられていません。著者の見方・考え方が書いてありますが、それは著者自らの経験が中心となっているようです。なぜ著者がそのような見方をするようになったか、それを裏付ける「データ」に乏しいと感じました。したがって、著者の見方がどれだけ有効な議論なのか、わからないのです。
 音楽に見立てる章の構成は成功していないように思いました。名は体を表さずといったところでしょう。

 なお、細かいことですが、p.177 で「デジャブ」を「デ・ジャブ」と表記している点が気になりました。何ヵ所もありますので、ミスプリではなく、本人がそう思いこんでいるわけです。これは、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B4
にあるように、「デジャ・ブ」という切り方になります。フランス語の発音では「デジャ・ビュ」のほうが近いでしょうが。


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2009年01月25日

岩田昭男(監修)(2009.1)『本気のクレジットカード選び 最強の2枚はこれだ!』洋泉社MOOK

 乙が読んだムックです。
 乙は、クレジットカードを1枚作ろうと思っているので、
2008.10.12 http://otsu.seesaa.net/article/107953170.html
本屋さんで見かけたクレジットカードの解説書という感じの本書を買いました。
 まずは、監修者の岩田昭男氏が総論的に書いています。
 p.3 上段 カード会社が入会審査時に利用者の年収に応じて支払い可能額を調査することになるのだそうです。そこで「たとえば、年収500万円の人なら、複雑な計算を経て限度額は、年間約100万円になる。」としています。「複雑な計算」のしかたは下段に書いてありますが、500万円の年収から生活維持費300万円を引いて、支払い可能額200万円を算出します。それに「大臣の定める係数」(仮に 0.5)をかけて、限度額100万円となります。この計算のどこがいったい「複雑」なんでしょう。乙は強い違和感を抱きました。
 p.3 上段から下段にかけて(先ほどの引用の続きです。)「100万円というと多いようだが、それは年間の額だから、たとえば、年の初めに100万円で自動車ローンを組んだとすると、その年はもうクレジットカードを使うことができなくなるのだ。」とあります。
 乙は、「年間の額」というのが理解できませんでした。たぶん、以下のようなことだと思います。
 毎月10万円をクレジットカードで一括払いで払っていく人の場合、10ヵ月経つと、100万円に達しますが、すると、11ヶ月目の10万円がカードで支払えなくなる(クレジット利用額の合計額が限度額)ということのようです。
 でも、毎月10万円ずつ口座から引き落とされていけば、クレジット利用残高はいつも10万円を越えることはないわけです。そんなとき、たった10万円の借金ができないなんておかしい話です。
 限度額というのは、総借入額のことではないのでしょうか。だとすると、この場合、10万円の借り入れがあるだけですから、11ヵ月目でも10万円のカード利用ができることになります。
 もっとも、100万円がカード利用残高のことだとすると、「年間限度額」という概念自体が意味がなくなってしまうのですが。(1年間の合計額ということは無関係に、任意の時点で利用残高が計算できるわけです。)
 このあたり、もう少し、丁寧に記述してほしいと思いました。
 p.7 最下段 「3万マイル以降は」→「2万マイル以降は」 こんな大事なところでミスプリがあるとは!
 p.10 ポイント付与率や現金還元率でチェックすると、一番いいカードは「P-ONE カード」だそうです。乙は、こんなカードがあるとは知りませんでした。
 p.21 年会費永年無料というプロパーカード(カード会社が単独で発行するカード)は、セゾンとライフくらいしかないとのこと。意外に少ないのですね。
 pp.40-41 京王パスポートカードは、PASMO にオートチャージするとポイントがたまると書いてあります。しかし、現在は「改悪」されて、ポイントがたまらないようになってしまいました。
 実は、乙は、PASMO を使っているので、京王パスポートカードを持っているのです。年会費 250 円がかかるのですが、PASMO オートチャージでポイントがたまるなら、こういうカードを使っていてもいいなと思ったのでした。その後「改悪」されたので、今は、京王パスポートカードは契約を解除してもいいと思うようになってきました。もっとも、SUICA の自動チャージ機能付きのクレジットカードで年会費無料のものはないようなので(ビュースイカカードも年会費が 500 円かかります)、単純な切り換えはしにくい状況です。p.47 によると、Yahoo! Japan カード Suica を利用すれば、2年目から年会費 525 円がかかるものの、前年1年間のカード利用が10万円以上ならば翌年度の年会費無料とのことなので、これを利用する手があるかもしれません。
 p.57 E-NEXCOpass の紹介が書いてあります。年会費無料(1度でも使えば翌年度も無料)で、ETC カードもついてくるというのです。乙は、ETC カードについても、あるクレジットカード会社と契約して、年会費 500 円を払っていることを思い出しました。こんなムダなことをやめて、E-NEXCOpass に切り換えればいいのですね。(2009.1.29 削除)
 こんなわけで、本書は非常に詳しくクレジットカード(電子マネーも含む)を解説しています。100枚近くのカードを紹介しているという意味でも、クレジットカードのカタログといえるものです。
 乙は、PASMO や ETC についても、クレジットカードを持っていることと同じなので、それらも含めた総合的なカード利用を考えるべきかと思いました。
 そのような「見直し」を考えるきっかけにもなるので、本書は便利なガイドブックということができます。毎年、こんなムックが刊行されているようですね。


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2009年01月23日

森剛志,小林淑恵(2008.8)『日本のお金持ち妻研究』東洋経済新報社

 乙が読んだ本です。
 乙は、お金持ちに関する本を、何冊か、読みました。
ハーブ・エッカー(2005.10)『ミリオネア・マインド 大金持ちになれる人』
2009.1.14 http://otsu.seesaa.net/article/112582648.html
本田健(2008.4)『普通の人がこうして億万長者になった 』
 2008.12.14 http://otsu.seesaa.net/article/111187925.html
ピーター・W・バーンスタイン,アナリン・スワン(2008.8)『ビリオネア生活白書』
2008.12.6 http://otsu.seesaa.net/article/110767867.html
橘木俊詔,森剛志(2005.3)『日本のお金持ち研究』
 2008.11.24 http://otsu.seesaa.net/article/110062347.html
トマス・J・スタンリー, ウィリアム・D・ダンコ(1997.9)『となりの億万長者』
2008.11.9 http://otsu.seesaa.net/article/109300763.html
しかし、お金持ちの妻に関する本は初めてです。
 序章では「容姿端麗は絶対条件ではない」と題して、玉の輿に乗る結婚はあまりないことを示しています。p.11 あたりでは、「玉の輿仮説」は成り立たず、現代ではキャリアウーマン型の妻が多いということが書いてあります。
 乙も含めて、一般人の多くが知りたいと思うような話題(?)を最初に持ってきて、本書を読ませるようにし向けています。乙もこの手法に引っかかって本書を読む気になってしまいました。
 本書は、お金持ちの妻に対するアンケート調査の結果を中心にまとめています。
 では、どんなアンケートだったか。p.9 に概要が書いてあります。2年にわたって年間納税額 3000 万円以上(年収約1億円以上)の 6000 人と、年間納税額 1000 万円以上(年収は 3000 万円以上)の 1000 人にアンケートを送付したとのことです。で、肝心の回収数ですが、118 通です。うち有効回収数は 108 通だそうです。7000 通も発送して、たった 108 人。1.5% の回収率ということになります。これでは、お金持ち妻の平均的な像は描けないでしょう。ごくわずかの「積極派」(意識的にアンケートに回答するタイプ)を描いているに過ぎません。では、どんな人が積極的だったか。前述のように、キャリアウーマン型の人です。自分の人生に対する明確な意識などなく、のほほんとしていて、気が付いたらお金持ちの妻になっていたような人(失礼な言い方をして恐縮です)は、こういうアンケートには回答しない傾向があるのではないでしょうか。
 乙は、この調査結果にはかなり疑問を抱かざるを得ないと思いました。
 本書は、第2章で「お金持ち妻の就業」、第3章で「お金持ち妻の節税」を述べています。このあたりは、キャリアウーマン型の回答者が多かったためにこのような記述になったと思いますが、お金持ち妻のある側面を描き出しているだけのように思います。
 また、第5章「上流階級と家事使用人の歴史」は、戦前の華族の話ですし、第6章「スーパーキャリアウーマンという生き方」は、今回のアンケート調査の結果ではなく、別の統計資料を使った記述で、アメリカ女性の場合などを論じています。
 p.148 でお金持ち妻のお金の使い方が述べられていますが、「周りの人に合わせて使う」ということで、しかも「周りの人」はあまり裕福でない人が多いので、結果的に、お金持ちでもあまり派手な出費はしないとのことです。ここは、妙に納得しました。
 というわけで、乙は期待を持って読み始めたのですが、本書全体を通読すると、かなり残念な内容になってしまったという印象を受けました。
 まあ、投資ではお金持ちになることはほとんどない(お金持ちが投資をすることは大いにあるわけですが)ので、別世界をちょっとのぞき見たような感じでした。


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2009年01月21日

小幡績(2008.8)『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)光文社

 乙が読んだ本です。
 小幡氏の著書は、以前にも『ネット株の心理学』を読んだことがあります。
2007.2.5 http://otsu.seesaa.net/article/32855771.html
 まえがきでは、お金はなぜ増えるかという問題を論じます。答えは、p.5 にあります。「ねずみ講」です。この回答がおもしろくて、本書を読む気になりました。
 現代は、産業資本が金融資本に変質しているということで、富を生み出す方法が以前とは違っているという認識が示されます。おもしろい議論です。
 第1章「証券化の本質」では、なぜサブプライムローンが証券化されたかが説明されています。とてもわかりやすい説明でした。リスクの性質が変わったのだという説明には納得できます。証券の格付けも単なる数字あわせに過ぎず、きちんとした格付けがなされていなかったことが明らかにされます。
 第2章「リスクテイクバブルとは何か」では、サブプライムローンを提供する会社の儲け方、ローンを借りる側の論理などが説明され、これまたわかりやすい論でした。「リスクテイクバブル」というのは、小幡氏の造語だそうです。
 第3章「リスクテイクバブルのメカニズム」では、文字通り、リスクテイクバブルが起こるプロセスを描きます。必然的に起こったことが納得できます。
 第4章「バブルの実態――上海発世界同時株安」、第5章「バブル崩壊@――サブプライムショック」、第6章「バブル崩壊A――世界同時暴落スパイラル」は、時間を追った記述で、そのときどきに、機関投資家やファンドマネージャーなどが何をどう考え、どう行動したかを解説しています。このあたりの記述は、事後的な説明としては納得できるのですが、そのまっただ中にいるときは、何が何だかわからなかったことでしょう。
 第7章「バブルの本質」と第8章「21世紀型バブル――キャンサーキャピタリズムの発現」では、今の世界に起こっている制度的な問題を論じています。バブルの出現と崩壊は必然的なものだというわけです。
 個人投資家としては、リスクのある金融商品に資金を投ずるわけですから、その先で何が起こっているのかを知っておいたほうがいいように思います。その意味では、本書は、金融関係者の行動が理解できるようになるという点で、かなり興味深いものです。
 個人投資家は、長期にわたって投資を継続しているうちに、必ずバブル(とその崩壊)を経験することになります。それでも動じないためには、バブルのメカニズムについて知っておいたほうがいいということです。
 少々残念だったこととしては、本書が 2008.8 の出版だったということです。その後、世界の株式市場で深刻な大暴落があったわけですから、それを記述しない本書は、今後読み継がれることはなさそうに思います。


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2009年01月18日

清水美和(2008.2)『「中国問題」の内幕』(ちくま新書)筑摩書房

 乙が読んだ本です。
 読み出してすぐのプロローグ(pp.7-11)に、ちょっとありえない(考えられない)ようなトラブルが出てきます。日本人駐在員が中国で巻き込まれたトラブルです。こんな話が続くのか、だったら読んでみようと思って読み始めたのですが、本書は全体にあまりおもしろくありませんでした。
 目次は、以下の通りです。
プロローグ――「不思議の国」と付き合う法
第1章 温家宝首相の来日を追う
第2章 歴史に呪縛された日中関係
第3章 試練に立つ共産党支配
第4章 台頭する共青団の実力
第5章 中国軍の思想と行動
第6章 社会を破壊する格差
第7章 党中央宣伝部とメディアの自由
第8章 未完の「胡錦涛革命」

 この中では、第6章と第7章がおもしろかったように思いました。
 第6章は、中国の中の格差問題を取り上げて解説しています。最近制定された「物権法」も、実は農民などの評判は必ずしも良くないのだそうで、反対声明が出されるなどと聞くと、意外に思いました。p.183 では、物権法が豊かで力のある者の所有権を保護する一方、貧しく力のない者からの「合法的」な収奪をいっそう進行させることがあるとしています。
 第7章は、メディアが自由に何でも書けない現状を解説しています。最近は、以前のような共産党によるガチガチの取り締まり体質と若干違ってきている面もあるようですが、基本的にはメディアの自由がない国です。
 これ以外の章は、乙はあまり興味が持てませんでした。投資と直接関連しないということもあると思いますが、乙の中国に関する知識が不足しているためではないかと思いました。典型的には中国の人名です。国家主席クラスの人は、だいたいどんな人かわかりますが、それ以下の政治局員などに関しては、人名をいわれてもさっぱり実感がわきません。少なくとも顔が浮かんできません。しかし、本書では、そのようなレベルで、誰々がどうこうしたというようなことがたくさん出てきます。こうなると、どうもおもしろく感じないのです。
 それはさておき、中国の現実は、なかなかきびしいもののようです。中国国内にかなりの不満が溜まっているように思えます。それが今後噴き出すのか、あるいはすでに噴き出している(報道されていないだけ)と見るべきか、いつ何が起きるかわからない不安感があります。
 やはり、中国投資は慎重であるべきかもしれません。


ラベル:清水美和 中国
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2009年01月14日

ハーブ・エッカー(2005.10)『ミリオネア・マインド 大金持ちになれる人』三笠書房

 乙が読んだ本です。「お金を引き寄せる「富裕の法則」」という副題が付いています。
 著者は、全米各地で「ミリオネア・マインド集中講座」を開催しているとのことで、そのノウハウがこの本に収められているのかと思って読んでみました。
 結果的には失敗でした。たった1冊で(しかも図書館から無料で借りて)貴重なノウハウを知ることができるというほど甘いものではありませんでした。
 お金持ちになれる人とお金に縁がない人の考え方の違いがいろいろと書かれています。中にはおもしろいものもありますが、どうにも変なものもあり、乙は、全体として、あまり役に立たないと思いました。
 p.33 「一般的に言って、お金の使い方は、片方または両方の親のやり方を組み合わせたスタイルに落ち着く傾向がある。」とあります。なるほど、親の影響があるわけですね。ところが、先を読み進めていくと、p.36 には、「お金の使い方は、一方、または両方の親と同じスタイルになりやすいが、この正反対の場合もあり得る。つまり、親とはまるで反対のお金の使い方をする人もいる。」と書かれています。2箇所でこういうことを述べていては、法則も何もありません。人にはさまざまな考え方があるというだけで、何も語っていることにはなりません。せめて、どちらがどれくらい多いのか、比率を数量的に示してあれば、納得できる面もありますが、この著者はそういうことを自分で調べたわけではありませんから、主張は一般化できません。
 この1例が端的に示すように、著者は、たくさんの人に話をしているといっても、それは自分が主観的にこうだと「わかった」(=思いこんだ)ことを語っているに過ぎません。その証拠は何も挙げられていません。したがって、いわば著者の主張は宗教のようなもので、信じる人もいるし、信じない人もいるということでしょう。また信じて助かった(一財産作った)人もいる一方で、信じて失敗した(財産を失った)人もいるでしょう。後者は決して語られることはなく、闇に消えてしまい、前者(成功者)だけが次のセミナーでの経験談として語られます。こうして、多数のミリオネアに関する知見が集積され(るように見え)ます。しかし、それが本当に通用するかどうか、何も検証されていないのです。
 p.50 「あなたの経済状況を変える唯一の方法は、「お金の設計図」を書き換えることだ。」と述べています。そんな「考え方」を変えるだけで、経済状況が変わるものでしょうか。そんなことで金持ちになれるならば、みんな金持ちになっているのではないでしょうか。「お金の設計図」の話は p.27 に出てきますが、抽象的な話に過ぎません。
 p.124 「金持ちになれる人は「成果」に応じて報酬を受け取る お金に縁がない人は「時間」に応じて報酬を受け取る」というところはわかりやすかったです。例も具体的でした。
 pp.156-157 「お金を分けて使う。そのために、口座や貯金箱などを分ける」という考え方もわかりやすかったです。収入があったら、それを経済的独立用10%、遊び用10%、自己投資10%、必要経費55%、寄付用10% に分けるとのことです。足しても 100% にならない(95%)ことはご愛敬ですが、ともあれ、予算を立てて費消していくという態度は好ましいことですし、その中に、アメリカ人らしい観点が入っている点(自己投資と寄付)はおもしろいです。
 pp.160-162 「「経済的自由」とは“不労所得”が“必要経費”を上回ること」と述べています。別の言い方をすれば、自分が働きたいと思ったとき以外は働かなくていいといいうのが経済的自由です。こういう状態は確かに望ましい状態です。定年後の老後の生活はこうであるべきでしょう。
 というわけで、本書は、いくつかおもしろい記述もあるのですが、全体としては、読む必要のない本だと思います。


