2007年04月08日

保田隆明(2007.3)『なぜ株式投資はもうからないのか』ソフトバンク新書

 乙が読んだ本です。
 ちょっとショッキングなタイトルですが、これは『なぜ(個人投資家が行う)株式投資はもうからないのか』という意味ですから、誤解を招きやすいタイトルだと思いました。
 IPO の問題点、機関投資家や証券会社が有利であること(それと対比すれば個人投資家は不利であること)、日本の新興市場の問題点、などをわかりやすく述べています。株式市場は、金のある人が有利になるようにできており、その意味で不公平なんですね。著者は、外資系の証券会社などを経てきているとのことで、内部事情にも通じています。
 いろいろ考察した後で、結論をいえば、p.215 で述べているようにインデックス投資に行き着くとのことです。結論は平凡ですが、そこに行き着くまでのさまざまな話がおもしろかったです。一読しておく価値はあると思います。
 乙が一番おもしろいと思ったところは p.126 で、投資家は、証券会社(の社員)を食わしているという発想です。個人投資家が株の売買をすればするほど、証券会社に手数料を貢ぐことになるわけです。インデックス投資ならば、一度買って、ずっと保有するだけですから、証券会社に貢ぎません。その分だけ、成果が投資家に返ってくると考えられます。これは普遍的な真実と言えるでしょう。


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2007年04月06日

ジェレミー・シーゲル(2006.7)『株式投資 長期投資で成功するための完全ガイド』日経BP社

 乙が読んだ本です。
 索引まで含めると 420 ページもあり、分厚くて重いです。株式投資に関する研究書といった感じです。
 図表がかなりあって、わかりやすそうですが、乙は、2ヶ月ほどかけて少しずつ読んでいったため、全体を把握することがむずかしくなってしまいました。
 全体として、まじめな本であるという印象は受けましたが、そのうち、再度全体を読み直そうと思います。それくらい、内容が濃いと思いました。
 「推薦の言葉」(p.iii)には、長期運用について、20年以上ということであり、10年ではダメだと書いてあります。「余裕資金」というのは、20年以上使わないで投資できる資金という意味なんですね。乙の15年の投資期間というのは、ちょっと短いように思えてきました。ま、15年経った段階で投資を完全に止めるという意味ではないので、問題はないと思いますが。
 第1章から第2章では 200 年に渡る株式や債券のデータを用いて議論しています。態度としてはいいのでしょうが、そんなに昔の話が今に当てはまるのでしょうか。心配です。
 p.41 では、「30年物の米国債の実質実質利回りよりも、普通株を組み込んで分散化させたポートフォリオを30年間保有する場合の購買力のほうが、はるかに安定している」と書いてあります。30年もの長期投資では、株だけでいいということなのでしょう。しかし、それより短期の場合、資産の安定化のためには、ある程度は債券を組み込んでおいたほうがいいように思うのですが。
 p.156 では、1970年代のニフティ・フィフティ銘柄について述べています。ニフティ・フィフティというのは、投資家が夢中になった成長株だったというわけです。これは1970年代に暴落があり、その直前には割高株だった(過大評価されていた)のだと思われたわけですが、その後の推移を見ると、必ずしも割高だったとは言えないということです。不思議な話です。ということは、ある意味で、どんな株でも、じっと持っていれば何とかなるという意味に受け取れます。
 p.174 英米日独の30年間(1970-2001)の米ドル投資の利回りは(年利で 11-12% で)ほぼ一致するというグラフが掲載されています。これまた不思議な話です。この途中には、日本の大きな経済成長や、ブラックマンデーなどの大事件があったわけですが、30年というスパンで見ると、そういうのは特に例外とも思えません。
 pp.212- の第12章は「株式と景気循環」を論じていますが、結論からいうと、景気循環はあてられない(予測できない)ということです。つまり、景気がいいときは株価が上がるから、そのときだけ株に投資しようという態度はよくないということになります。
 pp.256- の第15章は ETF の話です。p.256 では、(2001 年の段階ですが)QQQ が一番人気だったとのことです。
 pp.303- の第17章は「テクニカル分析とトレンド投資」の話です。移動平均を基準にして投資すると、そうでないときよりもちょっとだけ成績がよくなるという結論です。おもしろいと思いました。テクニカル分析が有効な場合があるんですね。
 pp.320- の第18章は「季節のアノマリー」ということで、1月効果など、各種の季節効果について述べています。ごく一部ですが、単なるランダムではない現象があるのですね。
 p.373 優れたファンドマネジャーを見つけることはむずかしいという話です。下手なファンドマネジャーを見抜くことも困難だということです。
 p.387 「すべての長期的な金融資産ポートフォリオにおいて、圧倒的に大きな比率を株式に割り当てるべきである。」という著者の主張が述べられます。理屈からすればそれが正しいということはわかりますが、いざ、自分が当事者になったときに(自分の資産運用時に)そう決断できる人はなかなかいないだろうと思いますが。
 p.392 「小型割安株の利回りは、長期にわたって小型成長株の利回りを大幅に上回ってきた。」とのことです。ということは、分散投資の中でも、小型割安株のインデックス・ファンドに投資することを考慮したほうがいいということでしょう。


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2007年04月04日

渡辺仁(2005.11)『起業バカ2 やってみたら地獄だった』光文社

 乙が読んだ本です。
 前著『起業バカ』
2007.3.29 http://otsu.seesaa.net/article/37135377.html
に続くもので、似たような調子で書かれています。
 一番おもしろかったのは、p.207 です。一部引用します。
 ハッキリ言おう、この本を手に取った多くの読者は、「ちょっと起業でもしてみようかな」と思っているはずだ。だが、そんなヤツらは間違いなく社長の資格 qualification はない。「社長になっちゃいけないヤツ」だ。だから、99%失敗する。【中略】
 そもそも素質 potential のある人間は、私の本を読む前に、とっくのとうに起業している。まずは実際にやっているのだ。私の本を読んでいる時間なんてない。その意味では、本書を読んでいるようなあなたに、起業の資格なんぞないと断言 assert してもいい。
 何とすごい言い方でしょう。読者の心を見透かされたようなことばです。乙は、別に起業するつもりではないですが、会社を作り経営するということはどういうことか、知りたくて、手に取ってみたのでした。この1節には驚きました。
 p.129 には「脱サラ 35 歳説」が出てきます。起業適齢期というのがあるそうで、それが 35 歳とのことです。乙は、とうの昔にその年齢を過ぎていますから、今さら起業はできません。しかし、起業する人たちの考え方を知ることは、意味のあることで、中小企業に投資するかどうかなどと考えるときにも、参考になると思いました。しかし、本書で描かれるような人たちは、株式公開まで行かずに失敗して、廃業してしまった人たちですので、投資の参考にはなりませんでした。まあ社会勉強と考えればいいのではないでしょうか。
 本書全体として、前著との重なりが感じられ、あまりおもしろいとは思いませんでした。「二番煎じ」といえばいいでしょうか。
 ただし、後書きが大変おもしろかったです。前著で書いた教育系フランチャイズから著者が訴訟を起こされたことを書いています。どう決着するのか、興味が尽きませんが、著者は、本書と前著の2冊で、いいたいことをズバズバいっているわけですから、このような訴訟は当然のことでしょう。著者には、そんなことに負けずにがんばっていってほしいと思います。


ラベル:起業 脱サラ 倒産
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2007年03月29日

渡辺仁(2005.4)『起業バカ』光文社

 乙が読んだ本です。
 安易に起業する人がたくさんいて、そういう人たちの多くが失敗(倒産)しているという本です。
 著者自身も、そういう起業の失敗を経験しているのだそうです。
 乙が一番おもしろく読んだのは、フランチャイズのコンビニチェーンの話でした。pp.162-164 あたりです。コンビニのオーナーの手足をしばり、おもしろいアイディアや自主的な努力など何もさせないでおいて、かつ「オーナー」だから経営上の責任を押しつけてくるという話です。とんでもない話です。コンビニは、お店のスクラップアンドビルドが多いわけですが、それは、現実に適応して最適な店舗配置を行うという面もありますが、スクラップされたお店だってオーナーがいるわけで、そういう人は、多額の借金を抱えてしまうわけなのです。スクラップされるのはオーナーの人生だというのは記憶しておくべきことでしょう。
 近々起業を考えている人たちは、是非、こういう本を読んでおくといいでしょう。
 特に、中高年の脱サラを考えてる人たちには向いていますが、若い人でも話はほぼ同じです。


ラベル:起業 コンビニ
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2007年03月24日

杉本信行(2006.7)『大地の咆哮----元上海総領事が見た中国』PHP研究所

 乙が読んだ本です。
 赤裸々な中国の姿が率直に描かれます。ここまで書いてしまっていいのかと思われるくらいです。
 p.53 中国の年金問題にふれています。たった1ページの記述ですが、この問題の深刻さがわかります。
 第9章(pp.177-198)では、「深刻な水不足問題」について書いています。これまた重大問題です。
 第10章(pp.199-221)では、「搾取される農民」です。あからさまな農民差別が描かれます。p.221 には毛沢東が農民に対して愚民政策をとったことまで明記しています。
 第11章(pp.222-240)は、「反日運動の背景」ということで、中国内部の事情から反日運動を説明しています。p.226 では、社会各層の負け組が不満を募らせていることを述べています。こういう不満が外国企業に向けられる可能性があるというわけです。これもチャイナリスクの一つでしょう。
 第13章(pp.259-281)では、「中国経済の構造上の問題」です。p.269 に第三次産業の未発達が指摘されています。また、p.276 では、中国の不動産投資がバブルであることを具体的に記述しています。p.277 では、人民元を大幅に切り上げられない理由が書いてあります。人民元切り上げは中国の景気を冷え込ませ、不動産の狼狽売りが出て、不動産が暴落し、中国だけでなくアメリカの景気を冷え込ませてしまうとのことです。不動産問題も深刻な話です。さらに、p.278 以降では、不良債権問題について書かれています。これまた大きな闇です。
 p.317 では、腐敗・汚職の蔓延について書いています。どこにでもあるような話ですが、中国の場合は、非常に深刻な状態だと思わせます。
 全体を一読して、中国が抱えるさまざまな問題が、途方もなく大きくなっていることがわかります。
 投資家としては、このような問題を抱える中国に長期的に投資していていいのかどうかという問題を感じます。
 ある意味では、遅れている(問題がある)国だからこそ、将来の改善が期待でき、つまり発展の余地が大きいという肯定的なとらえ方も可能でしょう。しかし、この闇は相当に大きく、明るい未来は期待しにくいということもあります。乙の個人的な感想では、(この本を読んだ後では)後者のほうが強いように思います。
 当面の北京オリンピックや上海万博などをうまく乗り切るために、ここ数年は経済的にも好調だろう(政府が強制的にそのようにし向けるだろう)と思いますが、その先はどうなるのでしょう。はなはだ不透明といわざるを得ません。その点で、乙は、中国投資については、数年で見切りをつけようかと思っています。


ラベル:中国 経済 問題
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2007年03月15日

週刊ダイヤモンド 2007.3.17 特集「チャンスとリスクを総点検! 新興国投資」

 乙が読んだ雑誌です。
 なかなか読み応えがあります。たかだか30ページ程度の特集の中で、いろいろな新興国の例を出し、それぞれの投資環境などを説明しています。
 もちろん、乙は自分が投資しているところに興味を持って読みました。
 特集のはじめが中国で、10ページも割いていろいろ論じています。本屋さんで売っている中国株の本よりもずっと有益です。それにしても、中国株はいよいよバブルのようで、ここに描かれた上海の状況を見ると、そろそろ引き際かなどと思ってしまいます。
 p.34 には「06年までに9割の非流通株が流動化された」とあり、乙は「ふ〜ん」と思いました。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20070125/117652/?P=2
によると、「来年(2008年)、中国は保有する上場企業の株の多くを売却することになっており、大量の株が市場に溢れる可能性がある。」とあります。乙はこれを知って、2008年初めころに中国株を売却すればいいのかなどと単純に考えていました。しかし、週刊ダイヤモンドによれば、もうその心配はなくなってしまったとのことです。本当でしょうか。
 インドについては、4ページです。識字率がわずかに 57% しかないことや、インフラ不足が深刻だそうです。しかし、前者は、一部の優秀な人々ががんばることで国や企業としては発展・成長が見込めるでしょう。貧困層が多いということに関しては、国としてどのような政策をとるかにかかっています。いくらでも対処できそうに思います。インフラについても、乙はあまり心配していません。これから経済が発展すればどんどん整備されていくでしょう。経済で大事なのは人ですから。インドは、かなり明るい未来が待っているようです。
 ベトナムも4ページ割いています。現地の証券会社に口座を開設する例もあるという話ですが、わざわざそこまでやるでしょうか。結局、ファンドを通じて投資するのが手軽だということになります。それにしても、日本のファンドがお金を集めすぎて大金の運用がままならないなどという話を聞くと、やはりベトナムはリスクが高そうです。
 ブラジルやロシア・トルコは各2ページです。それぞれの性質がわかります。
 その他の国々についても、半ページずつの言及があり、全体として、新興国の投資環境をよく描き出していると思います。
追記
ブログでこの雑誌を取り上げている人がいますので、以下に URL を示しておきます。
http://ameblo.jp/happy-retire/entry-10027797209.html
http://haisyatosyosyanogame.10.dtiblog.com/blog-entry-114.html
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2007年02月27日

森木亮(2007.2)『ある財政史家の告白「日本は破産する」』ビジネス社

 乙が読んだ本です。
 日本が膨大な国債を抱え、すでに破産過程に入っているという警告の書です。
 そういう主張の本は、すでに何冊もあるので、主張自体が新しいとは言えません。しかし、そういう問題をどう位置づけるのか、解決策はあるのか、個人はどのような対策を考えればいいかといったことを考える上でヒントになればと思って買ってみました。
 読了後、残念ながら乙の期待とはマッチしない本だということがわかりました。
 第1章は「大蔵省から財務省へと続く「霞が関の官害」」ということで、官僚がいかにひどいことをやってきたかを述べています。p.16 では、告発の対象として3人の個人名を挙げ、現在の財政危機の「犯人」だと指摘しています。この章が一番迫力がある章だといえるでしょう。
 第2章「歴史を遡ると見える「真実」」では、戦後のさまざまな流れを追い、なぜ日本が破産状態になったかを丹念に追いかけます。議論としては、わからなくもないですが、今の喫緊の問題を探るのに、こんなにさかのぼって考える必要があるでしょうか。
 第3章は「激動の昭和初期に、何が起きたか?」と題し、さらに古い日本を見ていきます。そうして 120 年前から日本は構造を変えていないことを述べますが、そういわれても、現状の問題の解決に役立つとも思えません。
 第4章「借金財政と40年論争」では、pp.95-118 にわたって、1988 年刊行の著書からの再録を入れています。昔から森木氏の主張が変わっていないことをいいたいのか、昔の意見が今でも通用することを示したいのか、乙にはわかりませんが、こういうのは不要ではないでしょうか。
 第5章「消費税論争とバブルへの警告」でも、pp.127-155 に 1986-89 に書いた文章を再録しています。p.126 には、ご丁寧にも「昔の話だからと、読者諸氏は読み飛ばさないでほしい。」と書いていますが、乙は、残念ながら、読み飛ばしてしまいました。もちろん、一部は読みましたが、20年前の記述ですから、内容的に今の日本に当てはまる話ともいいにくく、読むのがつらいと感じたからです。読者は自分の時間を使って本を読むのですから、著者から何をいわれようと、自分のやり方で、自分のペースで本を読み進めることができます。
 第6章「日本国「破産予測」の元祖として」は、さらにすっ飛んだ話が続きます。最終間氷期まで登場して、ずっとずっと長いサイクルを見るべきだと主張しているようですが、乙としては「話が違うだろ」と思わざるを得ませんでした。
 第7章「日本再生への提言」は、話題がまた現代日本に返ってきます。いくつかの耳を傾けるべき提言を含みます。
 最終ページの p.238 には、申し訳程度に参考文献が6点ほど挙げられています。刊行年が書かれていませんが、国会図書館で調べてみると、それぞれ、1981, 1984, 2006, 1969, 1974, 2006 です。う〜む。ビミョーです。
 というわけで、第1章と第7章を読めば、この本を読んだことになりそうです。ならば、もっと圧縮してまとめることができるということになります。この本の値段は、定価 1500 円+税ですが、この価値はないと思いました。買って読んだ後では取り返せませんが。
 乙としては、この本はおすすめではありません。

 森木氏の著書としては、2005年2月刊行の『2008年 IMF 占領』を乙のブログ(2006.4.16)
http://otsu.seesaa.net/article/16624855.html
で取り上げたことがあります。そちらのほうがまだマシなように思いました。しかし、同書によれば、来年には、IMF が日本に乗り込んできて「占領」してしまうんですよね。1年先が楽しみです。


ラベル:森木亮 国家破産
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2007年02月25日

これからの資産形成を考える会(2005.12)『「長期」「分散」「最適」で考える世界一シンプルな投資法』講談社

 乙が読んだ本です。
 230 ページ弱の本ですが、第1章が 146 ページまでを占め、記述の中心ということになります。
 では、第1章は何か。「米国投資教育から学ぶ最新資産形成プラン」というものですが、p.146 の注意事項がすべてを物語ります。「本章資料は米国バンガード・グループ社の承認を得て、同社の日本子会社であるバンガード・インベストメンツ・ジャパン証券が、米国本社が米国の投資家のために作成した資料をできうる限り正確に翻訳したものです。」とあります。第1章の内容は、投資の進め方や定年退職後の生活設計などで、まともな記述なのですが、出てくる実例はドルで表示されたものですし、個人ごとの資産形成に至っては、個人差が非常に大きく、日本人にはあまり参考にならないのではないかと感じました。
 第2章は「世界のプロに教わった投資の本質」です。p.160 には、集中投資の失敗例を扱った本の話が出てきます。p.162 では、リスクを下げるためには分散投資しかないと説きます。当然のことですが、世の中には、集中投資を進める本もありますので、やはりきちんとしたことをきちんと述べておくのも必要なことです。
 第3章は「ケーススタディで読み解く資産形成プラン」です。日本人の四つのケースが取り上げられます。まあ似たような境遇の人にとっては役立つ記述かもしれません。しかし、個人の境遇は本当にさまざまですから、自分のそれにぴったり当てはまらない人にとっては、本章の記述はムダなだけかもしれません。
 p.186 では、投資収益率 3% ということで話を進めます。乙の目標(7%)よりもだいぶ低いです。現在の超低金利時代の運用投資収益率として見た場合、決して簡単な運用ではないといいますが、それにしてもどうでしょうか。ミディアムリスク・ミディアムリターンといえばいいのかもしれませんが、超低金利時代は、歴史的に見ても異常なのであり、いつかは金利が回復するのが当然ですから、3% などという低い利回りで考える必要はないと思います。(もっとも、リスクが低いのだからそれがいいという人は、それはそれでいいのでしょうが。)
 全体として、本書はあまりおすすめではありません。読んでも説得力がないように思えました。


ラベル:投資
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2007年02月19日

木村剛(2005.12)『最新版 投資戦略の発想法』アスコム

 乙が読んだ本です。
 全体は 439ページ+付録16ページで、比較的長いです。次のように区分されています。
 オープニング pp.14-55
 第1部 これができなければ投資家失格―準備編 pp.57-173
 第2部 財産形成のために知っておきたい投資理論―理論編 pp.175-271
 第3部 絶対に負けない投資戦略―戦略編 pp.273-373
 第4部 最小限の手間でできる財産防衛術―戦術編 pp.375-432
 クロージング pp.433-439
 オープニングでは、p.33 で「将来の危機管理が大事だ」という意見がおもしろかったです。これから何があるかわからないということですね。そのようなときにどう対処するかということです。少なくとも、そういう意識を持っていることが重要でしょう。
 第1部では、家計のバランスシートを作ろう、財産形成のベースを作ろう(2年分の生活防衛資金=現金を作ろう)、資産運用は副業だからメインの仕事をがんばろう、マイホームは買わず、住宅ローンは借りないようにしようといった話が続きます。乙にはかなり意外でした。投資の本だと思ったら、人生の心がけを述べるような内容だったからです。これが「準備」なんですね。
 p.87 では、節約は確実な運用手法だと説かれます。確かに、節約できないようでは投資がうまく行くはずがありません。p.116 仕事が一番大事だというのもその通りです。しかし、このあたりは、こんなにページ数を使って説くべきところでしょうか。著者の価値観の表れですが、このあたりの記述をもう少し短くしてもよかったのではないかと思います。p.131 では、株式投資本やマネー雑誌を時間のムダだと切り捨てています。それはそうかもしれませんが、そのような域に達するまでは、誰でもそういうものを読んで試行錯誤するのではないでしょうか。みんながこの本を最初に読むとは限りません。いろいろな情報があふれる中から、自分のやり方を見つけるしかないと思います。
 第2部では、経済学や投資理論、行動心理学などを説きます。乙としては、p.260 あたりのさまざまな行動心理学の研究結果が示されているところがおもしろかったと思います。
 第3部では、いよいよ著者の投資戦略が開陳されます。著者の書き方に反しますが、この部だけを読んでもいいかもしれません。乙もこの部を一番おもしろく読みました。
 p.276 三分割ポートフォリオが説明されます。国内株式、国債、外貨預金(もしくは外貨 MMF)です。従来のさまざまな分割法を知った上でこの三分割ポートフォリオを提案しているわけです。ただし、乙は、今の低金利では国債の魅力はほとんどないと思っていますので、著者の木村氏に全面的に賛成しているわけではありません。
 pp.284-301 では、株式の投資信託を否定しています。投信の手数料をかけてプロのファンド・マネージャーを雇うよりは、20銘柄程度の個別株を買うことを勧めるという立場です。これはこれで一つの立場ですが、20銘柄をうまく選ぶことができるでしょうか。乙は自信がありません。それよりはインデックス・ファンドや ETF のほうがいいように思います。
 p.318 個人が機関投資家よりも優れている点として、長期的志向が保てる点をあげ、たとえ株で大損していても、喜んで塩漬けにしておけばいいといいます。一生持ち続けるのが大事だというわけです。そして、太字で「つねに長期のスタンスで投資し、マーケットが最悪のときにもできる限り最大限投資する」という姿勢を述べています。20銘柄をこうして運用するんですね。簡単なようでなかなかできないでしょう。悪いニュースが出て株価が下がり始めたら、あわてて売ってしまいたいのが投資家の心理というものです。もっと下がることが明らかなときに(ホントは明らかとはいえないので)、それをじっと保持せよというわけです。心理的に抵抗があります。一度売って、下がったところで買い戻せばいいのではないかと単純に思います。実際は、思ったほど下がらないこともあるし、底でその株が買えるほど市場は甘くはないわけですが。
 pp.321 からデイトレは手数料がかかる分必ず損をするから、デイトレをするなと断じています。乙はデイトレをしない主義なので、納得しながら読みました。
 p.323 では、マーケットのタイミングを計って投資することをばかげていると否定しています。
 p.330 株は結婚と同じで、買ったらずっと一生保持せよと説きます。例えがおもしろかったです。
 第4部は、うまい話に惑わされないようにということで、あまり大した内容ではありません。
 全体として、とても真面目で良心的な本です。タイトル通りの内容で、この本を読んでおいて損はないと思います。おすすめできます。
 この本1冊を読むと、投資とは何か、実感できると思います。また、雑誌や本で、読んでもしかたがないものとはどういうものか、納得できるでしょう。乙は、この本を読む前に「オール投資」などという雑誌を買っていましたが、その問題点なども具体的に指摘されています。
 ただ、ちょっと冗長に思える部分もあったので、できたら 300 ページくらいにしてくれるとよかったと思いました。


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2007年02月09日

藤沢数希(2006.12)『なぜ投資のプロはサルに負けるのか?』ダイヤモンド社

 乙が読んだ本です。
 この本は、インデックス・ファンドへの投資を語る本です。
 現代のファイナンス理論に基づき、株への投資を説いています。
 乙は、今まで投資関連の本をいろいろ読んできたので、残念ながら、この本にあまり新鮮味を感じませんでした。特に、橘玲氏の『臆病者のための株入門』
http://otsu.seesaa.net/article/19337369.html
と似ているようです。しかし、投資関連本として、最初に読むと、インパクトがあると思います。
 この本では、最後のほうにおもしろいことがたくさん書いてあります。
 pp.177-178 インデックス・ファンドがいいなら、なぜインデックス・ファンドばかりにならないかという問題に対して、人間はオーバーコンフィデンス・バイアスがあるからだと説きます。人間は自分に自信があるからという説明です。投資の場合も同じで、自分は他人よりもうまくやっていけるという自信を持っている人がいるからアクティブ・ファンドの人気があるというわけです。この説明は納得できます。人間は自分を冷静には見つめられないものなんですね。
 pp.180-181 TOPIX 組入銘柄をねらって儲けようという話がうまく行かなくなってしまった経緯を書いています。
 乙も、このことは気になっており、ブログに書いたこともあります。
http://otsu.seesaa.net/article/22402936.html
しかし、気にするほどのことはないということです。
 p.184 インデックス・ファンドを優位にする莫大なコストは、すべてアクティブ・ファンドの投資家が支払っているという指摘です。非常に興味深いです。考えてみれば、そうなりますね。
 p.190 投資するよりも働くことが一番だという話です。日常的にお金が生まれるという意味では、一面の真理です。
 p.194 「貯金が数千万円以上あるひとは、嫌でも投資というものに向き合っていかなければいけません。」まさに乙の気持ちが書いてありました。好きで投資しているわけではないのです。「しなければいけない」のです。
 p.202 アセットアロケーションの考え方を具体的に書いています。個人ごとに違わざるを得ないので、あくまで参考にするだけですが、具体的な数値が書いてあるだけに興味深かったです。そして、p.205 では、藤沢氏が自分のアロケーションに関して、外国株、日本株、外国国債、日本国債を85対15対50対0にしていると記しています。日本国債をゼロにしているのは乙と同じです。けっこう外国株と外国国債が多いように見えます。合わせれば135ですから、全資産の9割は外国に投資していることになります。

 ちなみに、著者のブログがあります。
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/
 アクセスしてみると、ブログに書かれていることは本の内容とダブっているんですね。(本にもその旨が書いてありましたけれど。)
 もしかして、本を買わなくとも、こちらのブログを通読すればよかったのかもしれません。


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2007年02月06日

週刊東洋経済 2007.2.10 特集:危険な資産運用

 乙が読んだ雑誌です。2月5日に買いました。
 いろいろおもしろい分析が書いてあります。
 pp.38-43 では、外国債券や外国株式に投資する投資信託の残高が28兆円もあり、これからますます増えることが予想されていますが、それが円安の原因だというのです。まあ、確かに、外国への投資は円を売って外貨を買ってそれで投資するわけですから、巨大な円売り圧力が存在するというのはうなずけます。
 さらに、外国為替証拠金取引(FX)も、大きな影響力があり、年間売買額が約130兆円だということです。証拠金だけで考えると大した金額ではないと思いますが、レバレッジを効かせた投資なので、実際に動くお金の数十倍の影響力を持つというのはいえるでしょう。FX 投資家は、ドル円レートが110-115円くらいまで円高になると円を売ってドルを買う行動に出るので、ここから円安方向にレートが変わっていくというのです。
 乙は、なぜこんなにも円安が進むのだろうという不思議な感覚がありましたが、投資信託と FX が原因だという見方はおもしろいと思いました。これら二つは、今後とも大きな流れになると思いますので、円安はけっこう継続するのかもしれません。
 p.43 の記事では、100円を割る円高もあり得るということで危機感をあおっていますが、そんな単純な話ではないでしょう。
 p.46 から、グロソブの資金流出の話が書いてありますが、そこから流れ出た資金が同種のファンドに移動しているだけのようです。であれば、どうということはないですね。
 pp.54-55 は、変額年金保険をやり玉に挙げています。手数料が高いので、ダメ商品だと思います。
 p.56 では、シクリカル株に投資するのがリスクを回避してよい方法だと説きます。そうかもしれません。しかし、シクリカル株が何であるかを調べるのも大変だし、「毎日の原材料の値動きを丹念にノートに取る」ことを推薦していますが、個人としてはやってられないと思います。
 p.56 のグラフで、過去3年程度を見てみると、さわかみファンドもフィデリティ日本成長株ファンドも、TOPIX の動きとほとんど変わらないということがわかります。乙は、むしろ、これが興味深かったです。
 さわかみファンドはなかなかがんばっていると思っています
http://otsu.seesaa.net/article/14016027.html
が、それでも、比べてみれば TOPIX 程度なんですね。たくさんの銘柄に分散投資していますから、どうしてもこういう結果になってしまうのでしょう。これなら、インデックス・ファンドあるいは ETF のほうが(手数料が安い分だけ)いいということになりそうです。
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2007年02月05日

小幡績(2006.6)『ネット株の心理学』(MYCOM新書)毎日コミュニケーションズ

 乙が読んだ本です。
 この本は、独自の株式観を展開しています。その意味ではおもしろい読み物といえましょう。ただし、小幡氏がそう主張しているということであって、その裏付けとなるものは一切示されません。乙は、この本に書いてあることをそのまま信じる気持ちにはなれませんでした。
 第1章(pp.19-52)は「株式投資の常識のうそ」ということで、今まで常識とされてきたものが実は違うと述べています。おもしろい見方ですが、あくまで一個人の見方だということであり、それ以上のものではありません。
 たとえば、p.43 では、チャートにも意味があるという主張が述べられています。乙はこういう言説は信じません。
 第2章(pp.53-93)は「投資家心理で解き明かすネット株取引のなぞ」という章です。p.71 から p.84 までライブドアショックがどんなものだったかを、その中にいる個人投資家の心理に沿って描いています。おもしろい見方であり、読み物です。しかし、小幡氏がこのように述べていても、それは、その流れの中で個人投資家が本当にそう考えていたということではありません。本書執筆時には、事後的にライブドアの株価がどうなったかが完全にわかっています。であれば、その情報を生かしてさまざまな「ドラマ」を作ることができるでしょう。でも、それはその流れのまっただ中にいた人々の心理とは別物です。
 p.88 では、バブルに突っ込むのは投資の王道だということで、バブルは歓迎するべきものととらえています。これまたおもしろい見方です。しかし、一番の問題はバブルがいつ崩壊するかわからないことです。売り時(逃げ時)の判断がきわめて難しいと思います。その意味では、大変危険でもあります。
 第3章(pp.95-132)は「ネット株取引の醍醐味」ということでバリュークリックジャパンの株式100分割でみんなが大儲けした話が描かれます。それはそうかもしれませんが、株価が激しく上下するときは、儲ける人がいる一方で損をする人もいるわけで、こういう状況の中では、乙は自分が儲ける側になれる自信がありません。乙は「触らぬ神にたたりなし」と考えます。
 第4章(pp.133-148)は「デイトレはなぜ儲かるか?」ということを述べています。確かに、デイトレにはそれなりのメリットがあると思います。しかし、株式市場に集まっている無数のデイトレーダーの全体をみれば、プラスの人もいる一方でマイナスの人もいるはずで、その平均は東証株価指数(の変化の方向)のようになるのではないでしょうか。平均値に動きがなければ、デイトレの場合でも半数が儲けているものの半数は損失を出しているものと推定されます。この章では、デイトレのプラス面だけを描いており、マイナス面を全く見ていない点が気になります。
 第5章(pp.149-166)は「ネット株取引は、なぜ大流行したのか?」という章で、手数料が安いこと、個人投資家に情報武装させたこと、注文が簡単にできることなどをあげています。この章は乙も賛成するところです。
 第6章(pp.167-184)は「株はなぜ上がるのか?」です。買う人がたくさんいるからだという説明です。まあ、これも一面の真理です。p.174 で企業の業績がいいからといって株価が上がるわけではないという話などは興味深く読みました。
 第8章(pp.211-245)では、株はゼロサムゲームだということが出てきます。だから、売る相手のことを考えよとのことです。そういう面もありますが、そもそも株は本当にゼロサムゲームでしょうか。乙は違うと思います。さまざまな市場参加者の全体を合計すると、若干プラスになるようにできているのではありませんか。
 最後まで読んで、ストンと終わってしまうことに驚きました。参考文献が一つも書いてありません。全部が著者のオリジナルなものだから書かなかったのでしょうか。しかし、それでは読者にあまりに不親切です。Ph.D を持っていて、本職は慶応大学の助教授とのことですから、参考文献の重要性はよくご存じのはずです。新書であっても、一切参考文献を書かないというのはあまりに極端なように思います。

 小幡氏のサイトがあります。興味のある方はどうぞ。
http://www.sekiobata.com/


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2007年02月03日

北尾吉孝(総監修)(2006.6)『2006年度版 図解 自分に最適な資産運用が一目でわかる本』高橋書店

 乙が読んだ本です。
 各種の資産運用について書かれた本です。
 第1章「株式投資」、第2章「投資信託」、第3章「外貨投資」、第4章「不動産投資」あたりまでは、やさしい入門書といったところでしょう。乙は、ほぼすべてを知っていましたので、特に新しい情報はないような感じがしました。
 第5章「年金」、第6章「住宅ローン」、第7章「その他金融商品」あたりになると、乙はあまり知識がなかったので、おもしろく読みました。
 第1章から第4章までの記述では、資産運用をこれから学ぼうという初心者対象の本であるように思えます。しかし、第7章では、「債券」(これは含めるのが常識でしょう)や「商品先物取引」、「金」(ゴールドのことです)、「ファンド」(投信以外のもの)、「美術品」まで各2ページで説明してあります。これらは、初心者には手を出しにくいし、いざ購入を考えるなら、こんな2ページの知識ではまったく不足です。とすると、本書が全体としてどんな人を読者対象に想定しているのか、だんだんわからなくなってきました。
 また、本書全体として、各種金融商品をおすすめするようなスタンスで書かれており(SBIグループの各社から執筆担当者が出て書いているのですから当然ですが)、批判的な書き方は一切ありません。外貨預金も、個人年金保険も、ワンルームマンションも、何でもそのメリットを示しています。リスクやデメリットも一応書いてあるので、まあいいと思うのですが、総合的に判断して、おトクなのかどうなのかは示していません。いろいろ個別の商品について説明して「あとは読者におまかせ」という書き方です。
 読む側としては、本書を読んで、概説的な知識を持ち、あとは関連する本を読んで自分なりに補うしかないように思います。
 全体として、タイトルにある「図解」という言葉が示すように、図が多用されています。スペースからいうと、全体の 3/4 が図で、本文は 1/4 に過ぎません。しかし、その方針は成功したとは思いません。表も多いですし(表も図なのでしょうか)、文字の入ったいくつかの箱を矢印で結んだようなものもたくさんあります。こういうのは、文章できちんと書いたほうがずっとわかりやすいのではないかと思いました。
 個別の記述で、特に問題になるところは少ないと思いました。全体に(入門書としては)よく書けていると思います。
 pp.20-23 では、年代や未婚/既婚による資産運用の具体例を8例ほど示しています。全体として、理解できなくはないのですが、ちょっと疑問があります。国内債券をある程度の割合で組み入れていることです。今は、低金利時代ですから、債券の金利も低いものになっています。それを何割も組み入れていいのでしょうか。もう少し待って、債券の金利が上がり始めてから投資してもよさそうに思います。金利は、株などと違って、短期間に大幅な上下があることはほとんど考えられないですから、金利が上がってから債券投資をしてもいいのではないでしょうか。資産運用の入門書としては、金利がどうであっても通用するような原則を書いておいたほうがいいという判断でしょうか。あるいは、長期運用を前提にして、債券投資のリスクとリターンを計算し、他の資産のリスクとリターンと総合的に比較して最適な割合を求めたということでしょうか。
 p.47 株式投資編のところですが、新聞で情報収集をしていると、「毎日見ているうちに株式欄を開くのが楽しみになってくるに違いありません。」とあります。初心者では、こういう人はいないでしょう。新聞の株式欄なんて、単なる数字の羅列ですから、これがおもしろいというのは、相当なマニアではないでしょうか。少なくとも、乙は、こういう株価欄を見るよりは、ネットで株価情報を見る方が楽でいいと思います。
 p.72 投資信託編ですが、ここでも、投信の価格チェックを新聞で行うという話が出てきます。あたかも毎日チェックしなさいと言っているようです。しかし、投信は「運用はプロにおまかせ」という発想なのですから、毎日チェックする必要はなく、一度購入したら、じっと保有したままにしておくのが正しい態度のはずです。ここの記述にはかなり違和感を持ちました。
 この本を読むべき人がどんな人なのか、どうにもわからないという意味で、本書はあまりおすすめではありません。