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2009年01月12日

荒川雄一(2008.11)『着実に年10%儲ける「海外分散投資入門」』実業之日本社

 乙が読んだ本です。「“ほったらかし運用”でラクラク資産づくり」という副題が付いています。
 タイトルに引かれて読んでみました。
 著者の言う「海外分散投資」は、海外ファンドに投資しようということで、普通にいわれている「分散投資」とは意味がちがうので、要注意です。
 結果的に言うと、本書を読みながら、乙はいろいろと問題点を感じてしまいました。
 p.29 「日本でも10分の1のデノミを実施すれば、財政は楽になるでしょうね。」とあります。デノミは通貨の呼称単位を切り下げるだけで、借金を減らすわけではありません。借金が 1/10 になると考えるならば、収入も 1/10 になるわけで、本質的にはデノミの前後で通貨の価値が変わるわけではなく、財政が楽になることはありません。
 p.38 「重要なことは、この「リスク」を、うまくコントロールできるかどうかなのです。」とあります。しかし、本書では「リスクをコントロールする」とは具体的にどうすることなのか、一切説明がありません。
 この問題は、しばしば投資に関連する本で出てくる問題点です。中原圭介『サブプライム後の新資産運用』
2008.12.16 http://otsu.seesaa.net/article/111299756.html
でも、無定義で使われていました。
 著者にとっては、あまりにも当たり前の言い方なのでしょうが、乙は、今ひとつ、わからないことばです。
 p.59 運用ルールを明確に持つことが大事だと述べた後で「そうしたルールの中で最も大切なのが、ロスカット(損切り)のルールです。」と述べています。一方、山崎元『「投資バカ」につける薬』
2006.8.16 http://otsu.seesaa.net/article/22402936.html
や、バートン・マルキール『ウォール街のランダム・ウォーカー』
2006.8.6 http://otsu.seesaa.net/article/21985368.html
では、ロスカット=損切りを否定しています。乙は、基本的に、ロスカットは有害だと思っています。
 ところで、本書の p.74 に、損切りルールを持っている人よりも、下落相場でも淡々とドルコスト平均法で投資した人のほうが結果的にうまくいくような話が出てきます。荒川氏は、このことをどう考えているのでしょうか。乙は、本書の記述に問題がある(矛盾している)と思いました。
 p.64 「実際に投資するときに注目するべきなのは、リターンではなく、「リスク」なのです。」ということで、リターンよりもリスクを考えて投資することを強調しています。このことが悪いわけではありませんが、こういう主張をするのだったら、本書のタイトル『着実に年10%儲ける〜』を変えるべきでしょう。『リスクを何%に減らす〜』とするべきではないでしょうか。今のタイトルは、明らかに「リターンが大事だ」と言っています。
 p.67 標準偏差が違う二つのファンドのグラフが出てきます。しかし、曲線がまったく同じ形になっており、横軸の「幅=目盛り」が異なるように書かれています。間違いではありませんが、ミスリーディングです。こういうグラフを書くなら、横軸の幅をそろえて、一方が他方よりもとがった形の曲線になるように書くべきだと思います。
 p.78 「一括投資の場合は、価格のブレが小さな商品のほうが「リスク」を抑えることができます。【中略】それに対して、積立投資の場合は、ある程度の価格のブレがある商品のほうが、大きな利益が得られる可能性があります。」と述べています。純粋に理論的に考えれば、この言い方は間違っていると思います。どちらがどちらでも同じことである(有利不利はない)はずです。しかし、現実的には、ドルコスト平均法がうまく機能することがあることからもわかるように、このような考え方も当てはまるかもしれません。著者は、単純に、理論的な考え方を示さずに、経験に基づいてこの主張をしているところが残念です。
 p.99 1ドル=110 円のときに100万円を運用する話が出てきます。日本円では、金利 0.5% として、5年運用して 102.5 万円になりますが、米ドルでは、金利 4.5% で 9091 ドルを5年運用して 11,329 ドルになるとしています。そこで、15円の円高(1ドル=95円)になっても、円転して 107.6 万円で、7.6% のリターンが得られるとしています。この計算は間違いではありません。しかし、最近の円高は、1ドルが90円くらいです。87円台まで円高が進んだこともありましたっけ。ですから、金利の高い海外の通貨で長期投資を行うことで為替リスクが低減する(p.100)などということはありません。為替リスクは為替リスクとして厳に存在します。
 p.112 ここで通貨分散を説いています。そして「せっかく世界中の様々な金融商品に分散投資を行なったとしても、それがすべて「円建て」で行なわれていては、本来その通貨が持っている金利の高さなどのメリットを享受することができないということになります。」と述べています。乙は、この考え方は間違っていると思います。
 くわしくは、ブログ記事「投資先の分散と通貨の分散」
2007.2.23 http://otsu.seesaa.net/article/34452967.html
で述べたので、そちらを参照してください。結論として、株式投資の場合は円建てで世界の株に分散投資してかまわないのです。
 pp.119-120 では、10万円のバッグをドル建てのクレジットカードで買う話が出てきます。円を米ドルに交換したときのレートが1ドル=100 円で、買い物をする日のレートが1ドル=125 円であれば、実際の出費は 20% も安くなったことになるとしています。このことは正しいのですが、話としては逆のこともあり得ます。円を米ドルに交換したときのレートが1ドル=125 円で、買い物をするときが1ドル=100 円という場合です。このときは損をするのです。そして、損をするか得をするかは、事前には何ともわかりません。得になる例だけ挙げて、こういうメリットがあると述べるのはあまりにも一方的です。
 p.128 では、海外ファンドを勧めています。本書の基本的な主張です。本当に海外ファンドは株よりもいいのでしょうか。いろいろ考えるべきところがあるように思いますが、乙は、著者が言うほど単純な話ではないように思っています。(このあたりは考え方の問題です。)
 p.200 では、30代の人のモデルポートフォリオが書いてあります。これこれのファンド(ヘッジファンドを含む海外ファンド)に何%ずつ投資すると良いというわけです。これで収益率が 18.41%、標準偏差が 5.21% になるとのことです。乙は、なぜ、このポートフォリオが 18.41% ものリターンになるのか、理解できませんでした。それぞれのファンドが高収益を挙げているからだとすれば、それは過去にそうであったというだけで、未来を約束するものではありません。だいたい、18% もの利益率がずっと続くと想定しているほうがおかしいのではないでしょうか。投資は、大まかに言って、数%程度のリターンが普通でしょう。18% も儲けることができるとすれば、それは市場平均を出し抜いているわけで、その分、他の人からリターンを収奪していることになります。そうしてはいけないとまでは言いませんが、自分はいつもそうできるという主張には、それは欲張りすぎではないかと感じてしまいます。
 そんなわけで、本書の内容は期待はずれでした。他の人にも本書をオススメしないことにします。

 ちなみに、荒川氏は『海外ファンドで資産を作ろう!』というメルマガ
http://www.mag2.com/m/0000121186.html
を発行しており、乙も講読していたのですが、講読をやめることにしました。


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2008年12月31日

[投資関連本] 堀口博行(2008.10)『週2日だけ働いて農業で1000万円稼ぐ法』ダイヤモンド社

 乙が読んだ本です。
 タイトルに引かれて読んでしまいました。だって、農業などというのは儲からない産業の典型で、後継者難だとか、離農者が続出しているとかいう話をよく聞きますから、タイトルのようなことがあったら、驚きです。
 著者は北海道で会社員をするかたわら、実際に農業を営んでいる人です。作っているのは長ネギとピーマンがメインのようです。
 一読してみると、著者の経験に基づいた農業起業の概説書で、ちょうど「農業入門」のような感じでした。
 とにかく、本書にはさまざまなノウハウが盛り込まれています。トラクターや耕耘機などをいかに安く手に入れるかというようなことも出てきます。ビニールハウスを安く買う方法もあります。アルバイトを効率的に使う方法も出てきます。農地だって、買うよりも借りる方が安いというわけです。
 驚くのは、p.154(どこだったか、他にも記述があります)で、自分で作らない野菜は、スーパーで買おうという話です。乙は、農家は自家消費分として、さまざまな野菜などを少しずつ作っていると思いこんでいました。(たいていの農家はそうしているのではないでしょうか。)しかし、出荷用の作物を大規模生産し、それで儲け、それ以外の野菜などはスーパーで買って食べるというのは、実に合理的な考え方です。
 こんな本は珍しいのではないでしょうか。
 もっとも、本書を読むと、著者は実にマメな方のようですし、そもそもご両親が農業をやっていた(だから土地もすでに持っていた)ということですから、だれでも農業に参入できるというような生やさしいものではありません。会社勤めの人が定年後に新たに農業をやろうというようなことでは、うまくいかないような気がしています。
 望ましくは、数年分の平均的な売り上げ、およびかかった経費(設備投資を含む)、それに保有する農業関連の資産を明記してほしかったです。あまり細かく書くわけにもいかないのかもしれませんが、そのような具体的な記述がないと、本当に1000万円が稼げるのかどうか、わかりません。まさか売り上げが1000万円ではないですよね?
 本書は単なる投資関連本ではありませんでした。
 著者のような人が多数参入するようであれば、日本の農業も捨てたものではないように思えてきます。やはり創意工夫が大事だということです。多くの農業従事者は、こんな本を読んでいるのでしょうか。乙の知っているような農家(乙の親戚にも農家があります)では、あまり本を読んでいないような印象があります。


ラベル:堀口博行 農業
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2008年12月29日

カン・チュンド(2008.8)『日本人が知らなかったETF投資』翔泳社

 乙が読んだ本です。とてもいい本です。オススメです。
 210 ページほどの本ですが、内容がとても良くまとまっています。
 p.iv で、プリウス所有者同士の「集まり」があるという話です。自分と同じ価値観を持つ人同士がどんな人なのか、会って話をしてみたいということです。乙は、この話を読んで、ブログのオフ会の価値はそこにあると思いました。
 p.xi は、まだ本文が始まっていませんが、著者への問い合わせに備えて、連絡先が明示してあります。とても良心的です。著者の意気込みを感じさせます。
 p.82 資産として、金融資産の他に、自分資産と関係資産を挙げています。自分資産は、自分自身が資産であるということで、おもしろい見方です。関係資産は(家族を含む)人脈のことです。なるほど、こういうのも「資産」なのですね。
 p.100 新興国株の割合を先進国株と同じにする話が出てきます。
 この話は、乙のブログに書いたことがある
2007.11.28 http://otsu.seesaa.net/article/69520802.html
のですが、とても興味深い見方です。
 p.113 から、安全資産として円建て MMF を挙げているのもおもしろかったです。普通は個人向け国債などを挙げると思いますが、円建て MMF も似たようなものと思います。
 pp.116-117 で、カンさんの説くような分散投資をしている場合、「今まで、「リスク資産」の損失部分が、年間ベースで 30% を超えたお客様はおられません。」としています。それはそうかもしれませんが、さて、2008 年はどうだったのでしょうか。こんなにもひどい世界同時株安と円高でしたから、リスク資産の損失が 30% で済めばいいほうなのではないかと思うのですが、……。
 ともあれ、ETF 投資に関して、こんなにもわかりやすく書いてある本は見たことがありません。タイトルに偽りなしです。これから投資をはじめる人には、まずこの1冊をオススメしたいと思います。


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2008年12月27日

バートン・ビッグス(2007.1)『ヘッジホッグ』日本経済新聞出版社

 乙が読んだ本です。「アブない金融錬金術師たち」という副題が付いています。420 ページほどのけっこう分厚い本です。
 「ヘッジホッグ」とは、「ヘッジファンド屋」つまり、ヘッジファンドのファンドマネージャーのことです。そういう人たちがどういう日常生活をしているかを描いています。著者自身がファンドマネージャーであり、自分の身の回りに起こったことを描いているということで、ヘッジファンドの実態がわかるかと思って、読んでみました。
 結果的には、あまりおもしろくなかったです。
 特に前半は、ファンドマネージャーのそれこそ日常的なことが書いてありますので、まるで日記かブログか何かを読んでいるようなものでした。
 印象的な話は、第1章 p.10 に出てきます。大手ヘッジファンドの大立役者が、娘に、10歳の誕生日に何がほしいか聞いたところ、娘は「航空会社の飛行機にいっぺんも乗ったことがないので、恥ずかしいから、一度乗ってみたい」というのです。この家族はいつも自家用ジェットで移動しているためだそうです。
 第2章は、ヘッジファンドを立ち上げて損をしてしまったトレーダーの話です。
 第3章から第4章は、著者の空売りの経験を描いています。
 第5章はヘッジファンドの売り込み大会のことを書いています。どうやって金づるを見つけるかということです。
 第6章も金集めの話です。p.104 には、成功したヘッジファンドも長く続かないという話が出てきます。厳しい世界のようです。
 第7章は日記風の記述でした。このあたりまで読んできて、乙はちょっとめげました。これ以上読まないことにしようかなどと思いました。
 p.179 では、イェール大学の話が出ていました。1970 年代でイェール大学寄付基金は購買力が45%下落したと書いてあります。購買力=運用成績とは書いてありませんが、ひどい経験もあったのですね。p.195 には、イェール大学寄付基金が再び登場して、2004.6.30 までの10年間、年率 37.6% を稼いだとのことです。1973 年に運用を開始して以来、イェールのプライベート・エクイティ運用のリターンは驚異の年率 30.6% だったそうですから、まさに驚きです。p.306 には、1978-2003 のプライベート・エクイティ投資のリターンの表が出ています。pp.211-221 でもイェール大学寄付基金の話が出てきます。
 なぜ、乙がこんなにイェール大学にこだわるかといえば、以前イェール大学の運用のすごさを見たからでした。
2008.12.8 http://otsu.seesaa.net/article/110865657.html
 p.182 には「初年度現象」が出てきます。生き残ったヘッジファンドは初年度の成績が一番いいことが非常に多いというのです。興味深い現象です。もっとも、だからといって、新しいヘッジファンドが一番いいというわけではないのは当然です。
 pp.252-253 では、新興国株の投資について述べていますが、中でも、新興市場インデックスファンドを買ってもうまくいかないというのはおもしろかったです。市場に存在するものは、すでに成長した後の企業群だからだというわけです。そうかもしれないし、そうでないかもしれません。
 p.278 ヘッジファンド業界は、スーパースターもクビになる世界です。具体的な話が次々と語られます。p.293 では、2〜3年負けるとクビになると書いてあります。
 p.348 では、「2005年の年央現在、私はアメリカの住宅市場が全国的で全面的なバブルに陥っているとは思っていない。」と断言しています。確かに、バブルだったことははじけた後でわかることなのかもしれません。2008年現在、著者はアメリカの住宅市場をどう見ているのか、知りたいと思いました。
 本書は、後半になると、さまざまなデータ(数値や表など)が出てきて、けっこうおもしろいのですが、素直に読み始めると、前半くらいで挫折してしまうかもしれません。
 また、1冊読んでみても、ヘッジファンドについて理解が深まったとは思えませんでした。


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2008年12月18日

松下文洋(2005.5)『道路の経済学』(講談社現代新書)講談社

 乙が読んだ本です。
 全体におもしろい本でした。
 第1章「なぜ日本の高速道路は有料で世界一高いのか?」で、日本の道路行政の問題点を暴き出します。
 第2章「アクアライン通行料は 800 円でよい」では、今の高い通行料に対して驚きの値下げをしようということです。ここを読むと、単なるホラ話とは思えません。実行可能であり、みんなが幸せになる方法であるように思えてきます。
 第3章「「経済性」をどう評価するか」では、経済効果をきちんと数字化する方法論を述べています。今の日本のお役人と政治家に欠けているのはこういう考え方でしょう。
 第4章「環境への影響をどう評価するか」では、渋滞がもたらす経済損失などを論じます。しかし、環境問題は本書を貫く姿勢とはちと違うかもしれません。
 第5章「持続可能な成長と交通政策の転換」では、日本の都市・交通政策を変えて、総合的に都市交通を分析しようとします。もっともです。しかし、日本の政治・行政のあり方がこれを不可能にしています。
 第6章「本当の民営化とは」では、イギリスの例を示して、あるべき民営化の姿を示します。
 本書を一読して、道路問題は、まさに日本の政治の象徴的問題であると実感しました。日本がこれからの未来に向かって発展していくためには、道路問題を初めとしてさまざまな問題を解決していかなければなりません。しかし、道路問題にしても、最初は根本的な解決を目指していたはずなのに、いつの間にか、道路公団民営化のような変な話になってしまうのです。政治が変わらないと道路行政は変わらないし、ムダな支出が継続すれば日本は沈むだけです。自民党のやり方では、日本はやっていけないと思うのですが、選挙で自民党議員が選ばれ続ける限り、日本としての基本的なしくみを変えることはできません。
 乙は、本書を日本社会に対する警鐘として受け止めました。


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2008年12月16日

中原圭介(2008.7)『サブプライム後の新資産運用』フォレスト出版

 乙が読んだ本です。「10年後に幸せになる新金融リテラシーの実践」という副題が付いています。
 奥付のところの著者プロフィールによれば、中原氏はファイナンシャルプランナー(兼エコノミスト)だそうです。
 乙は半分ほど読みましたが、とても最後まで読む気力が起きませんでした。
 以下、問題点を中心に、乙の感想を書いておきます。
 p.1 「はじめに」の書き出しからびっくりしてしまいました。「私はよく経済学部出身と勘違いされているようで、実は文学部で歴史学を専攻していたとお話しすると驚かれます。しかし、経済予測やその他の分野での予測がよく当たるのは、歴史学的なアプローチから予測を試みているからだと確信しています。」中原氏の議論は間違いです。もし、中原氏が正しいというなら、各証券会社などは歴史学を専攻していた人を大量に採用するでしょう。現実はそうなっていません。こんなことを最初に書くというだけで、本書を読む気はだいぶそがれます。
 p.2 ll.1-2 「世界的に株式市場が下落基調となり、投資資金が商品市場に流れ込み、原油や金は市場最高値を更新して、その勢いはしばらく止まりそうにありません。」原油価格はその後どうなっているでしょうか。
http://www.kakimi.co.jp/4kaku/4genyu.htm
にあるように、2008年7月に最高価格 147 ドル/バレルを記録した後、大幅に下げ、現在は 40 ドル前後です。中原氏の予測は完全に外れています。(本書は 2008.7.26 発行です。)
 p.2 「金融工学は、実践的には役に立たない」という驚きの主張です。こんなことを主張する人はきわめて珍しいでしょう。では、本当に金融工学は役に立たないか。p.126 で、外貨預金と国内株式の組み合わせ比率によって、リスクとリターンがどうなるか(U字形になる)を示した図が出てきます。これはまさに金融工学の成果の一つです。
 p.3 歴史学、哲学、心理学を学べと述べた後、次のように述べます。「これらの3つの学問で身につけた能力が融合したときに、経済・市場の予測はもちろん、私たちを取り巻くありとあらゆる社会的事象を精緻に分析・予測することができるようになる可能性が高まるのです。
 私たちが生きる世界には、確実なことはほとんどなく、どう転ぶか分からないことのほうが多くを占めています。」途中で段落が変わっていますが、中原氏は前半と後半が矛盾していることに気が付いていないようです。後半のように、世の中に確実なことがほとんどないならば、何をどう学ぼうと、それによって各種の予測ができるようにはならないのです。逆に、これら3つの学問を身につけることであらゆる予測の精度が高くなるならば、どう転ぶか分からないことはぐっと減ってくるはずです。
 p.22 「「リスクのコントロール」とは?」という節です。こういう題名が付いている以上は、その節の中に解答があることを期待したいところですが、p.24 まで読んでも、「リスクのコントロール」(あるいは「リスクをコントロールすること」)が具体的にどのようにすることなのか、まったく説明がありません。p.24 には「コントロール」という用語が5回も使われるのです。使う前に、リスクのコントロールとは何か、明示してほしいものです。
 p.37 では、国際分散投資の問題点として、世界同時株安などがここ数年見られるようになったとして、分散投資しても値動きが連動しているからよくないとしています。これは雑な議論です。(数十年以上の?)長期にわたって観察されたデータに基づいて国際分散投資がいわれているわけですから、ここ数年のデータを示して、以前とは違っているという主張は成り立ちません。世界の株価は相互に連動するときもあるし、連動しないときもある。それが相関が低いということの意味です。今の傾向は、たまたま連動しているだけだと考えることもできます。
 p.41「金融商品を8つも持っていると、実質、個人では管理することができなくなると思います。」え? たった8つで管理できなくなるのですか。乙は 100 種類くらいの金融商品を保有していますが、
2007.11.23 http://otsu.seesaa.net/article/68476443.html
特に多いとも思いません。8つくらいで「多い」と聞くと驚いてしまいます。
 p.42 個人投資家は、国際分散投資のために、バランスファンドを買って、そのまま漫然と放置しているケースが多いとしています。そして、投資家はそういう投資信託の価格が大きく値下がりして心配しているというのです。乙は、バランスファンドの放置もいいのではないかと思っています。値下がりしても、心配する必要はありません。「放置」なのですから、心配してもしかたがありません。ずっと放置してきたし、これからも放置しておけばいいのです。それを心配するから投資方針が定まらなくなるのです。中原氏のように、8つの金融商品が多いと考え、p.43 のように3〜4つに絞るというのは、集中投資になっているようなものです。これはリスクが高くなる投資方法です。
 p.44 l.3 中原氏は自分自身を「異端なFP」と呼んでいます。当然でしょう。普通に考える投資の常識とまったく違った考えをお持ちなのですから。
 p.58「このような過去4〜5年間で、「国際分散投資による長期資産運用」が成功することは当たり前のことだったのです。」と書いてありますが、長期投資というのは4〜5年の投資のことではありません。4〜5年の傾向で長期運用を目指しているのではなく、10年から20年、できたら30年でも40年でも時間をかけたいというのが長期投資です。中原氏の視点はかなりずれているようです。
 p.58「世界の株価指数が最も上昇した4〜5年間、すなわち、最も都合の良いデータで検証が行われ、この運用方法は個人投資家の取るべき運用スタンスの基本とされるようになったのです。」ここは中原氏の勉強不足です。国際分散投資による長期資産運用というのは、そんなものではありません。ただし、株価については相当な長期データが残されているので、いいのですが、それ以外の金融商品については、各種データが長期的にきちんと揃っているわけではありません。しかし、4〜5年の傾向というのはあんまりな言い方です。
 p.65 株価の上昇と債券の金利上昇が同時に起こることが多く、また下落するときは両方とも下落すると述べています。しかし、債券の金利の上下が問題ではなく、債券価格が問題なのではないでしょうか。債券は、金利が上昇すると価格が下落し、金利が下降すると価格が上昇します。したがって、株価の上下と債券価格の上下は逆になることが多いといわれています。中原氏の議論は、債券の金利の上下と債券価格の上下を混同しているように読めます。(ここは乙の読み違いかもしれませんが。)

 全 269 ページの本ですが、乙は読み通せませんでした。あまりに多くの問題点があると思ったからです。本書はオススメできません。
 ゆうきさんも本書は「オススメできない」としています。
http://fund.jugem.jp/?eid=888
 中原圭介氏はブログ
http://blog.livedoor.jp/asset_station/
をお持ちです。乙は以前から RSS に登録していたのですが、この際、RSS から削除することにしました。


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2008年12月14日

本田健(2008.4)『普通の人がこうして億万長者になった 』講談社+α文庫

 乙が読んだ本です。「一代で富を築いた人々の人生の知恵」という副題が付いています。
 単行本は、2004.2 に刊行されています。乙は、こちらを読んだわけではありませんが、たぶん内容は同一でしょう。
 この本の存在は
2008.11.9 http://otsu.seesaa.net/article/109300763.html
のコメント欄で OutstandingMan さんから教えていただきました。
 とてもおもしろい本でした。
 本書は、p.8 に明示してあるように、2002 年度に1000万円以上の税金を納めた人たち 12,000 人を対象にしてアンケート調査を行った結果が書いてあります。単年度の税金が基準ですから、土地を売ったような一時的な高所得者も含まれている可能性がありますが、大部分は、継続的な高所得者でしょう。
 回収数は、p.10 にあるように、約1000人ということですから、回収率は 8% にすぎません。この数字は、橘木俊詔,森剛志『日本のお金持ち研究』
2008.11.24 http://otsu.seesaa.net/article/110062347.html
と奇妙に符合しますが、もう少し回収率が高くないと、日本の高所得者を代表する集団にはなりにくいと思われます。(もちろん、データがないよりは、あるほうが望ましいのですが。)
 p.10 には、億万長者と比較するために、一般人に対しても調査しています。これは結果的に大正解で、あちこちの記述で、億万長者と一般人の違いがはっきり出ており、とても興味深いものになっています。
 p.35 では、日本の億万長者には六つのタイプがあるとしています。ビジネスオーナー 27%、専門家 24%、会社役員 24%、相続 18%、不動産 2%、アーティスト、スポーツ選手など 1%、その他 4% です。それぞれで相当に性質が違い、また考え方などが違っています。全体を分析するときは、それらの混合体のような集団になるので、要注意です。
 p.53 から、アンケート調査から見た億万長者の人生の特徴を10個挙げています。そして、それぞれについて1章を割いて記述するというスタイルです。このような書き方は本書を全体としてまとまりのあるものにしており、わかりやすさにつながっていると思います。
 pp.76-77 は、一般人と億万長者でかなり大きな差を見せるところです。「成功するために大切だと思う要素」が違っているのです。乙は非常に興味深く思いました。誠実で健康で、人よりも勤勉に働くというような億万長者の特徴が示されます。
 その他、本書にはおもしろい記述がたくさんあります。p.175 億万長者は子供にはお金を残さず、知恵を残す。p.187 億万長者は長期投資志向である。これらは、乙が感心したことの例です。
 読んでためになる本でした。


ラベル:本田健 億万長者
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2008年12月10日

NHKスペシャル「ワーキングプア」取材班 (編) (2008.7)『ワーキングプア解決への道』ポプラ社

 乙が読んだ本です。『ワーキングプア―日本を蝕む病』
2008.11.20 http://otsu.seesaa.net/article/109923545.html
の続編です。
 ワーキングプアの実態を知らせるだけでなく、解決への道を模索しようとしています。
 では、その答えは本書にあるか。残念ながら、解決への道が示されているとはいえないと思います。ワーキングプアの出現は、グローバル経済の進展など、世界経済の大きな流れの中で起こってきたものであり、簡単に解決できるようなものではないと思います。世界各国の取り組みなどを見ながら、日本ではどうしたいいのか、考えてみたいものです。
 T「“非正規大国”〜韓国」では、韓国のワーキングプアを描きます。韓国は非正規雇用者が全労働者の半分以上もいるというのです。日本以上にすさまじい実態があります。p.58 では、韓国が日本の未来像だとしています。確かに、今のままでは日本も非正規雇用の大国にならざるを得ないように思います。
 U「“ワーキングプア先進国”〜アメリカ」では、アメリカのワーキングプアを描きます。ここもまたすごいところです。堤未果『ルポ貧困大国アメリカ』
2008.10.18 http://otsu.seesaa.net/article/108249848.html
を彷彿とさせます。pp.87-88 では、アメリカの最低賃金が州ごとに違っている現状を述べ、「リビングウェイジ運動」ということで、地方自治体関連の仕事については、最低限度の生活ができる賃金を保障しようという運動があることを述べています。簡単にいえば、最低賃金を引き上げようということです。しかし、これでワーキングプア問題が解決できるかといえば、乙は否定的に見ます。最低賃金を高く設定しようとしても、結果的に、発展途上国への仕事の外注化が進むだけではないでしょうか。本当にアメリカの中でしかできない仕事は、外国に持っていけないでしょうが、それでも、外国からの移民があり、彼らが低賃金でも働こうとする限り、低賃金競争はなくならないように思えます。
 V「貧困の連鎖を防げ〜イギリス」では、イギリスのワーキングプア対策が語られます。pp.113-119 あたりでは、若者 420 万人のデータベースを作って、個々人を徹底的にフォローしようとしている話が出てきます。イギリスでは、役所の人間が若者のいるところへ出かけていって(アウトリーチというそうです)、声かけし、各種相談に乗り、めんどうを見ていこうとしています。
 p.120 では、イギリスの「社会的企業」の話があります。社会に役立つ事業をしながら、若者の職業訓練をしているそうで、これまた興味深い例でした。p.124 のように、職業訓練は、日本のように学校で行うのではなく、企業で行い、就職と直結させているとのことです。しかも、p.127 にあるように、職業訓練中にも「賃金」が出るのだそうです。新鮮な見方でした。
 p.130 では、シングルマザー対策として、育児支援と就労支援が行われています。子供たちが無償で保育が受けられるとは驚きです。p.133 では、「チャイルドトラストファンド」の説明があります。生まれたときに、国から6万円ほどが振り込まれた口座がもらえるのだそうです。低所得の家庭に対しては、7歳になるとさらに6万円が増資されるとのことです。そして、このファンドは、子供が18歳になるまで引き出せないというしくみです。そこで、もらった時点では大した金額でなくても、18歳になったころには100万円を越える金額を手にすることができるというわけです。もっとも、年10%の運用ができたとしても、6万円+6万円が原資では、18歳で50万円くらいにしかならないのですが、……。ここは何か勘違いがあるのかもしれません。
 このように、イギリスのやり方は驚きです。ここまで積極的にやるという判断が素晴らしいと思います。日本と比べると雲泥の差であり、参考になるように思いました。
 W以降は日本の話ですが、最初にも書いたように、なかなか解決の道が遠いので、読んでいても暗澹たる気持ちになる面がありました。
 投資の話とはだいぶ違う話ですが、こういうワーキングプアの人たちも、我々の仲間ですから、幸せになってほしいと思います。そのような道が、結局はワーキングプアでない人も幸せにしてくれるのではないでしょうか。
 乙は、ワーキングプア問題をどうしたらいいか、何ともわかりません。投資は生活であり人生であると思っています。その意味で、ワーキングプアにも興味と関心を持ち続けたいと思います。


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2008年12月06日

ピーター・W・バーンスタイン,アナリン・スワン(2008.8)『ビリオネア生活白書』早川書房

 乙が読んだ本です。「超富豪たちはどう稼ぎ、どう使っているのか」という副題がついています。
 とはいうものの、実は初めから半分ほどを読んだだけです。途中で読む気をなくしてしまいました。
 480ページほどの活字がビッシリ詰まった本です。読むだけでも時間がかかります。
 本書では、Forbes 400 を扱います。アメリカの雑誌「フォーブス」が 1982 年以来、資産家トップ 400 人のリストを掲載しているのですが、そのリストに掲載された大富豪が Forbes 400 です。そういう人はどんな人たちなのかを記述しています。
 本書中には、Forbes 400 に基づいた大富豪たちの成功の過程、生活のしかたなどが描かれています。図表もたくさんあって、興味深いものがあります。
 では、乙はなぜこの本をおもしろいと思わなかったのか。
 大富豪たちを概観して、図表に基づいて「これこれの人が多い」というような形で記述してあれば、記述量はずっと少なくて済みますし、わかりやすかったはずです。しかし、そうはなりませんでした。大富豪たちは個性豊かで、さまざまな経歴を持ち、考え方もまちまち、富の源泉も違っています。したがって、安易に一括りにして「大富豪は○○だ」といえないのです。そのために、本書の記述は、固有名詞を挙げながら、この人の場合がどうだったか、どのような人生をたどってきたか、細かい具体的な記述が続きます。そういうスタイルしか取れなかったのでしょうが、そういう記述を延々と読まされると、飽きてきます。
 もちろん、アメリカの本ですから、登場するのはアメリカ人です。乙が名前を聞いたことないような人もたくさんいます。こういう話は、アメリカ人の常識であっても、日本人にはそうではありません。そういう人について延々語られても、どうにも興味がわかなかった(興味が持続できなかった)ということです。
 これだけのことを調べて本書をまとめたということは、著者の大変な努力のたまものだったでしょう。どんな調査を行ったのか、考えてみると、とても自分ではできないように思います。しかし、そのことと、最終的にできあがった本がおもしろいかということは別です。
 p.124 で、ウォルマートが低賃金であること、労働組合がないことなどが語られます。p.126 では、ナイキの奴隷的低賃金が出てきます。経営者として考えると、そんなやり方もあるのかと思いました。そういう個々の記述は興味深いものがあるのですが、全体を概観する視点のようなものは、残念ながらうまく読み取れませんでした。
 乙は、張志雄・高田雄巳『中国株式市場の真実』
2008.5.15 http://otsu.seesaa.net/article/96756811.html
を連想してしまいました。固有名詞がバンバン出てきて、事細かに何が起きたかを語っていく態度は両方に相通じるところがあります。しかし、読み通すのはなかなか困難です。
 張志雄・高田雄巳『中国株式市場の真実』は、自分で買ったので、長期にわたって少しずつ読み進めるようなこともできたのですが、本書は、図書館で借りて読もうとしたので、貸出期限があります。その期限内に読み終えることが苦痛に感じられたということです。
 本を読むのは、楽しいからであって、苦痛を感じながら読み進めるのは邪道だと思います。そんなことを考えて、乙は途中で読むのを放棄しました。というわけで、今回の記事は本書の全体を伝えるものではありませんので、ご注意ください。


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2008年11月29日

山田昌弘・白河桃子(2008.3)『「婚活」時代』(ディスカヴァー携書)ディスカヴァー・トゥエンティワン

 乙が読んだ本です。
 投資に関係するかと言われれば、若干違うような気もします。しかし、投資は人生の生き方であるとすると、結婚活動(婚活)も大事な一歩であると思います。乙は既婚者なので、婚活は不要ですが、身近に未婚者がいたりしますから、こういう本も読んでおいて損はありません。
 本書は2人の共著で、各章ごとに執筆者が変わっていますから、半々の割合で関わっているように見えますが、実は、白河氏の書いている部分のほうがかなり多めになっています。山田氏は学者ですが、白河氏はジャーナリストで、それぞれが書いた部分は、ずいぶんと違った書き方です。(乙は山田氏の書いている部分のほうが好きです。)
 p.18 「就職にしろ結婚にしろ、自由化が起これば思い通りにはならなくなる」とあります。とても不思議な感覚でした。結婚における「自由化」とは、結婚年齢がばらついていることを意味しています。以前は自由ではなかった(それなりの年になったら結婚するものだという社会的圧力があった)というわけです。
 このため、p.19 でいうように「婚活」なしでは結婚できない時代になっているというわけです。このことは、p.193(あとがき)でも触れられます。今はそういう時代なのですね。
 p.27 では、丸の内OLについてですが、「年収2倍の法則」というのがあるそうです。丸の内のOLは、結婚相手に自分の年収の2倍の年収を望んでいるのだそうです。万が一、自分が働けなくなっても、2人が生きていくためには、自分の年収の2倍があればいいというわけです。まあ、それはそうですが、(男性の)実態と比較すれば、けっこうな高望みといえるでしょう。
 p.46 では、1980年代までの職場結婚を描いています。総合職の男性と一般職の女性が出会う場として、企業がセッティングする集団見合いの場のようなものだったとしています。乙は「そうだったのか」という気がしました。自分の回りを見渡すと、確かにそういう人も多かったように思います。当時、企業の人事担当者は、女性を採用するとき、数歳年上の男性社員の妻にふさわしいかどうかで採用の可否を決めていた面があったのですね。
 p.108 では、山田氏の記述で「実は、男性というのは、女性が考えているほど、女性を美人度で選んでいるわけではないのです。」という記述があります。一方、pp.74-75 では、白河氏の記述で、お見合いパーティーでの申込みを見ると、男性は若くてきれいな女性に集中的に申し込んでいるとのことです。著者2人の観察は、かなりずれているようです。あえて意見を統一する必要はありませんが、できたら、このあたりを調整して、適切な記述になっていてほしかったところです。
 p.162 では、男性に「流される勇気」がほしいとあります。女の人が迫ってきたら、そのまま流されてもいいというわけで、まあこれも真実の一端かもしれません。おもしろい考え方でした。
 乙が読んでいて、ちょっと意味がわからなかったのは、p.25 でした。2000年と2005年の国勢調査を比べているところですが、「30代前半だった女性たちは30代後半になっていて、未婚率は 26.6→18.6(%)。7割の人が未婚のまま30代後半へ。」とあります。ここの「7割」という数字は違っているのではないでしょうか。2割が正しいのでしょうか。あるいは、30代前半で未婚だった人(26.6%)の7割が30代後半でも未婚だったと読むべきでしょうか。18.6/26.6=0.699 です。比率と比率を比べて比率で示すというのはわかりにくいと思います。
 新書サイズなので、手軽に読み切れます。今の日本社会の一面が書かれており、大変おもしろく読むことができました。