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2007年01月31日

ピーター・バーンスタイン(2001.8)『リスク(上・下)』(日経ビジネス人文庫)日本経済新聞社

 乙が読んだ本です。「神々への反逆」という副題が付いています。でも、オリジナルの題名は「Against the Gods -- The Remarkable Story of Risk」なんですね。日本語訳は正副逆にしたというわけです。文庫本2冊で、各 280 ページあります。相当に長いです。もともとは、1998 年に単行本として刊行されたものです。
 文庫版では上下2冊に分かれていますが、それぞれで内容がかなり違う印象を受けました。
 上巻は、人間がリスクをどう発見してきたかといったことですが、確率・統計・数学の歴史のような内容です。1200 年以前、1200-1700 年、1700-1900 年の3部構成です。一部、死亡率の問題や保険との関わりが述べられますが、どちらかというと学問の歴史の記述が中心です。いろいろな人が登場します。著者は相当詳しく調べたようです。
 p.16 「はじめに」にあるように、リスク・マネジメントが大事であり、現代の経済社会の基礎になっているというのはその通りでしょう。しかし、だからといって、ここまで書くのは詳しすぎるように感じました。
 p.214 では、リスクを損失の可能性と定義した最初の研究は、1711 年のド・モアヴルだとしています。現代に通じる考え方ですが、逆にいうと、このころまで、リスクとは何かが明確ではなかったということなんですね。リスクの研究は意外に短いと思いました。
 下巻になると、いきなり投資の話になります。一部 1700-1900 年について述べていますが、1900-1960 年と「未来へ」の2部構成です。乙としては、下巻だけ読めば十分かなと思いました。それだけでも読めるようになっていますし。
 p.194 行動ファイナンスの話がおもしろいと思います。行動ファイナンスは、人間をモデルにしており、それまでの人間不在の経済の流れと大きく異なります。行動ファイナンスでは、人間は合理的でないことが示されます。ということは、合理的な人間が集まって、合理的な判断を下すということを前提にした経済のモデルが崩れてしまうということです。
 p.199 では、なぜ企業は配当を払うのかという問題を論じています。当たり前だと思っていたことを改めて考えてみると、なかなか難しい問題なんですね。
 p.208 では、日本の投資家はアメリカ株式市場のわずか1%強しか保有せず、一方、アメリカの投資家は東京市場の1%未満しか保有していないことを述べ、なぜ国境を越えて投資しないのかを問題にしています。確かにそうで、合理的判断をするならば、お互いの国境を越えた投資がもっと多くなっていいと思います。
 pp.280-282 に「訳者あとがき」がありますが、これを読んで、この本の基本的性格が理解できました。本書は単なる「投資の本」を越えています。そういう性格の本なのです。
 乙は、投資家がここまで心得ておくべきだろうかという疑問を持ちました。読み終わった感想は「ああ疲れた」です。



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2007年01月24日

浜島昭平(2004.7)『ネット投資家の戦い方』明日香出版社

 乙が読んだ本です。
 ネットトレーダーがどんなふうな考え方をするのか、知ろうと思って、タイトルだけを見て買ったのですが、中身はデイトレードの本でした。タイトルからそうだと気が付くべきでした。
 乙は、デイトレードをしないので、ムダな買物をしたように思っています。
 いくつか、感想を述べます。
 p.13 浜島氏流のケチのススメが書いてあります。新聞は買わずにネットですませるし、本も買わずに図書館から借りるそうです。それはいいのですが、「この本は別として」とわざわざ書いて、読者に対してこの本は買って読むようにと書いてあります。明らかな矛盾です。この本も買わずに図書館から借りましょう。それが正しい態度です。
 p.46 米国債を買うなら、アメリカの E*TRADE や Ameritrade を使う方が、日本での買い付けよりも手数料が安いと書いてあります。最近、乙はそのあたりを調べていましたので、このことには同意します。(Ameritrade は、今は米国非居住者の口座開設を受け付けていないのですよね。)
 pp.74-75 買いは奇数、売りは偶数という流儀をそのまま書いています。買うときは、1000株、3000株、5000株というように単位株の奇数倍を買い、売るときは、2000株、4000株、6000株というように単位株の偶数倍を売るというのです。もちろん、こんなことに意味はありませんが、そういう話をそのまま書いてしまうところがおもしろいです。著者が何かの科学的基準で株の売買をやっているわけではないことが明確に語られています。
 p.86 具体的な売買の記録が出てきます。1日で 55,836 円の利益を上げているというわけですが、乙が驚いたのは、この表の諸費用(売買手数料)のところです。14,163 円かかっています。ということは、ホントの利益は 69,999 円だったわけで、諸費用が利益の2割以上を占めていることになります。これがデイトレードの実態でしょう。成功報酬ではないところで、2割もの手数料を払って儲け続けるというのは、乙には信じられません。
 p.150 利益率でなく、利幅で考えるように主張しています。何%の利益というのではなく、1円の利幅が大事だという話です。以下、p.154 まで、利幅主義について書いていますが、基本的に間違っています。
 1円の値幅をとるという戦略だから、低位株で勝負するといっています。200 円の低位株だから1円の利幅でいいのであって、400 円の中位株では1円の利幅ではあまり儲からないというのです。しかし、株価が2倍の中位株なら、値幅は2円と考えなければなりません。これはつまり 0.5% の利益率ということなのですが。
 著者は1円の値幅を絶対視しすぎています。利幅主義も利益率主義も、ほとんど差はありません。
 p.180 損切りの目安も値幅で考えるべきだとしています。そして、取る予定の値幅の2倍を損切りラインとすることを主張しています。プラス1円を目標とするなら、マイナス2円が損切りラインというわけです。これについては、そのうち、乙としても、きちんと述べますが、実は理由がある話です。浜島氏は、なぜそのようにするかという根拠を示さず、自分のやり方を述べているだけです。それでは、単なる経験談に過ぎません。
 この本は全体として自分のやり方を述べているだけで、その裏付けについてはまったく書いていません。ですから、この本を信じる人は、それはそれでいいのでしょうが、この本を信じない人(乙はその一人です)に対する「説得力」はまったくありません。
 というわけで、この本はオススメではありません。

 浜島氏のブログがあります。気になる方はどうぞ。
http://pob.ameblo.jp/


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2007年01月15日

横田濱夫(2004.4)『ゆとり老後のためのお金の教室』双葉社

 乙が読んだ本です。「老後資金の運用で迷う63の疑問」という副題が付いています。
 この本は、いろいろな金融商品を取り上げて「どっちが得か」というスタンスで解説しています。1冊読めば、一通りの知識が身に付くでしょう。まあ資産運用の入門書といったところでしょうか。
 全体にうなずける記述が多く、入門書としてはいいのではないでしょうか。
 いくつか、疑問に思ったことがあったので、そこを中心に書きます。
 p.016 はクイズで始まります。「こんな2つの投資話があったとしましょう。どちらも投資期間は3ヶ月。一方は、値上がり益30%を狙えるものの、同時に値下がりのリスクも10%あります。もう一方は、利回りは1%と低いけれど、利回りは確実で、さらに元本も保証されています。そのときあなたは、たまたまマンション購入の契約をしていました。購入代金の支払いは、ちょうど3ヶ月後に迫っていて、ギリギリどちらへの投資も可能です。さてあなたは、どちらの投資話を選ぶでしょうか。」
 このクイズでは、一番大事な条件「マンション購入代金の他に資金があるのかないのか」が書いてありません。たぶん、「余裕資金はない」ことを前提にしているのでしょうが、それは明記するべきでしょう。でも、実際上、そんな前提はおかしいのです。3000万円のマンションを買おうという人が3000万円ちょうどしか持っていないということは考えられないわけで、若干は余裕資金があるものです。余裕資金がどれくらいあるかで、投資の判断は変わってきます。このクイズでは、マンション購入代金、余裕資金、それにこの投資話の金額、が書いてありません。
 こういう条件で「迷わず後者を選ぶべきです」といわれても、それは違うのではないかと思いました。
 ところで、このクイズの「値上がり益30%を狙える」ということと「値下がりのリスクも10%あります。」ということは対にして示していいのでしょうか。前者は資金が 1.3 倍になるという意味でしょうが、すると、後者は 0.9 倍になるという意味ととらえられます。その場合、「リスク」はどういう意味でしょうか。
 普通は、「リスク」というと危険性を表すのではないでしょうか。(ばらつき=ボラティリティ=標準偏差という意味もありますが。)だとすると、「値下がりのリスクが10%ある」というと、10%の確率で値下がりがありうるという意味になるのではないでしょうか。もしも、こう考えると、二つを並べても意味が通じません。
 p.017 では、この問題をこう言い換えています。「期待値上がり率が30%に対し、値下がり率の可能性は10%でした。」ここでは、10%が可能性(=確率)だといっていますが、10%の確率で値下がりが起こるとしたら、そのとき、何%の値下がりがあるのでしょうか。
 そもそも、はじめのクイズの「値上がり益30%を狙えるものの、同時に値下がりのリスクも10%あります。」といういい方は、それぞれの起こる確率が半々だということを暗黙のうちに仮定しているようですが、それでいいのでしょうか。
 乙は、このクイズ(およびその解答)がわかりませんでした。
 p.079 「リスク集中」と「リスク分散」ということばが出てきます。ここでは「リスク」は「危険性」という意味で使われています。さて、この「リスク」は、pp.016-017 の「リスク」と同じ意味でしょうか、違う意味でしょうか。
 p.061 老後に日本国内で暮らす場合、基本は為替リスクのない円で運用するべきだと書いてあります。それも一つの意見ですが、乙は別の意見を持っています。「円」がこれからも今までと同じような立場にあるとは限りません。日本で激しいインフレが起こったり、極端な円安になったりすれば、やはり資産は外貨で持っていたほうがいいのです。老後は、外貨を順次円に両替しながら使うことになります。つまり「日本で生活するから円が基本だ」という考えは必ずしも成り立たないのではないかと思います。
 pp.216-217 クレジットカードを捨てて現金払いに徹することを主張しています。しかし、本当にそれでいいでしょうか。日本はこれからますますネット社会になっていくと思われます。その場合、ネットでの買物は現金よりもクレジットカードのほうがはるかに便利です。ここの言説はちょっといただけないなあと思いました。

 横田氏のホームページがあります。よろしければどうぞ。
 http://www.y-hamao.com/


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2007年01月05日

出島昇(2004.7)『週末「株」で大儲け!』ダイヤモンド社

 乙が読んだ本です。「1週間に一度の取り組みで着実に資産を増やす方法」という副題が付いています。
 柴田罫線を用いたテクニカル分析を主体として株を売買しようという本です。ウィークリートレードといいます。
 乙は、テクニカル分析を基本的に信頼していないので、読むべきではなかったと思いました。特に第3章(pp.93-156)はテクニカル分析そのものですので、スキップしてかまわないと思います。
 さて、出島氏は、まえがきの p.5 で次のようにいいます。「そこで私はようやく学んだ。今でも最も確率の高いテクニカル分析手法だと確信している柴田罫線をもってしても、「罫線を見ているだけでは、長期にわたり、株で勝つことはできない」という真理を。」
 なかなかまともな話です。では、どうするか。続きに、こう書かれています。「常に、全体相場を見極める必要があるということなのだ。」同様の趣旨は、本書の終わりのころ、p.270 にも現れます。これもある意味で正しいでしょう。一番の問題は「全体相場を見極めることができるか」ということです。乙は、以前は、ある程度可能だと思っていました。しかし、最近は、そうでもないと思うようになってきました。数年にわたる大きな流れのようなものは、把握できると思っていましたが、実際に株の売買をやってみると、それでさえもむずかしいということを感じています。単に乙が素人だからでしょうか。
 また、日経平均がどういう傾向にあるかということと、自分が買っている個別銘柄がどう動くかとは必ずしも関連しないことがあり、個別銘柄の株は個別銘柄の特徴を強く持っています。ますますむずかしいです。(まあ、日経平均を反映するような株を買えばいいということもいえますが。)
 出島氏の主張は、テクニカル分析と相場全体の傾向が不一致のときにどうしたらいいのかという一番肝心なことが書かれていません。ここらあたりが「マル秘」の技術なのでしょう。乙は、これはマル秘の技術ではなく、単にヤマカンに過ぎないと思っていますが。
 p.79 では、株の売買に関して、証券会社が買い一辺倒の推奨をする理由は、証券会社がファンドを顧客に買わせている以上、カラ売りは推奨できないからだということを述べています。なるほど、こういうことだったんですね。業界の内部事情が暴露されたような感じです。
 p.86 株について、長期の値上がりを狙うのはバクチだとしています。乙は、これは違うのではないかと思います。むしろ、長期に持っていれば値上がりする確率が高いのが株なのではないでしょうか。これが資本主義の特徴だといってもいいと思います。数十年単位で見れば、株価は上昇するものでしょう。
 p.148 著者がなぜファンダメンタル分析をしないかが書いてあります。会社のファンダメンタルズ情報は『会社四季報』から得られますが、そもそも『会社四季報』は当該企業のIR、広報情報であって、あまり信頼できないということです。だから、『会社四季報』が出た後で、業績予測を下方修正するということも珍しくないということです。なるほど、そんな読み方ができるんですね。
 p.160 では、柴田罫線で買い転換した銘柄をすべてファンダメンタル分析したと書いてあります。おや、p.148 の記述と矛盾しているようです。
 p.189 では、業績のチェックは株式投資の基本だということで、ファンダメンタル分析を行うように書いています。p.160 の態度と同じですが、p.148 の記述とは矛盾しているように読めます。
 p.272 一番最後のページです。ここでは、トレンドを重視するように主張しています。そのため、柴田法則の影が薄くなっています。

 全体を通読して、わかったようなわからないような気分になりました。
 株の本はむずかしい(内容が理解できない)ものが多いような気がしていますが、それは、乙の頭が悪いからでしょうか。どうも、書く側の頭がすっきりしていないか、少なくとも、わかったことをわかりやすく他人に伝える技術を持たないかではないかという気がしています。
 乙は「真理は単純である」(Truth is simple.)という主義ですが、株の本はそういうのとはだいぶ違うようです。
 なお、出島氏のサイトがあります。
http://www.zubakabu80.com/
興味のある方はどうぞ。


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2006年12月26日

若井武(2003.11)『株で儲け続ける「売り方」220の鉄則』かんき出版

 乙が読んだ本です。
 一読して、残念ながらほとんど何も得るべきものがないような読後感を持ちました。
 220 の鉄則が書いてあるというわけですが、(そして実際番号が付いていて 220 個の「鉄則」が書いてありますが)大部分は精神論のようなことで、わかったようなわからないようなことばかりです。そもそも 220 個も「鉄則」があったら、覚えるだけで一苦労ですし、ましてやそれを適用しながら株の売買をするとなると、ほぼ不可能です。
 そのような、著者の考え方を典型的に表すのは、p.75 のことばです。「カンでいくしかない」というのです。これでは、本書を読んでも突き放されたような気分にしかなりません。
 著者は長期投資でなく、短期投資をすすめます。p.72 では、2ヶ月程度で売ることをすすめます。そして少しずつ利食いしながら継続的に利益を出すことを念頭に置いているようです。しかし、こういうやり方だと、どうしても売買手数料が高くなるので、それを継続的に上回ることができるかどうかが一番の問題です。
 「鉄則」に具体的な数値で示される部分がほとんどないこととあわせて考えれば、この本にしたがって株の売買をやっても、うまく行くとは限りません。
 p.126 からの第4章で、「現物つなぎ売り」という考え方が示されます。若井氏はこれを「革命的」と呼びますが、そんなこともないでしょう。この手法は、株価が下がってしまった株を持っているときには、ちょっと株価が上がったタイミングで売ってしまい、その後、大きく下がったところで同じ銘柄を買い戻すというものです。まあ、売るときに高く、買うときに安くですから、合理的な話です。問題は、そういう株でも、売った後に下がっていくとは限らないということです。売った後上がるか下がるかはわからないと考えるべきです。下がっていくことがわかるならば、誰でも儲けられます。実際はそうでないから、なかなかうまく行かないわけです。
 乙は、こういう本は読むだけ時間のムダであるように思いました(失礼!)。こういう本を買ってしまったことが悔やまれます。


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2006年12月19日

海外投資を楽しむ会(1999.8)『ゴミ投資家のための インターネット株式投資入門2』メディアワークス

 乙が読んだ本です。
 読み始めてすぐに(p.2 で)、前著・海外投資を楽しむ会(1999.5)『ゴミ投資家のための インターネット株式投資入門』メディアワークス
http://otsu.seesaa.net/article/29240918.html
と合わせて1冊の予定であったことが述べられます。
 つまり、乙がブログ
http://otsu.seesaa.net/article/29240918.html
で述べた前著に関する疑問点の一つ(インターネットの話がなかなか出てこないのに題名に「インターネット」をうたうことの問題)に対する説明が書いてありました。
 さて、本書は、読んでみたところ、かなり冗長な記述であるように思われました。もっと短くていいし、当初の企画の通り、前著と合わせて1冊にしたほうがよかったと思います。
 目次は、
http://www.alt-invest.com/book/inet2.html
に掲載されています。(INTRODUCTION もここで読めます。)それをみてもわかるように、本書の目的は、いくつかのアメリカのサイトを紹介することにあります。こうして、アメリカ株の取引をやろうというわけです。
 で、執筆態度ですが、このシリーズの傾向で明らかなように、それぞれのサイトの個々の使い方を説明するために、さまざまな画面をキャプチャーして、それに「ここをクリック」などの注記を加えて本書中に掲載してあります。乙はそれが冗長性を高めていると思います。
 そもそも、各種サイトは、本書のようなものを読まずにそこにアクセスしてきた人でもわかるように作られています。WWW の全体がそうなっているはずで、手引き書を首っ引きで見ながらでないとサイトが使えないとしたら、それはサイトとして大問題です。つまり、画面キャプチャーなどを本で示すことは本来不要のはずで、URL を一個示せばそれで終わりなのです。
 もちろん、URL だけでなく、そのサイトの特徴やそこで実行可能なこと、そこで得られる情報などを述べてもいいのですが、そういう記述をしても、さすがにこのページ数(267ページ)にはならないと思います。
 本書の執筆方針として、英語が苦手な人のために詳しく説明したのかもしれませんが、本書中であちこちに出てくるように、それぞれのサイトは英語が読めることが前提であり、そうでなければ、ネットを見て回って各種情報を集めてくることはできません。英語がわかれば、本書で示してあるような、どこで何を入力するかなどということはまったく不要な情報です。
 こういう本は、記述が冗長なだけでなく、時間が経つと意味がなくなります。WWW のデザインや各種情報を入力する順序が変わってしまえば、画面キャプチャーは無用の長物になります。意味がなくなるどころか、むしろ誤解を与えるものになるでしょう。
 本書では、最初に amazon.com の使い方が出てきます。本の買い方から懇切丁寧に詳しく書いてあるわけです。確かに amazon の使い方を知ることでインターネット企業の秘密の一端を知ることはできますし、それはムダではありません。しかし、それをいったら、コーラ会社の株を買うときはコーラを飲んでみなければならないし、不動産会社の株を買うときは、その会社で不動産売買をしてみなければならないということになるわけです。(そういう記述は本書中にはありませんが。)それがムダだとはいいませんが、そこまで書かなくてもいいのではないかというのが乙の感想です。
 そういえば、乙は、1999 年ころに amazon.com で買物をしたことを思い出しました。クレジットカードの番号を入力して簡単に買物ができて、丸善や紀伊国屋などの日本の洋書屋さんよりもはるかに便利だと思いました。当時、洋書屋さんのレートは相当にひどいもので、実勢の為替レートなどとはまったく違っていました。(具体的な金額は忘れましたが)1米ドルが 300 円くらいだったように思います。(違っていたらごめんなさい。)amazon.com は、クレジットカード決済ですから、為替レートは実勢レートに2円程度上乗せされるだけです。しかも、アメリカからほんの数日で本が届くのです。送料もそんなに高くありません。乙にとってすごいサービスでした。もう、日本の洋書屋さんは不要だと感じました。
 今となっては、こういう本を読む意味はほとんどないというべきでしょう。老後の楽しみとして、昔を語り合いつつノスタルジアにひたるときに本棚から引っ張り出して読む本ということになると思います。(そんなときまで保存しておくかどうか自信がないですが。)
 このシリーズで、一番読まなくていい本がこれだと思いました。残念でした。


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2006年12月17日

山口揚平(2005.7)『なぜか日本人が知らなかった新しい株の本』ランダムハウス講談社

 乙が読んだ本です。
 割安株を買って、じっと保持するというやり方を説きます。その際、非常に具体的に割安度を算出する方法を説明しています。pp.68-93 です。この本を読めば、だれでも同じ計算ができるでしょう。問題は、そのようにして割安株を買ったとして、本当に儲かるかどうかです。これについては、実際にやってみなければ何ともわかりません。
 もしかすると(数年前の)古い資料に基づいて、割安度を計算して、その後の株価の変動と突き合わせてみればいいのかもしれません。本書に書いてあるように、インターネットで無料でデータを集めて計算するというのは、過去の資料を探すのが非常にむずかしいと思いますが、古い会社四季報から計算するなら、十分可能なように思います。そのうち時間があったら、やってみたいテーマです。
 乙がよくわからなかったところは、pp.94-99 です。3700社のデータを見ていくことは実質的に不可能だからという理由で、(PER や PBR を使って)事前にスクリーニングをするように説いている点です。
 山口氏のやり方が完璧ならば、やはり 3700 社分の計算をして、割安度を計算し、たとえば割安度の高いものから順に買っていくという方法をとるべきで、安易にスクリーニングに頼るのはよろしくないと思います。割安度の計算方法はそんなに手間がかかるのでしょうか。乙は、大したことなさそうに思いましたが。
 仕事を持っていると、そんなことをしている時間がなくて大変だとしたら、退職後の楽しみにしてもいいと思います。
 むしろ、ある時点で 3700 社分のデータを作成して、その後の株価の変動を記録し、データ全体として分析してみると、この方法の特徴がもっとよくわかるでしょう。株価上昇を的中させる確率とか、割安度とその後の株価の相関とか、さらには、売り時の判断(どれくらい割高になったら売るべきかなど)までデータで検証できるのではないでしょうか。
 年1回くらい、こんな計算をして、手元に記録しておくことで、ますますデータの有用性が高まります。ぜひ、こんなことをしてもらいたいものだと思います。(時間があれば、乙がやるのですが。)
 スクリーニングのしかたにしても、3700 社分のデータを入力しておけば、だいたいどんな方針でスクリーニングすればいいかがわかるものと思います。
 もしかしたら、山口氏はそういうデータ分析を全部やった上で、本に書くときは、そういうのを全部示さずにポイントだけを解説したのでしょうか。乙は、どうもそこまでやっていないように読めました。
 3700 社に関する計算が大変であれば、乙だったら、ランダムに100社程度抜き出して、本書の計算をして、半年〜1年経ってどうなったかを見ると思います。それだけでも貴重なデータになるでしょう。
 p.141 では、バフェット流の投資の考え方と、一般の個人投資家の違いを見事に説明しています。バフェットの会社があまりに巨大なので、回転率が低くなります(次々株の売買をするのでなく、買ったものをじっと保持します)が、昔のバフェットは、資金が少なかったので回転率が高かったし、個人投資家も回転率は高くていいとのことです。おもしろい説明でした。
 読み終わって、乙は、山口氏のやり方に沿って、3700 社の計算をしてもいいなと思いました。普段は、仕事を持っているのでできませんが、さて、正月休みにでもできるでしょうかね……?



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2006年12月15日

橘玲(2006.11)『マネーロンダリング入門』(幻冬舎新書)幻冬舎

 乙が読んだ本です。
 橘氏は以前『マネーロンダリング』というフィクションを書いていますが、
http://otsu.seesaa.net/article/24967688.html
それとはまったく関係ありません。
 本書はノンフィクションで、現実にあった話を取材しており、その意味で迫力があります。
 直接投資に関係するわけではありませんが、個人としてもマネーロンダリングと無関係なままに生活することはできないということがわかります。
 全体として、非常に示唆的であり、有意義な1冊だと思います。
 p.54- プライベートバンクとはどういうものかが記述されています。乙には関係ないところですが、富裕層はいるところにはいるものだということですね。
 p.61-80 合法的にマネーロンダリングする方法が書いてあります。届けないで海外送金する方法があるんですね。
 p.99 プライベートバンクは、ことばとしてはすばらしい響きを持つけれども、その実態は幻想にすぎないと述べています。まあそうでしょう。
 p.117 コルレス口座は治外法権だと書いてあります。国家間の国境と、世界的な金融ネットワークの間で、こんな不思議なことが起こっていたんですね。乙は知りませんでした。
 p.118 アメリカがドルを支配しており、国際送金がドルで行われてるので、アメリカが北朝鮮を経済的に封鎖することができるという話です。それはそうなのですが、だったら北朝鮮もドルで送金するのでなく、別の通貨で送金すればいいのにと思いました。人民元は開放されていないので、使えないですが、ユーロくらいならまず大丈夫そうに思いますが、どうなんでしょうか。
 p.184-193 ハンドキャリー(現金を直接海外に運ぶこと)と地下銀行について書いてあります。ハンドキャリーの一部は乙も自分の目で見ましたが、けっこうすごいものがあります。地下銀行の仕組みについてもわかりやすく説明してありました。こういう便利さがあったら、地下銀行がなくなることはなさそうです。
 p.197 日本の株式市場で大きな力を持っている「外国人」は、実は日本人だという話です。日本人がオフショアに会社を作って、そこから、たとえば香港の銀行に指示を出して日本株に投資すると、日本人が投資しているとは絶対にわからないわけで、なるほどと思いました。
 p.209 相続税を合法的にゼロにする方法が書いてあります。乙は、そういうことが必要になるほど相続税を心配しているわけではありませんが、それにしても、数十億円もの資産を持っている人なら、こういうことを考えなければなりませんね。
 p.216 日本に税金を払わない究極の方法として、他国の国籍を取得する方法が述べられます。こんな「税金亡命」が考えられているなんて、すごい話です。

 というわけで、全体に橘氏の豊富な知識が活かされており、読んでいてとてもおもしろいと思いました。こういう知識があるのとないのとでは、人生の送り方に差が出てくるように思いますし、世界的に起こっている各種の動きを理解するためには、こういう知識も必須のものだと思います。
 乙としては、お薦めの本の1冊です。


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2006年12月13日

田中勝博(2004.12)『2005年 マネー大予測』東洋経済新報社

 乙が読んだ本です。
 乙はこの本のタイトルを見て、びっくりしました。田中勝博氏といえば、田中勝博(2004.11)『田中式機械的トレードで株長者になる!』東洋経済新報社
http://otsu.seesaa.net/article/29385272.html
で「予想をしてはいけない!」と繰り返し力説していた人ではありませんか。その人が、こんなタイトルの本を出しているのです。2冊の本の刊行年月日が1ヶ月差といえば、ほぼ両方を併行して校正などを行っていたはずで、その際、誰の目にも明らかなこんな矛盾をそのままにしているわけです。乙は絶句しました。
 本書の内容は、予測のオンパレードです。特に第2章「2005年 株式相場はこう動く」は予測そのものです。それ以外にも2005年にどうなるかをいろいろな側面について述べています。
 今は2006年ですから、田中氏の主張があたったかどうか、事後的に検証することができます。(乙は、こういう作業が大好きです。)
 田中氏の2005年に関する予測を概観するには p.99 が便利です。田中氏は次のように述べています。
@株価は、上昇する。
A債券は、金利が上がるので下落する。
B不動産は、条件のよいものは上がり、そうでないものは下がるという、二極分化がさらに進んでいく。
C【中略】高騰してきた原油価格が2005年は下落していく。穀物は、天候不順や異常気象の影響で上がっていく。
D為替は、円高ドル安に進んでいく。

 これらを順次見てみましょう。本書が執筆されたであろう2004年10月ころを基準に考えてみます。
@株価の上昇については、p.87 で、18000円も視野に入るとしています。2004.10 には、日経平均は 11000 円くらいでした。2005.12 では、16000 円になっています。田中氏の予想は、まあ、あたったといえます。
A債券の価格と金利は表裏一体のものですから、金利の予測を考えればいいことになります。日銀のゼロ金利解除は 2006.7.14 でした。2001年以来ゼロ金利がずっと続いてきたわけですが、この状態では、もうこれ以上金利が下がることはないので、金利上昇は誰でも容易に予測できます。問題はその時期です。田中氏は 2005 年中に金利が上がると予測しましたが、これははずれました。
B不動産価格の変化は追跡がむずかしいです。ここでは公示地価を見ることにしましょう。
http://tochi.mlit.go.jp/chika/kouji/20060324/20060324b.html
を見ると、2005年は住宅地も商業地もすべての都道府県でマイナスでした。2006年から大都市圏で地価の上昇が見られます。
http://tochi.mlit.go.jp/chika/kouji/20060324/20060324c.html
で東京の中を見ると、区部で地価の上昇が見られます。
 田中氏の予測はあたりでした。
C原油価格は
http://www.kakimi.co.jp/4kaku/4genyu.htm
によると、2004.10 で1バレル40ドル前後だったものが、2005.12 では55ドルまで上がりました。田中氏は、pp.50-54 で、1バレル35ドルまで暴落すると予想しています。予想は完全にはずれました。商品取引の穀物の価格は、乙の力ではよくわかりませんでした。商品先物などで個別の穀物についてはある程度わかるのですが、数年前の情報を集めるのが予想外にめんどうです。
D為替に関しては、田中氏は、p.138 で、これから円高に進み、2005年は100円の前半台を予想し、100円を割っても不思議はないとしています。100-105円くらいを予想しているようです。
 実際はどうだったかというと、
http://quote.yahoo.co.jp/q?s=USDJPY=X&d=c&k=c3&a=v&p=m130,m260,s&t=5y&l=off&z=l&q=l
によれば、2004.10 で1ドル107円くらいでしたが、2005年はずっと円安が続き、2005.12 では 118 円までいきました。田中氏の予想ははずれました。
 本書には、この5点以外にも予想が書いてあります。たとえば、p.131 では、中国株が過熱気味であるとし、短期的には下落基調にあるので、2005年は買わずに待ったほうがいいと書いてあります。
 実際はどうだったでしょうか。
http://stock.searchina.ne.jp/data/chart.cgi?span=90&asi=2&code=HSCE&market=HSCE
によれば、2005年は中国株が継続的に上昇していた時期でした。田中氏ははずしてしまいました。

 そろそろ結論を述べましょう。田中氏の予測能力は平凡なものでした。地価の変動はゆっくりしたもので、二極分化は前年度にすでに見られている傾向ですから、それを延長して述べただけです。
 ホントの意味で予測があたったのは、株価だけでした。それにしても、中国株の予想ははずれているのですから、日本株の予想が当たったからといって、株のプロだと見ることはできません。
 まあ、こんなものでしょう。
 他の人の「予測」も事後的に検証してみなければ、田中氏の予測能力が他の人に比べて優れているかどうかは何ともいえませんが、今までに調べてみたところでは、予測能力は平凡といえるでしょう。少なくとも、田中氏の予測を信じて投資しても儲からないということは言えます。
 やはり、「予想をしてはいけない!」のではありませんか、田中さん。
 本書の帯(普通は出版社がつけるものです)では、田中氏のことを「カリスマ投資コンサルタント」と呼んでいます。乙は、「カリスマ」の意味が違うのではないかと思います。
 もしかすると、田中氏の主張を反対に受けとめれば、あたることが多いということなのでしょうか。


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2006年12月11日

田中勝博(2004.11)『田中式機械的トレードで株長者になる!』東洋経済新報社

 乙が読んだ本です。
 乙が本棚を整理していたら、出て来た本で、そういえば、ちょっと前にこういう本を読んだことを思い出しました。せっかくですので、再度読んでみました。
 結論からいうと、この本はおすすめではありません。
 p.45 には、「テクニカル分析が私の専門分野である」と述べています。乙は、テクニカル分析を基本的に信用していないので、この本を読む必要はないと思いました。
 p.111 には、「ファンダメンタルズを知らなくとも、トレンドに乗ってさえいれば儲かるのというのが、株式投資の本質なのです。」とあり、田中氏はまさに株価のチャートだけでやっていけると信じているようすがうかがえます。
 で、株価チャートの例をあちこちに出し、その読み方を述べています。しかし、それは乙にはまったく支離滅裂としか思えません。
 たとえば、p.136 では、出来高が急増した場合は株価に関して6つの原則があるという話が出てきます。
@出来高のピークと株価の天井が一致
A出来高のピークを迎えてから10日前後で株価が天井をつける
B出来高のピークと株価の底が一致
C出来高のピークを迎えてから10日前後で株価が底をつける
D出来高がピークを迎えてから、上昇が加速する
E出来高がピークを迎えてから、下落が加速する
 乙の考えでは、これらは原則でも何でもありません。規則性も何もありません。実際、どれかには当てはまるでしょう。だって、そもそも出来高だって毎日増えたり減ったりしているのですから、どこがピークかもわからないし、10日もみれば、それはどこかが株価の(小さな)天井か底になるでしょう。
 こういう分析をする場合、たとえば、出来高がピークを迎えた例を100から1000例くらい見つけ出し、6つのそれぞれに当てはまる例がいくつあったかを数えて示すならば、意味があるかもしれません。しかし、そういうことはしていません。
 テクニカル分析の大部分は、(田中氏に限らず)適当な株価のチャートを引用し、補助線を引いて、「ここをみよ」と矢印を書き込み、これこれの形になったら、これこれの傾向になるという述べ方をします。しかし、こういうのは規則でも何でもありません。こういう「例示主義」では、規則になりません。もしも、そういう規則を述べようとするなら、そのような形になった例を多数例抽出し、それぞれがその後どうなったかを数え、こういう傾向が何割あったということを量的データで示さなければなりません。
 そういうことをして、たとえば、まあ、8割に当てはまる規則があったら、乙は信用します。
 どうですか。
 本書を一読して、このような多数例による検証がまったくされず、自分の都合のいいチャートだけを示すことで規則性(らしきもの)を述べていますが、そういうのは無意味です。それが規則性であることは著者が証明するべきことです。証明のしかたは上に書いたとおりです。簡単でしょう? 今は、コンピュータが使えるんですから、しかじかの株価チャートの形(きちんと定義しなければなりませんが)になるものを抜き出せと命令すれば数万例を抜き出すことはあっという間にできます。このようにするのは、人間の目でチャートを見ながら抜き出すよりも客観的で優れています。人間がチャートを見ていくのでは、どうしてもその後の推移まで目に入ってしまいますから、不適切であり、ある時点までのデータで判断するためには、コンピュータで処理する方が絶対に優れています。
 ちなみに、こういう集計や分析は、経済学分野の研究でいろいろやられていることであり、その結果、テクニカル分析は有効でないと結論づけされているのですから、実は、分析する必要はないのですが、自説で儲かると本当に考える人がいたら、自力でそういう手順を踏んで自説を証明するべきです。結果を本に書いて他人に知らせる必要はありません。自分でこっそりとその原則を適用して大儲けしてください。
 ところで、この本では驚くべき主張が展開されます。p.32 「予想をしてはいけない!」というのです。p.39 では「本当に、予想をしてはいけない!」と再度強調されます。まあ、これはこれで一つの態度ですが、では、予想せずにどうするのか。回答の一例が p.66 「トレンドに逆らわないこと」です。おや? これって「トレンドがこれからしばらく続く」と予想しているんじゃありませんか? 本当に「予想してはいけない!」ならば、トレンドに乗るなんてことは考えられないはずです。著者の田中氏は、二つの主張が矛盾していることに気が付いていないようです。
 こういう本ですから、乙は本書を読まないほうがいいだろうと思います。どういう間違いが書いてあるかを楽しむために読むことを否定はしませんが。
 なお、田中氏のブログがあります。
http://tanaka-yoshihiro.ameblo.jp/
 これを利用してメールも送れるようなので、乙からこの記事を書いたことをお知らせしておきましょう。強烈な反論が(コメント欄で)返ってくることを期待しています。