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2008年11月24日

橘木俊詔,森剛志(2005.3)『日本のお金持ち研究』日本経済新聞社

 乙が読んだ本です。
 『となりの億万長者』
2008.11.9 http://otsu.seesaa.net/article/109300763.html
を読んだとき、これがアメリカの億万長者を対象にした本だったので、日本のお金持ちを対象にした研究はないかと思っていたところ、ブログの読者の人から教えてもらった本です。
 この本は、日本の高額納税者を対象にしてアンケート調査を行った結果を載せています。ここでいう高額納税者とは、p.4 に定義されていますが、国税庁『全国高額納税者名簿』に記載されている年間納税額 3000 万円以上(年収約1億円以上)のうち、2年間にわたって名簿に載った人です。約 6000 人いたそうです。アンケートの回収率は p.5 にあるように、8%(回答者数 465 人)ですから、この種の調査としてはかなり低いほうだと思います。通信調査では、20% くらいの回収率が普通ではないでしょうか。ということは、回答者は、かなり偏っていると思われます。つまり、自分の資産総額をはじめ、ライフスタイルなどを外に知られてもいいと考えた一部の人(積極派とでもいえましょうか)の回答ということになります。
 さて、本書の記述は『となりの億万長者』とはだいぶ違います。たとえば、p.9 では、金持ちとは企業家と医師だとしています。p.20 では、お金持ちの住んでいるところを調べていますが、高級住宅地ということになっています。p.166 では、乗っているクルマについて調査していますが、セルシオやベンツが多いということです。なぜこんなに違うのか、初めは「日米の違いか?」などと思ったのですが、後から考えてみると、対象者がずれていることに気が付きました。本書では、「お金持ち」とは年収1億円が2年にわたって続いている人です。このくらいの収入が継続的にあるならば、資産総額は5億円以上あるのではないでしょうか。『となりの億万長者』では、資産1億円以上の人々を調査しています。つまり、アメリカのほうが「億万長者」と呼ぶ基準がやや低いのです。だから、安い中古車を乗り回し、高級住宅地でないところに住んでいる人が多いという結果になったのではないでしょうか。いわば「プチ金持ち」です。本書では、それよりもずっと高所得の人を調査しているわけで、同じ視線で比較してはいけないと思います。やはり、同じ著者(たち)が国際比較を視野に入れて同じ基準で調査しないと、比べられるようなものはできないということでしょう。
 第1章は医師を、第2章は弁護士を、第3章は経営者を取り上げ、その現状を記述しています。第4章は「日本の上流階級」で、歴史的な経緯なども述べています。乙は、この本がアンケート調査に基づいて書かれた本だと思っていましたので、このあたりの記述には違和感がありました。アンケートの話がほとんど出てこないのです。アンケートの話は、第5章以降の後半にたっぷりと出てきますが、初めはまるでだまされたかのように感じてしまいました。
 乙がおもしろく読んだところとしては、第3章(p.70)で、戦前の経営者像を学歴などと絡めて描いたところです。日本のあり方を形作ってきた人々ですから、ちょうど、日本史の本を読んでいるような気がしました。
 また、後半部は、アンケートの結果に基づいて書かれており、こちらにはいろいろおもしろい記述がありました。
 p.159 では、「長期休暇の活動」を尋ねていますが、若い人は「旅行」、高齢者は「仕事」です。p.162 お金持ちが望む「将来の活動」でも、年齢差が大きく、若い人は「旅行」なのですが、高齢になると「社会活動」を挙げる人が多いというのはおもしろいです。「仕事」といっても、お金持ちの場合は単純な労働ではありませんから、普通の人の考える「仕事」とは内容が違うとは思いますが、興味深い結果です。
 p.178 から、所得税の累進度を高くする(高所得者を高税率にする)と、高所得者の労働供給と貯蓄意欲にマイナスとなるかを議論しています。アメリカの研究では、マイナスとならない(無関係)という話ですが、日本ではデータがないというのです。こんなところに日本の弱点が隠されていたのですね。大事な研究なのに、抜け落ちているわけです。
 小さな欠点ですが、p.209 の表 7-7 のタイトルに「消費税」が入っていないのは問題です。本文を読めば誤読はしないのですが、……。
 第8章「結論」は、内容の要約になっています。時間がない人は、ここだけサッと読んで、おもしろいと思ったところには、くわしい記述にあたってみるという読み方でもいいだろうと思います。
 本書は、お金持ちがどんなことを考えているのかを十分記述しています。乙には縁遠い世界ですが、お金持ちは日本の行く末に有形無形の影響を及ぼしますから、日本の今後を考える上で、一つの視点を提供してくれる本だと思いました。良書です。奥付のところの紹介によれば、著者2人とも研究者ですが、いかにも研究者らしい書き方です。
 乙が読んだのは、図書館で借りたハードカバーでしたが、今は文庫版で出ているとのことなので、手軽に読めそうです。


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2008年11月22日

三橋貴明(2008.5)『本当にヤバイ! 中国経済』彩図社

 乙が読んだ本です。「バブル崩壊の先に潜む双頭の蛇」という副題が付いています。
 前著『本当はヤバイ! 韓国経済』
2008.11.14 http://otsu.seesaa.net/article/109644338.html
に続く第2弾ということで、期待して読みました。しかし、今回は、韓国のときとちがって空回りしている感じがしました。
 著者の三橋氏は、中小企業診断士であり、各種の数表を読み解きながら、企業を診断します。その手法を国に適用したのが前著『本当はヤバイ! 韓国経済』というわけです。
 では、今回、中国について同様の考え方が述べられているでしょうか。否です。第1章「中国の最悪の輸出品」で述べられますが、中国の発表する統計数値はまったく信用できないとのことです。三橋氏は、いろいろな数値が捏造されていると述べています。ということになると、中国の経済がどうなっているか、数字に頼った分析ができなくなるわけで、中国の発表するものが何から何まで信用できないとすると、経済の診断のしようがありません。
 むしろ、中国の状況について、数字を出しながら書けば書くほど、「その数字はどこから得たのか、信頼できるのか」と疑問が膨らんでくることになります。数字を出さないとなると、マクロな記述はどうしてもうまくできません。
 そんなわけで、本書は、中国そのものについて記述している部分ももちろんありますが、題名の割には、アメリカやヨーロッパなどの話がかなりたくさん出てきます。中国の貿易の相手として欧米が重要であることはその通りですが、このような態度では、中国経済の分析として、いかがなものでしょうか。
 中国の統計があてにならないということで、外部の統計から中国の経済を描こうとする趣旨は理解しますが、……。
 結果的に、本書は、前著『本当はヤバイ! 韓国経済』と比べて、迫力不足のように感じました。
 本書のいうように、中国経済が危ないとしたら、どんなところが危ないか。これについては、pp.135-136 の2ページだけを読めば結論がわかります。6点の個条書きでまとめてあります。
 乙は、中国経済がヤバイのではなく、「ヤバイかどうかわからない、世の中の人が思っているよりはヤバイかもしれない」くらいに考えていればいいのではないかと思いました。
 なお、p.112 に出てくる国際収支の6段階という考え方はおもしろかったです。三橋氏のオリジナルではなく、他の人が言っているもののようですが、……。
 第1段階第2段階第3段階第4段階第5段階第6段階

未成熟な
債務国

成熟した
債務国
債務
返済国
未成熟の
債権国
成熟した
債権国
債権取り
崩し国
経常収支
赤字
赤字
黒字
巨額黒字
黒字
赤字
貿易収支
赤字
黒字
巨額黒字
黒字
赤字
赤字
所得収支
赤字
赤字
赤字
黒字
巨額黒字
黒字
資本収支
黒字
黒字
赤字
巨額赤字
赤字
黒字

 このうち、日本は第4段階だそうですが、中国は「どこにも当てはまらない」とのことです。これだけでも「変な国」ということになりそうです。


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2008年11月20日

NHKスペシャル「ワーキングプア」取材班(編)(2007.6)『ワーキングプア―日本を蝕む病』ポプラ社

 乙が読んだ本です。NHKが放送した二つの番組
2006.7.23「ワーキングプア〜働いても働いても豊かになれない〜」
2006.12.10「ワーキングプアU〜努力すれば抜け出せますか〜」
の内容をまとめて、本の形で読めるようにしたものです。
 ワーキングプアの実例を取り上げ、どんな生活をしているのか、具体的に記述します。テレビ局ですから、「絵」が必要なわけで、「こんなふうに撮影したのだろうな」と思わせるような記述がしばしば見られます。
 本書の結論(そもそもテレビ番組ですから、結論はないのかもしれませんが)は p.9 に書いてあります。
 『ワーキングプア』で取材させていただいた人々から教えられたのは、「仕事」「労働」は人間の尊厳、誇りであり、その「誇り」はきちんと守られなければならない、ということであった。

 本書は、テレビ番組がもとになっていますので、徹底的に「取材」で構成されています。登場人物はすべて「仮名」ですが、その人たちの置かれた状況を余すところなく伝えているといっていいでしょう。
 具体例を見ていくと、一体どうしたらいいのか、誰も答えが出せないような、そんなケースにたくさんぶつかります。もちろん、こんな本1冊でワーキングプアの解決策などが書かれるはずはありません。それにしても、大変な日常生活を送っている人がたくさんいるという現実に、打ちのめされたような気分になります。リアルであるだけにインパクトが大きいといえるでしょう。
 統計資料などを使った本などと比べると、描かれている人たちが現に生きて生活している人であるという、ドキュメンタリー番組特有の臨場感があります。
 乙が一番驚いたのはX「グローバル化の波にさらわれる中小企業」でした。国内の話ですが、中国人の研修生・実習生を安い給料で使って行かざるを得ない中小企業の姿が描かれます。しかし、一方では、そのようにして生産された製品の価格は当然低くなるわけで、他の製造者には、納入価格の下落という形で影響を与えます。こうして、食っていくことがむずかしいワーキングプアが生まれてしまうわけです。岐阜市の具体的な例が生々しく描かれますので、興味のある方は一読することをおすすめします。
 1冊読み終えて、日本の政治がどこかで間違っているように思えてきました。弱者を置いてきぼりにしているのではないでしょうか。本書に出てくる人々は、低収入でありながら、それなりに満足して生きているようです。でも、できたらもう少し給料を上げてやりたいような気になります。さもないと、あまりに生活が大変です。
 企業の経営者の立場からすれば、給料を上げるなんてもってのほか(他社との競争に負けてしまう)ということになるのでしょうけれど、……。


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2008年11月18日

澤上篤人(2008.9)『「運用立国」で日本は大繁栄する』PHPパブリッシング

 乙が読んだ本です。
 内容は、タイトルを読めばわかりそうなものです。日本を「運用立国」にしようということです。
 第1章「欧米式の金融センターは、日本になじまない」では、東京をウィンブルドンにしてはダメだと説きます。日本の金融機関は、間接金融でやってきただけなので、海外の金融機関を誘致するようなことをすれば、日本の金融機関の多数が廃業か下請けになってしまうというわけです。
 第2章「栄光の間接金融、いまや足カセ」では、国内に資本が蓄積したので、間接金融は危険だと説きます。
 第3章「日本には、リスクマネーが存在しない」では、海外のリスクマネーのあり方を述べ、そのようなものが日本にはどこにもないことを述べます。今は、金融マンがリスクを取る番なのに、そうしようとしていないというわけです。
 第4章「運用立国を目指す戦略の皮算用」では、日本が有する膨大な資金を投資に向けようと誘っています。預貯金をやめて運用に向かおうということです。
 p.106 に貯蓄率のグラフが出てきます(最近は貯蓄率が下がっています)が、ここで貯蓄率とは何かが説明されず、p.108 で説明されます。ちょっと「あれっ」です。
 p.135 では、個人マネーが投資に動いていくと、「先行した人々の成功体験が、身近なところで見えるようになってきたら、あっという間に日本中で「やはり長期投資しよう」の雪崩れ現象となるだろう。」としています。ここは乙が違和感を感じたところです。長期投資では、なかなか成功体験を持つことができません。なぜならば「長期」だからです。退職したころになって、やっと成功体験が持てるようになります。だから、身近に成功体験を持つ人がゴロゴロいるようなことにはなりません。さらに、仮に成功しても、本当の金持ちは質素に暮らすだろうと思います。この点については、『となりの億万長者』
2008.11.9 http://otsu.seesaa.net/article/109300763.html
を参照してください。したがって、ますます、成功体験は見えません。
 第5章「東京証券取引所を、世界最大の株式市場に復活させる」では、東証を長期運用の中心に据え、世界中の企業が東証に上場するような方策をとるべきだと説きます。日本の中だけで国際分散投資ができてしまうというわけです。話としてはおもしろいのですが、では、具体的にどうするか、そこがむずかしいのです。答えは第6章です。
 第6章は「個人マネーを長期の株式投資に誘導する起爆剤としては、「国民ファンド」を設定するとおもしろい」です。国民ファンドという大規模なファンドの構想を描きます。国とか、民営化前の郵便局とかの信用力の高いところが設定するものです。ただし、その運用については、自ら運用するのでなく、国内外の投信会社に公募ファンドを日本国内で設定させ、それらに資金を配分し、運用コンペを行いながら、成績のいいところに資金を多く割り当てていくという構想です。運用コンペは日本株の現物買いのみで行うのだそうです。乙は、ここにも違和感を感じました。澤上氏の流儀で、株の運用には自信があるということなんでしょうが、インデックスファンドとアクティブファンドの競争をすれば、平均的にはインデックスファンドが勝つのではないでしょうか。すると、澤上氏の構想は意味を持たなくなってしまいます。運用コンペをするよりは、全額をインデックスファンドに投資するほうがいいということになりそうですから、何も「国民ファンド」などを立ち上げなくても、今でも十分に可能になっています。ただ、個人の資金がそちらに向かわないだけです。
 第7章「世界の長期運用が下手になっている」では、長期投資が下手になったから、ヘッジファンドに逃げたりオフショア市場が発展したりしたのだと説きます。年金運用なども短視野化しているというわけです。しかし、ここがアクティブ運用の出番だとしています。
 第8章「草の根ベースで、運用立国への歩みは着々と進んでいる」で、最近日本で始まった「おらが町投信」を取り上げ、今後の投信のモデルになるとしています。
 本書がさわかみファンドの宣伝になっているわけではない点は評価したいと思います。もっと大きなスタンスで運用を考えていることが伝わってきます。
 しかし、本書は、澤上氏の持論を展開するもので、主張は書いてありますが、それを裏付けるデータが示されるわけではないので、全体に迫力(説得力)がありません。乙は、書いてあることをそのまま鵜呑みにすることはできないように感じました。268 ページもの分量があるのですから、自分の主張の裏付けになるような数字(データ)を出すようにしたほうがいいのではないでしょうか。
 1冊読んだ割には、読んだ実感が伴わない(中身が薄い)ように思いました。こんなことを申し上げては、澤上氏に申し訳ないですかね。


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2008年11月16日

山崎養世(2008.7)『次のグローバル・バブルが始まった!』朝日新聞出版

 乙が読んだ本です。
 読み始めてすぐの p.2 で2008年は大不況は来ない、それどころか次のバブルが始まると予想しています。「サブプライム問題は世界不況の引き金にはならない」や「ロシアや中東産油国は、高騰する原油価格の恩恵で潤い、ブラジルの株価は、連日のように市場最高値を更新し続けています。」とも述べています。
 この本は、2008年7月の出版ですから、執筆時期はその数ヶ月前でしょう。山崎氏は、事態が自分の予想通りに推移してきたと誇らしげに語っています。
 p.4 では、デカップリング論が語られ、先進国経済が傾いても、新興国経済は好調であるとしています。
 2008 年 11 月現在では、山崎氏はこれらのことをどう思っているのでしょうか。機会があれば、直接お聞きしたいものです。一般的な認識としては、「世界同時大不況」だと思います。
 第1章は「サブプライム危機は終わった!」です。p.21 では、2008 年1月、3月に書いた自分の記事を引用し、株式市場の暴落は終わり、再び上昇するとしています。pp.26-27 では、1929 年の大恐慌に言及して、現状は大恐慌とはほど遠いとしています。
 11月現在の状況は、……多くの人は「100年に一度の危機」と感じているのではないでしょうか。
 第2章は「新しいグローバル・バブルが生まれる」です。新しいグローバル・バブルとは、p.74 によれば、ブラジルやロシアの新興国だというわけです。
 山崎氏は、経済の先行きについて、読み間違いをしていると思います。それだけ、経済予測は難しいのでしょう。7月に書かれた本を11月に読んで、ずいぶんと時代遅れのことを言っているなあと感じます。それくらいに9月から10月にかけての世界の株式市場の変化は大激変だったわけです。
 第2章では、おもしろい記述も出てきます。p.88 では、現実の円キャリー取引のようすが描かれます。乙はまったく知りませんでした。何と、円はどこにも出てこずに、すべてドルで決済してしまうのだそうです。世界中でこんな円キャリー取引が行われているのだそうです。これでは、通貨をコントロールすることなんて不可能です。
 第3章は「経済超大国となった中国が世界経済を一変させた」です。p.118 あたりで、なぜ中国が経済発展したかが語られます。アメリカの企業が中国に進出して各種生産を行いアメリカに輸出するようになっています。すると、実際に利益を得ているのはアメリカ企業ということになり、アメリカ政府や州に税金を払うことで貢献しているわけです。こうして、中国もアメリカもこれでよしと考えることになりました。アメリカにしてみれば、対日赤字と対中赤字はまったく別物ということになります。
 本書は6章までありますが、以下は省略しましょう。
 乙は、本の出版が恐ろしいと思いました。たった数ヶ月の間に経済状況が激変し、本の内容が古くなってしまうことがあるんですね。もしかしたら、著者としては大改訂したいと思うことがあるかもしれません。それでも、本は図書館に残され、執筆され出版された時の状態を未来にまで伝えてしまうのです。
 本書は、11月現在で読むと、違和感が大きい内容でした。


ラベル:山崎養世 バブル
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2008年11月14日

三橋貴明(2007.7)『本当はヤバイ! 韓国経済』彩図社

 乙が読んだ本です。「迫り来る通貨危機再来の恐怖」という副題が付いています。
 著者の三橋氏は中小企業診断士だそうで、財務諸表などから企業の現状を分析し、アドバイスをすることが仕事だそうです。その手法で韓国を見たらどうなるかを述べたのが本書です。
 本書の結論は、タイトルにあるとおり、「韓国経済はヤバイ」ということになります。
 本書を読む前に、韓国のここ10年ほどの為替レートの変動を見てみましょう。
http://www.aceconsulting.co.jp/kawasekinri2.html
経験的に1円が10ウォンくらいが多かったので、だいたい10倍のレートと見ればよかったのですが、9月から10月にかけてウォンが急落しています。10月末の時点では、100KRW が 7.70 円ということで、大きく円高ウォン安になっています。
 「韓国ウォン相場下落の構図」
http://www.jri.co.jp/RIM/2008/11korea.pdf
によれば、対ドルで見ても、ドル高ウォン安であることは明らかです。
 本書が書かれた当時(2007年春ころ?)はウォン高だったわけです。2007年7月(本書の刊行時期)がウォン高のピークで、1ドル=918ウォンでしたが、最近は1ドル=1322 ウォン
http://quote.yahoo.co.jp/m5?a=1&s=USD&t=KRW
ということで、大変なウォン安です。
 p.8 では、「ウォン高→輸出企業不振→経常収支赤字化→国内の資金不足→短期外債急増→資本収支黒字増加→ウォン高」という悪循環が書いてありますが、現在のウォン安状況でこれがどう変わったかも知りたいところです。
 しかし、本書では、ウォンが高いか安いかという問題を越えて、もっと大きな「韓国での変化の傾向」を描いています。その点で、本書の記述の大部分は、ウォン安の現在でも当てはまるように思います。
 さて、本書の内容を見ていきましょう。
 第1章「六つ子の赤字」では、韓国が経常収支赤字、財政赤字、家計の赤字、企業の赤字、中央銀行の赤字に苦しむ姿を描いています。これに資本収支の赤字が加われば(そして実際にそうなりそうですが)「六つ子の赤字」になるということになります。
 第2章「泥沼の国際収支」では、国際収支の数値がひどく、明確に近未来の破綻を示していると説きます。外貨準備高が急増しているのは、外国から短期でカネを借りているからだということになります。国際収支がなぜ赤字かといえば、それは旅行・留学・研修などのサービス収支の赤字が原因です。所得収支の赤字の原因は、上場企業の配当が大きく増加し、カネが外国人投資家に流れているのが原因です。経常移転収支の赤字は、韓国人が海外に送金しているからです。
 第3章「円キャリーの逆襲」では、円キャリー取引で新興国のバブルが起こり、その後、円キャリー取引が日銀の利上げによって終わったことで、新興国から資金が一斉に引き揚げられ、現地通貨安が起こったことを説明します。韓国のウォン安もその一環だというわけです。
 第4章「通貨危機再来の悪夢」では、韓国でも円キャリー取引が行われ、円建ての借金が増えているのだそうです。そして、そのカネが向かった先が不動産投機でした。今、円キャリー取引が終わったので、大量の円を返す必要があり、ウォン安円高が進行するとのことです。本書出版後の傾向を見事に言い当てています。ウォン安が進むと、円での借金を返せなくなり、デフォールトが起こるだろうとのことです。
 第5章「韓国輸出企業の実態」では、輸出企業が国内の価格を高くしてここで儲け、海外では価格を下げて売り上げの数量を確保する戦略をとっていることを述べています。また、韓国の人件費が高く、労働生産性が非常に低いこと、日本から工作機械や高度な部品を輸入していることを述べています。
 第6章「恐るべし全教組と平準化教育」では、韓国の大学教育が費用がかかりすぎること、学生の質が非常に低いこと、その原因は全国教職員労働組合にあるとしています。そのため、親は子供の教育を海外で行おうとして、外国への送金が増えているのだそうです。
 第7章「植民地経済大国」では、アジア通貨危機によって、金融機関と主要企業の資本を外資に握られてしまい、現在は、高配当で資本が海外に出て行ってしまっていることを説明しています。
 第8章「逆単身赴任の悲惨な現実」では、海外に子供と母親を送り出し、父親が韓国内で単身で稼いでいる状況を述べます。
 第9章「深刻な国内空洞化」では、設備投資がまともに行われておらず、産業が空洞化しつつある現状を記述します。
 第10章「KOSPI最高値の疑惑」では、株価が上昇しているように見えても、それは実は自社株買いによるものだとし、韓国人投資家も海外に投資する例が激増していると述べます。
 第11章「崩壊する韓国社会」では、韓国の不動産バブルを描き、家計の赤字(つまり借金)が膨大であることを述べます。韓国の法定利息は年利 66% だそうです。こんなに高いとは、乙は知りませんでした。これで家計が赤字ということは、借金取りに多額の利息を払わなければならないということになります。韓国は格差社会になっており、中流層が激減してしまったとのことです。
 第12章「急増する脱南者」では、人もお金も工場も、韓国を捨てて海外に脱出していると述べています。
 第13章「GDP5.0%成長の謎」は、韓国の経済統計が間違っているという話です。ただし、乙の考えでは、ここは著者の解釈が間違っています。p.226 では、四半期ごとの GDP 成長率をもとに、1年間の成長率を求め、それが年間の統計値と違っている点を述べています。しかし、四半期ごとの結果を四つまとめたのでは、3ヵ月分の統計とその1年後の3ヵ月分の統計を比べていることになり、1年分と1年分を比べる年間成長率と違ってくるのは当然です。
 第14章「報道の信頼」では、日本のメディアの問題(経済リテラシーが低い)を述べています。
 本書は、一貫して、公表されている各種の統計数値を使い、韓国の経済状況をマクロに把握しようとしています。また、韓国の新聞記事を引用しつつ、それがどういう意味を持っているかを読み解いていきます。第13章以外の部分は、乙は納得しながら読み進めました。
 ちょっと読みにくい部分として、これこれのことは後の第○章で述べるとする箇所が多いことがあります。問題ごとに整理して述べれば、こういう書き方は避けられると思うのですが、……。
 それと、数表も本文にそろえて縦組みになっているのは読みにくいと思います。本文が縦組みでも、表だけは横組みにしてほしかったところです。
 結論として、韓国への投資はしない方がいいということになります。
 韓国関連のいくつかの記事
2008.11.13 http://otsu.seesaa.net/article/109598118.html
と同じ結論になりました。


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2008年11月09日

トマス・J・スタンリー, ウィリアム・D・ダンコ(1997.9)『となりの億万長者』早川書房

 乙が読んだ本です。「成功を生む7つの法則」という副題が付いています。
 この本を読もうと思ったのは、中桐啓貴(2008.7)『ほったらかしでも1億円の資産を生む株式・投資信託の始め方』
2008.10.13 http://otsu.seesaa.net/article/107997562.html
を読んだとき、お金持ちは安い中古車に乗り、安いスーツを着ているという話があり、ある人が、その話の出典がこの本だと教えてくれたからでした。
 乙は一読してびっくりしました。著者たちの徹底的な調査・研究の態度に驚いたのです。p.14 には、次のようにあります。「私たちは500人以上の資産家にインタビューし、また 11,000 人以上の資産家や高額所得者にアンケート調査した。」どうですか。この本はこのような膨大な調査・研究に基づいて書かれているのです。これに匹敵するような日本の資産家研究があるのでしょうか。乙は社会学方面にはまったくうといので、わかりませんが、たぶんないのではないでしょうか。この本はすべてアメリカの話ではありますが、億万長者の考え方は世界に通じるものと思います。
 本書のイントロダクションを読み始めて、すぐに驚きのことばに出くわします。本書の最初(p.9 ですが)の出だしの1段落を引用します。
 20年以上前、私たちは、人はどうやって金持ちになるのかを研究しはじめた。最初、私たちは、誰もが考えるように、いわゆる高級住宅地に住む人々を対象に調査を行なった。だが、そのうちどうも奇妙なことに気づいた。豪華な屋敷に住み、高級車に乗っている人たちは、実際にはあまり資産を持っていないのだ。そしてもっと奇妙なことに気づいた。大きな資産を持つ人々は、そもそも高級住宅地に住んでいないのだ。
 こうして本書が始まります。最初の1段落だけでも頭をガーンと殴られた気分です。これだけで「お金持ち」のイメージが変わってしまいます。
 p.26 では、金持ちの多くが1代で財産を築いていることを述べます。相続などではないのです。むしろ、金持ちの2〜3世は、必ずしも金持ちにならないのです。
 p.38 から、本書の最大のテーマが語られます。「倹約」が大事だということです。お金持ちは、収入よりはるかに低い支出で生活するのです。そのようにできる人が結果的に金持ちになるのです。
 p.128 金持ちの多くが株を持っています。しかし、売り買いはほとんどせずに、じっと持っているだけです。これも興味深い結果でした。
 p.181 親が子供に経済的援助を与えれば与えるほど、子供は資産を蓄えなくなるというのです。これもとてもおもしろい研究でした。
 p.292 お金持ちは、子供に会社を継がせず、むしろ専門職にさせようとするのだそうです。医者や弁護士や会計士などだそうです。
 乙は、億万長者ではありませんが、退職後は、それに近い状態になるように思います。そのとき、どのように振る舞うべきか、考えさせられます。自分の子供にどう接するべきかもとても大事な問題です。
 本書を通読してみて、乙の金持ちのイメージはすっかり変わってしまいました。何か、人生について大きな「学び」をした気分です。本書は、323 ページにわたって、比較的小さな活字でびっしり書いてあるのですが、「お金」から見た人生論が描かれています。読んでおいて損はない本です。出版年はやや古いですから、数字などは今のものに置き換えて理解する必要があるでしょうが、原則は変わらないものと思います。
 できれば、誰かが日本の富裕層に関する調査・研究をしてくれれば、それと本書の結果を比べることができるのですが、……。乙が知らないだけで、実は研究が行われているのでしょうか。


ラベル:億万長者 金持ち
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2008年11月03日

北村慶(2008.9)『ほぼ確実に世界の経済成長があなたの財産に変わる最も賢いETF海外投資法』朝日新聞出版

 乙が読んだ本です。ずいぶん長いタイトルの本です。
 内容は、インデックス投資のすすめであり、ETF を使ってどのように行うかを具体的に説いています。
 まともな本ですが、しかし、目新しさも少ないように感じました。オーソドックスな本となると、どうしてもこんな感じになってしまうのでしょう。
 p.262 からの「おわりに」になって、時価総額に比例するのでないインデックス「ファンダメンタル・インデックス」の紹介があり、この考え方はおもしろいと思いました。今後はこういうインデックスに従う ETF なども登場してくるのでしょうね。
 p.78 から、BRICs 投資に対する北村氏の考え方が書いてあります。証券会社などは、先回りして自己ポジションで株を買っておき、それを投資家に推奨することがあるそうです。これを「フロント・ランニング」というわけですが、BRICs はその例ではないかというのです。そうかもしれません。BRICs の最近の極端な株安を見ていると、さもありなんと思えてきます。
 p.80 には、もしも、本当に数年後に伸びている国がどこか、わかるならば、その人や証券会社にとって最も合理的な行動は、その「秘密」を誰にもいわないことだとあります。そうしておいて、安値でたっぷり仕込んでから、「これからは○○○が儲かる!」といって価格を上昇させるというわけです。ポジション・トークですね。
 こんなことから、今後上昇しそうな国や銘柄などをあてるアプローチは間違っていると主張します。この考え方は納得できます。
 以下、乙が気になったことをいくつか書きます。
 p.20 図表4では、原点と「先進国と日本の間」を通る直線が引かれています。そして、新興国・発展途上国がこれよりもハイリターンであることを示しています。過去5年あるいは過去10年の話です。しかし、この図は妥当なのでしょうか。もちろん、点と点の位置関係は、MSCI 指数などで計算した結果ですから、1点に決まるといえますが、元はといえば、それぞれの指数は、さまざまな国の株価指数を平均して計算しているわけですから、元の各国別の株価指数を基準にすれば「ばらつき」があるはずです。そうすると、こんなに単純に線が引けるということにはなりません。原点を通ると仮定して最小二乗法あたりを用いて計算することになるのでしょうね。複雑になりますが、それが正しいのではないかと思います。図表4は単純化しすぎのように思います。(単純化して示す意味もわかりますが。)
 p.96 プラスからマイナスにいたる散布図が示されますが、軸のマイナス側に「-」が付いていません。まあ、なくてもわかりますけど、数学的な厳密さを欠いています。
 p.205 から、基本のポートフォリオとして3種類が示されます。ポートフォリオについては「唯一絶対の正解はない」と述べています。それは正しいのですが、こんなふうに3種類示されて、あとは皆さんのお好きなようにといわれても、普通の読者ではちょっと判断しようがないのではないでしょうか。どれでもいいということであれば、せっかくインデックス投資を説いてきたのに、最後の最後にどれでもいいとなると、急にインデックス投資の信頼性が下がるような気がします。ここは、もう少し他の書きようがあったかもしれません。
 なお、参考文献が1冊も挙げられていませんが、ぜひ何か入れておいてほしかったように思いました。


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2008年10月23日

副島隆彦(2007.9)『守り抜け個人資産』祥伝社

 乙が読んだ本です。「国の金融管理が強まった」という副題が付いています。
 1年以上前に出た本ですが、帯には「世界は金融恐慌に雪崩れ込む! ドル安と株安、「暴落の時代」にいかに資産を防衛するべきか」などと書いてあり、2008 年現在の世界を言いあてているように感じました。
 目次を以下に示しておきましょう。
1章 恐ろしい金融管理――国の「統制経済」が強まっている
2章 個人資産は「ユーロ」「人民元」「金地金(きんじがね)」に移せ
3章 「景気回復」の大嘘――タンス預金が危ない
4章 資金の一部を国外に避難させよ
5章 「ドルと円の心中」が迫っている
6章 税務署は国民からお金を召し上げればいいと信じ込んでいる
7章 かくて日本のデフレ経済は続く

 というわけで、この目次を見ていると、本書にどんな内容が書かれているか、だいたい推定できます。
 以下では、乙が変だと思ったところを中心にいくつかコメントします。
 p.16 法 law のところに「ラー」とルビを振ってあります。p.17, p.39(2箇所), p.100 など、何ヵ所にも「ラー」という表記が出てきますから、これはミスプリではありません。副島氏は法科大学院のロースクールもラースクールと呼ぶ人なのでしょうか。ちなみに、英語では同じ母音(発音記号ではCが逆さまになった文字プラス長母音)を使っている語ですが、war(戦争)は p.46 で「ウォー」としていますし、pp.4-5 では、money laundering のことを「マネー・ローンダリング」と表記しています。
 p.33 「従来は日本の官僚組織は、4種類の官僚機構によって、「国民コード」(国民背番号)をそれぞれバラバラに管理していた。四つの官僚機構とは、まず@財務省=国税庁=税務署による個人と企業(法人)の「納税者番号制度」(納番)による管理である。」ということで始まります。p.34 ではA住民票コードに言及します。ところが、p.38 に進むと「B番目の力は経済産業省(旧通産省)が持っている、企業活動の全般に対する統制権である。」ということで、国民コードの話かと思っていたら、権力の話になります。同じ p.38 には「C番目は、法務省=裁判所=警察庁が持つ権力である。」となります。Bと同じ書き方です。国民コードの話と思っていると、いつの間にか権力の話にすり替わってしまいます。こういう書き方はわかりにくいと思います。
 p.115 「商業地に比べて減価率の低い住宅地の地価にしても、3分の1になっている。3分の1ということは、この15年の間に値段が 200% の下落をしたということだ。」とあります。3分の1になるときは、67% の下落といいます。簡単な算数です。
 p.191 中国の話ですが「女工さんでも月額で1200元(2万円)から1500元(3万円)ぐらいにまで高騰している。」とあります。為替レートをいくらに設定したのかわかりませんが、1200元と1500元では 25%増ですが、2万円と3万円では 50%増ですから、どうやっても話が合いません。
 これらのことを考慮すると、乙は著者の副島氏のいっていることがにわかには信じがたいように思いました。
 ちなみに、p.149 を見ると、
この本の著者である私の言うこと(書くこと)も簡単には信じてはいけないのかと問われれば、「そのとおりである」と私は答える。どんなに立派そうな素晴らしいことを書く人の考えも、すべて疑ってかからなければならない。

と書いてあります。こういうことを本に書いてはいけません。「著者を信じてはいけない」を素直に信じれば、「著者を信じてはいけない」ということばを信じてはいけなくなるわけで、矛盾しています。これは昔から知られている詭弁です。乙は、このような言葉があろうがなかろうが、間違いが多い本に書いてあることは全面的に信じないことにしています。
 ただし、pp.80-81 で、政府が発表する経済成長率の数字はウソだといっているところは、先日の日経新聞の話
2008.10.20 http://otsu.seesaa.net/article/108335372.html
と符合するので、乙は興味深く読みました。
 また、p.5 に出てくる話ですが、銀行では本人確認書類なしでは10万円以上の振込ができなくても、コンビニならばできるとのことです。このことは乙は気が付きませんでした。
 乙は、この本を他人に勧めようとは思いません。


ラベル:副島隆彦
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2008年10月21日

若林亜紀(2008.3)『公務員の異常な世界』(幻冬舎新書)幻冬舎

 乙が読んだ本です。「給料・手当・官舎・休暇」という副題が付いています。
 公務員は、さまざまに優遇されていて、現代の貴族だと告発している本です。
 著者の若林氏も公務員を経験してきた人ですから、自分の目で直接見てきたその経験を踏まえて、おもしろく描いています。単なる告発本でなく、各種資料にもあたった上で記述していますので、好感が持てます。
 ただし、少しだけ違和感が残ります。
 そんなに公務員がよければ、みんなが公務員になりたがるものではないかと思うのですが、そうはなっていないように思います。採用試験が厳しすぎる(倍率が高すぎる)のでしょうか。そうでもないと思います。
 大学生の就職状況を見ると、公務員を目指す人は、それなりに少数派で、民間企業を目指す人のほうが圧倒的に多いと思いますが、だとすると、公務員=貴族という見方は、一面的すぎるかもしれません。本書で描かれる世界もある一方で、それだけではない面もあると思います。
 また、公務員試験ではコネやワイロで合否が決まる、などという話もあります(最近では大分県教員採用試験がそうでした。本書でも出てきます)が、すべての公務員がそうやって採用されているわけでもなく、むしろ、大部分の公務員は公平な試験を経て選抜されているのではないでしょうか。
 乙が読んでいて疑問に思った点ですが、p.213 にこんな記述があります。
 厚生労働省の調査によれば、05年、メンタルヘルス上の理由で休業した労働者がいる企業は 3.3% にすぎませんでした。ただし、従業員 100 人以上の企業では 16%、500 人以上で 66%、1000 人以上では 82% と、大企業ほど率が高くなっています。大企業ほどストレスが溜まるというより、大企業ほど制度が整って交代要員もあり、休業しやすいのだと思われます。