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2006年12月09日

海外投資を楽しむ会(1999.5)『ゴミ投資家のための インターネット株式投資入門』メディアワークス

 乙が読んだ本です。
 基本はしっかりしていて、読んでいておもしろいです。しかし、7年以上も前の本ですから、さすがに古くなりました。たとえば、p.98 からインターネットで取引できる日本の証券会社が出てきますが、今とはだいぶ違う顔ぶれだなあというところです。
 p.21 欧米では借金するときノン・リコース・ローンが普通だという話です。これは、担保以外には債務の返済が及ばない形式です。日本のようなウィズ・リコース・ローンだと、(不動産価格の下落によって)担保の価値が下がるとそれ以外の資産まで影響が及び、とにかく借金はすべて返すということになります。どちらがいいかは明らかです。
 pp.124- サンプル社の損益計算書の例を出し、読み方を説明しています。架空の会社だということですが、日本の会社は「こんなもの」のようです。日本の社会の「暗黙の了解」をはっきり示している点で、乙は大変おもしろく思うと同時に、日本の会社に対してあまり期待できないと思うようになりました。p.131 あたりにも、こう感じさせる記述があります。
 p.167 アングロサクソン流の合理的経営について説明されます。このあたりを読んでいても、日本の会社の未来は明るくないと思わせます。
 pp.198-296 「アナログ・メディアの使い方」ということで、各種雑誌などが紹介されます。乙は、それぞれの雑誌の評価がおもしろかったです。
 pp.248-287 アメリカの証券会社 Datek に口座を開設する話です。アメリカ株をやるなら Datek がいいと思わせます。Datek は、現在 Ameritrade になっているわけですが。
 ちなみに、現在は、Ameritrade での日本人の口座開設はできないようです。
http://kowloon.livedoor.biz/archives/50305442.html
 p.288 アメリカ株の税金の話です。「損出し」も含めて、とても詳しい記述で、大いに参考になります。
 まじめな本ですが、この本も題名に「インターネット」をうたっていて、良くないと思います。315ページの本の中でインターネットが出てくるのは p.226 からなのですから。


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2006年12月07日

林和人(2006.10)『香港大富豪のお金儲け 7つの鉄則』幻冬舎

 乙が読んだ本です。
 著者はユナイテッドワールド証券の会長で、自分の歩んできた道と重ねながら、自分が会った香港の大富豪たちの投資のしかたを書いています。
 7つの鉄則は、おもしろい見方だと思いました。
 その5番目に「一極集中投資こそ王道」というのがあります。分散投資ではダメで、一極集中投資がいいという話です。これは、マックス・ギュンター(2005.12)『マネーの公理──スイスの銀行家に学ぶ儲けのルール』日経BP社
http://otsu.seesaa.net/article/23230330.html
に書いてあったことと同じです。
 実際、著者が会った大富豪は一極集中投資をしたのでしょう。彼らはそれで成功したわけです。では、みんながそういう方法を採用していいのでしょうか。乙の場合、どうするべきでしょうか。考えてみると、乙はまったく自信がありません。一極集中投資は、ここに賭けていいと判断した場合に行うのだそうですが、その判断がきわめてむずかしいと思います。投資の勉強をいくらしても、なかなか決心は付かないものでしょう。多くの個人投資家も同様でしょう。世界中の情報を分析し、ここに投資するべきだと自分で決断できるような投資家がいるのでしょうか。たぶん、そうではないと思います。
 賭けて勝った人は現にいますし、林氏はそういう人に会ったのでしょう。しかし、賭けて負けた人もいたはずです。そういう人は舞台から消えるだけですから、会おうと思っても会うことはできません。一握りの大富豪の陰で、大富豪を夢見て失敗してしまった人はどれくらいいるのでしょうか。もしかしてかなりの数がいるのではないでしょうか。それが問題です。我々は「失敗する側」になることは許されません。そう考えると、やはり、一極集中投資は、多くの人にとって採用するべき戦略ではなさそうに思います。
 なお、本文中に出てくる話を読んでいると、香港の大富豪たちがホントに一極集中投資をしているのかどうか、疑問に思います。あるときあるところにポンと大金を出して大きく儲けているのは事実でしょうが、それでも、その投資金額は全資産のごく一部のように思えてなりません。
 p.83 「日本人だから日本株」というのは違うといいます。確かにそうで、p.153 以降で説かれるように、国境を越えて投資するのは当然です。乙は、日本株を若干持っていますが、今は成績も振るわず、今後の見通しも明るくないため、若干縮小しようかなどと考えています。


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2006年12月05日

週刊東洋経済 2006.12.9 特集:落ちる中間層

 乙が読んだ雑誌です。12月4日発売です。
 今号の特集には「日本の事務系サラリーマンは半減する!」や「ワーキングプアより深刻なホワイトカラーの没落」といった副題が付いています。
 アメリカでは、インターネットが普及して、中間層の仕事がインド人や中国人に取られてしまっているという話です。今や企業は何でもアウトソーシングを考えるんですね。英語は国際語ですから、他国在住であっても、優秀な人材がたくさんいて、そういう人が英語を使ってくれて、安い給料で働いてくれれば、それは働いてもらえることになるわけでしょうね。p.47 にあるように、インド人の家庭教師がインドからIPテレビ電話でアメリカの子供たちを指導するというのを知り、人件費の差を考えれば、こういう選択も当然あるだろうと思いました。
 アメリカでは、新聞記者・製造業・コールセンター・旅行代理店・秘書・会計士・プログラマーなどが大量に職を失いつつあるという話を読み、雇用情勢に大変化が起こりつつあるのだと感じました。
 日本でも、大学教授がクビになり、公務員が非常勤職員として低給料で働く例が増えているとのことです。雑誌としては、日米の両ケースを関連付けて話をおもしろくしたいのでしょうが、この話はかなり違う話です。たとえば、p.54 には 2004-14 年の間に米国で伸びる仕事の一覧表がありますが、ここには、小売販売員・看護師に続いて第3位に大学教員があがっており、なかなかアウトソーシングができない職種と考えられています。
 日本ではことばの壁があるので、アメリカのようにはならないという見方もできます。世界的に見て日本語を学ぶ人の数はそれほど多くないので、(インターネットを通じて)日本人の仕事が外国人に取って代わられる可能性はあまり高くないように思います。
 しかし、中国などでは、日本語教育が盛んだという話ですから、日本人だっていつまでも安心していられるというわけではありません。こうして、日本も産業構造がだんだん変わっていくのかもしれません。
 いずれにせよ、インターネットの普及が産業構造を変えるほどの影響力を持つということが大変おもしろかったです。これから就職していく若い人たちは、まさに荒海に乗り出していく事態なんですね。若い人にはもっとがんばってもらわないといけないわけですが、さて、これからの日本はどうなるのでしょうか。
 乙が普段接する若い人を見ていると、若い人は今ひとつ努力が足りないような気がしています。少子化の影響でちやほやされて育ってしまったのでしょうか。団塊の世代のように、人口が多ければ、何でも競争が起こり、その中でもまれて強い人間に育っていったのだろうと思いますが、今は社会が変わってしまいました。
 どうも、日本に明るい未来を感じにくいというのが乙の感覚です。投資先として考えても、日本は成熟社会ですから、魅力は少ないかもしれません。
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2006年12月03日

J.C.ボーグル(2000.11)『インデックス・ファンドの時代』東洋経済新報社

 乙が読んだ本です。
 本書の内容をひとことで言えば「インデックス・ファンドはこんなにもすばらしいので、これに投資しましょう」ということです。本書は475ページもあって、しかも図表が豊富で、読むのにかなり時間がかかりました。
 著者のボーグル氏は、バンガード社の創設者であり、自らインデックス・ファンドを作って運用してきた人です。
 本書にはいろいろとおもしろいことが書いてあり、投資を考える上で大いに参考になります。
 p.19 マーケット・タイミング戦略(相場の動きを予想して、株や債券・キャッシュの比率をダイナミックに変えるやり方)は多くの投資家にとって逆効果だと述べています。乙のちょっとした経験でも、確かに、タイミングを見計らうのはむずかしいと思います。相場は音もなく変わっていくのです。
 p.70 「低コストはリターンを増幅する」ということです。それが予想外に大きな影響を持つということをデータを示しながら詳述します。そして、p.78 まで、コストが大事だということを強調します。
 pp.142-143 「三目並べ」が出てきて、ゲームの話が展開されますが、乙には、これが何を意味しているのか、さっぱりわかりませんでした。
 p.180 「時間とともにコストはリターンを損なう」ということです。長期投資すれば、形成される資産価値にはコストがきわめて大きな影響を持っていることが示されます。
 p.183 グローバル投資を否定しています。著者はアメリカ人ですから、アメリカ国内の投資だけで充分だとしています。でも、この話を日本人から考えると大変おもしろいです。日本国内の投資だけに限定していいでしょうか。それともアメリカへの投資を積極的に考えるべきでしょうか。なかなか難しい問題です。
 p.216 ファンド・オブ・ファンズはいかにダメかが述べられます。余計なコストがかかるのでダメだという簡単な話です。
 p.287 アクティブ・ファンドの高い回転率は、積極運用の象徴のようなものですが、それが税金面でも不利になることを説いています。
 p.373 ファンドの取締役の報酬が高いという話です。あまり大した仕事もしていないのにとのことです。そうかもしれません。
 p.375 各種ファンドの手数料が現在に至るまで次第に高くなってきたことを述べます。実にけしからん話です。
 p.395 ミューチャル・ファンドが運用する側にとっていかに儲かるかを述べています。しかし、ファンドが儲かるということは、投資家は損をしている可能性が高いのです。要注意です。
 p.471 監訳者の井手正介氏の「あとがき」ですが、アメリカのファンド業界、年金制度などの簡略な解説になっており、著者が当然としていることを、いわば日本の読者向けに補って書いていてくれるので、これも、本書を理解する上で大いに参考になります。せっかくなら、こういうのを最初に持ってきても良かったかもしれません。(出しゃばりすぎだといわれかねないですが。)



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2006年12月01日

海外投資を楽しむ会(2000.4)『ゴミ投資家のための インターネット投資術入門』メディアワークス

 乙が読んだ本です。
 やや古くなってしまった記述がありますが、基本はしっかりしていて、読んでいておもしろいです。
 しかし、このタイトルは良くありません。全317ページの本ですが、「インターネット」の話は、p.257 になって初めて出てきます。つまり、もともとインターネットのことは関係ないのです。それを題名にうたうのは、ちょっと感心できません。販売政策上、出版社サイドがリードしてこういう題名をつけたのでしょうが、最後は著者が了解しているはずですから、著者の考え方の問題です。
 PART 1 は、pp.17-170 で、投資の考え方を述べるところです。説得力があります。
 乙には、pp.52-53 確率半分のギャンブルでほぼ確実に勝てる「マーチンゲール」の話が(意外で)おもしろかったです。
 pp.54 から(PART 1 の中で)STEP 2 が始まりますが、これが p.138 まで続きます。「「現代投資理論」をめぐるちょっとだけ長い旅」というところですが、確かに長いです。わかりやすい説明だと思いますが、ちょっと飽きます。そして、その長い話の結論は、p.145 に書いてあります。世界のインデックス・ファンドに投資するということです。
 その直前、p.144 に日本人投資家がおかした間違いについて書いてあります。一つは個別株に投資したことです。そして、もう一つは日本株に投資したことです。データを示して、こういう議論を展開されると、もう従うしかありません。
 p.161 平均への回帰というおもしろい現象について書いてあります。このことからも割安株に投資するということの意味がわかるというものです。
 というわけで、本書は、PART 1 だけを読んでも価値があるものと思います。
 PART 2 は、pp.171-274 の「インターネットで外国債券投資」というもので、ここもおもしろかったです。
 p.220 には、債券の売買手数料が出て来ます。100万円以下で1%なんですね。こんな話は知りませんでした。これはけっこう高いです。ネットで調べても、売買手数料がかかるとは書いてありましたが、具体的にいくらかかるかは書いていないケースが多いのです。
 p.234 日本でもジャンク債市場が必要だという話が書いてあります。なるほどと思いました。
 p.272 外国債券を買うなら、アメリカのエージェンシー債の割引債を1万ドル分買うのがいいということです。これが外国債券投資の結論部分です。
 PART 3 は、pp.275-315 と短いのですが、ミューチュアル・ファンドを買おうという話です。p.293 で、AMEX のインデックス・ファンドを買うのがいいという話です。
 全体としてよく書けている本で、ファンドや外国債券投資の説明がかなり詳しく、特に、海外に投資しようとする個人投資家には役立つ面が多いように思います。著者の知識の幅の広さに脱帽です。


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2006年11月29日

週刊ダイヤモンド 2006.12.2 特集:「投信」の罠

 乙が読んだ雑誌です。11月27日発売でした。
 20ページほどの投資信託の特集があったので、買ってみました。
 グロソブの問題点で始まり、ダメな金融商品として、毎月分配型投信、Bシェア投信(販売手数料を無料にしながらその分を他で取るもの)、リスク限定型投信、元本確保型投信、変額年金保険、セット販売、ファンド・オブ・ファンズ、テーマ別投信(ご当地ファンドや高配当株投信)、バランス型投信を挙げています。もっともな話です。
 次に、「内部事情編」として、ファンド業界の内側を暴露しています。運用の腕前が今ひとつで、チャート信奉者が意外に多く、素人と格差がないこと、雑務が多いこと、定時退社が普通の会社もあり、ぬるま湯体質であること、給料は上下の差が大きいこと、ファンドマネジャーは高齢化してきていること、投信の運用会社には親会社からの天下りが多いことを述べています。それぞれのテーマがいかにも週刊誌的ですが、乙はおもしろく読みました。
 このあとに、それでも買いたい人にということで、保有コストが安い分野別・投信ランキングがあります。
 もっともおもしろいのが「オリジナル投信編」で、投信よりも安いコストで自分の投信を作ろうという話です。pp.56-59 の4ページですが、読みがいがありました。
 日本株では、普通の投信よりも TOPIX ETF が安く、それよりも、大型株7銘柄の株でほぼ TOPIX の動きに追随することができるという話は、具体的な銘柄が書いてあって、参考になります。
 日本債券は、投信よりも国債そのものがいいということで、これは当然でしょう。
 外国株の例として中国株を取り上げますが、ハンセン連動のトラッカー・ファンド・オブ・ホンコンがコストが安いとのことで、乙も同様に思っていました。p.59 によれば、信託報酬 0.09% とあります。乙が以前読んだ話では、
http://otsu.seesaa.net/article/26736371.html
1.4% くらいという話だったので、ちょっと手が出しにくいなあと思っていました。しかし、0.09% ならば、買う一手です。どちらが正しいのでしょうか。
 外国債券としては米国債が取り上げられます。米国債を直接買えば投信よりもコストが安いのは当然ですが、コストが具体的にいくらかかるのか、乙は知りませんでした。記事によると、200万円分購入して、5年間保有した場合、35,000 円だそうです。既発債の場合、証券会社の買取と売出の価格差がいわば手数料なのですが、これを見抜くのがなかなか大変なのです。証券会社も電話くらいでは簡単に教えてくれません。この記事によれば、だいたい 0.7% ほどかかり、さらに口座管理料がかかるとのことです。
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2006年11月28日

麻生稔(2006.10)『アメリカ株投資完全マニュアル【基礎知識&口座開設編】』パンローリング

 乙が読んだ本です。
 読み始めてすぐに、この本を買うべきではなかったと反省しました。p.2 にあるように、この本はアメリカ株のデイトレードの本なのです。乙は、デイトレードは行わない方針なので、この本はほとんど役に立ちませんでした。
 pp.48-88 口座開設の手順を説明したところですが、これだけで40ページも取っていて、長すぎます。また、その中には、pp.77-79 のように、麻生氏が「ぜひ読んで」という割には、やや不鮮明な小さな文字で(しかも英語で)書かれているページがあり、とうてい「ぜひ読んで」ということではないようなページが含まれます。
 p.89 Real Tick というソフトの使用を薦められますが、この使用料が月額 265 ドルとのこと。乙は「高い!!」と思いました。使用料だけで月額3万円ですから、これを上回る利益を出さなければなりません。いくら運用すればそんなことが可能でしょうか。このやり方は乙の方針と合わないと思いました。
 p.90 現物株の取引手数料も高いです。片道15ドルかかります。こんなに高いのでは、一度買ったら、じっと持っているのが一番正しいと思えます。しかし、著者は「日本の証券会社と比べてもそう高くはないですね。」といいます。このやり方は乙の方針と合わないと思いました。
 こういう条件でも、麻生氏のようにデイトレードで利益を上げている人はいるわけですが、まあ、乙の住んでいる世界とは別世界ですね。
 この本については、
http://www.panrolling.com/books/gr/usstock.html
で一部読めます。


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2006年11月26日

岩崎博充(2004.10)『海外預金口座の開設・活用徹底ガイド』日本実業出版社

 乙が読んだ本です。
 文字通り、世界の各地で海外預金口座を作るためのガイドブックで、それぞれのお国の事情なども詳しく書いてあり、どこに銀行口座を作るか、迷っている人にも役に立つ本だといえます。
 p.11 国内の金融機関でも、海外口座の開設を扱っていたのに、顧客が集まらず採算が取れないということで、撤退してしまった例が多いのだそうです。乙には意外でした。まだまだ、海外口座開設はマイナーなんですね。
 pp.42-43 2ページの表形式で、国・地域別の海外口座開設事情が掲載されていて、これだけで全世界の事情が分かります。それにしても、よくこんなに調べたものです。
 p.84 日本の銀行は、バンクリファレンスを出さないという問題を論じています。これがないと、海外の銀行で口座を開設する際、大きな問題になります。なぜ出さないのでしょうか。岩崎氏は「単なる怠慢なのか、無知なのか、それとも別の意図があって出さないのか。日本の金融業界が規模は世界トップレベルでもサービスは3流といわれる証拠だ。」と述べ、厳しく批判しています。乙は、日本の銀行が内向きの(国内向けの)営業だけを重視してきたことが原因だろうと思います。本当の意味での金融ビッグバンが実現していないのでしょう。
 p.110 からの実践編では、「(在日)銀行の紹介で口座を開設する」が四つの銀行、「直接、現地で海外口座をつくる」が六つの銀行、「インターネットで海外口座を開設する」が四つの銀行を取り上げ、具体的にどうすればいいかを詳しく説明しています。
 実践編が本書の半分を占めますが、このくらいの記述で充分間に合うのではないかと思います。
 全体として、海外口座に興味のある人は、一読するといいと思います。多くの人は、あちこちの銀行に口座を開設するのは大変ですから(それぞれに100万円くらいの最低預貯金金額が求められますから)、まずは一つからはじめることになるでしょう。その場合、本書1冊で全世界を見渡すことができますから、ありがたい本だといえます。



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2006年11月24日

藤田郁雄(2006.4)『みんなの投資----投資信託でゆっくり確実に資産をつくろう』ダイヤモンド社

 乙が読んだ本です。
 とてもすばらしい本で、若い人は、これ1冊で老後に備えた5000万円の資産を確実に作ることができます。
 乙がいろいろ読んだ本の中で、最も簡単に、最も正しく、最もわかりやすく、最も具体的に、どうすればいいかを明示した本だと思います。著者の藤田氏は、1976年生まれの現在30歳だとのことですが、この方は、この年でよくここまで理解し、自分なりのやり方を作り上げたものだと思います。乙は、この本を一番のおすすめ本としたいと思います。
 乙が30代でこの本に出会っていたら、人生が大きく違っていたことでしょう。最近、いろいろな投資関連本を読むようになって、初めてこういう本にも出会うことができたのですけれど……。乙は、いろいろな道を探し求めてふらふらしていますが、藤田氏は初めからぶれずに一本道を示しています。すばらしいことです。(もっとも、奥付のところの著者紹介には、藤田氏がいろいろ試行錯誤したことが書かれていますが、30歳までにこういう経験ができたことはすばらしいことだと思います。)
 p.25 にあるように、平均的日本人が漫然と人生を送っていると、平均的人生の場合でも赤字になってしまいます。まず、若い人はこの事実に気が付かなければなりません。こうならないためには、投資が必須です。
 では、どのようにするか。
 本書の結論をここに書いてしまいましょう。毎月5万円コースでは、p.102 にあるように、TOPIX オープン2万円、ステート・ストリート外国株式インデックス1万円、中央三井外国債券インデックス2万円を毎月自動引き落としで購入します。これだけです。なぜこれでいいのか、なぜこれが一番いいのか、どこで買えばいいのかを知りたい人は本書を一読してください。これらの投信を選ぶに到った理由、この組み合わせ方が一番いい理由をはじめ、リバランスのしかたや、投信の買い方から売り方まで、一通りのことが書いてあります。これらを読んで納得すれば、定期的な投信の購入をずっと続けることができるでしょうし、他のもっといい投信ができれば、そちらに移ることも可能でしょう。本書では、今後、情勢が変化したときにどうしたらいいかについても書いてあります。
 たとえば、金利が上昇すれば、日本の国債を購入するのもいい手になります。しかし、今は低金利ですから、それは選択肢からはずしたほうがいいと思います。したがって、本書のおすすめの方法は、あくまで現在における最適なやり方を述べたのであって、時代が変われば変わってくるでしょう。しかし、根底にある考え方は変える必要はありません。本書に書いてある原則を理解している人ならば、その時代にあったやり方を選んでいくことができるでしょう。そんなことをせずに、本書に書いてあるままに今から30年継続しても大きな問題はありません。
 乙は、読了後、さわやかな気分になりました。
 ところで、では、乙が本書に書いてある通りに実行するかというと、そんなことはありません。すでに投資してしまったものがいろいろあり、また、乙の年齢が高く、ハッピーリタイアメントまで15年しかありません。乙は、こういう条件の中で、自分なりに最適な道を模索していきたいと思います。
 しかし、30代以下の人には、この本を示して「この通りにやりなさい」とアドバイスしたいと思います。
 178ページのコンパクトな本で、たった1500円で、資産形成の全部がわかります。


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2006年11月22日

渋澤健(2006.3)『これがオルタナティブ投資だ!』実業之日本社

 乙が読んだ本です。
 本書は、ヘッジファンド、プライベートエクイティ・ファンド、ベンチャーキャピタルファンド、バイアウト・ファンドなどについて解説したものです。それぞれがどういうものかを知るには便利な1冊ともいえます。
 p.4 「はじめに」の最後のところですが、「一般個人のために書いたオルタナティブ投資の本は、もしかすると世界初?」とあって、驚きました。すでにいろいろな本が出ていますし、この本で説かれている各種ファンドについては、それぞれの解説がすでにされていると思います。ただし、そういうのをまとめて1冊にしたというのは、珍しいかもしれません。
 p.17 最後から5行目に「「マーケットは効率である」という論を信じるのであれば、これはマーケットをつくり上げる無数の各個別銘柄に関する情報(業績や受給など)はすべてその株価に織り込まれているということです。」とあります。何度読んでも、乙には意味がよくわかりませんでした。
 第2章は pp.64-110 ですが、このページ数で13種類のヘッジファンド戦略を説明しています。しかし、さすがにこれでは説明が簡略すぎて、一読してもよくわかりませんでした。(別の本を読めばわかりますが。)
 p.137 ヘッジファンドを解約するときは、最高益の水準から 15% くらい下げたときだという話はおもしろかったです。絶対収益を目指すヘッジファンドならではの(投資家サイドの)考え方です。
 p.163 プライベートエクイティ・ファンドは、当初、成績がよくなくて、その後次第によくなるという話が出てきます。乙の経験とも合致していて、なるほどなあと思いました。
 p.254 Bridge Capital 証券が設立され、ヘッジファンド運用が始まると書いてありますが、今、WWW を探しても、Bridge Capital 証券については、情報が見つからないようです。どうしたことでしょうか。

 本書では、いろいろなファンドの話が出てきますが、個人投資家がこういうファンドに実際出資できるのかどうかはわかりません。最低投資額はいくらなのでしょうか。具体的にどこの証券会社(?)にたずねればいいのでしょうか。本書にはこういう情報が一切載っていません。これでは結局お話として知るだけです。乙には、このあたりが不満でした。


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2006年11月20日

田平雅哉(2006.10)『5年後に資産家になる ドクター田平の「最強」外貨投資』主婦と生活社

 乙が読んだ本です。奥付を見ても発行年月日の記載がなく、それだけで信頼をなくしそうです。2006.10 というのは、アマゾンで確認しました。
 乙は、外貨投資全般を扱った本かと思ってタイトルだけを見てアマゾンで購入してしまいましたが、実は、FX(外国為替証拠金取引)の本でした。
 FXは、乙も少しやっていますが、基本的に、儲かるものではないと思っています。なぜならば、株や債券と違って、為替は本質的に何も利益を生み出さないからです。どう取引したって、ゼロサムゲームである以上、誰かが儲けるということは誰かが損するということです。FXの本だと知っていれば、乙は本書を購入しなかったでしょう。
 さて、乙が本書でおかしいと思ったところを中心にコメントします。
 p.51 図が1枚出ています。「「上がる」確率は株式よりFXのほうが高い」という表題で、東証1部上場銘柄は2000社以上あるから、確率が2000分の1であるのに対して、FXは8通貨ペアだから8分の1だとのことです。一体、何のことをいっているのでしょうか。乙には、田平氏が確率の考え方を理解していないとしか思えませんでした。
 p.149 ポートフォリオ理論を活用すると称して、ドル・円に29%、ユーロ・円に14%、豪ドル・円に57%を投じることを薦めています。これが一番リスクが少ないとのことです。乙は、おかしくて、笑ってしまいました。確かにリスクは少ないかもしれないけれど、こんな配分でリターンが得られるのでしょうか。それぞれの通貨が高くなり、円だけが安くなれば、そういうこともあり得ますが、なかなかそんなことは考えられないと思います。そもそもポートフォリオ理論は、株や債券など、リスクがありながら基本的にリターンがあるものを想定して最適な資産配分を考えるものであって、FXは、基本的にリターンがないものですから、ポートフォリオ理論を活用するという考え方がそもそも間違っていると思います。
 p.150 著者のサイトがあるとのことです。
http://blog.goo.ne.jp/invest555
です。しかし、ここは3ヶ月で閉鎖され、今は
http://invest555.wealth-ii.com/
になっています。次々引越をすることに文句をつけても始まらないとは思いますが、本に URL を書いている以上、そこを訪問する人のことを考えて、しばらくはそこで続けたほうがいいのではありませんか。そうでないなら、本に URL などは書かないようにするべきでしょう。
 乙は、この本を読まないことをおすすめします。


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2006年11月17日

海外投資を楽しむ会(2000.12)『ゴミ投資家のための世界の金融商品がわかる本』メディアワークス

 乙が読んだ本です。
 さすがに今となっては古くなってしまった記述が目に付きますが、しかし、書いてある内容の基本は間違っていません。
 本書は、PART 1 銀行編、PART 2 ファンド編、PART 3 株式投資編にわけて、いろいろな商品をランキングしています。どんな金融商品がどんな特性を持っているのか、概要を知るにはとてもいい本だと思います。
 特に、コストの話は興味深いことが多く、投資の基本はコストだなあと感じました。
 pp.64-65 米国債の買い方が書いてあります。アメリカの証券会社で買うのがいいとのことです。乙は、野村證券で買ってもいいと思っていました
http://otsu.seesaa.net/article/25117720.html
が、手数料が高くてダメだそうです。債券投資は一から考え直さなければならないようです。
 p.73 FX取引でも、海外は圧倒的にコストが安いとのことです。乙はあまりFXには興味がありませんが、やるとすれば、やっぱり海外を考えたほうがいいんですかね。
 pp.123-125 インデックス投資と同様のことが、日経先物を利用すれば低コストで可能だという話です。約定金額に対する売買手数料 0.08% と聞くと、なるほど安いと思います。証拠金100万円でレバレッジを16倍効かせて1600万円相当の取引ができるということですが、う〜ん、株式の先行きにかなり自信があるとしても、1600万円相当の投資は、なかなか踏み切れないでしょうね。たとえば、株価がぐっと下げたときをねらって買うのでしょうが、それにしても、乙にはなかなか買う決心が付かないことでしょう。
 pp.146-155 同じファンド会社の商品でも、日本で購入できるものとオフショアのものとではいろいろと違っているという話です。もちろん、運用成績も違います。おもしろいものです。
 p.156 「圧倒的に影響が大きい税コスト」ということで、税金が投資にいかに悪影響を与えているかが説明されます。だからオフショア・ファンドは手数料が高い(税金を払わない分高く設定できる)という話は説明としてすぐれています。
 本書は、普通の投資の本と違って、それぞれの金融商品に徹底的にこだわって、どんなものが(個人投資家にとって)都合がいいのかを述べています。ここまで調べて書けるという「海外投資を楽しむ会」はすごいものです。


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2006年11月15日

南亮進・牧野文夫(編)(2005.3)『中国経済入門[第2版]世界の工場から世界の市場へ』日本評論社

 乙が読んだ本です。
 少しは、中国経済を勉強しようと思って買って読んでみました。
 内容は、13章に分かれており、それぞれが中国経済のある面に焦点を当てて現状を記述しています。
 目次は次の通りです。
 第1章 世界の工場か、世界の市場か?―中国経済の軌跡と展望
 第2章 社会主義市場経済とは何か?―漸進型移行経済と政府の役割
 第3章 メイド・イン・チャイナは世界市場を席巻するか?―工業化と成長要因
 第4章 国有企業改革はどこまで進んだか?―国有企業の改革と所有形態の多様化
 第5章 農村はいかに変化したか?―農村と郷鎮企業
 第6章 失業率は本当に低いのか?―人口変動と労働市場の形成
 第7章 金融は中国経済のアキレス腱か?―金融・資本市場の形成
 第8章 輸出は成長のエンジンか?―国際貿易の要因と意義
 第9章 外資は何をもたらしたか?―外資導入の役割
 第10章 中国は国際社会にとって脅威か?―中華経済圏の形成と米中経済摩擦
 第11章 日中関係はいかにあるべきか?―日中関係の過去と将来
 第12章 持続的成長は可能か?―エネルギー・環境・食糧の制約
 第13章 成長の果実は誰の手に?―改革開放の光と影
 各章ともタイトルに「?」が付いており、こういう問題意識で当該の章を書いたということがわかる構成になっています。
 ただし、乙が読んだ限りでは、全体にあまりおもしろく思いませんでした。中国経済学の教科書だということですが、こういう本で学ぶ学生は大変でしょう。13章が13人の著者によって書かれているため、相互の記述があまり関連していない点が一番の問題点でしょう。もちろん、関連する事項は、お互いの間の参照(クロスリファレンス)が取れていますが、そこまでであり、記述内容はややずれたままです。また、13人の執筆によるため、一面では各章の間で記述が重複している部分も見受けられます。編者の苦心がうかがわれます。
 本書で一番わかりにくい点は、巻末の用語解説です。いくつかの章で共通に出てくる専門用語を巻末でまとめて解説しようという意図はわかりますが、成功していないと思います。たとえば、p.5 「結局それらは使い物にならず、中国版傾斜生産方式*の後には荒廃した国土が残っただけだった。」とあります。「*」が巻末に用語解説ありというマークなのですが、巻末は50音順に用語が並んでいます。では、一体、何を引くべきでしょうか。乙は、「中国版傾斜生産方式」を引きました。ありませんでした。実は、「傾斜生産方式」が見出しになっていました。
 同様の問題をいくつか上げておきましょう。「→」の左側が本文、右側が用語解説の見出しです。
 p.8 「バローの経済成長率の収束仮説*」→「経済成長率の収束仮説」
 p.11 「気功集団法輪功*」→「法輪功」
 p.59 「ソフトな予算制約*」→「ソフトな予算制約」
 というわけで、何が1見出しになっているのか(どこに解説があるのか)、専門家でない人にはわかりにくいです。「教科書」なんですから、何も知らない人でも読めるようになっていなければなりません。一つの手は、本文に出てくるところで、「中国版「傾斜生産方式」*の後には〜」のように、当該見出しを「」でくくることです。こういう配慮がないために、巻末の用語解説をあちこち引く羽目になってしまいました。
 乙が読んでおもしろかったところは、投資関連の話題ですが、二つです。
 第1に、p.66 国有企業の経営がいかにむずかしいかということです。金もないし、所有権はあいまいだし、企業内に共産党組織があるしということで、経営者は大変苦労している(その割りに報酬が低い)ということです。
 第2に、第7章で、中国の銀行が抱える問題点がわかったことです。不良債権がとんでもなく多いんですね。これはこれで大変です。
 本書は図表が多く、一通り読めば中国経済の現状をある程度把握できます。その意味で有意義な本ですが、投資家の興味と関心からはややずれているので、一般論としては、あまり読む必要は高くないと思います。


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2006年11月13日

株式会社シーコースト・パブリッシング(2005.5)『外貨投資 知って得する数字のカラクリ』技術評論社

 乙が読んだ本です。
 目次が
http://www.gihyo.co.jp/books/syoseki-contents.php/4-7741-2392-7
にあります。
 外貨預金、外貨MMF、外貨投信、外国債券、外国株売買、外国為替保証金取引について説明した本です。
 けっこうマニアックな本です。入門書レベルの記述もありますが、かなり突っ込んだ記述もあり、いったいどういう読者を想定しているのか、乙にはわかりませんでした。
 p.34 ビッグマック指数という話が出てきます。それで見ると、中国は、マイナス60%とのことです。つまり、4割程度でビッグマックが買えるというわけです。1米ドル=8元という為替レートではいけないのであって、中国の物価を考えれば1米ドル=3.2元くらいになるというわけです。日本円でいえば、1元が15円くらいですが、1元40円くらいでちょうどいいということになります。
 この話は、乙の経験
http://otsu.seesaa.net/article/27070982.html
とは、やや食い違います。ただし、乙は、中国にいたとき、ビッグマックは一切食べませんでしたので、値段も知りません。
 p.41 外貨定期預金のアンケート結果が紹介されています。50-100 万円くらいを数年にわたって預けっぱなしにするのだそうです。乙は、外貨預金をする人の気持ちが分かりません
http://otsu.seesaa.net/article/24103836.html
が、利用者像がわかって興味深かったです。
 p.84 アンケートによると、外貨 MMF の初期投入金額は約20万円だそうです。合計では約100万円とのことですから、20万円ずつ5回くらい購入しているのが平均的という感じでしょうか。
 pp.94-05 債券のことを「債権」と誤記しているところが何ヵ所もあります。p.106 も同様です。何ヵ所もあるのは、ミスプリではなく、著者が勘違いしている証拠です。こういうミスは信頼をなくします。
 p.117 「短期の債券は割引債といわれ、中期、長期の債券は利付債という。」とあります。p.124 にも同様の趣旨が書いてあります。これも明らかな間違いです。割引債で何年もの運用期間のものがあるという事実だけで、間違いであることがわかります。こういうミスは信頼をなくします。
 p.150 カバードワラントの話が出てきます。書いてある説明が間違っているわけではありませんが、外貨投資の入門書という感じで記述されている本で、こういうハイリスク商品について書いてしまっていいのでしょうか。
 p.190 以降の外国為替保証金取引での各種テクニカル指標の話も同様です。テクニカル指標といっても、あまりあてにはできないものですが、そういうものまで書いてあるというわけです。
 本書では、読者のレベルをどんなふうに想定しているのでしょうか。乙は疑問に思いました。
 200 ページほどの比較的コンパクトな本でありながら、ときに妙に詳しい記述があるのは、アンバランスです。たとえば、p.94 には、投資信託には株式投信と公社債投信の2種類があるという話が出てきます。こういうことを述べる本であるということは、投資信託についてよく知らない人を想定しているということでしょう。こういう態度と、上述のマニアックな記述とは相容れないと思います。
 外国株については、9項目18ページの記述ですが、その中に、カバードワラント関係が3項目6ページ入っているのです。
 いくつかの勘違いによる記述の間違いと、このアンバランスを考えたとき、乙はこの本はあまりおすすめできないように思いました。