 これはおかしな記述です。大企業と中小企業で従業員の休職率に差がない場合でも、企業単位に集計すれば、従業員の多い会社ほど休業者がいる比率が高くなるのは当たり前です。
 仮に、休業率が 1% だとしましょう。従業員が 10 人いれば、その会社に一人でも休業者がいる確率は、1-(0.99^10)=9.56% です(ただし「^」はべき乗を表します)。同様に従業員が 100 人いれば、休業者がいる確率は、1-(0.99^100)=63.4%、1000 人では、99.996% になります。
 つまり、「休業した労働者がいる企業」を数えるのではなく、全従業員数を母数とした休業者数の比率で見なければなりません。
 誤字は、p.40 真ん中あたり 証人→承認 に気づきました。
 実は、乙もかつて公務員をしていたのです。若林氏とは職種も勤務先も勤務地も全然違うので、単純な比較はできないと思いますが、若林氏のいうところも一部は理解できます。しかし、大部分の公務員はまじめに働いていたと思います。これこれの異常な人がいる(ことがある)というのは事実ですが、その比率は思っているよりは低いのではないでしょうか。ただ、公務員の数が多いことと、特に地方公務員の実態が多様であることから、変な例を探し出せばそれなりにあるものだと思っています。
 本書は、ひとことでいえば、読んで楽しい本です。でも、これから就職を目指す大学生がこの本を読んで素直に信じてしまっては危険だと思います。


ラベル:若林亜紀 公務員
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2008年10月18日

堤未果(2008.1)『ルポ貧困大国アメリカ』(岩波新書)岩波新書

 乙が読んだ本です。
 一読して、感じました。アメリカは病んでいます。
 著者の堤氏は、東京生まれだそうですが、学士号と修士号をニューヨークで取得しているとのことですし、アメリカで仕事をしているとのことですから、英語力はネイティブ並みでしょう。アメリカの生活のすみずみまで知っているようです。そういう人が、ワーキングプアのことを書いているのですから、おもしろくないはずがありません。
 乙が初めて知ったようなことがたくさん出てきます。
 本書の記述は、とにかくきちんと数字を出すことにこだわっています。各種統計資料を参照しているのでしょう。たとえば、p.21 には、無料−割引給食プログラムに登録した生徒の数が 2005 年には全米で 3002 万人にのぼると書いてあります。3000 万人とはすごい数です。乙は自分の目を疑いました。しかし、数字で示されると納得せざるを得ません。
 第1章は、「貧困が生み出す肥満国民」ということで、一見「おや?」と思います。貧困児童には肥満が多いというのです。家が貧しいと無料配給切符(フードスタンプ)に頼るようになります。上述の無料−割引給食プログラムも似たような制度です。こうして、貧困層は安くて調理が簡単なジャンクフードやファーストフードを食べるようになり、結果的に肥満になっていくというわけです。第1章は、貧困家庭の生活の現状を描いていますから、本書中で一番ショッキングかもしれません。
 第2章は、「民営化による国内難民と自由化による経済難民」です。災害予防の仕事までもが民営化され、結果的にハリケーン・カトリーナで多数の死者を出すまでにいたったというのです。被害が大きかったニューオーリンズは、再建不能で、むしろ見捨てられているのだそうです。
 第3章は、「一度の病気で貧困層に転落する人々」です。アメリカはとてつもなく医療費が高く、また、保険会社はなるべく医療費を安く抑えようとするため、無保険者が多くなってしまいました。無保険者が 5000 万人と聞くと二の句が継げません。病院までが株式会社になっているのだそうです。アメリカでは病気になったら破産するケースも多いと聞くと、いやはや大変な国だなあと思います。少なくとも、乙は住みたくありません。
 第4章は、「出口をふさがれる若者たち」です。貧困層が経済的に困っていることを利用して、政府はそういう若者を軍隊に入れようとするようです。確かに軍隊は給料が高そうですが、もちろん命の危険性があるわけで、非常に厳しく、また残酷な話だと思いました。
 第5章は、「世界中のワーキングプアが支える「民営化された戦争」」です。軍隊に正規に入るのではなくて、民間の会社で、軍事行動を支援したりする会社があるのですね。そういうところに「就職」すると、イラクに送られるということになります。トラックの運転手などがたくさんいるそうです。これは軍隊ではないから、命の保証もなにもありません。現代の「傭兵」がここにいます。
 本書は、そんなわけで、アメリカの知られざる一面を描いたといえます。アメリカは中間層が没落し、大きく儲ける一部階級の人々と、多数のワーキングプアに二極化しているのです。乙のブログで、先日、破綻した金融機関の経営者が多額の報酬を得ていたことを書きましたが
2008.10.10 http://otsu.seesaa.net/article/107860922.html
アメリカは、そういうことが普通にある国だと思います。
 しかし、一方では、多数の貧困層を抱えているというのも事実です。アメリカ政府としても、そういう人たちとの関係において、軍隊や病院のあり方がどうであるべきか考えておく必要があります。もしかすると、WASP は、貧困層を食い物にすればそれでいいと考えているのでしょうか。厳しい国ですが、アメリカならばそう考える人がいても不思議ではありません。
 本書は非常におもしろくて、一気に読んでしまいました。そうして乙が得た結論は「アメリカは病んでいる」ということでした。
 アメリカは、世界を牛耳るすごい超大国であるとともに、貧しい人がたくさんいる国でもあるのです。新鮮な本でした。
 本書を読み終わった後、乙は、アメリカに投資し続けていていいのかどうか、疑問に思えてきました。それくらいインパクトがある本です。新書をはるかに超えた価値があります。
 本書は投資関連ブログでも取り上げられたことがあります。

http://orfeodor.blog118.fc2.com/blog-entry-317.html
http://blog.goo.ne.jp/kitanotakeshi55/e/06cdc99fdcb581fc6eef078501707821


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2008年10月16日

沢井智裕(2008.7)『円・ドル・ユーロで1億円をつくる私の方法』成美堂出版

 乙が読んだ本です。表紙には「現役プライベートバンカーが教えるミックス資産運用」という副題が書いてあります。
 以下に章単位の目次を書いておきましょう。

 序章 投資に対する間違った思い込みを捨てよう
 第1章 投資前におさえておく18のポイント
 第2章 国内で買える海外ファンドでも「国際分散投資」は可能
 第3章 海外でしか買えない優れた「海外ファンド」
 第4章 海外投資で目指そう1億円
 第5章 海外で運用するメリット・デメリット
 第6章 資産家のための銀行「プライベートバンク」とは

 目次を見るだけでも、ある程度内容について見当がつきます。
 第2章は国内で海外ファンドを買う話で、第3〜5章では海外で海外ファンドを買おうという話になります。このあたり、著者のスタンスがはっきりしていないかのような印象を与えます。
 本書を読みながら、乙はいろいろと違和感を感じたところがあります。以下、それを書いておきましょう。
 pp.52-53 「日本の金融機関の弱みA 見劣りする「商品開発力」」という題名が付いています。ここで書かれていることは、日本の投資信託をけなしつつ、海外のヘッジファンドを評価する内容です。そして、投資信託の固定的な手数料収入ではなく、成功報酬制のほうが投資家の側に立っているので望ましいと主張しています。しかし、乙の経験では、成功報酬制はかなり報酬の比率が高く、かつ、固定的な手数料と組み合わされている場合が多いので、両者を合わせれば、結局金融機関側に相当の額を支払ってしまう形になります。
 pp.56-57 個人投資家と「その道のプロ」では、流通する情報が違うので、個人投資家は太刀打ちできない(プロの運用のほうが優れている)ということを主張しています。この話は本当に正しいのでしょうか。だとしたら、平均的にはアクティブ・ファンドがインデックス・ファンドに負けることをどう説明するのでしょうか。ヘッジファンドだって、インデックス・ファンドに勝てるとは限りません。著者はここでデータを示さずに一方的に主張しています。しかし、乙は著者の主張は疑わしいと思いました。
 p.71 投資信託と銀行の預貯金を比較し、銀行は預入金利と貸出金利の間でサヤを抜いて利益を上げているが、どのくらいの利益なのかは預金者にはわからないのに対し、投資信託は手数料を明示しているので、ずっと透明性が高い(したがって公平である)と述べています。しかし、この比較も安易です。投資信託はリスク(価格の変動)が大きいのに、預貯金のリスク(元本が毀損する可能性)はごく小さいわけです。このことに触れずに比較しても意味がありません。預貯金は、銀行側の利益は不明だけれども、預金者に利率を事前に明示しています。投資信託は、利率を明示することはできません。この点からは、預貯金のほうが透明性が高いという議論も可能なのではないでしょうか。
 p.88 海外でファンドを買おうという話です。本文中にいきなり「ICG」というのが出てきて、意味がわからなくなり、面食らいます。奥付を見ると、著者の沢井氏はICGインベストメント(アジア)代表取締役とあります。何と、香港にある自分の会社だったのですね。それは沢井氏にとっては当たり前のことで、説明なしで出してもわかりすぎる話でしょうが、読者はそうではありません。ICGなんて、聞いたことないという人が大半でしょう。そういう人向けの記述としては不備だと思います。
 pp.92-93 では、香港の業者を WWW でチェックする方法を述べています。しかし、それは「ICG」を指定して登録情報を見るだけの話です。WWW でICGの検索方法を述べてもしかたがありません。それではICGの URL を示すこととあまり違いません。読者としては、香港にどういう登録業者がいるのかを知りたいのです。その大部分が調べられるようなやり方を書くべきでした。そうすると、読者は必ずしもICGにアクセスするとは限らなくなります。しかし、本当にICGが仲介業者として優れているならば、あちこちの業者を比較した結果、やっぱりICGが選ばれるでしょう。それが香港流の競争社会の常道というものです。今の書き方では、本書がICGのパンフレットだと言われかねません。
 pp.110-111 では、ポートフォリオ作成例の一つとして「外貨預金」を挙げています。乙は驚きました。pp.112-113 では、外貨預金とゴールドを含むポートフォリオを例示しています。どんなポートフォリオを組んでも、それはお好みでどうぞというわけですが、普通は、外貨預金よりは外貨 MMF のほうを選ぶものでしょう。この点は以前に乙のブログでも書きましたが、
2006.9.21 http://otsu.seesaa.net/article/24103836.html
投資の常識だと思います。沢井氏は、「外貨預金」ということで、海外の銀行に預けることを想定しているのかもしれません。しかし、それでも、国内の銀行の外貨預金よりも有利かというと、そんなでもないように思います。
 p.113 では、米ドル建て定期預金をする際に「為替相場を見ながら1年かけて米ドルに変換」と書いてあります。これはどういう意味なのでしょうか。p.123 では、「為替相場を見通せる人はまずいない」と書いています。乙は、両者は矛盾するように思います。
 本書では、大量の図表が示されます。基本的に見開き2ページを一つの単位にして説明していくというスタイルです。そこで、見開きに図表をあしらって、わかりやすくしたということでしょう。しかし、図表の中に書かれている内容は本文と同じようなことが多く、新しい情報が書かれているケースは少ないと思いました。つまり、本書は図表部分が冗長なのです。必要な図表を示すことはいいことですが、本書では無理矢理図表を増やしたように見えます。
 乙は、海外投資の本として読んだのですが、本書は全体としてバランスが悪いと思います。著者のスタンスがはっきりしないという感覚は、そこから来ているのではないでしょうか。pp.140-141 で投資資金1億円の場合のポートフォリオの例を挙げるなど、意欲的な部分もあるのですが、ポートフォリオは万人に当てはまるわけではなく、あくまで例に過ぎません。大切なのは投資方針であり、自分の投資方針をどう考えるかということです。
 本書は、ICGを通じた海外投資に読者を勧誘しているような感じに読めてしかたがありません。だったら、宣伝パンフレットをきちんと作るほうがいいのではないでしょうか。もっとも、そんなことをすると、香港の業者が日本国内で営業している形になり、金融庁あたりからおとがめがあるのでしょうが。だからといって、本でこんなことを書いていいのでしょうか。
 最後になって気になりましたが、題名が「円・ドル・ユーロで1億円をつくる私の方法」というのもどうでしょうか。「円・ドル・ユーロで1億円をつくった私の方法」のほうがいいのではありませんか。「つくる」というと、これからの話(未来形)で、「つくった」ならば経験談(過去形)になります。「これから作るぞ」という話ならば、誰でもできます。乙だって、そう宣言する気になれば、本が1冊書けます。しかし、それでは意味がありません。「実際作った」という話ならば、耳を傾けてもいいかもしれません。いや、それだって、ある個人の経験した偶然の話(宝くじに当たった話!)かもしれないので、誰にでも当てはまる方法とはいえないはずですが。
 乙は、本書を他人に薦める気にはなりませんでした。



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2008年10月13日

中桐啓貴(2008.7)『ほったらかしでも1億円の資産を生む株式・投資信託の始め方』クロスメディア・パブリッシング

 乙が読んだ本です。
 表紙には、上のほうに副題風に「「貯める」より「増やす」ことが、お金持ち投資戦略」と書いてあり、また、下のほうには「なぜ、財形をやめるとお金持ちになれるのか?」と書いてあります。
 ちなみに、乙が一読した限りでは、「なぜ、財形をやめるとお金持ちになれるのか?」に対する回答は(直接には)書かれていなかったように思いました。
 本の目次は
http://www.gaiainc.jp/kojin/media/books_hotta.html
にあります。
http://www.gaiainc.jp/
は中桐氏のホームページです。
 乙は、中桐氏の著書は今まで2冊読んだことがあります。
 『隠れたお金持ちが、みんなやってる投資の法則』
2008.3.10 http://otsu.seesaa.net/article/88979803.html
 『会社勤めでお金持ちになる人の考え方・投資のやり方』
2007.11.5 http://otsu.seesaa.net/article/64583300.html
の2冊です。
 読後感からいうと、以前の2冊と似た感想を持ちました。長期分散投資や積立投資を説いている点でまともな投資法を解説していると思いますが、しかし、全体に新鮮さがなく(手堅いといえば手堅いわけですが)、どうもどこかで読んだような感じがします。初心者向けの本では、こんなことになるのでしょうか。
 乙が「へえっ」と思ったようなところもあります。
 p.093 では「資産が数億円あるお金持ちの半分以上が300万円以下のクルマに乗り、36%が中古車を買い、4万円のスーツを着ているという事実」が紹介されます。乙は意外でした。この話の出典がわかるとありがたかったです。内容を詳しく知りたいと思いました。
 p.145 には、天引き積み立て投資しか上手くいかない理由が5点書いてあります。

@支出は必ず収入ギリギリまで上がるため(パーキンソンの法則)
A人はマーケットが下がると怖くて買えないため
B毎日の値動きを気にしなくていいため
C投資金額と買値がわからなくなるため
D資本主義下では株価は上下しながらも右肩上がりに上昇するため

 乙はなるほどと思いました。ただし、Cについては、毎月定額を投資すれば、定額×月数で投資金額がわかるわけです(したがって、直接の買値はわからなくても、平均的な買値はわかります)から、ちょっと言い過ぎのように思います。

 さて、本書にはいろいろ問題点があるように思います。以下ではそれを書いておきましょう。
 pp.135-136 投資信託に関して「基本的にはこのノーロード商品がお薦めですが、すべての商品がノーロードになると、販売する側にメリットがなくなるので、それはあり得ません。」と書いてあります。これは間違いです。ノーロードになっても、信託報酬の一部が(運用会社だけでなく)販売会社に入るため、投資信託を販売する側にもメリットがあります。したがって、すべての投資信託がノーロードになることは十分にあり得ます。(現実には、なかなかむずかしいでしょうが。)
 p.180 「がんと分散投資」について論じています。さまざまな食べ物をとることでガンを予防しようということと、さまざまな金融商品に分散投資することをたとえ話で結びつけて解釈しています。しかし、これはいかにも無理です。食べ物は消化されて体内に取り込まれるものであるのに対し、金融商品はそれ自体の価値が上下するものです。したがって、同じく「分散」といっても、基本的に原理も必要性も異なります。分散投資を比喩で説明するのはむずかしいように思います。
 p.026 「投資信託は英語で mutual fund と言いますが、この“mutual”というのは“共通の”という意味です。」とあります。mutual を英和辞典で引くと、確かに「共通の」という訳も付いていますが、mutual fund というときの mutual は「共通の」というよりは「お互いに対する、相互の」といった意味ではないでしょうか。「共同の」という意味もあるかもしれません。「共通の」では何が共通なのか、意味がわからないように思います。
 本書はミスプリが目立ちます。以下は網羅的ではありませんが、指摘しておきます。
 p.079 l.5 どうしょうか→どうでしょうか
 p.097 l.-4 これは最もなことです→これはもっともなことです
 p.187 l.1 仕事は分業・専門家されています→仕事は分業・専門化されています
 p.188 l.5 仕事とてして→仕事として
 p.189 l.4 仕事に対しての投入する→仕事に対して投入する

 ミスプリが多いということは、本書の価値を低めます。著者がきちんと校正していないというわけですから、どこか信頼性がなく、魂がこもっていない感じを与えます。

 p.204 には「厳選! 投資に関するあれこれブログ集」があります。乙がよく知っているブログがリストアップされていて「なるほどなあ」と思いました。そうしたら、なんと乙のブログも入っていました。「プロ級の知識を得たい人はこちらのブログ」のところです。「プロ級」だなんて、乙は、そんなとてもとても……。何だか恥ずかしいようなくすぐったさを感じました。
 ということは、この記事も中桐氏が読んでいらっしゃるということでしょうか。


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2008年10月08日

週刊ダイヤモンド 2008.9.13 特集「給料 全比較」

 乙が読んだ雑誌です。
 1ヵ月も前に出たものです。すでに旧聞に属します。たまたま最近気が付いて読んでみました。
 p.33 には、100職種別の推定年収ランキングが掲載されています。
 推定年収が多いのは、プロ野球選手、Jリーガー、国会議員、競艇選手、都道府県議会議員、プロゴルファーなどですが、これらは、特殊な職業であり、平均年齢も生涯賃金欄も「−」です。平均年齢や生涯賃金を算出しようがない、つまり算出しても無意味だというわけです。短期間しか働けないようだし、変動も大きそうです。これらを省くと、(平均年齢と生涯賃金が記入してあるものに限ると)ランキングは次のようになります。上位7職種を示します。
職種平均年齢(歳)推定年収(万円)生涯賃金(万円)
航空機操縦士
35.7
1,308
47,732
大学教授
56.5
1,122
27,432
勤務医
40.0
1,104
46,595
記者
37.8
895
37,842
大学講師
42.5
767
28,435
電車運転士
39.5
613
24,925
航空機客室乗務員
33.8
602
26,832

 ここまでが年収 600 万円以上ということになります。生涯賃金の記載がないものも含めれば、弁護士、歯科医師、警察官、高等学校教員なども(記者の下ですが)入ってきます。
 パイロットや勤務医は、命を預かる仕事で、まあ高給取りでも当然でしょう。
 大学教授は、一見、高給取りに見えますが、実は違います。生涯賃金がかなり低い点に注意してください。また、平均年齢が高い点にも注意してください。大学では、若いうちは専任講師や准教授になっています。教授になるころには平均年齢が高くなってしまうのです。平均年齢が 56.5 歳ということは、たとえば、47歳から66歳くらいまでと考えられるでしょう。生涯賃金でいうと、大学講師やキャビンアテンダントとあまり変わらないということです。
 こう考えてくると、記者がかなり高給取りに見えてきます。確かに記者には優秀な人が多いように思いますが、ちょっともらいすぎかもしれません。
 上の表には入りませんでしたが、獣医師 563 万円などは、特殊な技能を持っている割には給料が低いといえるでしょう。扱うのが動物の命ですから、人間の命を扱う医者より安いのは当然でしょう。カネの出し手(つまり人間)が、家畜やペットに出せる分しか出さないのですから、給料が安くなる傾向があるのでしょう。
 雑誌に出ていた表全体を見て、乙は、実に微妙だと思いました。うまくできているのです。特殊な技能を持っている人は給料が高く、そうでない人は低いのです。給料は社会の縮図であり、実に見事です。

 個人投資家というのは、資金を投資に回せるだけの生活の余裕があるということですから、けっこう専門的な職業に就いている人が多いのかもしれません。
 p.55 には、給料が高い会社50社の一覧が出ています。テレビ局、総合商社が高いんですね。電通や博報堂といった広告代理店も(テレビ局との関連でしょうか)けっこうもらっているようです。
 p.59 から、1部上場 1701 社の従業員の平均年収ランキングが載っています。業種別です。
 もちろん、雑誌ですから、データだけでなく、給料にまつわる各種の記事も載っています。本号は、日本の現状を「給料」という鏡で映し出しているように思いました。
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2008年10月06日

金子哲雄(2008.2)『おみくじの原価は1円!』(宝島社新書)宝島社

 乙が読んだ本です。「時代を超えて生き残るビジネス」という副題が付いています。
 いろいろなものの原価を論じています。原価が安いもの(さらには無料のもの)が儲かるわけで、その典型がおみくじなので、それをタイトルにした本です。
 さまざまな商品の実例が挙げられます。著者は何でも原価を考える流儀のようです。
 集客商品と収益商品の区別なども説明されます。
 また、各種手数料や代行業などがいかに儲かるかが示されます。
 この本を読むと、世の中のビジネスがいかに不平等かがわかります。

 ビジネスチャンスがどこにあるのかを考える上でおもしろい本ですが、実践はそれなりにむずかしいことでしょう。本書を読むと、何となく儲けのネタを考えて起業してみたくなってしまいます。しかし、普通に考えて儲かりそうなところにはすでに先行例があるわけですから、そのままうまく行くとは限りません。
 新しいビジネスを立ち上げるとなるとやっぱりそれなりに大変です。

 いろいろと考えさせる本です。


ラベル:金子哲雄 原価
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2008年10月01日

竹川美奈子(2008.7)『「しくみ」マネー術』PHPエディターズ・グループ

 乙が読んだ本です。副題として「手間なしでお金が勝手に貯まる」が主題の前に、「口座は【生活・貯蓄・プール・投資】の4つに分けなさい!」が後に、それぞれ付いています。
 このタイトルで、中身がわかってしまいます。つまり、手間をかけないでお金が勝手に貯まるしくみを作ってしまおうということですし、そのためには口座を四つに区分しようということです。
 この本は、投資を始めたこともない若い人(想定読者は20代?)に、投資のしかたをやさしく伝授する本です。
 コアとサテライトをわけ、コア部分では日本株、外国株、外国債券に投資する投資信託を毎月少しずつ買っていこうという内容ですから、書いてあることは正しい(望ましい)と思いますし、この方法でいいのですが、しかし、なぜこの方法でいいかということはあまり説明されていません。となると、初めてこの本を読む人は、本当にこれでいいのだろうかと疑心暗鬼に思うのではないでしょうか。その先は別の本で勉強しなければなりません。
 乙は、ある程度の年齢になってから投資を始めたので、この本に書いてあるようなわけにはいきませんでした。30年前にこの本に出会っていたら、違った経験を積み重ねてきたことでしょう。
 p.52 で、口座を四つに分けようという話が出てきます。考え方は理解できるのですが、乙自身は今までこういう区別をしてきませんでした。かなりいい加減に一つの口座で生活してきました。それが悪かったとは思いません。要は個人の生活態度です。乙は、もともと貧乏人ですから、ぜいたくをしないような考え方をしてきました。お金がかかるような趣味もありませんでした。若いころは投資もしてこなかったわけです。その経験からすると、無理に口座を四つに分ける必要はなく、本書に書いてあることも、考え方として受け止めておく程度でいいように思いました。
 p.94 には、日本株式、外国株式、日本債券、外国債券の4資産の代表的な商品が列挙されていて、「コアに向くかどうか」という観点から○、△、×が付いています。外国株式のところの海外 ETF は△です。日本株式のところの ETF は○です。なぜ両者は違う判定になっているのでしょうか。外国債券のところの海外 ETF も△です。不思議な気がしました。先を読んでいくと、p.119 に、その説明の一部が出てきます。海外 ETF では、最低投資金額が大きいということと、毎月積立に対応していないことです。若い人(収入が多くない人)の場合は、最低投資金額の壁はけっこう高いかもしれません。毎月積立ができないこともその通りで、本書のコンセプトに合わないといえば合いません。乙は、海外 ETF を Interactive Brokers で購入していますが、積立ができない分、手間がかかりますが、自分の金を投資するのですから、それくらいの手間は当然と思っています。また、日本で購入するよりは手数料が安いですから、最低投資金額もそんなに高いとは思いません。個人の置かれた状況によって、適切な金融商品は違ってくるものだと思います。
 本書は、分量的にそんなに長くなく、さらっと読めてしまいます。新書並みと言えばいいでしょうか。
 乙には、記述が簡単すぎて不満が残る内容でしたが、20代の投資初心者にはおすすめできる本かもしれません。


ラベル:竹川美奈子 ETF
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2008年09月28日

武田邦彦(2008.5)『偽善エコロジー』(幻冬舎新書)幻冬舎

 乙が読んだ本です。「「環境生活」が地球を破壊する」という副題が付いています。
 普段我々が行っているエコロジーに配慮した生活の多くが、実はムダで無意味なものだと主張する本です。
 著者の勝手な言い分ではありません。なぜそう考えられるのか、データ(根拠)を示して話を進めていますから、説得力があります。
 20種類くらいの具体的な話が書いてあります。その中のいくつかを書いておきましょう。
・レジ袋を使わない→ただのエゴ
・割り箸を使わずマイ箸を使う→ただのエゴ
・ダイオキシンは有害だ→危なくない
・プラスチックをリサイクル→危ない
・古紙のリサイクル→よくない
・ペットボトルのリサイクル→よくない
・空きビンのリサイクル→よくない
・ゴミの分別→意味なし

 こう並べてみると、我々の常識が次々と覆されます。
 その他にも、「温暖化は防げない」という話があり、乙は興味を持ちました。当然、冷房温度を28℃にしようなどというのは意味がないことになります。
 家電リサイクル法は、こんなにもひどい法律だったのですね。知りませんでした。
 問題は、ではなぜリサイクルが叫ばれるのかという点です。これについては、著者の武田氏は、リサイクルは一部の人の儲けになるからと喝破しています。日本の社会のしくみ(の一部)が化けの皮をはがされたような気分になりました。
 最後のほうに、本当に「環境にいい生活」とは何かが示されますが、そこまでにさんざんリサイクルやエコ生活の無意味さを説いてきた後なので、著者のシンプルな結論に合点がいきました。
 これからの日本のあり方などを考えさせてくれる良書だと思いました。


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2008年09月26日

門倉貴史(2006.7)『「夜のオンナ」はいくら稼ぐか?』角川書店

 乙が読んだ本です。
 実は、電車の中の時間つぶしのために本屋さんで買った本だったのですが、読んでみたらおもしろかったです。乙にとっては、まさに衝撃の書でした。
 本書は、綿密な調査に基づいて書かれています。さまざまなものに関して具体的な金額が出てきますが、それらはちゃんと裏付けがあります。
 乙は、普通のサラリーマンですから、「夜の遊び」とは無縁で生活してきました。ですから、その種の金額などはまったく知らなかったのですが、本書でいろいろと知ることができ、たいへん興味深かったです。
 p.24 では、銀座のホステスの年収が、「ヘルプ」の場合で 720〜1200 万円と書いてあります。売れっ子のホステスだと 3000 万円だそうです。客側にしてみれば、そういう人に人件費を払って遊ぶわけですから、客の支払いも当然多くなることでしょう。普通のサラリーマンには手が出せないと思います。
 p.26 からは「愛人契約」の話も出てきます。毎月のお手当が数十万〜数百万円だそうですから、これまた相当な金額です。愛人がいるという人は、相当にゆとりがなければいけません。
 p.28 では、高級クラブで働くホステスのお金の使い道が出てきます。何と、「投資」だそうです。客との会話の影響だそうですが、さもありなんです。この分野で有名な浅川夏樹氏も、ホステスでありながら投資家ですが、実は、そういう人が多いのですね。
 浅川夏樹(2007.12)『夜の銀座の資本論』
2008.1.7 http://otsu.seesaa.net/article/76917529.html
などと重ね合わせて読むと興味深いことと思います。
 p.40 では、ホストクラブの話が出てきます。利用者の多くは、ホステスと風俗嬢だということですから、これまた驚きでした。p.41 にアンケート調査の結果が書いてありますが、たぶん正しいと思われます。乙の知らないディープな世界が広がっているようです。
 p.53 (pp.58-64) 「昼クラ」にも驚きました。お昼のクラシックコンサートのことですが、今やたくさんの主婦がこういうところにお金を使っているんですね。
 p.119 では、援助交際の相場まで掲載されています。最も高いのは小学生で10万円以上、中学生で5〜10万円、高校生で5〜6万円、人妻で2〜3万円だそうです。よく調べたものです。
 上に例示したものは、ごく一部であって、本書を読んでいくと、この種の話が山ほど出てきます。「夜のオンナ」だけでなく、産業としての性風俗店やラブホテルなどのお金の動きも解説されています。
 社会問題や経済問題、国際問題の面もきちんと書き込んであり、門倉氏の力量は大したものです。
 「夜のオンナ」に詳しくない人も、逆にたくさんの経験がある人も、本書を読めば目からウロコでしょう。お金を通してこの世界を描ききった門倉氏には拍手を送りたいと思います。



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2008年09月23日

滝沢修(2005.12)『セミリタイア成功術』結書房

 乙が読んだ本です。「海外で半分遊んで半分働く豊かな暮らし」という副題が付いています。
 著者の滝沢氏は、カナダに長く(9年ほど)住んでいらっしゃる方です。
 乙は老後に海外での生活を考えているのですが(実現するかどうかわかりませんが)、そのための本としてもおもしろいかと思って読んでみました。
 読んだ後では、乙の期待とちょっと(というかだいぶ)ずれているように思いました。この本は、基本的に海外起業の本なのです。
 ただ、多くの人(や本)と違うのは、がむしゃらに働く本ではなく、働きながらも、ゴルフやスキーを楽しもうとしているところです。セミリタイアというのはそういう生き方のことです。
 著者の滝沢氏は、カナダのワインを日本に輸出することや、自分の住んでいる町に日本人に来てもらおうとすることなど、おもしろい発想で仕事に取り組んでいることもわかります。
 p.2 で書かれているように、滝沢氏は初めからサラリーマンをやる気はなく、「父の事業」を手伝うところからスタートしています。つまり、もともと起業家に向いていた人なのです。ですから、本書に書かれていることをそのまま他の人がやっても、起業に成功するとは限りません。むしろ、著者の真意は、自分はこれこれでうまくやったので、みなさんは(人と同じことをするのではなく)それぞれ別のアイディアで取り組んでもらいたいということでしょう。
 本書中には、乙が違和感を感じる記述もありました。
 pp.10- では、占い師の言葉を信じているという話が出てきます。乙は、占い師はまったく信じていませんので、自分の人生の選択肢に「占い師」は出てきません。単なる「きっかけ」に過ぎないのかもしれませんが、乙だったらこういう本には一切「占い」のことは記述しないでしょう。
 p.120 では、自分のホームページを充実させて、「営業マン」とみなしている話が出てきます。それはいいのですが、「肝心な部分は絶対にホームページに載せません。なぜならば、それを載せてしまえば私が持つ情報に価値がなくなるからです。」としています。企業秘密ということで、こうお書きなのかもしれませんが、乙だったら、こういう考え方はしないと思います。滝沢氏の想定している範囲よりもさらに広い範囲の情報をホームページに載せてしまうでしょう。そうすることによって、さらに優れた情報が集まってくるからです。インターネットのすごいところはそういうところだと思います。何もかもさらけだすことがいいことだとは思いませんが。
 本書には、海外生活を送るにあたって、ためになる助言もいろいろ書いてあります。
 pp.195- では、(カナダでは)不動産投資がいいという話です。そうかもしれません。カナダは、日本と状況が違いますから乙には信じられませんが、カナダ生活が長い滝沢氏は、自分の実感としてそう思っていらっしゃることでしょう。現地で住むことになったら、不動産投資を考えてもいいかもしれません。
 ちなみに、乙は、カナダのランドバンキングに投資しています。
2006.8.7 http://otsu.seesaa.net/article/22025403.html
こんなことも意外といいのかななどと思いました。
 p.244 には、海外生活では、物価安だけを追い求めるなということが書いてあります。p.256 では高級エリアに住むことをすすめています。なぜそうなのかについては、本書をお読みください。こんな話は、さまざまな経験をした人しかいえないことでしょう。
 ともあれ、カナダは、自然に恵まれているだけでなく、税金を初めとする社会の仕組みが好ましい方向にあるように感じます。本書を読んだ後では、乙は、あこがれに似た気持ちを持ちました。カナダでは英語が通じるのもいいですねえ。アジアに住むとかして新しい外国語を覚えるとなると(特に年をとってからは)大変ですからね。
 滝沢氏のホームページは
http://www.ogtcanada.com/
にあります。本書を読んだ後にこちらを見てみるとおもしろいです。


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2008年09月21日

ナシーム・ニコラス・タレブ(2008.2)『まぐれ』ダイヤモンド社

 乙が読んだ本です。「投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか」という副題が付いています。
 この本を読もうと思ったのは、乙のブログ
2008.7.14 http://otsu.seesaa.net/article/102846453.html
のコメント欄で fenk さんからすすめられた(?)からです。
 23ページにわたる参考文献や12ページもの索引まで付いていて、しっかりした本です。分量は、全部で 385 ページもあり、読むのもちょっと大変です。
 著者のタレブ氏は、ヘッジファンドのトレーダーだった人で、今は大学教授という経歴の人です。回りのトレーダーなどをたくさん見てきた経験からこの本を書いたとのことです。この本の副題が内容を要約していると思います。トレーディングの世界では、理由もなく、たまたま(「まぐれ」で)儲かるような話がたくさんあるのですが、それを「自分の解析・分析・見通しが正しかった」と誤解する例が多いとのことです。
 話の趣旨はわかるのですが、乙は、一読した後で、こんなにもページ数を使って議論するべきことか、かなり疑問に思いました。
 参考文献が大量に挙げられており、タレブ氏が大変な読書家であることがうかがえます。また、注も充実しており、26ページにわたります。そして、これこれの問題については、誰それの本を読むようにと書いてあります。このような態度から、この本に出てくるさまざまな話は、単なる「お話」ではなく、根拠を持って語られているのだろうと思います。
 しかし、そのようにきちんとしていることと、本がおもしろいかどうかは別問題です。乙は、注と参考文献に気が付かずに読み始めたのですが、いろいろな物事が(固有名詞を含めて)登場してきて、この本を読むには読み手側に大変な知識が要求されるなあと感じていました。もしかしたら、それらは(アメリカ人の)「常識」なのかもしれませんが、そのような常識を持っている人は少ないのではなかろうかなどと感じながら本を読み進めていました。最後の最後になって、注と参考文献に気が付いたので、この印象は乙の勘違いということがわかりました。それにしても、話題が広範囲に及ぶので、読み進めるのはそれなりに大変だろうと思います。
 乙がちゃんと知らずにいて、この本で学んだこと(つまりはおもしろかったこと)もあります。
 pp.156-160 あたりで、カール・ポパーの科学論が説明されています。乙は、ポパーの名前は以前から知っていましたが、その著作はきちんと読んでいませんでしたので、数ページでそのエッセンスを知ることができ、役立ちました。
 pp.278-279 スキナーのハトの実験が説明されています。ランダムにエサを与えるような装置にハトを入れておくと、えさが出てくるタイミングでたまたまハトが行っていた動作があった場合、ハトがその動作とエサとを結びつけて、その動作を繰り返すというのです。乙はこの実験を知りませんでした。ハトですらそういう行動をするということは、動物の頭の中の基本的なところにそのような認識能力が埋め込まれていることになります。人間でも、「まぐれ」を「まぐれ」と認識することはきわめてむずかしいでしょう。
 乙は、投資と関連する本として読みましたが、本書は、そのような投資本の領域を越えています。誰にでもお勧めできる本ではありませんが、統計学などの知識のある人にはおもしろいと思ってもらえるかもしれません。