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2006年11月08日

石田和靖(2005.10)『15万円からはじめる本気の海外投資完全マニュアル』パンローリング

 乙が読んだ本です。
 http://www.panrolling.com/books/gr/kaigai.html
に概要と目次があります。本文の一部が読めます。
 ちなみに、このページには「2005年9月21日発売」とありますが、本の奥付には、「2005年10月3日 第1刷発行」とあります。きっと、発行する前に発売していたのでしょう(笑)。
 本書は、香港上海銀行、スタンダードチャータード銀行、ハンテック証券での口座開設とその利用法を中心に書かれています。
 本書の記述内容は、適度な詳しさであり、読みやすく、これから口座開設を行う人には適切な「マニュアル」となると思います。
 乙が気が付いたことを中心に、いくつかコメントします。
 p.42 (2) HSBCパワーバンテージの投資用口座の開設ですが、まず申込書の URL が違います。(きっと、本書の刊行後、変更されたのでしょう。)次が正しいものです。
http://www.banking.hsbc.com.hk/hk/personal/forms/pdf/personal/p008.pdf
ちなみに、この書類は、書類のダウンロードサイト「Download Forms and Documents」
http://www.hsbc.com.hk/1/2/hk/investments/download
の中の「Integrated Account - Investment Services Application Form」を指します。しかし、これは「Integrated Account」の話であり、本書のものとずれています。(ファイル名が一致しているので、乙はこれかなと思いました。)
 書類のダウンロードサイトの中には次の3種類の書式があります。
Integrated Account - Investment Services Application Form
Integrated Account Opening Form - Investment Services
Personal Investment Account Opening Form
 この中のどれを使えば口座開設ができるのか、乙にはよくわかりませんでした。乙が口座を開設したときの書類の控えもどこかにいってしまいましたし……。
 このように、時期が変わると、銀行の書類の書式も、そのありかも、どんどん変わってしまうので、本書のような「マニュアル本」はすぐに古くなってしまう面があります。
 さて、本書の p.43 では、HSBCパワーバンテージについて、要約するとこう書いてあります。「株や投信を買う場合、香港ドル普通預金か香港ドル当座預金でないと、買えない。外貨預金での決済はできない。」これは間違いです。現に、乙は、HSBC 香港で米ドルやユーロで投信を買っていますから。
 これは、HSBC が用意した pdf ファイルの記載がまずいのであって、著者は、それを忠実に訳しただけだと思いますが、それにしても、誤解を招く表現だと思います。先の言い方でいえば、株は香港ドルでなければ買えませんから、この記述でいいのですが、投信はいろいろな通貨で購入できますから、「や投信」を削除しなければなりません。
 p.86 スタンダードチャータード銀行では、エクセルバンキングとイージーバンキングというのがあるという話が出てきます。口座維持手数料が無料となる残高が両者で違うということはわかりましたが、肝心の二つのサービスの違いが何かについては、まったく書かれていません。ここはもう少し補ってもよかったのではないでしょうか。
 p.93 「HSBC で株を買う必要はありません(香港の地場証券はほとんどが HSBC よりも手数料が安いのです)」とあり、香港で株を買う場合に地場証券を利用することを薦めています。では、実際はどうなのでしょうか。
 HSBC では、株の売買を行うと 0.25% の手数料(最低 100 HKD=1500円)がかかり、その他に、口座管理料として、半年で 100 HKD=1500円がかかります。
http://www.hsbc.com.hk/hk/personal/invest/sec/local.htm
 本書で紹介されるハンテック証券の手数料はというと、p.111 に書いてありますが、0.2〜0.5% とあります。取引高に応じて手数料が変わるようです。とすると、乙のように、小口分散投資で、かつバイ・アンド・ホールドで長期に保有しようとすると、あまり取引しないことになりますから、もしかして、最高額の 0.5% かかるのではないでしょうか。
 この手数料については、ハンテック証券のホームページに記載があります。
http://www.hantec.com.hk/hantec/sec_en/sec.do?counter_sec='a'
Brokerage のところには「According to client's Brokerage Fee」とあり、手数料が明示されていません。
 かろうじて「Min $80.00」とあるのは確認できましたが、一概に、ハンテック証券の手数料が HSBC よりも安いとはいえないように思います。(ただし、口座維持管理料がかからない点は、ハンテック証券のほうが安いと言えます。)
 なお、ハンテック証券では、p.110 にあるように、オンライントレードは、できるけれどもコストが高いということで、オンラインの株売買は実用的ではありません。この先、これが無料でできるようになることを期待したいと思います。
 p.117 日本の証券会社から香港の証券会社への株式の移管はできないと書いてあります。乙は知りませんでした。たぶん、そうだろうとは思いましたが。
 p.128 □の中の 3 yr のところ、226万→326万のミスプリがあります。ま、文脈から単なる誤字であることが明らかですから、ほとんど問題はありません。
 本書は、富裕層でなく、一般的なサラリーマンが海外投資をはじめる場合に有用なものだと思います。海外投資をはじめるなら、読んでおいて損はないでしょう。

 本書もおもしろいですが、著者のホームページ(kz@銅鑼湾 というペンネームで書かれています)
http://kowloon.livedoor.biz/
を訪ねるのもいいと思います。


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2006年11月06日

渡辺賢一(2005.9)『大事なお金は香港で活かせ(改訂版)』同友館

 乙が読んだ本です。2002年に出た本の改訂版です。
 タイトル通りの本です。まあ入門書といったところでしょうか。
 p.12 読み始めてすぐに、邦銀のサービスの悪さが5点指摘されます。
@営業時間が短い
A土曜日は休業
BATMは午後6時以降に利用すると余分な手数料がかかる
C外貨両替の手数料が高い
D英語がまったく通じない
 これら5点は香港では全然問題になりません。乙も、邦銀と HSBC 香港を利用していますので、うなずけるところが多かったです。日本の銀行の「遅れ」はどうしようもありません。一番いいのは「使わない」ことだと思います。(日本で生活する以上、給与振り込みや公共料金の引き落としで使わないわけにはいきませんが。)
 pp.59-62 香港には悪徳業者もいるという話です。それはそうでしょう。世界中に変なヤツはいます。問題はそれに引っかかるかどうかということです。個人が銀行口座を開設する程度なら、悪徳業者に引っかかることはほとんどないと思いますが、こういう事例は参考になります。
 p.77 香港では HSBC が一番だということです。著者がいろいろ経験した上での判断ですので、うなずけると思います。
 p.158 香港ドルの口座から日本でお金を引き出すときは、ATM が一番いいという話が出てきます。乙は、それは違うだろと思いました。ATM では、1回25香港ドルの手数料がかかります。そして p.103 にあるように1日では2万香港ドルまでしか引き出せません。約30万円です。だいたい、けっこうなコストをかけて海外に持ち出した自分の金を引き出すのですから、30万円くらいで済むわけがありません。30万円の金が必要なときは日本の銀行を使うべきです。どうせなら100万円ないしそれ以上を引き出すことになるでしょう。とすると、1日30万円という制限はかなりきついことになります。120万円(1万米ドル)だと4日かけて毎日ATMに出かけなければなりません。手数料は合計で100香港ドルかかります。だったら、そのコストで、HSBC から日本の銀行の自分の口座に送金したほうがいいのではないでしょうか。海外送金手数料は100香港ドルです。そもそも、この話は、香港ドルをメインにして投資している人の場合に当てはまる話で、乙のように米ドルやユーロで投資している人間には当てはまりません。米ドルやユーロから香港ドルに両替して(この段階で為替手数料がかかります)それを円で引き出す(この段階でもう一度為替手数料がかかります)というのは不利な話です。乙は、(1万米ドルないし1万ユーロ単位になりますが)FXを利用して日本円に戻すことを考えています。
http://otsu.seesaa.net/article/19378324.html
 p.195 HSBC でファンドを買うときの手数料ですが、5.25% かかります。それを「1000米ドルの投資なら、52米ドル50セントになります。」と書いていますが、それは違います。1000米ドルでファンドを購入すると、49米ドル88セントの手数料が引かれて、950ドル12セントがファンド購入に充てられるのです。49.88/950.12=0.0525 です。ここは著者の計算違いです。この計算法は、HSBC に限らず、どこでも同様に計算されます。(ごく一部に、1052ドル50セントを支払う場合があります。)もしかすると、著者はファンドを購入したことがないのかなどと疑ってします。(乙の疑いすぎでしょうが。)
 p.197 HSBC では、オフショアファンドが銀行窓口でしか買えないという話です。これは、この本の最大の間違いです。乙は、HSBC のネットバンキングでオフショアファンドをいろいろ買っています。乙の HSBC の口座開設は2005年6月でしたが、最初からネットバンキングで買えました。この本は2005年9月刊行ですが、とんでもない間違いを書いています。これを読んで HSBC での口座開設をあきらめる人がいるとしたら、大問題ですし、HSBC 関係者が日本語を読めたら(日本に支店があるのだから日本人が雇用されているでしょう)抗議が来るレベルの問題です。この本は、絶版にし、この部分を書き直して次の改訂版にするべきです。
 というわけで、ここまで読んで乙はびっくりしました。この本は読むべきではありません。


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2006年11月02日

中村芳子・馬養雅子(2005.12)『投資信託 知って得する数字のカラクリ』技術評論社

 乙が読んだ本です。
 目次が
http://www.gihyo.co.jp/books/syoseki-contents.php/4-7741-2614-4
にあります。
 2ページで1項目について書くというスタイルで、各項目ごとに必ず一つの数字をあげて説明しています。その意味でタイトルに偽りはありません。しかし、ところどころ無理に数字として表現しているところもあります。たとえば、p.128「目論見書は何部で構成されている?」に対して「2部」と書いてあります。確かに、第1部の証券情報と第2部のファンド情報で、あわせれば2部であり、間違いではありませんが、「数字で表す」ということは、大小関係などがはっきり分かるからそうするのであって、その意味では、ここでいう二つというのは2種類ということであり、それぞれを説明すれば終わってしまいます。つまり、もともと「数字」には関係ないところなのです。こういった記述があちこちにあるので、乙は、ちょっとどうかと思いました。
 ただし、本書は、投資信託の概説書と考えれば、よくできていると思います。
 乙が読んでいくつか面白かったところを書き抜いておきます。
 p.10 日本の投資信託は約 2610 本だそうです。大した数ではないのですね。1995 年ころは 6300 本を越えていたのに、どんどん減少してしまいました。投資環境がそれだけ悪化しているということでしょうか。
 p.16 日本では1年間に約 170 本のファンドが新規設定されるとのことです。次々設定され、次々償還され、多産多死型だとのことです。これでは、長期運用は望めないですね。
 p.23 投資信託の独立系の運用会社は、たった3社だけなんですね。こんなに少ないとは思いませんでした。さわかみファンド
http://otsu.seesaa.net/article/14016027.html
ありがとう投信
http://otsu.seesaa.net/article/14110930.html
それに、スパークス・アセット・マネジメント投信
http://www.sparx.co.jp/publicfund/
だそうです。乙としては、ここが数十社くらいはほしいところです。日本では投信が日陰者扱いされているし、よい意味での競争が起こらないことがわかります。
 p.34 アメリカの投資信託の規模が721兆円で、日本の18倍だそうです。実に大きいものです。このくらいないと、正常な投信の発達は望めないでしょう。
 p.49 さわかみファンドは約 300 銘柄の株を組み入れていますが、これは多いほうなんですね。インデックス・ファンドの保有銘柄が多いのは当然ですが、アクティブ・ファンドの場合は、ずっと少なくなります。だいたい100から300くらいだとのことです。バイ・アンド・ホールド戦略を採用する場合、そんなにたくさんの企業を調査するわけにはいかないでしょうから、まあ妥当な銘柄数というのがあるのだろうと思います。逆にいうと、さわかみファンドは、銘柄選択の目があまりないのかもしれません。
 p.55 ライフサイクル型ファンドというのがあるんですね。2010年までとか、2030年までとか、時期を事前に決めておいて、株や債券の比率を次第に変えていくというファンドです。個人投資家の場合、年を取ればリスクが取れなくなるということを組み込んだファンドというわけです。乙は、自分で買うつもりはありませんが、面白い考え方だと思いました。
 全体として、投資信託の入門書としてよく書けていると思います。金融機関から説明を聞くよりははるかに有意義です。


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2006年10月31日

海外投資を楽しむ会(2005.3)『小富豪のための上海<人民元>不思議旅行』東洋経済新報社

 乙が読んだ本です。
 出だしからいきなり「中国の銀行はこんなに面白い」ということで五つの体験談が載っており、引き込まれてしまいました。
 本書は、人民元口座を作った体験談と、その使い方を書いたもので、登場する銀行は中国銀行とHSBC中国です。
 もっとも重要なことは、日本円を人民元に両替することは簡単にできるけれども、人民元を外貨に両替することは、普通の個人にとって不可能だということです。まあ、香港に持ち出して両替するという道もありますが、かなり手間がかかります。そもそもそういうことは中国が認めていないのが現状です。
 人民元は、切り上げの方向にあることが明らかですし、そうならないにしても金利が高くなるでしょうから、人民元投資は魅力的なものです。しかし、人民元のこういう性質を考慮すると、普通の日本人にはちょっと手が出せないと思います。
 となると、それを乗り越えて人民元口座を作り活用する人というのは、どういう人なんでしょうか。中国にしょっちゅう出かけている人でしょうか。でも、何のために、……。もしかして中国でビジネスを展開している人でしょうか。本書を読んだ人で、本書の内容を活かすことができる人は、いったいどういう人なのか、乙には想像ができませんでした。
 例によって解説は丁寧で、この本だけで口座開設などはできそうに思えます。現地での行動を考えると、ある程度は中国語の知識が必要なのではないかと思いますが、著者たちの中国語のレベルはどんなものだったのでしょうか。書いておいてほしかったですね。
 一読し終わった後、普通の個人にとっては、この本を読んでもしかたがないのではないかと思いました。
 少なくとも、乙には、この本は不要でした。



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2006年10月29日

海外投資を楽しむ会(2003.12)『小富豪のための香港金融案内』東洋経済新報社

 乙が読んだ本です。
 出だしに「本書は2000年8月に発売された『ゴミ投資家のための金融シティ香港入門』の新版にあたります。」と書いてあります。それなら、乙は、前著
http://otsu.seesaa.net/article/25920504.html
は読む必要がなかったということです。
 目次が
http://www.panrolling.com/books/alt/hongkong2.html
http://www.alt-invest.com/pl/book/hongkong/index.htm
にあります。後者は “金融シティ香港”の基本知識FAQ や 香港豆知識 があって、便利です。
 本書は、香港上海銀行とシティバンク香港の口座開設からその口座の使い方を解説したものです。例によって非常に詳しく丁寧な書き方がされていますが、乙は、ここまで丁寧な書き方が必要なのか、疑問に思っています。香港上海銀行が pp.65-207、シティバンク香港が pp.209-320 で、両者ともに相当のページ数です。特に、香港上海銀行の話はかなり詳しく、本書を一読するだけで、どんなサービスがあるか、一通りカバーできそうです。ただし、p.86 あたりでは、債券の手数料の話がきちんと書かれていないようです。
 シティバンク香港についても、本書だけでほぼその全貌がわかります。p.211 で、シティバンクでは、インターネットで送金できる金額の上限が1日1万香港ドル(約15万円)と書いてあります。また、p.220 では、「株式売買とFX取引を除いて、インターネットで売買することはできません。」と書いてあります。投資信託がネットで買えないというのには驚きました。この2点を考慮すると、乙は、シティバンク香港を利用する気はしませんでした。逆にいうと、乙が HSBC 香港で口座を開設したことは正解だったということです。
 pp.22-64 は「“金融シティ”香港FAQ」という部分ですが、ここはけっこうおもしろかったです。
 p.46 「香港では、ファンドは銀行の投資口座を通じて購入するものと考えられています。地場証券やネット証券は株式しか扱わないところがほとんどです。」と書いてあります。なるほど。こう考えれば、証券会社を利用するメリットはあまりないことが納得できます。
 p.62 チャールズ・シュワブの話が新鮮でした。米国株、米国債、オフショアファンドを扱うとのことです。
http://www.schwab.com.hk/
がホームページです。ここは、けっこう手数料が高そうなので、乙は、たぶん、利用しないと思います。
 本書は、厚さはあるものの、記述内容は薄くなっているように思います。まあ、口座を開設する前に、どんなものか、手に取るようにわかるという点が本書の売りでしょう。各自にとって、口座開設の必要性・利便性があるのかどうか、事前に検討する場合には、かなり有用な本かもしれません。



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2006年10月26日

海外投資を楽しむ会(2003.8)『小富豪のためのタックスヘイブン入門』東洋経済新報社

 乙が読んだ本です。
 この本では(これ以降もそうですが)「ゴミ投資家」が「小富豪」に昇格しています。きっと、資産運用がうまくいって、資産が増加したのでしょうね。まずは、著者の方々に「おめでとう」と申し上げます。
 本書は、ページ数からいうと、オフショアバンク一つの紹介とオフショア・ファンドの検索サイト三つ(それに一つのオフショアファンド会社)の使い方がメインです。
 詳しい目次は
http://www.panrolling.com/books/alt/taxhaven.html
にあります。
 例によって、記述は大変詳しく、本書を読むだけで、オフショアバンクの口座開設とオフショア・ファンドの購入ができそうに思います。
 しかし、乙は、ここまで詳しく書く必要があるのだろうかという疑問を感じました。本書の紹介部分に書いてある内容は、WWW にアクセスすれば(そして英語が読めれば)すぐわかりそうなことばかりです。残念ながら、本書は外形的な厚さはあるものの、内容的には比較的薄いといわざるを得ませんでした。
 ただし、詳しく書いてあるだけに、本書によって、オフショアバンクやオフショアファンドが自分にとって必要なものか否かを判断するには充分です。乙の場合、アビーナショナル・オフショアに口座開設する必要性はほとんどないということがわかりました。それ以上に、HSBC 香港がかなり使いやすい銀行であることが再認識されました。
 Part 1(オフショアバンク編)でいうと、
 pp.49-116 口座概要・開設編 アビーナショナル・オフショア
 pp.117-161 口座活用編 アビーナショナル・オフショア
の2箇所は、オフショアバンクの紹介です。さっと斜め読みしてもいいところだと思います。
 Part 2(オフショアファンド編)でいうと、
 pp.233-264 スタンダード&プアーズ・ファンドサービス
 pp.265-296 フィナンシャルタイムズ・コム
 pp.297-330 モーニングスター(イギリス版)
 pp.331-352 インベステック・アセット・マネジメント
の4箇所は、オフショアファンドの検索サイトおよびファンド会社の紹介です。ここもさっと斜め読みしてもいいところだと思います。
 そうすると、本書で残るところ(読むべきところ)はかなり少なくなります。
 pp.16-39 海外投資の基礎知識
 pp.41-45 オフショアバンクの選び方
 pp.162-202 日本からの海外送金、個人小切手、海外投資の税金FAQ
 pp.204-232 オフショア資産運用FAQ
 あちこちにあるコラム(目次で調べられます)
だけを読んでもいいのではないでしょうか。これらの箇所は読む価値があると思います。
 以下、乙がおもしろく思ったところを3ヶ所ほどピックアップしておきます。
 p.36 オフショアの銀行はシンプルで、普通預金と定期預金だけがあり、インターネット取引に適しているとのことです。オフショア銀行がインターネット専業バンクに似ているという指摘はおもしろいと思いました。
 p.63 コラムですが、「単独名義の口座で本人が死亡したら」があります。これは大変重要な問題です。これに関しては、インターネットの普及で、この問題がかなり改善されたとのことです。ログインIDとパスワードを相続人に渡せばいいということで、乙もこれを意識しています。
 p.202 「将来、日本国内で使う予定の資金は海外に出さず、国内で運用したほうが合理的です。」とあります。海外投資の解説書にこういう文言が出てくるとは思いませんでした。この点に関しては、乙は若干違った意見を持っています。15年ほど海外で運用した後、国内に一部戻すつもりですが、かなりの部分は戻さずに、子どもに譲ることを考えています。子どもも国内に戻すことなく海外での運用を続けるでしょう。それでいいと思います。本当に必要になったときに一部を国内に戻す程度でよくて、大部分は海外に置いたままにしようと考えています。まあ、これは「日本国内で使う予定の資金」ではないといえますかね。

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2006年10月24日

森健(2006.9)『グーグル・アマゾン化する社会』(光文社新書)光文社

 乙が読んだ本です。
 投資に関する本ではありません。タイトルからわかるように Web 2.0 に関する本です。
 普段からアマゾンで本を買うことが多い乙としては、何となく買って読んでみました。
 本書によれば、アマゾンは、ロングテールをねらって大きく成長したとのことです。書店に並ばないようなほとんど売れない不人気本でも、ネットなら扱えるというわけです。インターネットが普及することで、とんでもないところにビジネスチャンスが出現するんですね。
 ところで、ネット証券などでもロングテールがねらえないものでしょうか。今は、各証券会社が扱える投資信託の数が限られていて、したがって、場合によっては投資家が複数の証券会社に口座を設ける必要があるわけですが、ネットだったら、たくさんの投資信託を扱っても、証券会社側の手間が増えることはあまりなさそうです。ですから、数十種類の投資信託を扱うのでなく、数百種類ないし数千種類(日本で買える全部?)を扱って、投資信託のスーパーマーケットのようにするというのはいかがでしょうか。ネット証券ですから、もちろん販売手数料は格安にできます。こういうスーパーマーケットは、ネット証券ならできます。というか、窓口販売では、手間がかかりすぎてとうていできません。
 p.108 アマゾンでは、一般人の書いたカスタマー・レビューがプロの書評を駆逐してしまいました。
 アマゾン流の(一般人による)レビューは、カカクコムなどでも見られます。こちらも大変有意義です。
 これと同様のことが投資信託の世界でもできないでしょうか。それぞれの投資信託を購入している人が何でも書き込めるような掲示板のようなものを設置します。Yahoo の個別株の掲示板みたいに、変な書き込み(失礼!)が集中すると意味がないのですが、そこは運営側が判断して適当なものだけを掲載するようにします。場合によっては、その投資信託に関して書かれた(ブログの?)記事にリンクを貼るようなことでもいいでしょう。そういうのがあったら、投資信託の購入者は大いに参考になるでしょう。購入者によっては、運用報告書などを丹念に読んで、当該の投資信託の問題点などを鋭く指摘するような記事を書く人も出てくるでしょう。そうやって、多くの個人投資家の声を反映させるようなサイトができたら、それを参考に投資信託を選ぶようなことも可能になるのではないでしょうか。
 投資信託は、本のように複雑な内容のものではありません。それに、本は何百万点もあるのに、投資信託はせいぜい数千種類程度しかないでしょう。しかも、投資信託の購入者の数は本の読者の場合に比べて圧倒的に少ないということもあります。これらの諸事情を考えると、うまく行かないかもしれませんが、乙はちょっと夢想して一人で愉快になっていました。
 p.177 情報とマネーは親和性が高いという話です。どちらもものとしての実体がなく、データにたやすく変換できるからというわけです。証券市場や為替市場はもともとネットに適していたことになります。乙としては、このあたりで、さらに一皮むけた新しい(投資に関する)サービスがネット上で起こることを期待しています。ネットを使わない高年層の個人投資家が減少しつつあり、個人投資家の株取引はすでにネットが中心になっていることを考慮すると、その可能性はあると思います。



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2006年10月22日

海外投資を楽しむ会(2000.8)『ゴミ投資家のための金融シティ香港入門』メディアワークス

 乙が読んだ本です。
 香港の三つの銀行と一つの証券会社に口座を開設する手順を解説した本です。
 しかし、内容がすっかり古くなってしまいました。出版されたときは、有用な面が多かったようにも思いますが、今は読む価値はほとんどないというべきでしょう。テレフォン・バンキングのことがいろいろ書いてありますが、今はこういうのを使う人はいないでしょう。インターネット・バンキングが一般的です。乙は、一読して、こんなにも苦労して香港の銀行を使ってきた人がいたんだなあと感慨を覚えました。逆にいえば、今の私たちが大変恵まれているということです。
 乙としては、ところどころにはさまっている「金融シティ香港Note」というのがおもしろかったです。香港についていろいろ勉強できました。
 ところで、三つの銀行の記述を読むと、それぞれはだいたい似たような感じです。それはそうでしょう。お互いの間でサービスの種類や手数料に大きな差があるようでは競争に負けてしまいますからね。だとすると、三つの銀行のそれぞれについてさまざまな情報を載せる意味はどこにあるのでしょうか。利用者からすれば、一つの銀行に口座を開設すればそれで充分なように思うのですが、……。本書の記述方針に疑問を感じました。
 記述内容は、大変詳しいです。まさに手取り足取りです。そこがこの本の売りなのかもしれませんが、乙は、もう少し簡略でもいいだろうと思ってしまいました。
 乙は、HSBC香港に口座を持っていますが、本書を一読して、他の銀行に口座を開く必要はないと思いました。一番ショックだったのは、各銀行・証券会社の送金手数料が高いということです。今は安くなっているのかもしれませんが、ちょっと足踏みしたくなる金額です。p.307 にはマンションハウス証券からの送金手数料が書いてありますが、何と HK$230もするのです。日本円で 3500 円相当です。これでは資金を他に持ち出すのを躊躇しますよね。
 また、株式の売買をするとなると、その手数料も高いです。もっとも、p.279 を読むと、香港での株式取引は完全に自由化されていないと書いてあります。だから、日本のネット証券のような格安の手数料が実現されていないのでしょう。事情はわかります。
 HSBCインターナショナルでは、英ポンドで運用する場合はいろいろ安くできるけれども、その他の通貨に関してはもろもろの手数料が高くなっています。英ポンドを運用するためだけにここに口座を開設するのもどうかなあと思いました。その手間(トラブルへの対応を含む)をかけたくないのです。
 結論からいえば、本当のゴミ投資家としてはいくつもの銀行に口座を開設するのは好ましくありません。ある程度まとめて運用するようにしないと、コストがかかりすぎます。多額の資産を運用する場合は、これらの手数料も大きな問題ではなくなるかと思いますが。
 p.337 によれば、著者の中には女性もいるとのことです。乙は、先入観から「海外投資を楽しむ会」は男性ばかりかと思っていました。偏見を持ってはいけませんね。


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2006年10月20日

海外投資を楽しむ会(2000.1)『税金のいらない投資信託』メディアワークス

 乙が読んだ本です。
 本書は、内容が薄く、今となってはあまりオススメではありません。
 本書は『ゴミ投資家のための税金天国入門』
http://otsu.seesaa.net/article/25298702.html
『ゴミ投資家のための海外ファンド入門』
http://otsu.seesaa.net/article/25672040.html
に続くもので、オフショア・ファンドについて一通りの解説がなされています。
 目次は、
http://www.alt-invest.com/book/sintaku.html
http://www.panrolling.com/books/alt/iranaitoshishintaku_contents.html
に掲載されています。
 乙がおもしろく読んだのは第1章だけでした。
 pp.10-14 では、海外ファンド、ヘッジファンド、オフショア・ファンド、ミューチュアルファンドなどがお互いどう違うのか、明確に書いてあります。とてもわかりやすいと思いました。
 p.37 「オフショア・ファンドこそがもっとも有利な投資信託であるとは主張しない。」とあります。ちょっと「あれれ」と思ってしまいますが、著者たちの良心の表れと見るべきでしょう。いろいろなファンドの特性を知り、それぞれの投資家が一番いいと思ったやり方でそれぞれに商品を選べばいいというわけです。
 第2章(pp.42-75)は、Micropal を使ってオフショア・ファンドを検索する話ですが、今やマイクロパルは本書で書いているようには使えません。
http://www.micropal.com/
という URL はありますが、本書の記述とはまったく異なっています。というわけで、第2章は、今はほとんど役に立ちません。
 第3章は「オフショア・ファンドを購入する」章です。申込書の書き方などを具体的に書類の形式と記入例を示して教えてくれますが、さて、こういう記述は必要でしょうか。
 本書で説明されている書類は、みんなやさしい書類で、英語もむずかしくないと思います。本書を見なくても記入できるようでなければ、オフショア・ファンドでの資産運用なんてどだい無理な話でしょう。実は、申込書よりも、目論見書(Prospectus)のほうがはるかに重要です。それぞれのファンドについて詳しく説明されているのですからね。申込書に使われている英語がわからないような人は、とうてい目論見書が読めないでしょう。それで大切な資金を投資して大丈夫なのでしょうか。
 そう考えると、第3章は、一体誰(どういう人)に向けて書かれてるのか、乙には理解できませんでした。ここに出てくる英語が読める人には、翻訳も解説も不要ですから、この章が不必要なわけですし、このレベルの英語が読めない人は、オフショア・ファンドに手を出すべきでないと思うからです。
 第4章以降も同様で、今となっては、あまり有用な情報といえないように思います。
 本書が刊行されてからたった6年ですが、この間に海外投資に関する環境は激変してしまいました。今ならば、インターネットを使って投資する方法を詳しく書くべきで、FAXなどはもう書いてもしかたがないでしょう。


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2006年10月18日

タックスヘイブンを楽しむ会(1999.2)『ゴミ投資家のための海外ファンド入門』メディアワークス

 乙が読んだ本です。
 http://www.panrolling.com/books/alt/kaigaifund.html
に詳しい説明があります。
 本書の中心は pp.160-243 のファンド一覧でしょう。本書は全体で約300ページありますから、その約3割がファンド一覧にあてられていることになります。しかし、ここは、実際のところ、すっかり古くなってしまったと思います。ファンドの成績はどんどん変わるし、新しいファンドができる場合もあれば、償還されて消えるファンドもあります。ということで、ここでは、このような実用的な記事ではなく、本書中に流れる思想のようなものについて述べたいと思います。
 まず、考え方としては、今でもけっして古くなっていないということをいっておきましょう。乙がとりわけおもしろく読んだのは、PART 1「ファンドの仕組みを1時間で理解する」です。ファンドについて、実にいろいろなことを教えてくれます。貴重な情報源です。
 p.31 ファンドは30億円以上の資産のあるものから選ぶようにというアドバイスがあります。ファンド運用会社の運用報酬は 0.4% くらいだそうですから、これでやっと利益が 1200 万円となり、何とか運用していけるというわけです。
 p.32 一方、日本の大半のファンドは資産が30億円もないから、赤字だということになります。
 p.43 スポット型投信(いつでも自由に売り買いができるわけではないユニット型のファンド)の成績が振るわないのは、固定手数料制のため、モチベーションが生まれないからと説明します。納得できる話です。
 p.43 証券会社のゴミ箱として使われているファンドがあるとのことです。これがどういうものかを説明すると長くなるので、本書をお読みください。乙は驚きました。日本の投信の成績がよくないことの理由の一つがこれだったんですか。
 p.47 おかしくなってしまったファンドを安楽死させるやり方が述べられます。なるほど、こういうことだったんですか。さらには回転売買も(会社側にとって)好都合ということになります。昔はこんなこともあったんですね。まさか、今はもうなくなったと思いますが、……。
 p.63 野村證券のボンド・セレクト・トラスト(BST)が有利な商品として紹介されています。
 乙は、本書を過去に一読していたのですが、このことはまったく覚えていませんでした。
http://otsu.seesaa.net/article/24380821.html
で述べたように、別のブログで BST について書いてあることを知って、「あ、そうか」と思ったのでした。自分が興味がないと、本で読んでも頭に入らないことを痛感します。
 p.78 「一国の金融機関の優劣は、その国の投資家の質によって決まります。」とあります。なるほど、そうですよね。ということは、やはり優れた投資家が多い海外で資産運用をしたほうがいい結果になるといわれているようなものです。海外投資の意味の一つはここにあるというわけですね。
 p.103 日本企業の PBR の数値は信用できないとのことです。時価会計でないということが、企業の資産価値を不透明にし、つまりは PBR にも影響を与えていたんですね。今は時価会計が導入されているので(どの範囲まで導入されているのか、乙は知りませんが)、さすがに違っているのでしょうね。
 p.104 バリュー効果はアメリカ株だけに見られるという話です。しかし、この話は角山氏の本
http://otsu.seesaa.net/article/21894584.html
とは矛盾する記述です。角山氏は日本株でもこの現象が見られたとしています。
 p.106 なぜ各種大手金融機関が LTCM の破綻に際して LTCM を助けるようなことをしたのか。それは、自らが LTCM に巨額融資をしていたり、LTCMのマネをして資金を運用していたからだと説明します。大手は、ここまで運用能力をなくしていたのかと、信じられない気分になります。
 p.142 オフショア・ファンドの販売手数料が高い(約5%)のは、これが実はアドバイザーへのコミッションになるからだと説明されます。なるほど、そうなんですか。だとすると、ネットの発達により、販売手数料が下がることがあるでしょう。(乙が経験した「販売手数料の割引」もこういうことだったのかもしれません。)
 p.280 『ゴミ投資家のための税金天国入門』
http://otsu.seesaa.net/article/25298702.html
で述べていた「ケイター・アレン銀行では両替手数料が無料」というのは間違いだったと書いてあります。それはそうでしょう。それが当たり前です。
 とにかく読んで楽しい本です。オフショア・ファンドの購入を試行錯誤しながら行っていくわけですが、その過程が克明に書かれている点に感心します。こういうのを知ると、自分でもできそうな感じになります。
 しかし、本書を今読むべきかどうかは人によって意見が分かれるところでしょう。


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2006年10月16日

坂爪一郎・立木信・溝上憲文(2004.6)『メガバンクがコンビニに負ける日』光文社

 乙が読んだ本です。
 『ゴミ投資家のためのビッグバン入門』
http://otsu.seesaa.net/article/25174202.html
に書いてあったことで、銀行とコンビニを比べる話があり、本書を思い出しました。乙は、刊行直後に本書を一読していました。
 ショッキングなタイトルです。pp.10-11 では、「いま、日本の銀行は、不良債権を抱え、貸し渋りを続け、預金者のお金を国債買いに回しているだけで、ほぼ何もしていないに等しい」といっています。つまり、銀行はコンビニ以下だということです。
 pp.20-22 で、銀行がコンビニ化し(コンビニの接客術などを学び)、一方でコンビニが銀行化している(ATM を置き、振込や各種税金の納付ができ、銀行の諸手続きも(銀行に取り次ぐ形で)できるようになりつつある)ことが指摘されます。銀行の将来像は、本当にコンビニなのでしょうか。そうかもしれません。しかし、銀行員がコンビニの店員に(低給料に耐えて)なれるでしょうか。なれないとしたら、銀行はどうなるのでしょうか。つぶれるしかないのでしょうか。
 p.26 役所の業務もコンビニが窓口になってきています。しかし、p.28 でいうように「本来なら、役所が24時間オープンするのが筋である。」が正しい考え方です。
 p.29 郵便局までコンビニ化を目指しています。今は24時間営業の郵便局がだいぶ増えてきました。そういえば、乙は、先日ドイツで見かけた Deutsche Post を思い出します。ドイツの「郵便局」ですが、民営化したため、本当にコンビニ化していて、文房具や雑貨などを店内で販売しており(というか、それがメインで)、一番奥のレジのところでおまけ程度に切手の販売や郵便の受付を行っているのでした。おもてに掲げられた黄色い看板がなければ、コンビニと何ら変わりません。日本の郵便局も、間もなくそうなるのでしょうか。
DeutschePost.JPG
 p.36 日本の銀行には、給料は高いが能力は低く横並びの銀行員がたくさんいるとのことです。これからは彼らはコンビニの店員のように扱われるだろうとのことです。つまり低賃金で働くということですね。銀行員も受難の時代になったというべきでしょう。
 p.40 銀行以上に信用金庫が危ないという話です。それはそうでしょう。地域密着型とはいえ、銀行とコンビニに挟まれているわけですから、将来は大変です。
 p.104 ここでも銀行員がコンビニ店員になれるのか、意識の問題だとしています。今の銀行員にはできないでしょうね。つまり、銀行がコンビニに負けて没落するというわけです。
 pp.132-134 銀行の合併には意味がないことが説かれます。でも、さらに銀行の合併は続くんですね。関係者は、ものがわからないのか、わかっていてあえてやっているのか、どちらなんでしょう。
 p.159- Chapter 6 は「金融社会主義の罠」という題で、今の日本はまるで社会主義国のようだといいます。公的資金を注入するというのは、国が銀行を国有化するようなものですから、まあ、金融社会主義というのも当然でしょう。こうして、銀行問題は、実は、日本社会が抱えている問題そのものだという見解が述べられます。この章はおもしろかったです。でも、読んでいると、日本に明るい未来はないように思えてきて、残念です。
 p.171 では、日本では間接金融(銀行を経由して預金者のお金が企業に流れること)が直接金融(企業が社債や株式を発行して資金を得ること)にシフトしてしまったことを指摘しています。こういう中では、間接金融の担い手である銀行がうまく機能しないのは当然であると思えます。
 本書を読むと、大手銀行(とくにりそな銀行)が腐っていることがよくわかります。不良債権問題も、銀行が悪いというよりも、お役所がそういう事態に至らしめた面が強いように思えてきます。その意味では、日本の暗い未来を象徴する本だといえるでしょう。
 p.201 Chapter 6 の最後は、こう終わります。「あなたは、それでもメガバンクにお金を預け続けますか?」乙の答えは決まっています。「いいえ」です。自分の資産は自分で運用していきます。メガバンクにお世話になる部分は、ゼロではないにせよ、ほぼゼロみたいなものです。
 乙は、提供されるサービスを考えて、自分のメインバンクを変更しました
http://otsu.seesaa.net/article/14604306.html
が、メガバンクの問題点は、もっと深いところに巣くっているようです。