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2008年09月19日

高城剛(2008.6)『70円で飛行機に乗る方法』(宝島社新書)宝島社

 乙が読んだ本です。「マイルを使わずとも超格安で旅行はできる」という副題が付いています。
 乙は、もともと、海外の格安航空会社(LCC)に興味がありました。
2008.2.18 http://otsu.seesaa.net/article/84564177.html
本屋さんで見かけて、その話が書いてあると思って、買ってみました。しかし、それは乙の思いこみでした。
 第1章は「いま、空の旅はここまで安くなった!」で 54 ページほどありますが、ここがLCCの話です。p.19 には、シンガポールからプーケット行きが約70円という格安チケットの話が出てきます。この点では、タイトルに偽りなしです。
 第2章は「航空業界が取り組むエコと最先端技術」です。最近の飛行機がどんなものかを述べます。けっこう豪華になっているんですね。
 第3章は「問題だらけ!? 日本の航空事情」です。LCCの話もちょっと出てきますが、主として空港をめぐる日本の政策のおかしさを論じます。
 第4章は「空を知れば世界がもっと近くなる!」で、個人的に「開国」していこうと主張します。ある種の海外旅行のススメのようなものです。
 というようなわけで、全体として航空業界の問題を探るような本でした。
 本文187ページですから、第1章のLCCの話が3割以下しかないわけで、最近流行の「タイトルで人目を引いて買わせよう」という本のように思えます。
 乙の気持ちとしては、タイトルは本1冊の内容の要約であってほしいと思うのですが、このころは(特に新書で)そうでもないタイトルのつけ方が多くなってきたようです。残念な傾向のように思います。
 本というものは、売れてなんぼのものですから、売れるようなタイトルを付ける出版社側の論理はよくわかるのですが。


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2008年09月10日

上条詩郎(2008.6)『投資リッチの告白』光文社

 乙が読んだ本です。
 「投資リッチ」とは、いったいいくらくらいの資産を保有している人のことでしょうか。
 p.26 や p.68 に明記してあります。100億円です。このくらいのお金を投資する場合に、著者の上条氏がどんなことを考えているのかを語った本ということになります。
 p.151 では、デフレ時とインフレ時で投資方針を変えるとしています。しかし、乙は、この方針には若干疑問を感じます。世界中に投資しているとき、インフレやデフレは非常に分かりにくいのです。日本国内だけなら、比較的簡単に(統計資料で)わかります。しかし、著者は基本的に全世界投資を考えています。となると、世界各国の統計資料をどう調べるのか、またそれぞれに応じてどう戦略を立てるのか、けっこうむずかしいと思います。
 p.153 では、資産を「安全、成長、挑戦」に3分類するという話が出てきます。そこでいうところの「安全」は、国内の預貯金と国債だそうです。これは、p.151 で断っているとおり、日本に在住の場合とのことですが、それにしても居住地バイアスではないでしょうか。グローバル経済を中心に考えるならば(そして著者はそう考えているようですが)安全資産として国内の預貯金と国債を考えるのは変です。もっとも、p.180 以降では、アメリカ株の ETF および EAFE を勧めているので、それはそれで納得します。
 p.157 では「数字はウソをつきません!」と書いています。それは正しいのですが、乙が本書の記述を一通り読んだ後の印象では、数字があまり出てきません。表もグラフも、わずかしかないのです。もっと数字で語ってほしかったところです。
 p.164 および pp.196〜で、ベトナム株(さらにはインドシナ半島全般)に投資することを勧めています。今後の成長が期待できるというわけです。乙も、以前はそのような考え方をしていましたが、シーゲルの「成長の罠」
2008.4.7 http://otsu.seesaa.net/article/92505039.html
の考え方を知ってからは、かなり懐疑的になってきました。
 p.173 では、日本の低金利をなげき、海外の銀行に資金を預けるべきだとしています。しかし、これは為替レートを無視した話で、高金利の海外の銀行に預けたからといって資金が増えるとは限りません。
 本書には、参考文献が一つも挙がっていません。いろいろな本に当たって検討した結果を述べているのではなく、著者の主張を書いているのです。このような書き方に意義がないとは思いませんが、乙は、説得力に欠けるように思いました。
 投資にはさまざまな考え方があります。著者は著者なりの考え方があるでしょう。しかし、その考え方が他人にも当てはまるのかといえば、そんなことはありません。「100億円儲けた私の投資手法」の類の本と同じかもしれません。
 乙は、この本を読み終わったあと、他人に勧める気にはなりませんでした。


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2008年09月08日

出井康博(2008.6)『年金夫婦の海外移住』小学館

 乙が読んだ本です。
 老後の生活の1つとして海外移住を考えていますので、そういうことに関する知識を増やそうと思って読んでみました。
 マレーシア、タイ、フィリピンでたくさんの日本人老人の長期滞在者に取材して書かれた本です。いろいろなライフスタイルがあります。現地化して安上がりの生活を楽しむのもいいなあと思いました。日本の生活をそのまま持ち込むのでは、コストもかかり、せっかくの物価が安い海外に住んでもそのメリットは生かせません。
 ところで、一方では、本書中に日本人男性が現地の女性にだまされる話もけっこう書いてあります。乙はむしろそちらの話のほうが面白く感じました。日本人の普通の男性でも、現地の人の収入水準から見るとけっこうなお金持ちに見えるようです。
 p.98 には、次のように書いてあります。「「フランス人と日本人に嫁いだ娘がいて、もう一人も日本人と結ばれるかもしれない。そりゃあ母親は、近所では鼻高々ですよ」タイの庶民にとって先進国の男性との国際結婚は、生活水準を飛躍的に向上させるために、最も現実的かつ手っ取り早い手段である。たとえ娘が選んだ相手が父親のような年齢であっても、家族が得る恩恵を考え、祝福する親は少なくないのだろう。」
 う〜ん、考えてしまいます。むしろ、年取った男性と結婚することで、男性が先に死に、遺産を妻(と子供)が受け取る方が、現地の人にとってありがたいのかもしれません。
 日本人男性とタイ人女性で話があまりできない夫婦のことも描かれています。日本人男性がタイ語ができず、タイ人女性が日本語ができない夫婦なのだそうです。これでは話が通じません。「幸せな」生活なのでしょうか。
 本書は、題名をやや変えた方がいいような気がしました。「年金男性の海外移住」はどうでしょうか。
 この本は
http://fund.jugem.jp/?eid=711
でも取り上げられていました。



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2008年09月06日

安田誠(2008.7)『外こもりのススメ―海外のほほん生活』幻冬舎

 乙が読んだ本です。
 「外こもり」というのは、「目的もなく海外に一都市にこもって、ブラブラしていること(人)」(p.12)だそうです。今や、そういう人がかなりたくさんいるようです。この本は、そういう人々の日常生活を描いた本です。
 本書はタイ・バンコクでの外こもりを中心に記述しています。著者自身もその道10年以上という外こもりです。物価の安い国で、ブラブラするということはどういうことか、要領よくまとめて書いてあります。バンコクで外こもりをするならこの1冊で間に合いそうです。
 乙は、老後に、海外で生活するかもしれないと思っています。その際、仕事をするつもりはないので、どんな生活になるのか、今ひとつピンときません。そこで、その参考になればと思ってこの本を読んでみました。
 しかし、本書はどちらかというと読者として若い人を対象にしている場合が多く、娯楽などの面でもそういう方面の話が中心です。乙とは価値観がだいぶずれているような感じがしました。
 乙は、タイ語を学ぶのもいいかなあなどと思っています。そういえば、ずっと前に(学生時代に)タイ語に関連したものを学んだことがありましたが、今やその内容はすっかり忘れています。老後に新しい外国語を覚えるのは厳しいのでしょうか、それともおもしろいものなのでしょうか。
 ところで、外こもりでは生活費をどう稼ぐかという問題がありますが、それは「海外で稼ぐには」(pp.44-59)に記載されています。投資、アフィリエイト、バイヤー(個人貿易)、軽くアルバイト、日本への出稼ぎ、いっそ現地採用などと、さまざまなケースが書いてあります。残念ながら、どれもあまり儲かるようなものではありません。まあ、稼ぐというよりは、お金を使わないようにして生活するスタイルが外こもりの基本なんでしょうね。
 それらの中でも、「投資」の部分が一番興味深かったのですが、残念ながら、乙の方針とは合いませんでした。本書中のネット証券やFX業者を見ても、全部日本国内の業者名しか書いてありません。p.46 では、「株や為替の取引業者は、日本に居住していない人の取引を認めないことが多いので、投資をする人は、長期に外こもる場合でも、日本に住民票を残した方が良いかもしれません。」と述べています。これでは、長期滞在といっても日本から完全に離れているわけではないということになります。いつかは日本に帰ってくることを前提にしているということですし、海外にいながら、住民票が日本にあるということは、やはり日本に片足を突っ込んでいる状態ということになります。
 乙は、せっかくタイにいるなら、タイで(バーツで)投資するとおもしろいのではないかと思うのですが、どうでしょうか。タイの銀行や証券会社の事情は何も書いてありません。タイの金融機関では不安だという場合は、シンガポールや香港がいいと思いますが、著者は、こういう方面が視野に入っていないようです。まあ、外こもりは資産が少ない人が行うもののようですから、もともと投資の世界とは別なのかもしれません。
 p.46 では、相場で生活していく場合、100万円を元手に月5万円儲けることを目標にすることをすすめています。月 5% の利回りということは、年間利回りは 1.05の12乗ですから、79.6%になります。こんな利回りを継続的に出し続けるのは不可能です。そもそも元手が100万円ということでは、投資はしない方がいいでしょう。
 資金が1000万円あれば、月5万の利益は可能かと思います。その場合の年間利回りは、1.005 の12乗で、6.2% ですから、こんなものでしょう。でも、1000 万円あったら、生活のしかたが「外こもり」とは違ってくるような気がします。
 ちなみに、乙の老後は(海外に行くとしても国内で生活するにしても)少なくとも1億円〜2億円くらいを投資しながら生活したいと思っています。資産がこれくらいあれば、債券を中心に投資しても、年間数百万円くらいの運用益は期待できそうです。こういう生活は「外こもり」とはだいぶ違うように思いました。
 本書は、ちょっと乙の期待とずれてしまいましたが、タイでの生活がどんなものかわかったので、それなりに興味深く読みました。

 ゆうきさんのブログ
http://fund.jugem.jp/?eid=722
でも本書が取り上げられています。
 もっとも、著者が行方不明という話もあり
http://fund.jugem.jp/?eid=778
そこのコメント欄によれば、死亡とか。
 老後の一番の関心事は「治安」かもしれません。


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2008年08月28日

前川貢(2008.5)『いま債券投資が面白い!』近代セールス社

 乙が読んだ本です。「資産運用の世界を変える債券投資のススメ」という副題が付いています。
 債券投資、中でも、外国債券投資を薦める本です。かなり珍しい本のように思います。債券は、預貯金と株式の中間に位置するような商品ですが、金融機関が個人投資家にあまりすすめるようなこともないので、何となく縁遠い存在になってるのではないでしょうか。そこに光を当てた本書は、それだけでも存在価値があるというものです。
 いくつか、気になる記述もありました。
 p.27 「為替の動きは一般的に、一定の範囲内で上下に変動を繰り返すもので、例えば一方的に円安になり続け1ドル=1000円になったり、逆に円高になり続け1ドル=0円になったりしません。」
 言っていることは正しいのですが、「1ドル=0円」は、理論的にありえない話なので、こう述べることは不適当なように思います。為替レートは、二つの通貨の交換の比率なので、どんなに円高になろうと、0.0000001 円のようになったとしても、理論的にゼロになることはないのです。一方、1ドル=1000 円は理論的にあり得る話で、実際はそうなる確率がきわめて低いというだけです。
 pp.28-29 前川氏は、円高になったとして、1ドル80円だろうと述べています。だからそれを前提に外貨投資を考えているというわけです。さて、この1ドル80円をどう考えたらいいでしょうか。乙は、15年後の為替レートとして、1ドルは60円から 240 円程度を考えたらどうかと述べたことがあります。
2006.6.19 http://otsu.seesaa.net/article/19489254.html
つまり、前川氏の言う1ドル80円説は、甘いと思います。まあ、これは個人的な感覚ですから、前川氏が不適当とも思いませんが、今までの為替変動を考えれば、1ドルが80円を超える円高になるのは普通にありうることのように思います。
 pp.143-144 個人が投資できる債券の例が国内と外国とに分けてリストアップされています。2007年12月10日現在と明記されています。たとえば、その最初の日本の国債のところを見ると、償還日 2012.8.17 とあり、残存期間 0.67 年とあります。両者は、ずれているようです。2011.12.31 を基準にしているならば、残存期間は 0.67 年です。2ページにわたる数十個の債券のすべてがずれているので、単なるミスプリではないようです。乙は理解に苦しみました。
 本書の構成は、四つの章と「巻末資料データ」からなりますが、巻末資料データは、80ページほどを占めます。全体が223ページですから、4割にも及ぶ長いものです。しかし、ここの記述は、あまりいただけませんでした。四つの章で述べられていることと重複する内容がけっこうあります。乙の感覚では、ここの記述は必ずしも「資料」ではないと思います。構成を変えて、適宜記述を適当な「章」に移してしまった方がずっとすっきりすると思います。本書を読んでいると、「巻末資料データ」になってしまって、「おや、もう終わりか」と感じますが、実はそこから延々と記述が続くのです。
 一通り読んだ後では、1冊の分量で債券投資だけを扱うのは、ちと企画倒れかなと感じました。詳しく説明されているので、それはそれで一つのあり方ですが、乙の感覚ではかなり冗長なように読めます。
 なお、この本については水瀬ケンイチ氏も取り上げています。
http://randomwalker.blog19.fc2.com/blog-entry-798.html


ラベル:前川貢 債券投資
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2008年08月19日

高橋洋一(2008.5)『霞が関埋蔵金男が明かす「お国の経済」』(文春新書)文藝春秋

 乙が読んだ本です。
 今や、高橋氏は「霞が関埋蔵金男」と呼ばれているのですね(笑)。
 内容は、文庫編集部(?)のインタビューに応じる形で高橋氏が語ったものを文字化し、手を入れたものになっています。各所に(笑)があり、語り口がそのまま活かされています。
 第1章「「埋蔵金」とは何か」
 第2章「国のお金はどう動くのか――財政編」
 第3章「国のお金はどう動くのか――金融編」
 第4章「公務員制度改革の闘い」
 第5章「国家を信じるな」
という構成になっており、特に第3章が長めです。
 第1章は埋蔵金があちこちにあることを述べています。こういうことがあると、日本政府の財政破綻は(あるとしても)まだまだ先の話ではないかと思えてきます。
 第2章では、ガソリン税や道路特定財源などの話です。ガソリン税はピグー税として、高く設定して、ガソリンをあまり使わないようにする(そして一般財源化する)のが当然という話はわかりやすかったですね。
 p.58 には、「金利が高くなると為替は円高になる」という話が出てきます。乙は、これは話が逆なんじゃないかと思いました。
2008.6.1 http://otsu.seesaa.net/article/98767533.html
 この点については、さらに調べてからブログに書きたいと思います。
 第3章では、日銀総裁人事の問題も絡めて、日銀のあり方を論じています。普段あまり意識していないところですが、乙は日銀の「独立性」の意味も理解しましたし、高橋氏の解説でこの間の人事上のゴタゴタがすっきりとわかりました。
 第4章では、今の日本を「官僚内閣制」と呼び、真の「議院内閣制」にすることを主張しています。それくらいに官僚の力が強いということで、逆にいえば政治家のダメさ加減が描かれます。「国会議員と公務員の接触禁止」なんて、それだけを見ると、何のことか、理解できませんが、高橋氏の説明を聞くとよくわかります。官僚が国会議員に「ご説明」して、政治的決定がなされることがいろいろあるのですね。
 第5章では地方分権を論じています。
 全体として大変わかりやすいと思いました。分厚い経済書もいいですが、こういう新書で手軽に読めて、今の動きの意味が理解できるのはとてもありがたいことのように思いました。
 おすすめできる本です。


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ラベル:高橋洋一 埋蔵金
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2008年08月16日

大前研一(2007.11)『大前流 心理経済学 貯めるな使え!』講談社

 乙が読んだ本です。実におもしろい本です。端的に言って、今の日本がなぜ閉塞状況に陥っているのか、それを解決するにはどうしたらいいかを説いた本です。図表も豊富で、わかりやすく、説得力があります。
 書かれていることが広範囲に及ぶので、ブログで要約することなんてとても無理です。本書自体を読むしかありません。読んだ後は、頭がすっきりします。日本のあり方、政治家が考えていること、官僚が考えていること、などなどがすうっと説明されてしまい、「そうだそうだ」と言っている自分に気が付きます。
 大前氏は実に合理的な考え方をする人なんだと改めて感心します。こんなにも明解に日本が進むべき道を示した本があるでしょうか。(大前氏の過去の著作は同一線上にあるものと思います。)今の政治家たちに本書を読ませてみたいと思います。
 基本は、1500兆円の個人金融資産を投資に回すことだと言います。それだけで日本は大きく変わるのです。
 ただし、乙が疑問に思ったことが一つあります。pp.252- です。「1500兆円の個人資産で世界最強のファンドを作れ」ということで、10兆円単位のシグニチャー・ファンド(運用者の個人名入りのファンド)をたくさん作り、世界で最も優秀なファンドマネージャーを雇い、互いに競わせ、1年間の運用実績を確認して次の1年間のファンドを組み替えるようにすることで、年率 10% 以上の運用利回りが実現できるとしています。
 本当にこれが可能でしょうか。シンガポールで年金資金が 9.9% で運用されているからといって日本でも可能でしょうか。
 乙は二つの点で疑問を感じています。

(1)優秀なファンドマネージャーがいつも好成績を上げるわけではない