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2006年10月14日

城繁幸(2006.9)『若者はなぜ3年で辞めるのか?』(光文社新書)光文社

 乙が読んだ本です。副題として「年功序列が奪う日本の未来」というのがついています。
 タイトルに引かれて買ってしまいました。
 本書全体を一読して、今の日本でいわれている数々の問題が全部つながっているような感覚になりました。城氏は、それらを関連付けて解きほぐしています。新卒者が会社に入ってたった3年で辞めることは、会社のあり方の問題だし、またそれは日本の社会のあり方の問題とつながっているということです。若者はどうにも未来の展望が持ちにくいようです。少子化はその一環だというわけです。ということは、少子化の解決はそう簡単ではありません。
 一番の問題は、日本では若者が中高年層に押さえつけられているということです。そもそも若い人の数が少ないから選挙でも力にはなれないのですが、若い人が選挙にいかない(投票率が低い)こともそれに輪をかけています。そうやって、若い人が将来の展望が持ちにくい状態になっているのです。
 各企業のリストラや採用方針の変更で新入社員が(正社員として)入って来なくなっていますが、その結果、派遣社員などの非正規雇用が増えています。労働組合も年功序列です。政治家だって、いわば老人代表で、社会の設計がうまくできません。そうして老人とともに日本は沈んでしまうというわけです。国債の発行残高の膨張も、結局は後の世代に任せようというだけの話ですから、そういう発想をする政治家も、それを何とも言わないマスコミも、みんなどうしようもありません。年金も同様の問題です。城氏は「年金も国債も火のついた爆弾を次世代にリレーしていくようなものだ」と書いています。
 少子化はますます進んでいますから、近いうちに再度年金改革がいわれるでしょう。城氏は、年金に関して、すでに受給している人を含めて、支給額を即日大幅カットすることを提案しています。これが一番公平だというわけです。そうかもしれません。しかし、それをいうなら、さらに一歩進めて年金制度自体を廃止することが一番いいのかもしれません。(実際のところ、こんなことをすると、年金をたっぷりもらって、もう死んでしまった人たちが一番おいしいところを食べたことになりますが。)
 投資家としては、年金などをあてにせず、資産の運用益(と取り崩し)だけで暮らしていくことができるようにする必要があります。乙は、15年後の退職を考えていますが、今の調子で資産運用を続けることができれば、そのころは年金なしでも暮らしていけそうに思います。
 p.152 から、東大生の国家公務員離れが進んでいる話が出て来ます。なるほど。今や国家公務員は不人気産業なんですね。天下りがなくなれば、国家公務員はおいしい商売ではないし、それを見越した若い人は国家公務員を希望しなくなっているとのことです。ということは、逆に、本当の意味での天下り規制が(数年から10年くらいのうちに)行われるのかもしれません。新卒者の動きはそれを先読みしていると見られます。
 この本は、若い人にこそ読んでもらいたいものです。そして、若い人が自分の将来を明るいものとしてとらえるようにならなければ、日本の再生はあり得ません。今は社会システムが変貌しつつある時代です。是非、若い人が、今までの考え方を捨てつつ、がんばってくれることを期待したいと思いました。


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2006年10月12日

タックスヘイブンを楽しむ会(1998.9)『ゴミ投資家のための税金天国入門』メディアワークス

 乙が読んだ本です。
 とってもおもしろい本です。やや記述が古くなった面もありますが、基本的な考え方は今でも有効であり、今読んで損はないと思います。乙は、以前一読していて、もちろん、そのときもおもしろいと思いましたが、今読み直しても、やっぱりおもしろいと思いました。
 pp.6-22 の Prologue を読むだけでも、著者たちの意気込みが伝わってきます。
 pp.16-18 国際分散投資がなぜ必要かを明確に物語っています。これを読んでも海外投資をしたいと思わないひとはへそ曲がりなのではないでしょうか。
 p.19 ケイター・アレン銀行では両替手数料が無料だそうです。驚きました。乙は世界中どこでも有料なのだと思っていました。(だって、銀行も儲けなければならないわけですから。)
 PART 1 (pp.24-41)「税金天国の基礎知識」と PART 2 (pp.44-90)「タックスヘイブンに銀行口座をつくる」は、今の乙にとってはあまりおもしろく思いませんでした。しかし、これから海外投資をしようとする人には有用な知識だと思います。
 p.78 で円を海外送金しようとして、めんどうであるとともにコストが高いことを述べています。それはそうでしょう。そうしなかったら、多くの日本人が海外口座で円を運用するでしょうからね。
 PART 3 (pp.92-132)「海外投資と税金の基礎知識」あたりから本書の本領発揮です。類書にはあまり書かれていないことがいろいろ出てきます。
 p.100 タックスヘイブンでは、ファンド(投資信託)に投資するべきで、株や債券には投資しないものだと説きます。税金の問題が一番大きいようです。
 pp.113-120 ゴミ投資家は合法的に税金を払わないことが可能だと述べます。運用金額が大したことないから、収益が年間20万円以下になることが多く、したがって課税対象にならないというわけです。所得税を払うことになっても国内投資より有利だそうです。
 pp.120-122 1億円の資産がたまったら、永遠の旅行者(Perpetual Traveler)になろうといいます。乙は、これは考えていません。
 PART 4 (pp.134-208)「タックスヘイブンで利回り400%のファンドを購入する」は、ファンドの具体的な選び方と購入のしかたを書いたもので、アドバイスの具体性が光ります。乙には、この章が一番おもしろかったと思いました。
 p.136 タックスヘイブン籍のファンドの有利さを述べ、「みんなが通信販売でオフショア・ファンドを購入するようになると国内の金融機関が儲からなくなるので、それはお金持ちだけの秘密にしているわけです。」と述べています。乙が、以前疑問に思っていたこと
http://otsu.seesaa.net/article/22528723.html
(「既に海外投資をしている富裕層と呼ばれる人たち」はオフショア投資がメジャーになっては困るといわれますが、それがなぜかわかりませんでした)は、ここに答えが書いてありました。もっとも、よく考えてみると、「国内の金融機関が儲からない」ことと「お金持ちだけの秘密」は論理的につながらないように思いますが。
 p.147 日本でもオフショア生命保険の需要があり、すでに代理店があるということです。そういうのを利用する富裕層が多いことがわかります。
 pp.164-170 オフショアファンドはハイリスクであることが示されます。3年で2倍になるようなファンドがいくつもある一方、オフショアファンドの4割は元本割れしているとのことです。
 p.172 五つ星の記号でファンドの評価が行われますが、その計算法が書いてあります。乙は、その意味を初めて知りました。
 pp.197-199 オフショア・ファンドの販売手数料は 5.9% ほどかかるという話です。まあそんなものでしょう。国内の投資信託よりも高いんですね。しかし、長期に保有すれば、大した問題ではないし、利回りが国内よりもいいことが多いので、このくらいは無視してもいいと思います。

 本書では、オフショア・ファンドで利回り400%のものを購入することができたということですが、過去の成績のいいものを選べば、こういういい成績のものは必ず見つかるものです。問題は、このファンドが、これからもこういう成績をあげ続けるとはいえないことです。こればかりは誰にもわかりません。したがって、本書は著者たちがオフショア・ファンドで資産を何倍にもしたということではないことをきちんと理解しなければなりません。この点で、どうも誤読をする人がたくさんいそうな気がして恐いです。


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2006年10月10日

海外投資を楽しむ会(1998.5初版、1999.12三版)『ゴミ投資家のためのビッグバン入門』メディアワークス

 乙が読んだ本です。
 最初に読んだのはずいぶん前なのですが、ふと思い起こして、再度読んでみました。
 実際に読んだのは三版ですが、初版からの追加の記述がいくつかあり、著者たちの良心を感じました。ただし、さすがに現在の目から見れば古くなった記述が目につきます。
 本書の趣旨は、1998年の金融ビッグバンによって、個人投資家はどう影響を受けるのかを明らかにし、どのように投資をしたらいいかを考えるというものです。
 しかし、調べはじめると、実は衝撃の事実が明らかになります。数十万円からせいぜい200-300万円しか金融資産を持っていない人は、金融市場では「ゴミ」と呼ばれ、まともに相手にされないということです。そこで、著者たちは、自力でオフショアに口座を作ることになります。
 この経験の過程で、いろいろ調べた資産運用法の問題点や税制の問題点などを述べ、オフショア投資がいいという結論に到る道筋を克明に描いています。本書の記述は、かなり冗長に感じるところもありますが、初めて投資をするような人にはこういう本がむいているでしょう。
 本書は、PART 1 (pp.18-75) 基礎知識編、PART 2 (pp.78-122) 外貨預金編、PART 3 (pp.124-172) 外債編、PART 4 (pp.174-208) 投資信託編、PART 5 (pp.210-268) 海外預金編に分かれています。
 pp.10-15 のプロローグは、ショッキングな内容です。ビッグバンによって、少額の投資家は(金融機関にとってコストがかかりすぎるから)切り捨てられ、損をするということが述べられます。これだけで、本書を読もうという気になります。
 pp.26-30 なぜ日本の証券会社系列の(子会社の)投資信託がいい成績を残せないかが説明されます。乙は納得しました。この話は p.176 でも繰り返されます。
 p.38 株も短期売買よりは長期保有が有利だといいます。売買のたびに証券会社に手数料を取られるからです。それはわかりますが、最近のように、ネット取引によって売買手数料が非常に低額になってしまった場合でもこの理屈が成り立つのかどうか、知りたいところです。
 pp.39-40 投資信託は国内のファンドよりも海外のファンドが有利であるといいます。それはファンドマネージャーの給与体系の違いが原因だということです。最近は、国内のファンドでも成功報酬制でファンドマネージャーに報いようとするところが出てきていますから、日本も変わりつつあるといったところでしょうか。
 p.79 シティバンクには支店がないということです。逆に、日本の銀行は支店中心主義でオカシイということになります。乙はシティバンクに口座を持っていませんが、なるほどと思いました。日本の銀行の体質の古さを見事についています、
 p.84 シティバンクのテレフォン・バンキングは24時間営業とのことです。乙は、新生銀行で同様の体験をしました。深夜に問い合わせの電話をしたところ、ごく普通に応対されたのです。こういうのに比べると、日本の他の銀行はどうしようもないと思えます。
 p.85 銀行はコンビニと同じようなものだということです。そうです。コンビニには ATM があり、24時間やっているではありませんか。わざわざ銀行の支店に出かけていってお金をおろすよりも、自宅近くのコンビニでお金をおろすほうがはるかに便利です。(乙は、自分の金をおろすときにコンビニの ATM を使うと手数料を取る銀行が多いことにも憤慨しています。新生銀行はかかりませんが。)このままでは、銀行はコンビニに負けます。
 p.152 外債は、口座管理料を取るが、それは不当だとのことです。そして、外債の売買には為替レートの疑惑もあるとのことです。本当に公表されている為替レートが用いられているのかということです。う〜ん。そんなことがあるんですか。
 pp.204-208 米ドルMMF は優れものであると説きます。最もシンプルで優れた海外ファンドとのことです。乙も注目しています。
 pp.214-222 海外預金の利息には課税できない(利子収入を申告せずに脱税してもそれを税務署が追求することはない)という話です。ここまで書いてしまっていいのでしょうか。事実だとは思いますが。
 p.243 オフショアに会社を作るとトクだということです。しかし、p.247 で述べるように、個人投資家には不要だとのことです。

 読み終わってから、乙は、はじめて『地球の歩き方』に出会ったときのショックのようなものを本書に感じました。パックツアーで経験する海外旅行もいいけれど、自分で自由に作る個人旅行もいいものです。安くいけます。いろいろな経験ができます。しかし、個人旅行には危険がいっぱいで、できれば具体的に書かれた信頼できるガイドブックがほしいと思います。そういう場合に役立つガイドブックが本来の意味でのガイドブックなのでしょう。資産運用への旅にはいろいろなスタイルがあります。あまりお金のない人は、ぜひ優れたガイドブックを手に、余計な費用のかからないやり方を採用するべきです。それが本書です。
 乙は、自分をゴミ投資家だと思っていましたが、p.11 に出てくる定義を考慮すると、ゴミ投資家にはあたらないので、個人投資家と自称してもいいかなと思うようになりました。


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2006年10月08日

橘玲(2005.7)『永遠の旅行者(上・下)』幻冬舎

 乙が読んだ本です。
 本書も、投資関連本というよりは、金融情報小説というべきでしょう。
 本書は、死期が近づいた老人が税金を払わずに孫娘に20億円の財産を譲るという話です。コンサルタントがそれを請け負うのですが、具体的にどうするのかは本書を読むとわかります。ここでネタバラシをしては著者に失礼でしょうからこれ以上いいません。
 これまたすごい話です。フィクションですから、何とでも書けるという面もありますが、いやはや、世の中にはこんな話もあるんですねえ。それにしても、橘氏はすごい人です。本書は、合法と非合法の境界をきちんと心得て書かれているので、単なる非合法の社会の裏面を描く一般のお話ではありません。乙には(そんなにカネがないので)無縁の世界ですが、非常に興味深かったです。
 本書は、小説だとはいいつつも、読むことで、日本の税制などの社会の仕組みの勉強も同時にできるという意味で、いわゆる「小説」とはずいぶん違うように思います。
 2冊分の分量があって、ちょっと長いのですが、とてもおもしろいので、充分読み切れます。




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2006年10月06日

橘玲(2003.4)『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)幻冬舎

 乙が読んだ本です。もともとは2002年5月に刊行されたもので、この本が橘玲氏の作家としてのデビュー作だとのことです。
 この本は、小説(フィクション)であり、投資関連本というのとちょっと違います。
 あらすじとしては、次のようなものです。香港に住むコンサルタントのところに女が訪ねてきて、「5億円を日本から海外に送金し、損金として処理してほしい」といいます。つまり、脱税です。そして、女は消えますが、動いた(消えた)カネは実は5億でなく50億だったというわけです。
 本書は、金融情報小説とでもいうべきもので、乙にはとてもおもしろく、一気に読んでしまいました。普段、小説などは読まない乙としては異例のことです。タイトルに偽りなしです。
 冒頭に出てくる HSBC香港での口座開設の話などは、乙の経験とダブって見え、ホントにリアルに思えました。その後の本筋の話は、実話ではなく創作でしょうが、読んでみると、こんなことで多額のカネを処理するのかと驚くばかりでした。あたかもコンサルタントは橘氏のことのようです。もっとも、これを真に受けて、実際に行動に移してはいけません。(ま、たいていの人はそんなにカネがないでしょうが。)
 著者の橘玲氏は、「海外投資を楽しむ会」の創設メンバーの一人であり、金融関係の著書があり、その道に詳しい人だと知っていましたが、こんな小説を書くとは、ホントに驚きました。久しぶりに上質のエンターテインメントを堪能しました。

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2006年10月04日

安間伸(2005.7)『ホントは教えたくない資産運用のカラクリB錬金術入門』東洋経済新報社

 乙が読んだ本です。
 錬金術を題名に入れたのは、利益が生まれるメカニズムを体系化し、投資とビジネスに応用することをねらっているためだとのことです。
 実際、なかなか興味深い部分をたくさん含む本だと思います。
 pp.31-41 マンション投資の本当の恐怖はマンションが売れないことだと説きます。
 p.61 なぜ都会のほうが物価が高いか。都会ではビジネスチャンスが大きいので、時間のほうが貴重だが、地方では時間が余っているので、どちらかといえばカネのほうが貴重である。だから都会のほうが物価が高いと説きます。おもしろい説明です。都会のほうが人件費が高いのですが、この説明なら、それも同じ原理で説明できます。
 p.64 錬金術とは、裁定取引のことであるといいます。ズバリ、ひとことで本質を表現してしまいました。
 p.78 国が保証することで銀行の劣後債の利回りが普通社債の利回りまで低下してしまったことがありました。そのとき、その銀行の「劣後債買い・普通社債売り」の裁定ポジションを取ると良かったとのことです。乙は、いわれて「なるほど」と思いました。こういうのが確実に儲かる方法なんですね。
 pp.98-110 ワイロなどが横行する社会は経済効率が落ちるし、計画経済を延々と実施している国は、突然死するとのことです。前者は中国が当てはまりますね。(安間氏はそうはいっていませんが。)後者にもある程度当てはまりますかね。そういう国の危うさを具体的に指摘してもらったように思いました。
 p.117 新紙幣発行は、結局、「紙幣識別機オーナー」から「紙幣識別機メーカー」への所得移転にすぎないと述べます。ほうほう。そして、このニュースに対する正しい態度としては「紙幣識別機メーカーの株を買う」あるいは「同時に株価指数を売ってヘッジする」という裁定取引を行うことになるというわけです。なるほど。プロはそのように運用するのですね。プロはこういう動きをするのですから、株でアマチュアがプロに勝つなんて、とても難しいことのように思えてきます。
 p.122 ある業界がダメージを受けるようなニュースが流れたときは、それによって儲かる業界(あるいは会社)はどこかと考えることが必要だと説きます。なかなか難しい問題です。これができるのがプロだとすれば、個人投資家はなかなかそのレベルに達しないように思えます。
 pp.152-156 なぜ世界の市場が連動するかを説明しています。ここもおもしろいです。わかったという気になります。
 p.192 コンセンサスを追いかけると、オッズが下がるので、良くないと説きます。投資では、他人と同じ行動をするなとのことです。いわれていることはわかるのですが、いざ、これを実行しようとすると大変です。
 本書はオススメできます。プロがどのように儲けるのか、知っておくといいでしょう。まねすればよいというような単純なものではありませんが、世の中の仕組みが一段と深く理解できるように思えます。


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2006年10月02日

ジェームズ・オーウェン(2002.9)『ヘッジファンド投資入門』ダイヤモンド社

 乙が読んだ本です。
 350ページもあって、情報量が多く、とてもおもしろいです。
 ヘッジファンドは保守的なファンドだと説きます。これだけでも「へ〜」という感じです。
 pp.14-15 多くの伝統的な資産運用が通用するのは計画対象期間が無限の大手機関投資家であるといいます。なるほど。個人は寿命がありますからね。乙も、たった15年しかないので、その中でどうやったら最適な行動が取れるかを模索しているわけです。機関投資家は、視点が違いますね。
 p.56 最近は代替投資を小分けにして販売しているということですが、それでも25万ドル以上なのだそうです。いやはや、ちょっと手が出ませんねえ。
 p.59 機関投資家(企業年金など)が投資できるのは数千億ドルの規模なので、ヘッジファンドではすべてを吸収することはできないそうです。5億ドルまでの小規模な(!)ヘッジファンドが成果を上げられるのだそうです。
 p.77 ヘッジファンドは1990年代に急激に成長したことが図で示されます。ということは、それ以前は(あったはずですが)大したものではなかったのでしょうね。
 pp.80-81 ヘッジファンドの投資金額は50万〜100万ドルが一般的だとのことで、1000ドルから受け入れるミューチュアルファンドとは大違いです。しかし、ファンド・オブ・ファンズの仕組みを使えば、少額の投資家もヘッジファンドへの投資が可能になります。ファンド・オブ・ファンズの意味はまさにここにあります。
 p.91 ヘッジファンドの統計はないといいます。それぞれのファンドが勝手なことをするわけですし、それぞれが個性的ですから、「統計」には馴染まないのでしょう。
 p.111 ヘッジファンドの破綻はそんなに多くないとしています。しかし、年間7%とか、1990年代を通じて(つまり10年間に)10% とか聞くと、乙はけっこうな比率だと思いました。
 p.124 ヘッジファンドは市場平均以上の成績を上げますから、個人富裕層に向いているとのことです。
 p.156 で、オーウェン氏は年平均 15%で、マイナスになる年がないようなヘッジファンドを選んでいます。すると、p.160 のようにロング/ショート=ジョーンズ・モデルが一番良い成績だったとのことです。
 pp.198-199 で、個人投資家と機関投資家の違いを述べています。機関投資家は、25年以上の期間で投資を見るけれども、個人投資家はそうでなく、長年の低迷期を根気よく耐えられる個人投資家は少ないといいます。若い投資家は忍耐がないし、高齢の投資家には時間がありません。期間投資家はアセットアロケーションを遵守することが大事ですが、個人投資家は、そういう配慮がいらないというわけです。
 p.205 ヘッジファンドはポートフォリオの 25% くらいを占めるのが良かろうとのことです。具体的なアドバイスです。
 pp.209-238 会費が数千ドルの投資クラブがいろいろあるようです。富裕層はそういうのを利用するというわけで、乙は「ずいぶんリッチだな」と思いました。ゴミ投資家とは関係ない世界が広がっているんですね。
 p.227 ヘッジファンドのコンサルタントの手数料は、投資金額の0.1%から1%で、最低投資金額は10万ドルとのことです。なかなかハードルが高いですね。
 p.229 ファンド・オブ・ファンズは、投資金額は比較的少額で済むといっても、その最低が25万ドルなのだそうです。pp.80-81 を読んだときには期待してしまいましたが、これはちょっと手が出せません。
 p.232 ファンド・オブ・ファンズなら、ロー・リスク、ハイ・リターンが可能だと説きます。それはそうでしょう。
 p.244 ヘッジファンドとオフショアファンドは別であると書いてあります。米国籍の投資家はオフショアファンドへの投資ができないので、ヘッジファンドの場合もその半分は投資できないのだそうです。だからこそ、アメリカではヘッジファンド投資が盛んなんですね。乙はようやく秘密の一端がわかりました。
 p.261 オーウェン・レシオという独自の数値が出てきます。年率換算収益率と最悪月収益率の比率が4対1以上でないヘッジファンドには投資しないということです。たとえば、ファンドの最悪月収益率が-15%である場合には、年率換算収益率が(手数料などを差し引いた後のネットで)60%以上ないと投資対象にならないというのです。なかなかおもしろいアイディアだと思いました。ハイリスクな投資のときの一つの考え方を教えてもらいました。
 pp.297-317 では、「投資を継続してフォローする」ということで、投資後のフォローを述べています。ここに書かれている方法を読むと、ずいぶん手間がかかるやり方だと思います。ま、多額の資金を投資する場合はこういうことも必要なんでしょうが。
 本書は、実際のヘッジファンド投資に即して具体的に書いてある本であり、その意味でおもしろい本です。ヘッジファンドについて書かれた本の中では、オススメできる本でしょう。乙は、本書でいわれているようなヘッジファンドに投資するほどの資金がありませんので、絵に描いた餅なのですが。


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2006年09月30日

安間伸(2004.6)『ホントは教えたくない資産運用のカラクリA タブーとリスク編』東洋経済新報社

 乙が読んだ本です。
 まえがきが「本書は危険なパンドラの箱です」ということばで始まるので、どんな内容なのだろうと期待して買ってしまいました。
 本書は、投資のリスク(といってもボラティリティという意味ではなく、「危険性」のほうが近いですが)について語られます。いろいろな詐欺事件などが起こるけれども、それは投資家がころりと騙されるからだというわけで、投資家にいろいろな危険性を知らせることをねらったという本です。
 では、具体的にどんな話がされるかというと、「海外には収益率の高いファンドが多い」「金利が上がると、持っている債券の価値が下がって生保は破綻する」「元本保証で、高利回り」「預金封鎖に備えて、外貨・不動産・株・金を買おう」などというのは、間違いだというわけです。
 乙が一読した感想では、「パンドラの箱」というほどのことではなさそうです。大部分は、常識的なわかりやすい話のように思いました。
 いくつか、おもしろいと思ったところを書きます。
 p.67 安間氏は「長期の投資家はボラティリティを気にせず、高収益をねらうべし」と説きます。長期で投資できる投資家は、短期的な価格変動をそれほど恐れることはないから、リターンが高いと思われる資産に投資を続ければよいというわけです。逆に、投資期間が限られている投資家は価格変動を気にしなければならず、短期であればリスクを取らないようにするべきだというわけです。これはこれで一つの考え方ですが、問題は、個人投資家が自分の投資スタンスをきちんと把握できるかということです。乙は15年の投資を考えていますが、これは長期でしょうか。安間氏の考え方では、長期というには短すぎるでしょう。機関投資家の場合は、無限に長い期間を投資に充てることがありますから、まさにそういうのが長期投資家というべきです。逆にいうと、個人投資家は、真の意味の長期投資家にはなれず(人間としての寿命があるから)、価格変動は恐れなければならないということになりそうです。
 p.128 公務員は、収入が安定しているから、リスクが高い投資ができるということです。逆にいうと、収入が不安定である人ほど安全な資産を積み上げておくべきだということになります。乙は「ふ〜ん」と思いました。会計学的にはそれは正しいでしょう。指摘されるとなるほどと思いますが、普通はそういう発想はしないのではないかと思います。安間氏の着眼点のユニークさを感じました。
 p.137 機関投資家はベンチマークを上回ることを目指す相対収益志向、個人投資家は投資元本を上回ることを目指す絶対収益志向だと説きます。なぜかというと、機関投資家には、意識しなければならない負債があるからで、個人投資家は負債と切り離した余剰資金で投資しているか、負債があっても負債と資産のミスマッチを気にしないからだというわけです。乙は個人投資家として、相対収益の考え方が採用されていることが今ひとつピンときませんでしたが、本書を読んで、納得しました。
 p.209 では、預金封鎖について、そんなことを気にして対策を立てるよりも、究極的には日本を立て直したほうが早くて確実だと説きます。穏当な見方でしょう。乙もこういう考え方がいいだろうと思っています。
 本書は、記述がやや抽象的になっているように感じました。わかりやすい本で、読んで損はないともいえますが、必読書というほどオススメではないでしょう。

 安間氏のサイトを訪問するのもおもしろいかもしれません。
http://www.wildinvestors.com/


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2006年09月28日

安間伸(2003.5)『ホントは教えたくない資産運用のカラクリ 投資と税金編』東洋経済新報社

 乙が読んだ本です。
 全体としては、日本の税制はゆがんでいて、そのために投資家は損をしている、それを改革するには、シンプルな税制にして税率を下げるべきであり、そうしないと日本が沈没してしまうという趣旨の本です。
 本書では、投資をめぐる日本の税制がいかに不公平で理不尽なものであるかが説かれます。乙は、なるほどと思いながら読みました。しかし、安間氏が主張するようなシンプルな税制にはならないでしょう。日本の政治には、何といっても前例主義が重くのしかかっています。もしも、革命的な税制に改めるとしたら、それまでの税制には大きな欠点があったと政府自身が認めるようなことになります。それはできない相談でしょう。ということで、個人投資家としては、税制の不備をよく知り、それがゆがんでいるとしても、その中で最適な行動を取るようにするべきであるということになります。
 p.5 資産運用では、取引コストと税金が高いので、それをなるべく避けるようにするべきだという一般論が示されます。それを具体的に記述したのが本書です。
 pp.28-29 売買回転率を上げると税金が高くなり、投資リターンが下がるというグラフが出てきます。グラフの意味は理解できますが、どういう計算をするとこのグラフになるのか、乙には理解できませんでした。
 pp.70-72 「買ったら税金、負けたら救済なし」というのが日本の税制の基本方針だと説かれます。だから、個人投資家は(平均的に見て)税金が高くなり、だからリスクを取っても意味がなく、だから預貯金での運用が多くなるのだということです。日本の現状をとてもよく説明しています。
 pp.91-98 EBや転換社債などの複雑な金融商品をエクイティとデットの二つの概念でわかりやすく説明しています。簡単に結論をいえば、複雑な金融商品は恐いなあということですね。
 pp.132-142 「個人投資家はオーバーパーを買うな!」と説きます。オーバーパーというのは、債券で今の価格が償還価格を上回っているものです。税金を考慮すると、買ったら損するということです。乙は直観的にそう思っていましたが、それをきちんと説明してもらった気がします。
 p.162 株の配当は損だと説きます。これも、株の仕組みを知る上で大事な視点だと思いました。個人投資家は、つい、配当が高い株を買うとよさそうな気がしますが、それは間違いなのですね。
 pp.216-221 中途半端なアクティブ運用のファンドは、今後は、パッシブ運用とオルタナティブ投資に分かれていくだろうという見通しを述べています。大変おもしろい考え方です。乙が何となく感じていた方向性をずばりと指摘されたような気がしました。
 やや古い本ですが、勉強になりました。
 「ホントは教えたくない」の主語は何でしょうか。この本を買ったとき(読む前)は「著者」だと思いましたが、実は「日本政府」でしょうね。そう思って読むと全体が理解できそうです。


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2006年09月26日

川又三智彦(2006.8)『2017年 日本システムの終焉』光文社

 乙が読んだ本です。
 まもなく日本システムが崩壊するぞという本です。2017年という具体的な年が入っているので、つい買ってしまいました。
 内容的には、国家破綻本と似ています。しかし、単に国の借金が多いというだけでなく、さまざまな問題がそれに関連していて、つまりは日本というシステムの問題なのだという説き方はおもしろかったです。
 この本は、図表(グラフ)が多いという点も特徴の一つでしょう。今までの傾向を年ごとのグラフの変化で示すという書き方は、わかりやすかったと思います。グラフ類は全部見開きでとても見やすくなっています。
 ただし、2017年に日本システムが終焉を迎えるという著者のことばはそのまま信じるわけにはいきません。なんやかやといっても、いろいろな人が各方面で努力しているという面もあると思うので、乙はもう少し楽観的です。本当に2017年に日本が終焉するとすれば、乙が予定しているハッピーリタイアメントは吹っ飛んでしまいます。
 しかし、日本というシステムの問題だという著者の見方には、うなずける部分も多いので、この問題は長期的に考えていかなければならない問題だとは思います。
 本書は、全体として新規な見方が述べられているわけではなく、あまりお勧めではありませんが、日本経済についての問題提起として意味があると思いました。


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2006年09月24日

KAPPA(2006.8)『東大卒医師が教える科学的「株」投資術』秀和システム

 乙が読んだ本です。
 エビデンス(証拠)に基づいた機械的な銘柄選択(Evidence-Based Investment)を説く本です。科学的に株を扱うとこうなるという見本のようなものでしょう。
 全体として、よく書けています。では、ここに書いてあるやり方で投資できるか。著者はできるといいます。実際にやっています。しかし、著者以外の人が行うとなると、なかなか大変なように思います。いろいろなファクターを総合して考えなければなりませんから、かなり手間がかかる方法です。まあ、こういう努力をしないと株では勝てないということなんでしょう。乙は、こういうやりかたはできないから、やっぱり安易な方法=パッシブ運用でいいのではないかと考えます。
 本書で特におもしろいと思ったところを書き抜いておきます。
 p.33 カリスマ投資家(バフェットやリンチなど)の技は他人には再現できない「アート」だといいます。たしかに、他人がマネするのは難しそうです。では EBI は? 乙は、これまたアートではないかと感じました。
 p.54 投資信託のパフォーマンスが悪い理由が述べられています。投資信託が実は短期投資であること、ファンドマネージャーに横並び意識があること、コストが高いこと、投資信託ならではの制約があることなど、「ふ〜ん」と感心してしまいました。
 pp.76-77 低PERの株を買う場合の期間ですが、9年も保有したままでいいというのは驚きでした。乙は、低PER効果はもっと短いものだと思いこんでいました。
 pp.152-155 アナリストのレーティングはあてにならないという話です。データがきちんと示しています。アナリストのすすめるものを売り、低くレーティングするものを買ったほうが成績がいいということです。いやはや、そういうものなんですねえ。
 株式投資をする人は、ぜひ読んでおくといいでしょう。でも、ホントのところは、株の初心者ではなくて、ある程度株式投資を経験した人が読むとずっとおもしろいと思います。


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2006年09月22日

内藤忍(2006.7)『内藤忍の人生を豊かにするお金のルール』アスペクト

 乙が読んだ本です。
 内藤氏の以前の著書
http://otsu.seesaa.net/article/16754281.html
と同様に投資の本かと思って買ったのでした。しかし、本書は、話題をぐっと広げ「人生の送り方」のようなことがたくさん詰まっていました。もちろん、投資の話も出てきます。しかし、それがメインテーマではありません。
 pp.18-20 には、財布の話が出て来ます。財布がきれいな人(お札が整理されて入っている)はお金を大事にしているということです。その反対は、レシートやら何やらがたくさん詰まって分厚くなっている財布です。実は、乙は前者、家内(と子供)は後者なのです。何だか我が家のことをいわれたような気がして、思わず苦笑してしまいました。
 投資関連の話に行きましょう。
 p.162 投資のコストはしかたがないものと説かれます。投資信託はコストがかかる、外貨投資は為替手数料がかかるなどといって否定してばかりいてもしかたがないということです。そのため、ベストよりもベターを狙うべきだとされています。乙も同感です。まあ、同じようなものがあってコストが違えば、コストが低いもののほうを選びますが、コストをゼロにすることはできません。高いリターンがあるならば、高いコストを払うこともやむを得ないと考えています。
 pp.165-166 お金をふやす人が少ないのはなぜかという話です。時間がないからという理由が多いそうです。しかし、内藤氏は時間の使い方とは優先順位の問題であり、やる気があれば少しは時間ができると説きます。耳が痛い話です。
 p.195 投資には勉強が必要だと説きます。なぜなら資産運用とは、勉強している人が勉強していない人からお金を合法的に巻き上げるしくみだからだとしています。実に新鮮な視点でした。乙ももっと勉強しなければと思いました。
 pp.201-204 投資に時間をかけすぎるのはやめようと説きます。なぜなら、自分の時給を考えると、時間をかけて株の銘柄研究をするならば、それは時給分のコストがかかるからだというわけです。サラリーマンなら、割と実感している論理かもしれません。ただし、この言い方は、p.195 と矛盾する面があります。勉強するには時間がかかり、つまりコストがかかるからです。内藤氏は時間をかけずに投資に臨めばいいと説きますが、それでいいのだと納得する(つまり自分のスタイルを作り上げる)までは、あれこれ迷い、いろいろな本を読むでしょう。つまりここで時間がかかっているのです。結果的には、時間をかけないやり方ができるとしても、それに到るまでは、やっぱり時間をかけているのです。
 投資は勉強だということを実感させる本です。この本を読んで、乙はいかに生きるべきかという点で再考をうながされたように感じました。
 内藤氏のブログに立ち寄ってみるのもおもしろいと思います。
http://www.shinoby.net/



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2006年09月20日

前田和彦(2006.8)『5年後にお金持ちになる資産運用』フォレスト出版

 乙が読んだ本です。「現役プライベート・バンカーの」「資産防衛のプロが教える「相場に左右されない」投資のルール」という副題が付いています。
 前田和彦(2004.8)『借金国家から資産を守る方法』フォレスト出版
http://otsu.seesaa.net/article/18894635.html
を読んだことがあったので、また、数億円以上の資産のある人向けの本かもしれないと思いつつ、買って読んでみました。すると、今度は、そうではなく、真っ当な資産運用について書かれていました。前著とはだいぶ趣が違っています。
 第1章は、未公開株式詐欺やデイトレードの問題点を指摘しています。
 第2章は、「人気金融商品」のリスクを指摘したもので、株式投資、外貨投資、債券投資、不動産投資、投資信託(元本保証型投信、毎月分配型投信、外国債投信、外国株投信、ヘッジファンド、J-REIT)などの問題点を述べています。頷ける記述です。
 第3章は通貨の話で、資産は、円だけでなく、ドルやユーロも持つようにすすめます。
 第4章は、金融商品の選び方(特に外貨建て)を述べたところで、pp.149-167 が一番興味深かったところです。
 p.149- 外貨建てMMFのススメです。外貨定期預金がいかに損で、外貨建てMMFがいかに有利かを説明しています。銀行は 0.4% 程度の利益しかない MMF よりも、1.5% 以上の利益が見込める外貨預金をすすめるというわけです。銀行側の利益=投資家側の不利益ですから、どちらを選ぶべきかは明らかです。
 p.153- 米国のゼロクーポン債を中途売却することで非課税になる話です。このやり方は、乙も有力な候補の一つと考えています。
http://otsu.seesaa.net/article/23106205.html
 p.155- 外国債を買うならグローバル債券を買うことをすすめます。もっとも、5000万円以上とのことですから、ちょっと手が出せませんが。
 グローバル債券については、野村證券のサイトに説明がありますが、
http://www.nomura.co.jp/terms/category/bond/global_s.html
普通の債券とどうちがうのか、乙には、どうにもよくわかりませんでした。
 pp.156-160 債券のリスクが意外と大きいことを述べます。
 p.160 前田氏は、金利10%のトリプルA銘柄の債券(米国債、世銀債)をすすめています。確かに、金利 10% であればいいですが、いつでもそういう状態ではありませんから、むしろ、普段から気をつけて金利が高いときをねらうようにするしかないのかもしれません。
 pp.161-164 ハイイールド債投資のススメです。投資のタイミングも書いてあって、乙には大いに参考になりました。
 pp.164-167 ベトナムファンド、中国ファンド、インドファンドの話です。いずれも長期に保有すればいいだろうという話です。
 第5章は、海外口座活用法と相続や税金への対策を述べたところです。PTという生き方も説きますが、ちょっと簡単すぎる記述なので、これだけでは実行に移すわけにはいきません。
 本書は、普通の本とだいぶ違った記述のようにも思います。しかし、前田氏の考え方は、それはそれで理解できます。資産を守るという立場からは、こんなことになるということでしょう。乙は、もう少しリスクを取ってもいいのではないかと思いますが、それはともかく、ある考え方に基づく話を聞いたといったところでしょうか。
 一読しておいて損はない本だと思いました。


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2006年09月18日

菊池誠一(2001.5)『投資信託を読む』日経BP社

 乙が読んだ本です。ちょっと古いので、ETF の話が出て来ませんが、まあやむを得ません。
 投資信託で資産運用をする際のポイントを述べたもので、まじめに書かれており、好感が持てます。
 第1章は、序論にあたります。pp.22-34 までノムラ日本株戦略ファンドの批判が書いてあります。一言でいえば、大きいことはダメなことということです。乙も、今なら、これが理解できますが、いざ、2000年初めに売り出された(乙が資産運用をしていた)としたら、買ってしまったかもしれません。それにしても、p.23 にあるように、一人平均で512万円も買ったのですね。すごい話です。500万も集中投資してどうするのでしょうか。いや、多くの人の運用資産額が1億円もあり、500万円は5%にすぎなかったのでしょうね。こう考えないと「平均512万円」の説明ができません。
 第2章は、「投資信託の光と影」ということで、株式投信のメリットとデメリットが説明され、合わせて日本的投信の課題が示されます。
 p.53 では、株の場合でも、20銘柄もあれば分散投資が可能だという話が出て来ます。単位株数にもよりますが、今はだいたい50万円くらいで1社の株が買えることが多いので、1000万円もあれば、分散投資できることになります。こういう運用もいいかもしれません。
 p.74 では、日本は年寄りが投資するから、リスクが取れず、したがって債券型が多くなるという話が書いてあります。なるほど、そういうことだったんですね。もっと若いときから資産運用をはじめなければならなかったのですが、乙も、そういう意識に目覚めたのは遅かったのです。
 第3章は、「難しい投信選び」ということで、p.96 には、成績上位の投信の前後の月の順位の変化が示されます。成績上位というのは続かないものなんですねえ。p.104 では、投信会社別の成績について示され、特にどの会社が優れているということもないことがわかります。ですから、投信選びは難しいのです。
 第4章は、「インデックス・ファンドを考える」ということで、インデックス・ファンドをすすめています。乙も賛成です。p.142 から、著者の菊池氏の個人の資産運用の話が出てきます。55歳になってからインデックス・ファンドに積み立てることにしたという話です。毎月5万円、ボーナス時に増額して毎年300万円を70歳まで積み立てるということで、大学教官ならでは(70歳まで働ける!)の細く長く生きる考え方がよく現れています。
 第5章は、「資産形成のポイント」ということで、長期・継続投資が説かれます。p.162 のグラフによれば、長期になればなるほど債券よりも株が有利であることが示されます。このグラフによれば、長期投資は21年以上だそうです。実に長いですね。21年もじっと保有し続けるのは、ある意味で大変なことです。
 本書でいうインデックス・ファンドは、ETF でももちろんいいと思います。ETF を買って、21年以上保有し続けるという方針がお勧めのやり方だということになります。乙もこの考え方が正しいと思いますので、これからだんだんこちらにシフトしていくつもりです。


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2006年09月08日

ジョゼフ・G・ニコラス(2000.6)『ヘッジファンドのすべて』東洋経済新報社

 乙が読んだ本です。
 ヘッジファンドについて、非常に詳しく書いてあります。
 本書の中心は第U部です。第4章「債券アービトラージ」、第5章「株式市場ニュートラル」、第6章「転換社債アービトラージ」、第7章「買収合併(リスク)アービトラージ」、第8章「破産証券投資」、第9章「イベント主導戦略」、第10章「マクロ投資」、第11章「セクター・ファンド」、第12章「株式ヘッジ」、第13章「エマージング市場」、第14章「ショート・セリング」の全11章でそれぞれの手法について詳しく解説します。書き方が各章とも共通していて、丁寧であるとともにわかりやすくなっています。この点は、いかにもアメリカ風の書き方です。また、これらの具体的な記述の前に第3章で各章の概観を載せているあたりもアメリカ風だと思いました。
 先頭に日本語版への序文が17ページも付いています。ここがかなりおもしろかったです。
 p.iv では、ヘッジファンドの急成長ぶりが描かれます。p.v では、アメリカ国内の投資家のヘッジファンドへの投資内訳を示した図があります。今や、個人が4割を占めているんですね。アメリカでは富裕層が多いのでしょう。
 p.vi では、ファンド・オブ・ファンズを通してヘッジファンドに投資するケースがかなり多いことがわかります。これも興味深いことでした。
 p.xiv では、ヘッジファンドのリスクとリターンについて示していますが、ショート・セリング以外はいい結果になっています。ヘッジファンドの各戦略は、財務省証券と S&P 500 を結んだ線よりも上に位置しています。こうして、いいパフォーマンスであることが明示されます。
 第V部では、ヘッジファンドに投資する際の注意点を述べています。p.269 では、ヘッジファンド投資はベンチャー・ビジネスへの投資だと書いてあり、ヘッジファンドの本質をズバリ一言であらわした名言だと思いました。
 p.323 の監訳者のあとがきにもあるように、本書は機関投資家の運用担当者向けに書かれたもので、個人投資家は、読んでも「ああこういうものか」で終わってしまいそうです。
 この本が1冊あれば、ヘッジファンドに関しては、たいていのことが理解できるのではないでしょうか。「ヘッジファンドのすべて」というタイトルにウソはないと思います。


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2006年09月06日

三上芳宏・四塚利樹(2000.3)『ヘッジファンド・テクノロジー』東洋経済新報社

 乙が読んだ本ですが、結果的には読む意味はあまりなかったといったところです。なぜならば、p.4 にあるように「本書は、基本的にはデリバティブの知識を前提としてはいないが、金融・証券市場について日頃から強い関心を持っている人々を読者として想定している。【中略】とくに資産運用ビジネスの関係者、金融機関のディーラー、一般企業の財務担当者などには、おおいに興味を持って読んでいただけるものと考えている」とあるからです。つまり個人投資家ははじめから対象読者になっていないのです。実際、ややわかりにくいところもありました。
 p.65 トラックレコード(過去の運用成績)は偽造が可能で、その具体的手順が書いてあります。なるほど。こんなことをされたら、投資家などでは絶対に見抜けないですね。もっとも、多くのファンドは、正直に会計処理をしているだろうと(根拠はありませんが)思います。
 p.131 には「ヘッジファンドのトラックレコードがよいときというのは、実は投資収益機会が減少しつつある過程で、逆にそれが悪いときは、投資収益機会が増大しつつある過程であることが多い。」とあります。乙は、短期で参加・離脱するよりも、長期的に投資することでそういうタイミングのパラドックスを避けるべきだということだと解釈しました。
 p.68- で物まね猫(コピーキャット)の話が出て来ます。ヘッジファンドの運用を真似て行動するファンド類です。それが非常に大きくなりつつあり、ヘッジファンドの成績を左右してしまうほどだと説明されます。情報開示をすればするほどコピーキャットが増えるという問題があり、解決は困難です。
 しかし、p.194 の記述によれば、過去の変動が正規分布曲線で近似されるものとやや違っているので、そういうケースを含めてモデル化して扱おうという話が出て来ます。これは、ある意味でコピーキャットのようなものまで含めたモデルだと考えてもいいと思います。こんなことまで考えられているんですね。
 乙がよくわからなかったところは、pp.85-103 のあたりです。
 第3章(pp.139-184)は、邦銀が金融市場でヘッジファンドに狙われ、巨額の損失を出してきた経緯を明らかにしています。欧米と会計基準が違ったり、最新の金融テクノロジーを駆使されたりすれば、ほぼ必然的に「負け」になることもあるんですね。恐い話でした。金融がグローバル化するということは、そういう知識をみんなが知らなければならないということです。いやはや、大変な時代になったものです。
 余談ですが、本書の図はかなり見にくいと思いました。まるで、カラー印刷した図をモノクロで印刷したかのようです。灰色の線と黒い線のような区別はよく見えないことがあります。
 もう一つの余談です。帯には、マイロン・ショールズ博士の推薦文が付いていました。「この本は【中略】について詳細に述べている」と書いてありますが、ショールズ博士は日本語が読めるのでしょうか。乙は彼を知りませんので憶測でものをいってはいけませんが、たぶん読めないのではないでしょうか。本の現物が読めない人に推薦文を書いてもらうというのは、乙は引っかかります。ショールズ博士が日本語が堪能だった場合は、この部分は乙の言い過ぎということになります。

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2006年09月04日

マックス・ギュンター(2005.12)『マネーの公理──スイスの銀行家に学ぶ儲けのルール』日経BP社

 乙が読んだ本です。
 帯には「一度読んだら絶対に薦めたくなる良書である」と書いてあります。しかし、乙は、まったく反対の意見を持ちました。まともな投資家ならば、この本を読んではいけないと思います。
 本書は、投機のルールとして12の公理を述べ、さらに16の副公理を示しています。その全体が、まさに「投機」であり、いわば「ギャンブルで一発あてたら大儲け」的な態度で書かれています。ある意味で正しいとも言えますが、じっくり資産を増やしていこうという「投資」の考え方とは相容れないもので、信じて実行すると、その人が破産するかもしれないという意味で、危険な方法でもあります。
 著者のギュンター氏の父親はスイスの銀行家で、チューリッヒで生まれ育ったのだそうです。そして、父親の墓石には、「彼は賭け、そして勝った」とあるそうです。こうして息子に受け継がれた投機のルールが「チューリッヒの公理」と呼ばれるようになり、本書の題名(ただし原題)となったというわけです。
 「賭けて勝った」人は、それが正しい態度だったと思うでしょう。しかし、世の中には賭けて負ける人もいるわけで、実はそちらのほうがはるかに多いというのもまた事実です。ギャンブルの胴元が営業を続けられるのも、そういう人がたくさんいるからです。
 たとえば、どんなことが書いてあるか、見てみましょう。
 副公理2は「分散投資の誘惑に負けないこと」です。分散投資はしてはいけないと説きます。あるところに集中するからこそ大きく儲けられるという考え方です。公理2は、「常に早すぎるほど早く利食え」です。公理3は「船が沈み始めたら祈るな。飛び込め」です。損切りのすすめです。あるいは、副公理16は、「長期投資を避けよ」です。投機家は、世の中に敏感になり、いろいろな機会に機敏に動くことをすすめています。
 本書には、正しいことも書いてあるのですが、一方では、ギャンブルとしての投機の指南書になっているところがあります。それでうまくいったといういろいろな例が出てきます。それらは確かに現実に起こったことでしょうが、問題は、そういうことがどれくらいの確率で起こることなのかということです。
 「公理」というと、絶対に正しいと多くの人が認めていることのようなニュアンスがありますが、本書で説かれるものは、全部が正しいということではありません。注意したほうがいい本であり、なるべくならば、読まずにすませたほうがいいのではないかと思います。

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2006年09月02日

角川総一(2006.5)『金融データに強くなる 投資スキルアップ講座』日本経済新聞社

 乙が読んだ本です。
 日経金融新聞の連載に手を入れてまとめた1冊だそうです。
 投資の常識を疑ってみようということを中心に、36の話題を並べています。
 乙が読んでおもしろかったところを中心に、いくつか紹介します。
(5)p.42- 債券は一物三価、四価で、実はいろいろな価格があるとのことです。そして、満期まで持つべしと説きます。
(9)p.66- 自分でグロソブのような外国債券ファンドに相当するものを作る話です。さまざまな通貨で MMF を利用すれば可能だということで、乙は大変おもしろいと思いました。ただし、外貨 MMF は、普通の債券よりも金利が若干低い(信託報酬の分だけリターンが下がる)(?)ようですので、「債券ファンド」とまではいえないように思います。
(10)p.71- 新規投信は必ず高値づかみになるから損だと説き、したがって、新規ファンドに性格が近い既存のファンドを買うのがよいと勧めています。なるほど、もっともな話です。乙は今まで、まったく気が付いていませんでした。
(11)p.80- 定期分配型外債ファンドにもメリットがあり、特に高齢者の立場では毎月分配で自分の資産を取り崩していくことが意味があると説明しています。山崎元氏も同様の見方をしていましたが
http://otsu.seesaa.net/article/22402936.html
乙は、角川氏の議論のほうがわかりやすいと思いました。
(13)p.94- 投資信託のコストが高いかどうか議論しています。p.97 のように、数年間の投資期間を通算してコストを見なければならないというのはその通りです。そうすると、10個のファンドの平均で5年間で56%ほどのリターンがあり、そのうち11%がコストで、投資家は45%ほどの収益になるという計算結果になります。上昇部分の2割という手数料を高いと思うか、安いと思うかという問題です。乙はそんなものかなと思います。
(14)p.100- 低PER効果と小型株効果を国内ファンドで検証しています。実際に TOPIX 平均よりも高いリターンを上げています。理屈はわからないけれど、インデックス運用よりもよい結果が出ているのは興味深いです。単なる「アノマリー」(今の理論では説明できない市場の変則性)で片付けられるのでしょうか。ま、だからこそ、アクティブ・ファンドの存在意義があるのですが。
(27)p.181- 家計において、株式保有比率が急上昇しているが、それを額面通り受け取っていいかと疑問を呈しています。ある割合の資金を株に投資していたら、株価が上がったので、計算上、多くの割合で資金を株に投じているように見えてしまったということです。統計上の数字としては正しいことでも、その解釈になると違った見方もできるんだなあと感心しました。
(36)p.227- 金融資産を実際に持てば、マーケットを見る座標軸が定まると述べます。乙も実感しています。いろいろな金融資産を持ってみて、はじめてわかることがたくさんあります。そういう経験を積み重ねて、投資のことがわかるようになるのでしょうね。乙は、もっといろいろ経験してみたくなりました。

 全体にまじめに書かれており、各種の投資をする人は一読する価値があります。帯に書いてあったこと(「目からウロコ」の新・金融常識)はその通りです。ものの見方が単純でなくなり、一方向から見るのでなく、多様な見方をするようになると思います。

 余談ですが、角川氏のブログを訪問してもいいかもしれません。
http://blog.livedoor.jp/s_kadokawa/


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2006年08月30日

北村慶(2006.4)『貧乏人のデイトレ 金持ちのインベストメント──ノーベル賞学者とスイス人富豪に学ぶ智恵』PHP研究所

 乙が読んだ本です。
 とてもまじめな本で、わかりやすく、資産運用をどんなふうに行うかを述べた本です。
 乙は、北村氏の前著2点
http://otsu.seesaa.net/article/22245739.html
http://otsu.seesaa.net/article/22911321.html
を読んだ後だったので、世界の潮流の中で、どうすれば高いリターンが得られるかを述べた本だと思って買いました。読んでみると、大違いでした。真っ当な資産運用のあり方を述べたものだったからです。
 第1章は、日本が格差の大きい社会になりつつあることを説きます。
 第2章は、そういう格差社会の中で資産運用をどう考えるかを述べます。現在の60歳未満の人は年金があてにできないから資産運用が必要だというわけです。
 第3章は、年金は「国営・投資ファンド」だと位置づけて、そのアセット・アロケーションをどう考えたらいいかを説明します。年金の投資先は意外と債券が多いんですね。
 第4章は「負けない資産運用」を説くところで、乙が一番おもしろく読んだところです。ポイントが7つの智恵という形にまとめてあり、いずれもわかりやすいと思います。
 第1の智恵が、「トレーディング(短期売買)」から「インベストメント(長期投資)」へということです。インベストメント自体を「長期投資」とするところもおもしろい見方です。(本書を読めば、その見方に納得します。)「長期」ということで、何年くらいを考えるのでしょうか。p.133 によれば25年です。乙は15年しか余裕がないので、その意味では長期投資ができないということになるかもしれません。(実は、15年経った後も死ぬまで投資を継続するのですが。)その意味で、この本は20代から30代の人に読んでもらいたい本ということになります。
 第2の智恵が、「アルファ戦略」(アクティブ運用)と「ベータ戦略」(パッシブ運用)です。平均的投資家は市場の平均には勝てないという話です。これに関して、北村氏は「マーケットの平均を上回るようなリターンを継続的に上げ続けることはむずかしいが、チャンスはある」という見解を示しています。穏当な見方です。パッシブ運用を中心にするのは当然でしょう。
 第3の智恵が、複利効果と時間分散です。普通の市民でもプロに勝てるのは投資の時間が長いからだと説きます。
 第4の智恵が、ポートフォリオ理論です。乙は、p.188 からの自前「株式ファンド」の作り方の話がおもしろかったです。アクティブ運用で株に投資するときの正しいやり方を説明しています。このやり方で分散投資になっています。納得できます。
 第5の智恵が、持ち家プレミアムです。p.195 では、同じ立地で同じ作りの賃貸用物件ならば4000万円で買えるのに、持ち家用物件になると5000万円で売られているというわけです。この差1000万円が持ち家プレミアムです。自宅を所有することで安心感はありますが、それが果たして1000万円の価値があるでしょうか。こういう観点は乙には大変新鮮に響きました。p.202 には、住宅ローンがなければ、お金が貯まるまでは賃貸に住むのが当然で、しかも住宅ローンという制度は1962年以降に導入されたものにすぎないということも書いてあり、若い人には、(収入が多い人は問題ないのですが)住宅ローンの恐さをしっかり知ってほしいと思いました。ただし、住宅ローンの記述は橘玲氏の本
http://otsu.seesaa.net/article/20748838.html
にも書いてあったことです。
 第6の智恵が、国際分散投資です。北村氏は MSCI-KOKUSAI に追随するインデックスファンドを勧めています。また、BRICs 投資でも、分散投資を勧めるべきだとし、特定の国に投資するよりは多くのエマージング・マーケットに投資する商品を選ぶべきだと述べます。いずれももっともな話です。
 第7の智恵が、運用ポリシーの一貫性とリバランスです。乙は、本書でリバランスの意味をきちんと理解できたと思います。
 全体を読んで、すばらしい本だと思いました。乙は、今までの自分勝手な投資方針を順次改めようかと思うようになりました。ヘッジファンドや BRICs 投資も(ハイリターンということで)いいけれど、15年の投資を成功させるためには、やはりそれなりの取り組みが必要だと思います。乙の今までのやり方をすぐに変える必要はありません。せっかく投資したものをすぐに解約するのは、手数料がかかったりして、かえって利益が少なくなります。しかし、乙がこれから投資する金融商品を選ぶときに、今までとはやや方針を変えようと思いますし、今後は、運用方針を見直して、ポートフォリオをだんだん望ましい方向に変えていこうと思いました。
 本書は、特に若い人にお勧めできる良書だと思います。

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2006年08月28日

北村慶(2006.8)『投資ファンドとは何か──知っておきたい仕組みと手法』(PHPビジネス新書)PHP研究所

 乙が読んだ本です。
 第1章は「不動産投資ファンド」、第2章は「ヘッジファンド」、第3章は「企業投資ファンド」を解説したものです。第4章で「投資ファンドの未来」、つまり今後の展望を述べます。
 乙は、不動産投資ファンドも購入していますが、ごくわずかな額ですから、どうということはありません。また J-REIT はしばらく投資する予定もありません。pp.51-55 では、J-REIT の破綻の可能性について議論しており、興味深く読みました。
 p.62 では、世界の大手年金基金のアセット・アロケーションを示し、日本では、債券と株式を中心に運用しているのに対し、欧米では、それ以外の不動産・REIT、ヘッジファンド、プライベート・エクイティなどの「オルタナティブ投資」にも資金を投じていることがわかります。
 第2章のヘッジファンドに関する解説は乙が一番関心を持って読んだところです。
 p.84 には、クレディ・スイス証券の資料からの引用ですが、ヘッジファンドのパフォーマンスが、従来の伝統的な「株式」や「債券」よりもローリスク・ハイリターンになっていることが示されます。
 p.111 では、ヘッジファンドの投資戦略別のパフォーマンスが示されます。10種類の戦略では、ショート・セリング戦略だけが悪いのですが、他は1994年以降の年平均で 6-13% のパフォーマンスを示しており、大いに期待されます。
 p.121 では、1998年にヘッジファンドの上位25%の成績を収めたマネージャー201人が、その後どうなったかを追跡調査しています。2001 年まで連続4年上位25%に入った人はたった2人しかいません。浮き沈みが激しいものだということがよくわかります。
 pp.126-127 では、マン・グループが二つのタイプのヘッジファンドを提供するということを述べています。一つは透明性が高い(何をやっているかを投資家にきちんと説明する)がリターンが低いもの、もう一つは透明性が低い(何をやっているか説明しない)がリターンが高いものということです。マンの AHL が後者だということです。パフォーマンスだけを見ても、長年の実績があれば、それはそれでいいようにも思えます。多額の資金を運用する機関投資家ではこういう判断はできないでしょうが、少額資金を運用する個人投資家ならば可能でしょう。
 pp.127-128 では、ヘッジファンドに向かう巨額の投資資金と、ヘッジファンドは運用資金が少額のほうが成績がいいという矛盾点を解決する一つの方策がファンド・オブ・ヘッジファンズだと説明されます。異なる特徴のヘッジファンド複数に分散投資するという考え方は、それはそれで有効かもしれません。個人投資家の出る幕ではありませんが、……。
 p.200 には、個人投資家からみた「投資ファンド」について北村氏の見解が述べられています。一般の個人投資家は、国内外の「株式」と「債券」をポートフォリオの基本に据え、「投資ファンド」への投資は行わない、あるいは、行うとしても限定的な資産配分割合とすべきであるということです。確かに、ファンドマネージャーについてもわからないことが多いし、どのファンドを選ぶべきかに関する情報はきわめて得にくいので、デュー・ディリジェンスなどは個人投資家にはできません。その意味で、慎重に行うべきだとの北村氏の意見はもっともです。しかし、驚異的なパフォーマンスを見せつけられて「あなたもいかがですか」と誘われると、つい投資したくなってしまうのもまた事実です。このあたりのスタンスをどうするべきか、乙には確たる判断が付きません。
 本書は、全体として、おもしろく読みました。なお、本書の記述内容が北村氏の前著
http://otsu.seesaa.net/article/22245739.html
と一部重なるのはしかたがないでしょう。


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2006年08月24日

今井澂・大井幸子(2005.12)『ヘッジファンドで増やす時代』東洋経済新報社

 乙が読んだ本です。
 本書の内容を一言でいえば、ヘッジファンドバンザイということです。本書のタイトルが内容をよく表しています。
 今井氏の書いた第1部のほうは、大井氏の書いた第2部よりもさらに明るい調子で書かれています。
 p.31 では、すでに日本の機関投資家の4割がヘッジファンドに投資しているということです。こんなにも一般化しているんですね。
 pp.61-66 では、今後の日本について、インフレ・円安を予想しています。今井氏は 2008-2010 年くらいからこうなるといっています。だから外国籍投信に投資しようという論法ですが、これは浅井隆氏などの論理と同じです。数年先の予想を述べるところも共通しています。こんなことを言ってしまっていいのでしょうか。
 p.91 では、「いまは「大手ファンドの破綻」危機はない」と断言しています。「100% 近くの確率でありえない」と確信を持って言っていますが、その確信の根拠が示されていません。「大手」とはどの範囲かも明示されていません。「破綻」の定義も書いてありません。投資額の1%を投資家に償還して解散したファンドがあった場合、これは「破綻」なのでしょうか、そうでないのでしょうか。せっかく本を書くなら、単に主張するのでなく、もう少し丁寧に説明してほしいところです。
 大井氏の書いた第2部のほうがずっとおもしろいと思います。
 pp.138-139 では、米国での 2000-2002 年の株価低迷のため、年金などの大手機関投資家がオルタナティブ投資分野へ資金を分散させ始めたとあります。p.140 では、大手機関投資家は運用資金を従来の債券中心の運用からヘッジファンドにシフトしたとあります。p.144 では、年金などの機関投資家はヘッジファンドを全体のポートフォリオの 5-10% 程度組み入れるとのことです。いやはや、ヘッジファンドへのシフトはもう大きな流れになっているんですね。ただし、5-10% というと、比率としてはかなり低い方でしょう。やはり機関投資家はヘッジファンドはリスクが高いと見ているのでしょう。
 pp.159-166 では、ヘッジファンドのベンチマークの話が出て来ます。こうしてヘッジファンドを評価しようということです。年金の資金などが入ってくることで、こんな傾向になるんですね。p.166 では、年金の運用機関は、受託責任を担うから、ヘッジファンドなどの運用の透明性を要求し、発言力を強めているとあります。これは、機関投資家に好都合なだけでなく、年金を受け取る一般の人にも、投資家にも好都合だし、ヘッジファンドにとってもかえって好都合な話でしょう。ヘッジファンドの将来はさらに明るいと予想されます。
 pp.188-193 は、アメリカの大学基金がヘッジファンドを活用しているという話です。p.192 では、大学基金の 1/3 がヘッジファンドに投資しているとあります。さすがにアメリカですね。
 pp.193-194 では、インターネットと投資の話が出て来ます。インターネットで商品を探し、比較し、仲間同士で情報を交換し、安くてサービスが良いところから買うことが一般化していますが、投資の場合も同じだということです。今後の金融業界は、さらに投資家にあった商品開発をするようになるでしょう。

 こういう本を読むと、自分もヘッジファンドに投資しようという気になります。しかし、残念なことに、多くのヘッジファンドは最低投資金額が高いので、ゴミ投資家は手が出せません。逆に言うと、この本は富裕層向けに書かれているということになります。本書のあちこちに、そういうニュアンスのところがあります。
 一般人にとっては、ま、こういう世界があるということを知るだけでも興味深いと思います。


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2006年08月22日

リチャード・ホロデック、上中淳行(1999.9)『スマートインベスターのためのオフショア投資とヘッジファンド──心構えから、設立、運用まで──』ダイヤモンド社

 乙が読んだ本です。
 今となっては、ちょっと古くなった感じもしますが、金融ビッグバンの結果、日本人もオフショア投資ができるようになって、さっそく書かれた本と言えましょう。弁護士のホロデック氏がセミナーで話した内容をもとにオフショア金融センターを利用する日本人投資家のための実用的なガイドブックとしてまとめられました。
 第1章は「オフショア金融センター入門」です。オフショアがどんなところかが説明されます。
 第2章は「オフショア金融センターへの投資の実際」ということで、オフショア銀行に口座を作ってオフショアファンドを購入するまでが説明されます。
 p.66 では、オフショアに自分の銀行を作る(!)話まで書いてあって、ずいぶん本格的な投資話が展開されます。
 p.78 には、ヘッジファンドの運用成績が書いてあって、乙は興味を持ちました。Van HFA という出典とともに、1993-1997 年の結果ですが、次のようになっています。ファンドは 5000 万ドル以上のものだけを取り上げているとのことです。

VAN ヘッジファンドインデックス
1) アメリカのファンド  21.5%
2) オフショアのファンド 18.3%
株式投資信託平均   14.9%
債券投資信託平均    6.2%
S&P500指数       20.3%

 なるほど。ヘッジファンドの中でもアメリカのファンドは特に好成績なんですね。
 第3章は「オフショア金融センターへの投資形態」ということで、ファンドを中心に、直接型と間接型をわけ、さらに、それぞれを投資勘定型、法人型、信託型、パートナーシップ型に区分して、それぞれの特徴を述べます。とても詳しい記述です。
 第4章は「オフショア金融センターの利用と税金」で、第3章の分類を踏まえて、それぞれの税金面が詳しく述べられます。投資家の居住国、ヘッジファンドの所在地、ファンドの運用先の所在地を組み合わせて説明するところなどはかなり念のいった記述です。
 第5章は「ヘッジファンド投資を検討する」ということで、ヘッジファンドへの投資方法を述べます。
 p.197 では、Tremont Advisers という出典を示した上で、1993-1997 のパフォーマンスの比較がなされます。p.78 と似ています。

ヘッジファンド
22.08% マーケットオリエンテッド
15.09% 債券投資型
17.76% 復活期待型
21.78% エマージングマーケット
20.52% マーケットニュートラル
21.35% グローバルマクロ
20.38% 先物

14.80% 代表的ミューチュアルファンド
20.21% S&P500指数

 どの手法でも、5年の平均で年率約20%ということですから、やっぱりすごい成績です。ミューチュアルファンドは、平均指数に負けていますが、ヘッジファンドならそれ以上の成績が期待できます。
 ところで、こうやってみると、平均指数による運用はバカにできませんね。インデックスファンドを買う意味はここにあることが理解できます。ヘッジファンド投資と同レベルのパフォーマンスなんですから。

 本書は、全体として、サラリーマン投資家のための本ではなく、オフショアに会社を作って投資する人のための本と言えるように思います。本格的な投資とはこういうものだということがわかります。しかし、サラリーマン投資家の乙には違和感がありました。
 ただし、ヘッジファンドが実際にミューチュアルファンドよりもずっと好成績であることで、そういう投資を考える意味があることがわかったという点で興味深かったです。

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2006年08月20日

オーレン・ロース(2005.5)『個人投資の楽園 オフショア入門 完全マニュアル』講談社

 乙が読んだ本です。
 全体を一言でいえば、海外口座を作ってオフショアファンドに投資しようという趣旨の本です。
 第2章「海外口座を開こう」が非常に詳しく書いてありました。70ページ以上あります。必要な英語の書類の書き方まで書いてあり、非常に徹底しているという感じです。ここまで書かなくてもいいのではないかという意味で、詳しすぎると思うくらいです。これさえあれば、海外口座の開設はむずかしいことではありません。(それ以上に、口座開設者本人の英語能力が大事になりそうですけれど。)
 これに比べると、第4章「オフショアファンドに投資しよう」が簡単すぎます。たった25ページです。たとえば、どうやってオフショアファンドを探すのか、どこのどういう人に相談すればいいのか、何も書いてありません。
 投資家にとって、オフショアの銀行口座の開設は1回だけの話ですが、オフショアファンドへの投資は複数回行うものです。どちらかといえば、後者のほうが大事ではないでしょうか。そういう面から見ると、本書はバランスを欠いているように思いました。
 p.169 には、こんなことが書いてあります。
ローリスク(保守的)  年利8〜12%
ミディアムリスク(積極的)  年利10〜18%
ハイリスク(アクティブ)  年利12〜35%
 この数字は、同じ著者の『億万長者だけが知っている雨の日の傘の借り方』
http://otsu.seesaa.net/article/22485262.html
の p.125 と比べると、かなり違っています。
 本書では「ある銀行では、このように定めています。」ということで、ロース氏の意見ではないことを明示していますが、それにしても、単純にこう引用するということは、これでいいとロース氏が考えているということです。とすると、2冊の本で値が大きく違っているのは問題があるように思いました。
 本書全体として、乙は、あまり読む価値はないように思いました。


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2006年08月18日

オーレン・ロース(2003.9)『億万長者だけが知っている雨の日の傘の借り方』講談社

 乙が読んだ本です。
 全体は、第1部100ページと第2部150ページ、付録13ページに分かれています。
 第1部は、人生設計のような話で、抽象的であり、あまりおもしろくないように思いました。
 第5章で登場する PTMC(複数通貨および多重国居住による、移動可能な職業)が、この本の主題です。億万長者になったら、こういう生き方をしようということです。では、こういう職業は、どんなものでしょうか。p.71 の表にありますが、作家、作詞家、作曲家、通訳、プロスポーツ選手、投資家、などであり、サラリーマンや国家資格をもとにする職の人(医師、弁護士、税理士など)はなれません。乙は、ここまで読んで、がっかりしました。ごく一部の人を対象に書かれた本だったからです。乙のようなサラリーマンは PTMC ではありえません。したがって、この本を読んでも、あまり役に立ちません。
 第2部は「明日からできる、実践・海外個人投資」ということで、乙が期待して読んだところです。
 特に第8章「オフショアファンドの秘密」をおもしろく読みました。
 p.125 では、ローリスクファンドが年間5%のリターンで、5.1%〜6.5% がモデレートファンド、6.5%以上がハイリスクファンドと分類しています。ほう、なるほど。このあたりで区分するんですか。日本の低金利になれてしまった頭には新鮮に響きます。
 p.126 では、なぜオフショアファンドの成績がいいかを説明しています。金融のプロだとか、優れたマネーエンジニアリングが存在するからだなどという理由が述べられますが、どうも、あまり説得的ではありません。ここに書いてあるようなことなら、オフショアでなくても実行できそうな話です。
 p.127 では、日本の銀行もオフショアに投資しているということが述べられます。あ、そうですか。オフショアファンドがなぜいい成績を挙げるかは説明されていなくても、日本の銀行がそういうことをやっているなら、いい話に間違いありません。だったら、個人も乗り出しましょう。
 この本の中心部分は、第11章「スイス銀行に口座を開く」、第12章「プライベートバンクの世界」、第13章「お金持ちが眺める世界の景色」(PTMC の話)です。乙のようなサラリーマンとはまったく別の世界が描かれます。ヨーロッパのお金持ちってすごいんですね。
 全体を読み終えて、億万長者の生き方がかいま見えたような感想を持ちましたが、それと同時に、サラリーマンには無縁の本だなあと思いました。知識を広げる(お金持ちの世界を知る)という意味ではおもしろいのですが、これが「明日からできる、実践・海外個人投資」といわれると、「う〜ん、だいぶ違うのではないか」と思います。サラリーマンにはとうていできないことですが、お金持ちは、こういうことが簡単にできなければならないのでしょうね。

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2006年08月16日

山崎元(2006.4)『「投資バカ」につける薬』講談社

 乙が読んだ本です。とても痛快な本です。
 しかし、乙は必ずしも賛成できないところがあり、そこを中心に意見を述べます。
 p.40 から、投資信託は手数料が高いから買うべきでないという話が出て来ます。ETF も銘柄変更で損をします。その代わりに、日本株では数銘柄に分散投資するのがよいとのことです。山崎氏は、投信の手数料を 0.5% くらいにできるとしています(p.234)。乙としても、もしも、そういうのがあったら、実際に投資してみたいと思いますが、現状では存在しません。では、どうしたらいいのでしょうか。待っていても、これから誕生するとは思えません。これからできるくらいなら、すでに始まっているでしょう。それとも、山崎氏が独自のファンドを立ち上げますか。それが「手数料を 0.5% にできる」と断言する山崎氏の責任の取り方だと思います。
 ところで、乙が投資信託を買っている中心部分は、日本株以外の運用を考える場合です。外国株などは、自分で情報を集めるのにも苦労しますし、自分で直接買うのは(うまく判断できずに)危険すぎるし、取引を開始するための手間などが無視できないように思います。どうやればコストを下げられるかも難しい問題ですし、株を売って退却するときの判断はさらにむずかしくなるでしょう。したがって、投信に頼るのがよいと思っています。海外のファンドを買えば、自分でいろいろ調べなくて済むということにメリットがあることになります。
 p.143 では、山崎氏は、外貨建て資産への投資はいずれも手数料が高く、適当なものがないから国際分散投資をする必要はないとしています。あ、なるほど。乙の疑問(日本株以外の投資信託をどう考えるか)に対する回答が書いてありました。一切手を出さないというわけです。それはそれで一つの考え方ですが、円建て資産だけで運用することのリスクを考えないでいいのかどうか、乙は疑問に思います。
 p.142 日経平均のパッシブファンドの場合、銘柄入れ替えで投資家は損をするわけですが、それが数十ベイシス(0.数%)に達するということです。かなり大きな割合で、無視できません。そして、TOPIX でも、同様の問題があるというわけですが、さて、それはどれくらいの影響を与えるものなんでしょうか。TOPIX は、日経平均よりも基準となる会社の数がはるかに大きいのですから、パッシブファンドの損失はそれだけ少ないように思いますが、それがどれくらいか示してほしかったと思います。
 ちなみに、日経新聞の8月15日夕刊に東証2部から東証1部に指定が変わる企業の株価の話が出ていました。これらの企業は、インデックスファンドの買いが入るために株価が上昇しやすいとのことですが、記事自体を読むと、あまり大きな上昇ではなさそうです。2005年9月1日に指定日を迎えた13社の株価を8月1日と9月末で比べると、対TOPIX 以上に上昇したのは半数しかないとか、1部指定発表日前後に上昇する例と、指定日の月末にかけて上昇する例がある一方、株価上昇が見られないケースもあるということでは、個人投資家がこれを利用して儲けることは無理でしょう。大規模な運用をする場合は、少しはいい成績になりそうですが。
 というわけで、TOPIX インデックスファンドに投資する場合の投資家の損の程度について知りたいと思いました。
 pp.176-184では、ドルコスト平均法に対する批判が述べられています。世間一般の常識に反するかもしれませんが、乙も同感であり、すでにこのことはブログに書きました。
http://otsu.seesaa.net/article/22320551.html
 p.188 から、個人向けヘッジファンドに対する批判が書いてあります。成功報酬型の手数料は、実は高いのだというわけです。乙は、いくつかのヘッジファンドに投資していますので、ここが本書で一番おもしろかったところです。
 ヘッジファンドの定義は、p.190 によると、
1. オフショア籍である
2. デリバティブを活用し、絶対的な利益を追求する
3. 私募投信である
4. 成功報酬制である
5. レバレッジを活用している
の5点です。
 さて、p.192 では、「成功報酬型なら、儲からなかった場合は運用報酬を払う必要がないからいいかもしれない」という考えを批判しています。しかし、乙は、ちょっと考え方が違うと思います。「儲かった場合に、2割の成功報酬を払うのは特に高いと思わない」ということです。
 p.195 では、成功報酬制度は、値上がり分に比例した額の報酬を受け取ることなので、コールオプションと同じだと説かれます。いわれてはっとしましたが、その通りです。そして、p.197 でコールオプションの価値を計算し、リスクを年率20%とすると、コールオプションの価値は8%程度になるので、20%の成功報酬の価値は、1.6% になるとしています。この考え方は大変おもしろかったです。リスクを高くすればするほど、コールオプションの価値は上がりますから、ファンドマネージャーはハイリスクな運用をするということになります。
 以上のような検討を通じて、p.199 では、成功報酬型のヘッジファンドを合法的金融詐欺と断じています。
 成功報酬型のファンドの手数料が相対的に高くなるのは当然ですが、しかし、なお、多くのヘッジファンドはかなりの高利回りを実現してきています。これが単なる偶然か、理由のあることなのかが乙にはわかりません。山崎氏の見方では、これは単なる偶然だということになるでしょう。しかし、実際に何年も高利回りを実現しているという過去の実績を見ると、乙は、単なる偶然ではなく、何かもっともな理由があるのではないか、したがって、こういうファンドに投資していれば、将来的に高利回りが実現できるのではないかと思えます。
 乙の見込みが正しいか間違っているかは、実際に投資して、経験してみるのが一番でしょう。その意味で、ヘッジファンドに運用資産の大部分を預けるような危険なことをせずに、分散投資の一部に組み込むというようなことで考えればいいのではないでしょうか。
 p.210 では、株式投資に関して「売値を事前に決めておくルール」が有害であることを述べています。いわゆる「損切り=ロスカット」も有害とのことです。マルキール氏の著書
http://otsu.seesaa.net/article/21985368.html
でも書いてあったことですが、これが常識なんですね。

 ところで、乙は、本書のタイトルが気になりました。「投資バカ」というのは、山崎氏によれば、「投資について知らない人」ではなくて、「投資に関心があり、意識が高いけれども、実はバカを見ている人」のことです。間違った投資をしている人を山崎氏は「投資バカ」と呼ぶのですが、投資に「間違った投資」があるのでしょうか。乙はないと思います。乙は、株のデイトレードを儲からないやり方だと見て、自分ではしません。同様の理由で、宝くじも買いませんし、パチンコもやりません。しかし、乙は、それらをしている人を「バカ」と呼ぶことはしません。それは、その人なりの考え方・やり方なのであって、個人は(法を犯さないなどのルールに従う限り)何をやってもいいのではないでしょうか。山崎氏は、そういう人たちを「バカ」と呼ぶことで、実は呼んでいる自分の品格を下げていると思います。このタイトルのつけ方は(山崎氏にとって)損だと思います。そういいたい気持はよくわかるのですが。


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2006年08月12日

北村慶(2005.10)『外資ファンド 利回り20%超のからくり』PHP研究所

 乙の読んだ本です。
 タイトルに引かれて買ってしまいました。
 第1章では「企業買収ファンド」の仕組みを解説しています。第2章は「企業再生ファンド」の話です。第3章は「不動産ファンド」を扱います。いずれも、個人のゴミ投資家が手を出せるものではないので、話を知っていれば充分です。それにしても、こんなことで年利20%超が達成できるんですね。
 第4章は「ヘッジファンド」ですが、ここは、個人も投資できるようになってきたので、注意深く読みました。
 第5章「歪み」、第6章「レバレッジ」、第7章「分散効果」、そして第8章「ファンド・カルチャー」で、投資ファンドがなぜ高利回りを実現できるのか、そのテクニックを具体的に説明しています。
 第9章と第10章は、「ファンド資本主義」の話題で、投資ファンドが大きな影響力を持ち始めたことで、社会が変わっていくのではないかという話です。
 乙は、ヘッジファンド関連の話題に一番興味がありました。いろいろ興味深いことが書いてあります。
 p.13 今や、年金基金などもオルタナティブ投資に乗り出しているんですね。まったく同じ意味で、個人投資家も、自分のポートフォリオにヘッジファンドなどを組み込んだ方がいいのではないかと思います。
 p.113 ヘッジファンドの定義が出てきます。(1)レバレッジを活用していること、(2)私募(プライベート)な組織形態、(3)成功報酬制、の三つです。妥当な線でしょう。
 p.121 年間に数百というヘッジファンドが破綻あるいは解散し、1000本近いヘッジファンドが新たに生まれる世界だとのことです。浅川さんの本
http://otsu.seesaa.net/article/22071367.html
にも出ていましたが、すごい話です。
 p.123 ファンドマネージャーも、ずっと利益を出し続けることはできないということです。だからファンドマネージャーの入れ替わりが激しくなります。ずっと生き残れるファンドマネージャーはいないのではないでしょうか。厳しい世界です。
 p.200 ファンドマネージャーと投資家との出会いが重要だという話です。お互いに信頼できることが必要だからです。ということは、ヘッジファンドなどは、もともとゴミ投資家には無縁の世界であり、一部の富裕層だけがまともに相手してもらえる存在だということになります。
 p.232 小規模の資産運用会社のほうが好成績を残すという話です。ということは、大規模な会社に資金を預けても、あまり成績は良くないということになります。
 p.237 今や年金基金・銀行・生保などがオフショアの「投資ファンド」に流れているという話です。

 全体にわかりやすい本でした。統計学的な説明もとても丁寧にしてありました。
 ただ、高利回りの「投資ファンド」が、富裕層だけを相手にしていて、クチコミでしかそういう話が伝わっていかないという話はちょっとショッキングでした。それでは、ゴミ投資家は何もするすべがないではありませんか。ただ、悔しいといって歯ぎしりするだけになってしまいます。ということでは、ゴミ投資家でも投資できるような最低投資金額のファンドには、もう少し積極的になってもいいかななどと考えてしまいました。
 ともあれ、ヘッジファンドがどうやって儲けているのかをきちんと知りたい人にはお勧めできる本だと思います。
 北村慶氏のサイトも訪問してみるといいかもしれません。
http://kitamurakei.jugem.jp/


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2006年08月08日

浅川夏樹(2004.8)『わたし、かわいいお金を海外投資でふやしました。−銀座ホステスの華麗なる資産形成術−』実業之日本社

 乙が読んだ本です。
 表紙(のカバー)には色っぽいイラストが描いてあり、帯には「花のいのちは短くて──。」などと書いてあります。「ホステスの書いた本だから、遊びの本かな。」などと思ってはいけません。読み始めると、びっくりします。本格的な投資の本です。「ホステス」というのは、偽の姿で、本当は証券マンが匿名で書いているのではないかと思うくらいに、浅川氏はいろいろ調べ、投資を実践し、その経験に基づいてこの本を書いています。浅川氏は、ホステスでありながら、一方では自分のお店を持ち、その運営のために自分で法人を設立して、その代表者を務めているという多才な方です。
 第1章では、浅川氏が総合的に活躍している人なんだということがわかります。今までの失敗談を含めて「来し方」を描いています。
 第2章では不動産投資について述べます。不動産投資は(J-REIT を含めて)個人では行わず、法人の事業として行うようです。この方針決定の裏には、浅川氏の冷静な判断があります。
 第3章は、さまざまな金融商品について述べます。浅川氏はさわかみファンドへの投資や株のオプション取引まで行っています。p.82 には、浅川氏のポートフォリオが出ていますが、分散投資のようすがよくわかり、参考になります。
 第4章は、エマージング投資ということで、中国株・インド株・ロシア株のおもしろさについて語ります。
 ページ数ではここまでで約半分ですが、まだ海外投資の話ではありません。
 第5章で、やっとオフショア投資の話になります。オフショアに口座を作り、さまざまな商品に投資します。pp.168-169 のヘッジファンドの注意点はおもしろかったです。2002年には300のヘッジファンドが解散し、新たに1200が設立されたなどと聞くと、なかなか大変なんだなあと思います。乙の知らないところで、解散・破綻があるんですね。人気が出たヘッジファンドのパフォーマンスが下がることはよくあるとのことですから、乙のように大きくて有名なところに投資するようではダメなんですかね。
 第6章は、「おいしい話には裏がある」と題する章で、乙はここが本書中で一番おもしろく思いました。pp.194-198 では、無料のサービスではいいものに巡りあわないから、自分で調べるか、専門のスタッフを雇って時間と能力への代償を払うべきだというようなことが述べられます。耳が痛い話です。成功者とはどういう人か、考えさせられます。
 第7章は、「わたしを支えてくれる人たち」という章で、浅川氏の人脈をいろいろ書いています。実に広い人脈をお持ちで、うらやましい限りです。ホステスならではの人脈なんでしょうね。
 タイトルとちがって、半分は海外投資の話ではありませんが、しかし、海外投資をするには、やはりその前に国内での投資を経験しておく必要があると思います。その意味で、本書の前半はけっして不要なものではなく、むしろ付いていることが望ましい部分です。タイトルは編集者のほうで付けたのですかね。副題のほうがむしろ本書の内容を一言で表しています。

 読み終わった感想を一言で述べれば、浅川氏は本当に頭のいい方であり、また努力家です。ホステスという立場を生かしてすばらしい人生を歩んでいる方だと思います。
 乙は、一度実際にお目にかかって、海外投資の話をうかがいたいものだと思いました。もっとも、安サラリーマンとしては、とうてい銀座のクラブには行けませんけれど。
 なお、乙は、本書を1年ほど前に購入して読んだのですが、そのときはすごい本だと思いました。今回、改めて読み直してみたら、そんな印象は持ちませんでした。たぶん、乙の側の知識が増えたためだろうと思います。となると、ここからは一般論ですが、本の感想を述べることはむずかしいことになります。客観的な感想なんてありえません。すべては、読んだときの読み手の知識や考え方によって、変わって受け止められるということです。当たり前のことですが、実感しました。
 興味のある方は、浅川氏のサイト
http://kaigaitoushi.com も訪問してみるといいでしょう。メールマガジンなどもあります。
 http://blog.business-i.jp/asakawa/ は、浅川氏のブログです。


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2006年08月06日

バートン・マルキール(2004.4)『ウォール街のランダム・ウォーカー(新版)』日本経済新聞社

 乙が読んだ本です。467ページにも及ぶもので、中身がぎっしりと詰まっており、読み応えがありました。単に分量が多いだけでなく、中身が濃いということです。経済学者の書いたものですので、それだけ研究書に近いということでしょうか。
 内容を一言で言えば、株式投資にはインデックス・ファンドを買うのが一番良いということです。マルキール氏の本で提案されてインデックス・ファンドが実際に作られたというのも興味深いことでした。
 原著はミリオンセラーだそうで、帯には「全米No.1テキスト!」と書いてあります。副題は「株式投資の不滅の真理」となっています。しかし、本当は、p.23 にあるように「ゆっくりと、しかし確実に金持ちになる本」という副題がむいていると思います。
 本書では、テクニカル分析やファンダメンタル分析をはじめ、株式投資のいろいろな考え方が登場しますが、それらがどれも「市場平均」よりも継続的に優れているわけではないということで、結論としてインデックス・ファンドのススメということになるわけです。
 p.97 では、新規公開株を買うときはよくよく注意するべきだと書いてあります。乙は、「へえ」と思いました。IPO のブームがあるように思いますが、全体としてはあまり儲からないのでしょうね。
 pp.206-207 には「フィルター法」というテクニカル手法が出てきます。直近の下値からたとえば5%以上上がったら、上昇トレンドにあるということで買い、高値から5%下がった時点で売るというような手法です。「損切り」というアイディアも同じ考え方をしています。しかし、この手法はバイ・アンド・ホールド戦略のパフォーマンスを継続的に上回ることはないということで、否定されています。ということは、損切りについても否定されているわけです。乙は不思議な気がしました。損切りは常識だと思っていましたが、そうではないのですね。
 pp.232-233 では、バイ・アンド・ホールド戦略は、税金面で有利だということが書いてあります。確かに、株を売ると利益が出ていれば税金が取られますが、ずっと保持していれば税金がかからないわけですから、そのほうが望ましいということになります。長期保有を目指したいものです。
 p.272 では、効率的市場理論が出て来ますが、それによれば、ファンダメンタル分析もインデックス・ファンドを上回れないとのことです。これには、乙も驚きました。
 p.341 では、期初の株価収益率(PER)と実現総リターンの関係を調べ、株安の場合はリターンが高く、株高の場合はリターンが低いという結果を示しています。だから、低PERの銘柄に投資するほうがリターンが高くなるということになります。pp.349-351 でも同様の話が出て来ます。p.350 の図4は、これをはっきり示しています。このことは、効率的市場理論と真っ向からぶつかります。しかし、マルキール氏は、p.341 でこういう実証研究が効率的市場理論とまったく整合的かもしれないと述べています。乙にはここが理解できませんでした。低PERの銘柄のリターンが平均よりも高ければ、市場平均に投資するよりは、PERの値で全銘柄を二分し、低PERのほうの銘柄に分散投資すればいいはずです。
 pp.342-346 では、「逆張り」戦略が出てきます。「リターン・リバーサル」現象というのだそうですが、過去3年間でひどい結果に終わった銘柄を買えば、次の3年間は平均以上のリターンになるという考え方です。予測可能パターンのうちもっとも信頼性が高いものとしていますが、p.345 では、マルキール氏はこれに対しても否定しています。
 p.351 では、低PBRの銘柄の投資リターンは高くなるという他の人の研究を紹介しています。しかし、p.352 では、バリュー株ファンドがグロース株ファンドを上回ったのは例外的な期間における現象だとして否定しています。しかし、乙は、80年にわたる傾向を基準にして、30年の現象を「例外」とする見方は、まずいのではないかと思います。数年の現象ならば「例外」扱いでもいいですが、30年も続くものは、そういう説明では納得できないでしょう。
 pp.356-360 では、生存者バイアスについて述べています。さまざまなファンドがありますが、失敗したファンドは生き延びられないために、残ったファンドの平均を見ると一見好成績を示しているように見えるということです。このことから、積極運用のファンドは市場平均を上回れないとしています。
 結論は単純ですが、なかなか奥行きのあることを言っていることになります。マルキール氏の言説を信じれば、すべてのアクティブ・ファンドは否定されてしまうし、個人投資家が個別銘柄の株に投資することも否定されてしまいます。う〜む。乙は発想の転換を迫られた気がしました。
 なお、p.409 の投資家の年齢別のアセット・ミックス(アセット・アロケーションのこと)というのはおもしろかったです。
 本書は、内容的にはお勧めできる本ですが、読むのにある程度時間がかかりますので、その覚悟をして読みましょう。


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2006年08月04日

角山智(2005.11)『株価4倍「割安成長株」で儲ける収益バリュー投資術』秀和システム

 乙が読んだ本です。
 角山氏の前著がおもしろかったので、期待して買ってみました。
 本書の内容を一言でいうと、角山氏の10年の経験に基づき、割安成長株に投資するのがいいということです。
 株価が何倍にもなる銘柄を事前に買えたら、それはすごい話です。角山氏はそれを実践してきています。まえがき(p.3)には、2003年から 46.8%、37.0%、45.2% のパフォーマンスだと書いてあります。ちょうど、日本の株価が上昇した時期になります(平均株価の上昇の影響が角山氏のパフォーマンスの半分を占めます)が、それにしても、なかなかの成績です。
 ただし、気をつけなければならないのは、何倍にもなる銘柄を組み込んだとしても、1年間のトータルなパフォーマンスを見れば、この程度の成績にしかならないということです。経験者ならば、1年で何割もの成果を記録するのがいかにむずかしいかはおわかりでしょう。表紙の帯には、「勝率9割」とうたっています。株価が何倍にもなる銘柄を9割の確率で見つけたとして、年間パフォーマンスは5割に到らないというわけです。何か、マジックでも見ているように思えるかもしれませんが、そうではありません。株価が何倍にもなるには何年間もかかるから、計算すれば年間あたり上昇率は5割以下になるということです。
 p.5 には、バリュー投資には2種類あって、それぞれ「資産バリュー株」投資と「割安成長株」投資と呼ぶことが書かれています。前者は、角山氏の前著
http://otsu.seesaa.net/article/21794517.html
に示されたやり方で、初心者向きだそうです。道理で乙にも理解できました。
 p.24 からバリュー投資の説明が出てきます。一言でいえば、ベンジャミン・グレアムとウォーレン・バフェットが編み出した投資方法のことなんですね。いわば、角山氏は日本のバフェットを目指すというわけです。
 p.33 には、資産バリュー株=低PBR株の投資結果が出て来ます。すばらしい結果です。乙はこういうのが好きです。p.34 にあるように、資産バリュー株に投資すれば、最大 50% 程度のリターンになるわけですから、これで充分です。
 しかし、角山氏は、本流は割安成長株にあるとして、以下、本書の大部分を割いてその投資術を述べています。乙の感想として、「サラリーマンでもここまでできるんだ。すごいなあ」と思いました。徹底した企業分析です。ピーター・リンチのやり方
http://otsu.seesaa.net/article/21354780.html
に似ています。こういう努力には頭が下がります。
 角山氏は、p.109 で、指標によるスクリーニングは使わないと述べています。そして、p.110 で定量分析の結果より、定性判断の結果を尊重するとしています。こういうやり方は、時間と手間がかかるやり方です。
 乙も、将来的にこのようなやり方になるのでしょうか。たぶん、違うような気がしています。こんなにも手間をかけていられないというのが理由です。p.191 には、角山氏の資産残高が掲載されていますが、1993年の 600 万円が 2005 年には 5600 万円ほどになっています。この間、当初資金の 600 万円だけで 5600 万円まで増えたのか、途中で資金の追加があったのかはわかりませんが、このような金額を運用していたら、それなりの手間をかけてもいいのかもしれません。しかし、乙は、株式投資は恐いもの(ハイリスクなもの)と思っていますので、自分で個別銘柄を買うのはほんの少しだけに限定しています。角山氏とは、まさに桁違いです。ですから、乙の資産はあまり伸びていかないのですが、逆に、もしも大暴落があってもあきらめがつく程度です。こういうスタンスの人間には、角山氏のような徹底分析はとうていできないと思います。乙としては、当面は「安易な投資」を心がけたいと思います。
 もっとも、この話は、今の乙の考え方であり、株取引を今後10年も経験すれば、考え方が変わっている可能性はあります。
 本書によって、サラリーマン個人投資家による本格的な株式投資のあり方を学ぶことができました。


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2006年08月02日

角山智(2004.12)『超特価バリュー株「福袋銘柄」で儲ける週末投資術』秀和システム

 乙が読んだ本です。
 サラリーマン投資家が10年の経験を基に書いた本ということで、乙も興味を持ちました。書いてあることは大変にまともで、参考になる面がたくさんあります。
 結論を簡単にいうと、株式投資をするならバリュー株(割安株)にしようということです。
 第1章は「バリュー株投資で週末投資家を目指そう!」という章です。
 株式投資には、成長株投資とバリュー株投資という二つの考え方がありますが、成長株投資はうまく行かないことが多いとのことです。なぜか。p.42 で、成長株は株価に今後の成長が織り込まれてしまっているからだと説明しています。
 p.44 では、優良企業が投資先としていいとは限らないという話が出てきます。なるほど。これは重要な指摘です。
 第2章は「バリュー株を見つける「投資指標」の使い方」です。
 p.68 で、バリュー株とは低PBR株のことだと書いてあります。p.83 で、バリュー株指標のパフォーマンスを見ると、どのバリュー株指標もいい結果を残しています。中でも、低PBRが一番いいようです。乙は、雑誌「オール投資」のデータを基に、低PBRがいいという結論に達しました(詳しくは、乙のブログのカテゴリ「雑誌「オール投資」徹底検証」
http://otsu.seesaa.net/category/1483079-1.htmlを参照)。それがもっと長期のデータで裏付けられています。ただし、角山氏は、p.84- で、こういう指標を単独で使うのでなく、組み合わせて使うのがいいと述べています。
 第3章は「究極のバリュー株・「福袋銘柄」の見つけ方」です。
 角山氏は、値段以上の価値がある株のことを「福袋銘柄」と呼び、現預金の多いキャッシュリッチ企業や、所有する有価証券や土地に着目した銘柄選びのコツを説明しています。p.126- では、つまらない企業に着目し、人気銘柄には手を出さないということが書かれています。ピーター・リンチの本
http://otsu.seesaa.net/article/21354780.html
にも同様の記述があったことを思い出しました。
 第4章は「バリュー投資を理論面から検証する」です。ここで、角山氏は、効率市場仮説、行動ファイナンス理論、アノマリー(変則性)など、現代の投資理論の主だったところを解説します。
 第5章は「世界のトップ投資家に学ぶバリュー投資の極意」です。それぞれの投資家の考え方がおもしろいです。その中に、SGターゲット・ジャパン・ファンド(pp.182-187)が挙げられていて、乙は「おや」と思いました。乙もこのファンドを購入しましたが
http://otsu.seesaa.net/article/16412346.html
実は、その後、2006年5月8日に解約したのでした。角山氏がいうように、このファンドは2000年の設定日から2004年くらいまではいい成績だったのですが、2005年は、さほどでもありませんでした。乙は、2005年5月9日からちょうど1年運用し、3割増の好成績を享受しましたが、TOPIX には負ける結果になっています。よかれ悪しかれ、こういう事実がこのファンドの特性を物語っているように思います。
 第6章は、「投資の常識・非常識を知っておこう」という章です。乙は、この章を一番おもしろく読みました。たとえば、次のようなことが書いてあります。
 p.197 日経新聞は初心者向けだから、読まなくていい。
 p.198 アナリスト・レポートは「車のカタログ」のようなもので、販促物にすぎないから、役に立たない。
 p.200 マネー雑誌は役に立たない。広告が多いので、各種金融商品について批判的に書けるわけがない。
 p.204 自社持株会はハイリスクである。
 pp.208-214 投資信託を買ってはいけない。
 p.214 それでも買うなら、ETF とさわかみファンドである。
 これらは、いずれも角山氏のいろいろな経験が活かされた記述になっていると思います。それぞれに納得できる話です。
 なお、角山氏のサイト「パーシャル・オーナー」もアクセスしてみるといいと思います。
http://www5f.biglobe.ne.jp/~dream3/


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2006年07月31日

木戸次郎(2005.3)『木戸次郎の大化け株』宝島社

 乙が読んだ本です。
 表紙に大きな文字で「勝率8割!」と書いてあります。タイトルとあわせて考えれば、この本で紹介されている銘柄を買えば、8割の確率で大化けすると読めます。こういう本は、内容の正しさについて(1年以上経ってから)ぜひ検証しなければなりません。
 奥付には「※銘柄紹介ページのデータは2005年2月3日現在のものです。」と書いてあります。そこで、この日に株を買ったとして、その後の推移を見てみましょう。(本当は、本が書店に並ぶ日を基準にするべきなのでしょうが。)
 本書に掲載されている木戸銘柄はその後どうなったでしょうか。2005年2月3日の株価を2割下回ったら損切りしたものとして見ていきます。×は損切りしたもの、△は今まで保有が継続しているもの、○は木戸氏の目標株価に届いたものです。

2802 味の素 1234円
△木戸氏の予想(p.84)=目標株価1800円以上
6807 日本航空電子工業 1001円
○木戸氏の予想(p.87)=目標株価1150円以上
6594 日本電産 12230円
○木戸氏の予想(p.91)=目標株価15000円以上
7122 近畿車輛 350円
×木戸氏の予想(p.94)=目標株価500円以上
 2005.5 に 266 円まで下げた。
 損切りせずにこれに耐えられれば、500円以上になった。
7404 昭和飛行機工業 780円
○木戸氏の予想(p.97)=目標株価1000円以上
5805 昭和電線電纜 142円
○木戸氏の予想(p.99)=目標株価230円以上
5996 新立川航空機 1867円
○木戸氏の予想(p.101)=目標株価3000円以上
6365 電業社機械製作所 4630円
△木戸氏の予想(p.104)=目標株価7000円以上
6294 オカダアイヨン 468円
○木戸氏の予想(p.107)=目標株価600円以上
6704 岩崎通信機 240円
○木戸氏の予想(p.111)=目標株価350円以上
6460 セガサミーホールディングス 6480円
△木戸氏の予想(p.114)=目標株価10000円以上
6386 扶桑レクセル 824円
○木戸氏の予想(p.145)=目標株価1000円以上
5816 オーナンバ 545円
○木戸氏の予想(p.148)=目標株価800円以上
9107 川崎汽船 713円
△木戸氏の予想(p.152)=目標株価1000円以上
2109 新三井製糖 306円
○木戸氏の予想(p.154)=目標株価500円以上
6366 千代田化工建設 859円
○木戸氏の予想(p.157)=目標株価1200円以上
6023 ダイハツディーゼル 267円
○木戸氏の予想(p.160)=目標株価550円以上
6945 富士通フロンテック 1555円
×木戸氏の予想(p.164)=目標株価2000円以上
1893 五洋建設 186円
○木戸氏の予想(p.168)=目標株価250円以上
3315 三井鉱山 424円
×木戸氏の予想(p.172)=目標株価500円以上
4028 石原産業 244円
×木戸氏の予想(p.176)=目標株価300円以上

 ということで、13/21=62% の勝率です。半分を越えていますから、まあまあの成績といったところでしょうか。乙が事前に予想していたよりはあたっていました。2005年は後半に株価が全体に上昇しましたから、その影響だろうと思います。
 この本の表紙にある勝率8割というのは結果的にウソでした。
 では、なぜ木戸氏はこのようなウソをついたのか。未来のことだからテキトーに書いたといわれればそれまでですが、実は、本書の p.11 にその根拠が書いてあります。ちょっとそれを見てみましょう。以前、木戸氏が週刊現代で紹介した65銘柄中、2週間以内に高値を付けたのが29銘柄あったのだそうです。そこに勝率 83% と書いてあります。木戸氏のいう「勝率」は「株価の値上がり率」(しかも上昇したものだけを取り出して?)のことなんでしょうかね。変な計算です。普通は、勝率といえば、推薦した全銘柄中、何銘柄が上昇したかということですから、29/65=45% と計算するものです。
 株価は上下に変動しますから、仮にランダムに上下するものと仮定すると、その後ある時点で上がっている銘柄が半分、下がっている銘柄が半分です。
 また、ある日を基準にして、その後2週間までに高値を付けたものを数えれば、ランダムに上下すると仮定しても、大部分が該当することになります。(安値を付けたものも大部分のはずです。)
 ちょっと確率を計算してみましょう。ある基準日から考えて、その後2週間では(土日を除いて)10日間の取引日があります。それぞれの終値が基準日の価格から上がっているか、下がっているかが確率 50% で起こるとしましょう。(「同じ」日もあるので、厳密にいえばこの仮定は成り立たないのですが、ここでは計算の簡略さのため、これを仮定します。)ここで、10日間のうち1日でも基準価格を越える確率はどれくらいあるでしょうか。それを求めるには、10日間にわたって安値が続いた場合の確率を求め、それを1(100%)から引けばいいのです。10日間連続して安値になる確率は (1/2)**10=0.00098=0.098% ですから、結果は 99.9% です。つまり、ランダムに個別銘柄を買った場合、2週間以内に高値を付ける確率は 99% 以上ということです。安値を付ける確率も同じです。
 こう考えると、2週間以内に高値を付けたものが 45% というのは、いいかげんな予測を相当下回ったということであり、けっして威張れる数値ではありません。それどころか、実は、ありえない結果だと言えます。
 この本では「2週間以内に高値を付ける」という短い説明しか書いてなかったので、乙は基準価格よりも高い価格になったことを「高値を付けた」と考えて計算しました。この定義が違っているのかもしれません。もう少しきちんと状況を説明してくれれば、確率の計算も正しく行えるかもしれませんが、……。
 ちなみに、この本では、2005年末の日経平均株価2万円の予測をしています。見事に外れたわけですが、このことは、すでに乙のブログで述べました。
http://otsu.seesaa.net/article/20346672.html
 以上のような検討から、木戸氏の言説の信頼性が低いことが明らかになりました。


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2006年07月29日

北浜流一郎(2004.8)『でっかく儲ける!! 日本株100選』(にちぶんMOOK)日本文芸社(その2)

 昨日に引き続いて、本書中の成長銘柄と飛翔銘柄を検証しておきましょう。

成長銘柄26
銘柄コード 銘柄 2004.6.11終値 売りゾーン 結果 売却時期
4755 楽天      85100円 102000-107000円 ○ 2004.12
3722 日本ベリサイン490500円 59万-61万円   ○ 2004.6
4824 メディアシーク277666円 33.3万-35万円  ○ 2004.6
4779 ソフトブレーン 82900円 99000-104000円  × 2004.9
8798 アドバンスクリ204000円 24.5万-26万円  ○ 2004.6
9427 イー・アクセス101800円 122000-128000円 ○ 2004.7
4835 インデックス 140000円 167500-175000円 × 2004.8
2387 ヴァリック   36万円 43万-45万円   ○ 2004.6
2374 セントケア  185333円 22万-23.3万円  × 2004.7
2759 テレウェイヴ 142500円 170000-177500円 ○ 2004.7
4644 イマジニア   1275円 1525-1600円   × 2004.7
4823 サイバード  164000円 196667-206667円 ○ 2004.7
2371 カカクコム  309000円 366667-400000円 ○ 2004.7
3724 ベリサーブ   139万円 165万-175万円  ○ 2004.7
4751 サーバーエージ217750円 262500-275000円 ○ 2004.6
4753 ライブドア(データなし)
4759 バリュークリックジャパン(データなし)
4839 WOWOW     223000円 265000-280000円 × 2004.8
8626 マネックス証券(データなし)
8925 アルデプロ   48000円 58000-60000円  × 2004.8
2317 システムプロ 149666円 180000-186667円 × 2004.7
2337 アセットマネー116000円 140000-145000円 ○ 2004.7
2362 夢真       298円 357-375円    ○ 2004.7
2656 ベクター   294000円 35万-37万円   × 2004.10
4296 ゼンテックテク390000円 47万-49万円   × 2004.9
7873 アーク(データなし)

 成長銘柄26は株価上昇銘柄が6割でまあまあといえます。ただし、ライブドアなどが含まれているので、危険な香りが漂います。(でも、これは今だから言えることですが。)
 成長銘柄は、本来は1年〜数年くらい後で見るべきでしょうが、上のデータで見るように決着がついたのが早かったように思います。2004年8月1日発行の MOOK ですが、現実的にいつ売られたのか、わかりません。書店で見かけたときには、すでに株価が上昇した後だったというような感じだったかもしれません。

飛翔銘柄28
銘柄コード 銘柄 2004.6.11終値 売りゾーン 結果 売却時期
6594 日本電産    5535円 6750-7000円   ○ 2005.11
3116 豊田紡織    1771円 2120-2200円   ○ 2004.8
9861 吉野家ディー 176000円 21万-22万円   ○ 2005.11
4204 積水化学工業   885円 1060-1100円   × 2004.10
7459 クラヤ三星堂  1603円 1920-2000円   × 2004.10
4696 ワタベウェディン2260円 2700-2800円   ○ 2004.7
5991 ニッパツ     708円 850-900円    ○ 2005.5
9375 近鉄エクスプレス2425円 2900-3000円   × 2004.10
3941 レンゴー     543円 650-680円    ○ 2005.11
6135 牧野フライス製作 735円 880-920円    × 2004.10
6798 SMK       481円 570-600円    ○ 2005.7
3591 ワコール    1152円 1400-1450円   ○ 2005.3
8234 大丸       991円 1190-1240円   × 2004.10
6973 協栄産業     380円 460-480円    ○ 2006.6
8830 住友不動産   1247円 1500-1560円   ○ 2005.9
8860 フジ住宅     480円 580-600円    ○ 2004.7
6498 キッツ      465円 560-580円    ○ 2004.8
1983 東芝プラントシス 551円 660-690円    ○ 2005.12
6586 マキタ     1618円 1940-2000円   ○ 2005.2
8018 三共生興     475円 570-600円    ○ 2005.8
6768 タムラ製作所   609円 730-760円    × 2004.8
2678 アスクル    3345円 4000-4200円   × 2006.6
4543 テルモ     2625円 3150-3300円   ○ 2005.2
6789 ローランド   2300円 2750-2900円   ○ 2004.7
6849 日本光電    1500円 1800-1900円   × 2004.9
6869 シスメックス  1565円 1900-2000円   ○ 2004.8
2784 アルフレッサ  5990円 7200-7500円   × 2004.9
3001 片倉工業    1156円 1400-1450円   ○ 2005.3

 飛翔銘柄は7割で、まあ合格点といえるでしょう。

 というわけで、全体を四つにわけていろいろな銘柄を推薦しているわけですが、全体として、北浜氏の推奨銘柄は、まあまあといったところでしょう。
 乙は、損切りラインは買値の2割減として見てきましたが、これを1割減にしたら、いうまでもなく、もっと「×」が増えます。
 http://www.enjyuku.com/v_kabukita2.html にある北浜氏の紹介によれば「その推奨銘柄の的中率の高さから「当たり屋」として知られる。株式評論家としては媒体露出がもっとも多く、一般投資家の絶大な人気を誇る。」のだそうです。絶大な人気を誇る「当たり屋」でも、この程度の的中率なんですね。
 いい勉強になりました。


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2006年07月28日

北浜流一郎(2004.8)『でっかく儲ける!! 日本株100選』(にちぶんMOOK)日本文芸社(その1)

 乙が見た本です。(あえて「読んだ」とはいいません。)
 古本屋で100円で売っていたので、買ってきました。乙が何に興味があったかというと、北浜氏の推奨する株を買うと、ホントに儲かるのだろうかということを知りたいと思ったからです。
 この本は、2004年6月11日現在の株価を示し、100銘柄の買いを推薦するという安易な投資本です。売りゾーンまで明示してあって、この株価に達したら売ればよいとのことです。
 そこで、挙げられた銘柄がその後どうなったかを検証することで、北浜氏の目の正しさがわかります。基準として、2004年6月11日の終値を使います。また、買値よりも2割下がった場合に損切りするものとします。
 結果の判断は次の通りです。
 ×=損切り
  「売りゾーン」の安値に達することなく、買値から2割下がり、損切りしたと考えられる場合
 ○=利益確定
  損切りラインに下がることなく、「売りゾーン」の安値を越えた場合
 △=保持継続
  損切りラインに下がることなく、「売りゾーン」の安値も越えなかった場合
 本書の刊行後、現在までに株式分割や株式統合が行われた場合は、本書中の株価でなく、分割・統合後の株価に書き換えてあります。

王道銘柄21
銘柄コード 銘柄 2004.6.11終値 売りゾーン 結果 売却時期
7203 トヨタ自動車  4160円 4900-5200円   ○ 2005.9
6758 ソニー     4060円 4800-5100円   ○ 2005.12
8628 松井証券    1169円 1367-1467円   × 2004.10
8306 三菱東京FG   96万円 115万-120万円  ○ 2005.9
5401 新日本製鐵    222円 265-275円    ○ 2004.10
8058 三菱商事    1077円 1290-1340円   ○ 2004.12
7751 キヤノン    3793円 4733-4967円   ○ 2006.1
8802 三菱地所    1366円 1640-1700円   ○ 2005.10
3402 東レ       517円 620-645円    ○ 2005.10
1803 清水建設     481円 580-600円    ○ 2005.8
1911 住友林業    1187円 1440-1500円   × 2004.11
2502 アサヒビール  1194円 1430-1500円   ○ 2005.10
2282 日本ハム    1205円 1450-1500円   ○ 2005.3
4613 関西ペイント   633円 760-800円    ○ 2005.11
2802 味の素     1235円 1500-1550円   △
3105 日清紡      819円 980-1020円    ○ 2005.10
6752 松下電器産業  1518円 1800-1900円   ○ 2005.7
6753 シャープ    1735円 2000-2200円   ○ 2006.1
6702 富士通      752円 900-970円    × 2005.5
8766 ミレアH    159万円 190万-198万円  ○ 2005.10
9501 東京電力    2420円 2900-3100円   ○ 2006.2

再生銘柄25
銘柄コード 銘柄 2004.6.11終値 売りゾーン 結果 売却時期
8307 UFJホールディングス(データなし)
7261 マツダ      360円 430-450円    ○ 2005.7
1808 長谷工コーポ   289円 345-360円    × 2004.8
7757 三協精機    1134円 1350-1400円   × 2005.1
8583 日本信販     421円 500-530円    × 2004.9
9984 ソフトバンク  1530円 1833-1900円   ○ 2005.9
7211 三菱自動車    200円 240-250円    × 2004.7
2262 雪印乳業     365円 435-460円    ○ 2005.9
2768 双日       568円 680-710円    × 2004.7
9435 光通信     4630円 5500-5800円   ○ 2004.10
8263 ダイエー    3500円 4200-4400円   × 2004.7
8308 りそなH   197000円 235000-245000円 ○ 2005.9
3102 カネボウ(データなし)
8840 大京       227円 270-285円    × 2004.8
1861 熊谷組      253円 300-315円    ○ 2005.3
3529 アツギ      126円 150-160円    ○ 2005.9
8003 トーメン(データなし)
1722 ミサワホーム  3390円 4050-4250円   × 2004.8
9983 ファーストリテ 8660円 10500-11000円  × 2005.2
3606 レナウンダーバン1745円 2000-2200円   × 2004.10
7453 良品計画    5050円 6000-6300円   ○ 2005.8
4686 ジャストシステム 788円 950-980円    × 2004.9
8564 武富士     7740円 9200-9700円   △
6720 プリヴェチューリ 870円 1050-1100円   ○ 2004.7
7964 セガ(データなし)

 ここまでで本書の半分を見たことになります。
 結果は、王道銘柄21は株価上昇銘柄が8割と比較的成績がよかったのですが、再生銘柄25は4割とさんざんな成績でした。
 王道銘柄は、実績がある国際優良企業群であり、わざわざ北浜氏に教えてもらわなくても、こういう銘柄に投資する人はたくさんいたと思われます。また、王道銘柄が売りゾーンに達した時期を見ればわかるように、多くは2005年後半の日本の株価上昇期に売りゾーンに達しています。このことは、北浜氏の予測能力が優れていたというよりは、「その時期になったら、株価が勝手に上がってしまって、結果的にいい成績になった」ということを意味しているようです。
 続きは、また明日に。


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2006年07月25日

ピーター・リンチ、ジョン・ロスチャイルド(2001.3)『新版 ピーター・リンチの株で勝つ』ダイヤモンド社

 乙が読んだ本です。
 ピーター・リンチ氏は、マゼラン・ファンドのマネージャーでしたが、マゼランファンドを大きく成長させたことで知られる有名人です。1977年から1990年までで2000万ドルを140億ドルにしたと聞けば、誰でもびっくりするはずです。
 この本は、全体として、リンチ氏がどういう考えで株の取引を行ってきたかを述べた本です。
 全体を読んだ上での乙の感想は2点あります。
 第1に、アメリカの話であり、この本に出てくるいろいろな銘柄について、乙は実感を持って知っているわけではないので、どうも話がわかりにくかったということです。アメリカ事情に通じている人なら、きっとおもしろかったでしょう。乙にはそんなにおもしろいと思えませんでした。
 第2に、銘柄の発掘や調査など、ファンドの運営には膨大な手間をかけているんだということです。どういうところに注意してどんな考え方をして株の売買を行うか、この本でその一部は述べられていますが、個人投資家がリンチ氏のマネをすることは絶対にできません。ですから、この本は個人投資家には役に立ちません。株のプロが読む本だと言えるのではないでしょうか。
 この本の各所で、10倍株(テンバガー)という言い方がでてきます。株はそんなにも大きく伸びるものなんですね。そういうのを事前に買っておけたら、何と幸せなことなんでしょう。乙も1回くらいは経験したいものです。しかし、それには、いい会社を見つけて、しかも超長期にわたってフォローしていくことが必要です。ただ時間が過ぎるのを待つだけではダメで、その間、会社がどうなっているかを定期的にチェックし続けなければなりません。ここが大変です。
 この本の中から、乙がおもしろいと思った部分をいくつか抜き出しておきます。
 p.6 大勝ち銘柄は、結果が出るまでに3年から10年以上かかっているとのこと。いやはや長いものですね。普通はなかなかこんなには保有しきれないように思います。
 pp.15-16 ランチやディナーのスピーチで、聴衆に「あなたは長期投資家ですか」と尋ねると、全員がそうだと答えるそうです。デイ・トレーダーも含めてです。みんなそう思っているんですね。
 p.30 プロのいうことに惑わされるな、ピーター・リンチのマネをするなとのことです。プロとアマは違うからというわけですが、それにしても、こういう言い方は強烈なショックです。リンチ氏の本を読む人は、リンチ氏のマネをしようと思って読むものでしょうに。
 pp.71-72 大きなファンドになると、いろいろ制約があって、あまり儲けられないということです。そうはいいつつ、90億ドルの巨大マゼラン・ファンドは好成績を出しているのですから、いうこととしてきたことがずれています。
 p.95 株で儲けるときに市場全体の予測をする必要はないとのことです。乙は意外でした。リンチ氏は、自分がこれだと思った会社には断固として投資する信念の人なんでしょうね。
 p.273 株を保有し続ける人のほうが頻繁に売買を繰り返す人よりもはるかに優れているということです。これは、株の売買には手数料がかかるために、売買を繰り返したら確実に手数料分を失うからです。本書では、売買には1〜2%の手数料がかかるといっていて、今の日本のネット証券とはだいぶ違います。ネット証券では、手数料が 0.1% 以下になってしまいましたから、リンチ氏の主張は必ずしも当てはまらないように思います。
 本書は、全体として、リンチ氏の経験を通して個別株投資の醍醐味を語る本ではありますが、それだけに、乙は(自分とはまったく違うということで)距離を感じてしまいました。



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2006年07月23日

南山宏治(2006.7)『7戦7勝 10万円から始める南山式 ETF(上場投信)投資術』あっぷる出版社

 乙が読んだ本です。
 ETF について、まとまったことが書かれた本として、珍しいと思います。
 これ1冊で ETF のことがいろいろわかります。特にアメリカ市場の ETF の話は、乙が知識がなかったためだと思いますが、おもしろく読みました。
 そうはいいつつ、ETF について書くだけで190ページもかける必要はあるのだろうかというのが乙の率直な感想です。これで1500円+税はかなり高い感じです。3章の南山氏の具体的な ETF 売買の結果などはカットしてもいいのではないかと思います。
 2章では、ETF 投資法について、長期の視点から「ヒラメ戦術」、数日間の短期投資の視点から「オーバーナイト法」、中長期投資の視点から「長期投資準備法」、さらには「定時定数買付け法」の4つを提示しています。そして、3章がそれぞれの運用結果となるわけですが、乙には、「長期投資準備法」がよく理解できませんでした。今後上昇すると考えられる業種があったらそれに投資するということなんでしょうか。これからの株価の上昇がわかるくらいなら、(その業種の最大手の)個別株に投資する方がいいのではないかと思います。
 乙は、ETF の性質から考えて、ETF 投資は長期投資家向けかと思っていましたが、そうでない考え方も可能だということはおもしろく思いました。(乙は、そうするつもりはありませんが。)
 p.94- では、投資のタイミングも重要だということを述べています。乙も同感です。しかし、そのタイミングをあてることがむずかしいのが現実なんですよね。タイミングは、投資の結果から見れば重要なのだけれども、投資開始時点では確実なことは言えないので、何とも分からないものではないでしょうか。
 p.134 では、ETF もボラティリティはかなり大きく、個別銘柄のボラティリティと遜色ないという言い方をしています。乙の経験では、やはり、個別銘柄のほうがボラティリティが大きいと思うし、平均値は、その算出の基になった個別データの中頃の値であることから、理論上も個別の値よりも平均値のほうがボラティリティは小さくなるはずだと思います。ここは南山氏の勘違いではないでしょうか。
 ともあれ、ETF について一通りの知識が得られる本だと思います。


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2006年07月21日

浅井隆(2006.7)『小泉首相が死んでも本当のことを言わない理由(下)』第二海援隊

 乙が読んだ本です。
 上巻 http://otsu.seesaa.net/article/12849175.html に続いて、ようやく下巻が出ました。
 200 ページ以上ある本にしては、さっと読めます。それもそのはずで、比較的大きな活字で、1ページが15行、1行が38字で組んであります。しかも、章ごとに1ページとって、章のタイトルだけのページをおきます。記述内容は小さな記事単位に分け、見出しが数ページごとに細かく入っています。そのたびに数行分のスペースがとられます。結果として、目次なんか、それだけで9ページにも及びます。本書には不要な図がたくさんあります。p.15, p.23, p.25, p.37, p.52, pp.54-55, p.67, p.73, p.125, p.129, p.135, p.155, p.159, p.167, pp.170-171, pp.180-181(p.163 と同じ), p.193, p.195, p.197, p.198, p.200 は、カットしてもいいでしょう。特に、p.25 なんかは、書いてあることは「預金封鎖はあるとしても10年以上先」だけですからね。これだけで1ページを使うというのはどういう心境でしょう。乙の印象としては、「無理矢理水増しして何とか1冊分に引き延ばした」といったところでしょうか。
 本書の内容は、国家破綻の可能性を述べ、その対策として海外ファンドを買いなさいということです。1行で紹介が済んでしまいます。
 浅井隆氏の今後の予測ですが、p.83 では、2007年後半から2008年に国家破産現象が出現するといいます。そして、2010-2012 年に国家破産に伴う大不況と混乱が始まるとしています。2025-2030 年には年金も政府もボロボロになるとのことです。今までの何冊かの浅井氏の本よりは、長期の予測をしています。こういう予測は当たらないでしょうね。今までの浅井氏の多数の著書が証明しています。
 ファンドの運用ノウハウとして、浅井氏は p.128 で三つのポイントを挙げていますが、その第2は「コンピュータを使っていること」です。乙は、目を疑いました。出版年代が30年も違っているのかと思ったのです。この書き方では、コンピュータを使っていれば優れたファンドだといわんばかりで、乙は思わず笑ってしまいました。比喩的にいえば、浅井氏の書いたこの本だって、執筆時にコンピュータを(ワープロとして、かつ資料収集のための WWW の検索に)使い、製版時にもコンピュータを(製版システムとして)使い、出版社から流通に流すときにもコンピュータを使って流通管理や精算処理をしているから、きっといい本なんでしょう(笑)。
 海外のファンドに投資するという考え方は、わからないでもありません。乙も自分自身で海外に投資していますから、同様に考える部分はあります。しかし、浅井氏が pp.188-202 で推薦する運用方法(これが本書の結論です)は、資産の大部分を数種類のヘッジファンドに差し向けるという考え方であり、乙は、このやり方はリスクが非常に大きいと思います。
 pp.130-133 では銀行預金よりも安全なファンドがあると述べています。基準の取り方にもよりますが、こう簡単に断言してはいけないのは投資の常識だと思います。
 具体的な運用方法として、p.192 では、余裕資金が400万円から900万円の人は、全額をマン社の 2XL に投入することを勧めています。数千万円の投資を考えている人に対しても、わずか数種類のファンドに集中的に資金を振り向けるように書いてあります。もしも本当にそうしていたら、万が一そのファンドが破綻でもした場合に大損害になります。こういう集中投資がどのように危険かを浅井氏が知らないなら、それはそれで問題ですし、浅井氏が知っていて勧めているなら、なおさら問題です。
 乙も、マン社の AP 2XL に投資していますが、
http://otsu.seesaa.net/article/20801211.html
投資を決断するまでは、いろいろと調べ、考え、比較検討し、迷いました。結果的にこの金融商品を購入したという意味では、浅井氏の本を読んですぐ購入した場合と変わりませんが、乙の(調べ、迷った)経験は有意義だったと思っています。
 こういう本1冊を読んでいきなり数百万円の資金をマン社に送金するような人はいないと思いますが、この本を素直に読むと、そうすることがベストだと読めます。このあたりは、浅井氏がもっとページ数を割いて、きちんと説明するべきところでしょう。それを省略して、海外ファンドの過去のすぐれた実績だけを示して、読者を海外ファンドに安易に勧誘している態度を見ると、他人事ながら(この本の読者のことを)心配してしまいます。
 巻末では、海外投資をするために、おなじみの「自分年金クラブ」や「ロイヤル資産クラブ」への入会を勧誘しています。乙は、すでにブログに書いたように
http://otsu.seesaa.net/article/13495488.html
こういう会費の高いクラブへの勧誘は、問題だと思います。
 乙としては、この本は1400円+税のお金を出すほどの価値はないと思います。


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2006年07月19日

橘玲(2004.9)『雨の降る日曜は幸福について考えよう』幻冬舎

 乙が読んだ本です。
 帯に書いてある「“黄金の羽根”のエッセンス!!」というコピーが本書の性格を物語っています。
 全体の7割を占める Part 1「幸福の法則」は、もちろん、橘流のおもしろい視点はあちこちにありますが、橘氏の以前の著作と似たようなことが述べられており、あまり新鮮味はありません。
 乙がおもしろいと思ったところをいくつか抜き出しておきましょう。
 p.30 不安が最大の娯楽だということが書いてあります。橘氏は、日本国の経済破綻の類がなぜ騒がれるのか(なぜそういうテーマの本が売れるのか)、この一言で説明してしまいました。
 p.52 では、保険会社、不動産会社などを「不安産業」と呼んでいます。日本の年金問題がいつまでも解決しないことは、不安産業を支援していることになっているという見方が述べられます。おもしろい見方です。
 p.61 では、日本で人間用の病院よりも動物病院が豪華な理由を、自由診療だからだと喝破しています。とてもスジが通った説明です。
 pp.161-163 では、2000年に行われた日経平均銘柄の大幅入れ替えや、2001年の中国B株の中国人への開放をローリスク・ハイリターンの投資機会ととらえています。だからこそ、そういうことを本に書くことはせずに、それを生かした行動に出るというわけです。後から言われれば、なるほどと思いますが、問題は、そういうことに事前に気付いたかどうかです。乙は、そのころは投資などとは無縁の生活をしていましたから、何ともいえませんが、今後、絶好のチャンスがめぐってきたときに、それに気付くかどうかが問われています。ファイナンシャル・リテラシーが試されるわけですね。
 p.192 介護保険は、その仕組み上、必ず破綻すると予言しています。
 p.205 では、障害者を積極的に公務員として雇うべきだという主張が展開されます。これまた一理ある意見です。
 全体として、他の橘氏の著作物を読んでいる人には、物足りない感じがしただろうと思います。Part 1は、2003年に日経新聞日曜版に連載したものが元になっているそうです。たぶん、新聞掲載時に分量の制約があったのでしょうが、本としてまとめて読んでみると、どうも主張が充分展開されないうちに論述が終わってしまうような、やや中途半端な印象を受けました。企画段階から、柳の下の二匹目のドジョウを狙ったものだったのかもしれません。
 乙としては、この本よりは橘氏の他の著作を読むべきだと思います。


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2006年07月16日

橘玲(2002.12)『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』幻冬舎

 乙が読んだ本です。
 これまたとてもおもしろい本でした。
 ただし、橘氏の他の著作を読んだあとでは、記述の重なりがあるところも目立ちます。そういうところは、スキップして読んでもいいと思います。
 いくつか、おもしろいと思ったところを抜き出しておきます。
 pp.110-116 では、失業保険給付の実態が描かれます。乙にはまったく縁がない世界ですが、いざ、自分が失業する羽目にでもなれば、こういう記述は大いに参考にするべきでしょう。
 pp.156-173 では、法人を作って資産運用をするといいという話が出て来ます。乙は、そこまでやるつもりはありませんが、定年後は、どうせ資産運用が唯一の収入源になるので、会社を作る手もあるなあと思いました。ここに描かれた例は、非常に興味深いものばかりです。
 pp.194-204 は裏金論であり、会社を経営していると、裏金ができていくものだということがわかります。
 pp.205-219 では、税務署の実態が描かれます。裏の事情がわかってみると、「なあんだ」という話がたくさんありますね。
 pp.235-241 は海外投資の税金の話です。特に、p.238 で、オフショア籍のファンドの多くが契約型であり、したがって譲渡益は非課税だと書いてあります。乙はこれを知りませんでした。p.241 にあるように、税務署によっては別の処理がなされる可能性がありますが、こういう考え方は知っておいた方がいいでしょう。
 全体として、とても有益な本でした。日本社会の仕組みをよく知ることは、黄金の羽根を見つけることに等しいということがよくわかりました。
 それにしても、こういう本が書ける橘氏は、すごい人物だと改めて思いました。

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2006年07月14日

橘玲+海外投資を楽しむ会(2003.11)『世界に一つしかない「黄金の人生設計」』(講談社+α文庫)講談社

 乙が読んだ本です。
 これまた、目が覚めるような本です。人生を左右するいくつかの問題について、投資の観点から日本社会を眺め、その仕組みを解き明かし、どこに問題があるかを指摘しています。乙は、大変おもしろく読みました。若いときにこういう本を読んでいたら、その後の人生が大きく変わったかもしれません。
 この本は文庫本ということで、たった 800 円で買えますが、非常におトクです。
 末尾には、この本が(1999.11)『ゴミ投資家のための人生設計入門』メディアワークス を再編集したものだと書いてあります。
 第1部は「不動産は人生にとってほんとうに必要か」です。
 pp.34-35 では、不動産を買ってよかったという感想は、支払った代償の大きさが自分の判断を正当化するからだという説明がなされます。自己開発セミナーの料金が高い(100万円!!)のも、そのほうが参加者が満足するからだそうです。すごい説明です。投資関係でも高い会費を取る会員制のクラブがあります
http://otsu.seesaa.net/article/13495488.html
が、それも、同じ考え方で説明できるでしょう。
 p.55 では、住宅ローンがレバレッジを高めているのだという説明がなされます。これまた重要な指摘です。こうして、住宅ローンの意味は完全に解き明かされました。
 pp.86-89 では、戦後の日本で「土地神話」がなぜ成立したのかを説明しています。@地価と株価、A為替、Cインフレ率 の3点で説明すれば完璧です。しかし、p.88 で述べられるように、今はこれが当てはまりません。
 こうして、第1部としては賃貸住宅のすばらしさを説いて終わります。親から独立して、アパートでも借りるころに、あるいは結婚するころに、この本に出会っていれば、人生設計が変わるでしょう。若い人にオススメの章です。
 第2部は「6歳の子どもでもわかる生命保険」です。
 p.187 では、保険会社がいかにボロ儲けをしているかが説明されます。つまり生命保険は高コストということであり、(人生の一時期をのぞいて)入る必要はありません。
 第2部は、生命保険に入ろうとする前に、ぜひ読んでおきたい章です。これまた若い人にオススメの部分です。
 第3部は「ニッポン国の運命」です。年金・健康保険・財政赤字などの話です。
 p.236 では、年金のドンブリ勘定ぶりが描かれます。こうして、なぜ、どんな問題が起こっているか、十分に説明しきっています。
 pp.295-296 では、財政赤字の解決のために、増税とハイパーインフレを考えています。もっとも、ハイパーインフレについては「陰謀論」と呼んでいますので、橘氏等が本当に起こると考えているのかどうかはわかりません。
 pp.299-301 では、個人資産 1200 兆円というのは日本の財政再建には役に立たないという考え方を示します。p.302 では、ニッポンを株式会社としてみる図式が示されており、これまた興味深いものでした。
 第3部の結論は、p.310 にあるように、公的部門を縮小せよということになります。橘氏等の主張は理解できますが、実際、この政策がどれくらい受け入れられるでしょうか。日本(特に政治家や官僚)の現状を見ると、実現はきわめて困難でしょう。ということは、それに対応した生き方を考えなければなりません。この章は、すべての年齢層の人に読んでほしいと思います。
 第4部は「自立した自由な人生に向けて」です。高額な教育費・少子化・PT (Perpetual Traveler) などについて述べられており、乙は同感を持って読みました。p.321- の学校崩壊がなぜ起こるかの説明も納得できます。
 p.334 には、本書で最も重要なことが述べられます。「子どものいる夫婦は家を買ってはいけません。」ずいぶん極端な主張に思われるかもしれませんが、お金の面から考えると当然の結論のように思えます。乙の場合は、子ども2人がいながらマンションを買ったのですが、それは、夫婦共働きだったからです。乙も子育てに積極的に関わり、妻は仕事を継続することができました。住宅ローンを組みましたが、繰上返済を急ぎ、比較的短期間で返済を終えてしまいました。しかし、今から思うと、賃貸の方がよかったかもしれません。居住していたマンションの売却で大きな損失を出してしまったからです。
http://otsu.seesaa.net/article/14879201.html
若い人(これから結婚し子育てをする人)は、賃貸のほうがいいと思います。特に、子供が生まれたときに共働きが続けられないような夫婦は、収入がそれだけ少ないわけですから、賃貸にしなければなりません。そして、家賃を払いながら、ローンを借りたつもりになって、ローンの返済額と家賃の差額分を少しずつでも投資するようにすれば、結果的に現金で家が買えるほどの資産を作ることができます。
 この本は、全体として、日本社会の仕組みを基本から説明してしまったと言えます。乙は、頭の中が整理され、すっきりしたという読後感を持ちました。多くの人にこの本を読んでもらい、価値観を共有したいと思いました。


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2006年07月12日

橘玲+海外投資を楽しむ会(2004.8)『「黄金の羽根」を手に入れる自由と奴隷の人生設計』(講談社+α文庫)講談社

 乙が読んだ本です。
 まえがきには、「本書の親本は、2001年7月にメディアワークスから刊行された『ゴミ投資家のための人生設計入門[借金編]』であり、その後、前半部分(人生設計編)は『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』、後半部分(ファイナンス編)は『得する生活』へと展開された」とあります。乙が自宅の本棚を見たら『ゴミ投資家のための人生設計入門[借金編]』もありましたが、これは読む必要がないということです。(1600 円もしたのに。)前著は横書きだったので、そちらのほうが読みやすかったのですが。
 内容は、人生設計編とファイナンス編に分かれ、それぞれに充実した記述がなされています。
 pp.14-34 では、サラリーマンは給与所得控除があるから恵まれているということと日本の税金が安いことを述べます。日本の税金が安いというのは乙には意外な事実でした。
 pp.35-55 では、サラリーマンが年金と健康保険で略奪されていることを述べ、サラリーマンが個人で法人化すれば自営業者の節税策をサラリーマンも利用できると説いています。日本の今の制度を巧みに利用したおもしろい議論です。しかし、個人の力ではなかなかこうはできないでしょうね。
 pp.56-67 では、国民年金や健康保険を廃止し、所得税は憲法違反だからやめようと主張します。その上で、郵便事業も、郵便貯金も、年金も、医療保険も、公立学校も、治安維持も、公共事業も、全部民営化できるといいます。いわゆる小さな政府論ですが、これで税金が安くなれば、それはそれで日本が住みやすい国になりそうです。(現状では、反対勢力が強すぎて、実現はほぼ不可能でしょうが。)
 pp.68-80 では、お金持ちになる方法を説明しています。支出を減らせばいいのですが、それに関連して、パラサイトシングルがいかに恵まれているかを明確に論じています。確かにそうですよね。
 pp.81-118 では、人生における大きな買いものとして、教育(子育て)と不動産(住宅)と生命保険が語られます。ついでにクルマの購入やリースの話も出て来ます。ワンルームマンションの話もあります。みんなうなずける議論です。
 pp.118-139 は、インフレとデフレの話で、特にインフレ対策が重要です。
 pp.139-155 では、経済的な独立を議論します。一生暮らしていくためには1億円あればいいという話です。これに合わせて、脱サラして農業をはじめる場合や、PT として海外で暮らす場合などもお金の面から考えています。
 これらの議論はいずれもおもしろく、説得力があると思います。乙は、この本を読んで、自分の人生設計を見直そうと思いました。でも、やっぱりやめました。今のサラリーマン生活でも、それなりにうまく動いていますし、新しいことをはじめるには、それなりの努力と実行力が必要です。若いころならまだしも、最近はこのような新しい努力は乙にはきついと感じるようになってきました。
 p.158 からはファイナンス編ということで、借金の話になります。融資と借金は同じことを別の面から見ているわけですから、投資を考える上では、借金の話も重要です。本書では、各種レンタル業と金融業を同列に並べて論じるなど、これまたユニークな議論が展開されます。
 pp.226-229 では、債権回収の汚い話が展開されますが、いずれも乙が知らなかった話で、大変おもしろかったです。
 p.243 では、なぜプロのトレーダーが金融先物や商品先物でプレイしているかが説明されます。p.239 の表にあるように、金利がゼロでお金が用意でき、高いレバレッジがかけられるからなんですね。納得しました。
 p.260 からは、国の教育ローンが金利が安いので、200万円を借りて、投資に回したらいいという話が出て来ます。これを知っても(大学生の子供がいる乙として考えましたが)、理屈としてはそうなのですが、たった200万円のために、そこまでやるかといった気持です。利回り7%で4年運用すれば(複利計算で)80万円ほどのリターンが得られます。そうはいっても、たった80万円です。他人に頭を下げて(いわれるがままに書類を用意して)200万円しか工面できないのでは、あまり意味がなさそうです。「あの人は200万円が払えなくて借金している」と見られているだけで、プライドが傷つく気分です。このようなことを考える人間では、正しい人生設計はできないのでしょう。わかっちゃいるけど……という感じです。
 ファイナンス編では、とにかく、今の日本の諸制度を徹底的に見直し、その中でどのようにして人生設計をし、借金をするかを議論しています。何といっても、ここまで書くことができる橘玲氏および海外投資を楽しむ会には脱帽するしかありません。
 そんなわけで、全体として大変わかりやすく、オススメの1冊といえるでしょう。


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2006年07月10日

澤上篤人(2004.7)『新版 あなたも「長期投資家」になろう』実業之日本社

 乙が読んだ本です。
 例によって、澤上流の主張が一貫して語られますが、この本では、かなり具体的に長期投資家になるための方法論(つまりは長期投資家の考え方)が説かれています。
 株の売買に関して、いくつもおもしろいことが語られます。
 p.94 では、アセット・アロケーションをダイナミックに変えていくべきだという話が登場します。乙も同感です。この点では、乙は固定的なアセット・アロケーションを説く投資本にはむしろ反発を覚えます。一見、株(それも日本株)ばかりを扱っているように見える澤上氏ですが、それは、今の状況が日本株に向いていると判断してのことでしょう。澤上氏がこういう判断をしていることを大変おもしろく思いました。
 pp.128-133 では、株価の底と天井はなかなかあてられないということが書いてあります。乙も、わずかばかりの株取引の経験から、底で買って天井で売るという話は簡単でも、実際はなかなかそうはできないことを痛感していました。株のプロである澤上氏もそう言っているのですから、「底」と「天井」を目指すのではなく、「底付近」と「天井付近」を狙うようにしましょう。とはいえ、実際はそれすらむずかしいのですが。
 pp.134-142 では、日本株の投資家は順張り主義が多いということが述べられます。長期投資家とはずいぶん観点が違います。しかし、事実は事実ですから、そういう日本株の動きを前提にして、うまく立ち回るようにしなければなりません。このあたり、乙ももう少し研究してみたいと思います。
 p.141 には、個人投資家の場合、自分の好きな5〜10銘柄に限って暴落時に買うというパターンを採用してみるのもよいといっています。確かにそうでしょう。しかし、本業の仕事を持っている人間の場合、自分が保有しない個別株の暴落を察知するのもなかなか面倒なものです。たえず株価に注意を払っていくにはどうしたらいいのでしょうか。乙は、仮に、5〜10銘柄の最低売買単位だけ株を買っておく手がありそうに思います。自分が株を保有していれば、その分の株価の変動は、比較的わかりやすいです。たとえば、イートレード証券ならば、自分の保有する株価はいつでも一覧できますし、チャートへのアクセスも簡単です。株価の動きを追いかけつつ、下がったところで追加買いをし、上がったところで最低売買単位を残して売るというようなやり方はどうでしょうか。
 p.157 から株購入の対象銘柄を探る話が出て来ます。ここで、経済全体の流れを読むのが5割、ビジネス環境のチェックが3割、そして、その企業の分析が2割だと説かれます。この話も興味深いものです。株価は、単に個別企業の成績だけでは決まらないことは、乙も経験的に感じていました。銘柄リサーチに関する澤上氏の主観的な配分比は、なるほどと思わせられます。
 p.198 から「ハイテク株は儲からない」という話になります。なぜそうなのかは本書を読んでください。乙は澤上氏の説明に納得しました。
 さて、最後まで読んだ後で、ふと疑問に思いました。この本を読んで実践すれば、「長期投資家」になれるでしょうか。残念ながら、乙の場合はなれそうにありません。個別銘柄の選択にしても、かなり手間がかかりそうです。能力的に不可能だとは思いませんが、時間的に厳しいです。
 ということで、乙がこの本を読んで思ったことは、二つあります。
 一つは、自分で長期投資するのはむずかしそうだから、代理人に頼もうということです。つまり、さわかみファンド
http://otsu.seesaa.net/article/14016027.html
に投資すればいいということです。
 もう一つは、勉強すればするほど、株取引の難しさがわかってきたということです。そう簡単に儲かる手段なんてありません。ということで、個別銘柄について勉強しないで済むインデックスファンドあるいは ETF で運用する方がはるかに楽だということです。

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2006年07月08日

龍崎翔(2004.11)『株の「パターン買い」ですぐに儲かる本』ダイヤモンド社

 乙が、本棚の整理をしていて、見つけた本です。そういえば、2005年のはじめころにこんな本を買って読んでいたことを思い出しました。
 この本の趣旨は簡単です。株価には、上がったり下がったりするパターンがあるから、それにしたがって、下がったときに株を買い、上がったところでそれを売れば、簡単に儲かるということです。
 全5章のうちの第2章「これはオススメ! 「パターン買い」銘柄 55」が本の大半を占め、そこで、個別の銘柄を挙げてこういう株をこういう値段で買い、こういう値段で売ればいいと書いてあります。
 今や、出版後1年半以上がすぎ、充分検証ができるようになりました。さっそくそれぞれの株価の推移を見てみましょう。仮に 2004年12月にこの本を買ったとして、それにしたがって株の売買をしたとしてみましょう。(ネットで適当な株価のグラフを見ながら、以下をお読みください。)
 2108 日本甜菜精糖 160 円で買って 210 円で売る
  結果×:160 円に下がることはなかった。
 2109 新三井製糖 180 円で買って 260 円で売る
  結果×:180 円に下がることはなかった。
 2533 オエノンH 200 円で買って 330 円で売る
  結果×:200 円に下がることはなかった。
 2694 平禄(現在はジー・テイスト) 500 円で買って 550 円で売る
  (2005.11 1→2に株式分割)
  結果×:500 円に下がることはなかった。
   2005年8月までは鳴かず飛ばずであり、その後、2倍程度に急騰した。
 2801 キッコーマン 700 円で買って 900 円で売る
  結果×:700 円に下がることはなかった。
 2802 味の素 1100 円で買って 1400 円で売る
  結果○:2005年8月1日に 1100 円を割り、2006年4月に1400 円を越えた
 2873 加ト吉 1500 円で買って 2700 円で売る(2005.5 1→3に株式分割)
  結果×:1500 円(分割後 500 円)に下がることはなかった。
 2897 日清食品 2200 円で買って 3000 円で売る
  結果×:2200 円に下がることはなかった。
 3404 三菱レイヨン 270 円で買って 300 円で売る
  結果×:270 円に下がることはなかった。
 3861 王子製紙 500 円で買って 700 円で売る
  結果×:500 円に下がることはなかった。
 3864 三菱製紙 100 円で買って 200 円で売る
  結果×:100 円に下がることはなかった。
 4010 三菱化学 (データなし)
  2005年10月、三菱ケミカルホールディングスに統合される
 4062 イビデン 1300 円で買って 2300 円で売る
  結果×:1300 円に下がることはなかった。
 4063 信越化学工業 3500 円で押し目買い
  結果×:3500 円に下がることはなかった。

 もう、疲れたので、やめます。本書中に掲載された全銘柄55のうち、はじめの 1/4 程度を見ただけです。しかし、結論は出ました。龍崎氏の主張するパターン買いは、まったく成績を残せませんでした。龍崎氏が自分の書いた本に従って株の売買をしていたら、まったく儲けられなかったはずです。パターン買いの考え方は、実際のデータに当てはめてみると、全然あてはまらないことが明らかになりました。
 なぜ、パターン買いはあたらないのか。
 基本的に、パターン買いはチャートによる手法であり、テクニカル分析の1種と考えられます。そして、テクニカル分析は、基本的に、いい成績が残せません。したがって、はじめからこの種の著書は検討する必要もありません。(しかし、乙は、そういうこともわからずに、2005年のはじめころにこんな本を買って読んでいたのでした。)
 ま、しかし、そう言ってしまっては身も蓋もないので、龍崎氏がどういうところで間違えたのか、そこを考えてみましょう。
 一番大きな問題は、過去の株価の変動は未来を予測させるものではないということです。パターン買いは、過去十数年の株価の変動を見て、上がったり下がったりする株を発見することが必要です。ということは、日本の株価が行きつ戻りつしているときには、もしかすると、このパターン買いに当てはまる銘柄を探すことができるかもしれませんが、そうでないときは、この考え方はまったくダメになってしまいます。結果的とはいえ、2005年の後半には日本株の株価が大幅に上昇しました。この時点でパターン買いの前提が崩れてしまったのです。
 次に、龍崎氏が推薦する個別銘柄の買値(これから買うべき価格)と売値(買ったものを売るべき価格)が、上の一覧表でもわかるように、あまり開いていません。株価の上下のパターンがあるといっても、ごくわずかの差しかありません。しかし、株価はもともと上下が激しいものであり、その中では、このような1割くらいの株価の変動は偶然でいくらでも起こりうるのです。つまり、偶然起こった株価の上下の変動の中に龍崎氏は規則的なパターンを見つけてしまったのです。
 また、龍崎氏のいうパターン買いは、ごくわずかのリターンを狙う形になっています。上に示した買値と売値の差(利幅)を見てください。利幅が小さい銘柄が多いです。時期を選べば、個別銘柄の株価が2倍〜3倍になってもふしぎはないわけですが、そういう流れを考えず、小幅な儲けを狙おうとしたところにそもそも基本的な方針の誤りがあったといえるでしょう。こう考えると、パターン買いは、デイトレードと同様の手法と言えると思います。
 龍崎氏は、日本株の大きな方向性を考えることなく、十数年続いてきたことが今後も続くはずだという前提で株価データを見ていったのでしょう。ここがそもそもの間違いでした。2005年(以降)は、それまでの「パターン」とはまったく違った株価パターンを描いたのです。パターン買いは、そのような株価の特性を無視して提案されたものです。大局的に見れば、こういう考え方が有効であるわけがありません。
 そもそも、パターンがあるはずだという思いこみを持って株価のデータを見ていけば、多数の銘柄を調べるうちにそれらしきものが見えると思います。この本に掲載された株価のチャートを見ると、買う時期と売る時期に○が付いています。しかし、それは、株価の変動が終わった後に振り返って考えればそうなるということであって、変化のまっただ中にいるときに、売買の判断がチャートでできるとは思えません。
 火星に運河はありませんが、地上からの望遠鏡で火星の観察を続けていたローウェルは、火星の表面に規則的なパターンを「発見」し、それを「運河」と呼びました。乙が思うに、龍崎氏も、同様の経験をしたのでしょう。本来、株価の変動にはパターンなんてあるわけないのに、それを「発見」してしまったのです。しかも、全部の株価データを見る必要はなく、それが当てはまる(ように見える)ごく一部の株(数千社中の数十社)だけ抽出できれば、そのパターンは強固なものとして描き出せます。あとは、なぜそのようなパターンがあるかをもっともらしく説明すれば一丁上がりです。
 今でも、数千社の株価データを丹念に見ていって、パターン買いのための株を選定すれば、それはそれでできるでしょう。銘柄は龍崎氏の挙げたものとまったく別でしょうが、ある条件に当てはまる株は、確かに存在するのです。それだけを見ていて、今後もそのパターンが続くのだと推測すれば、同様の趣旨の本が1冊書けます。でも、それってウソです。今後の株価の変動(パターン)をあてることは誰にもできません。
 乙が推測するに、龍崎氏は直観的に(あるいは何らかの理由で)「パターン買い」が有効だと思い至り、数千社の株価のチャートの中からそれを立証するために都合のいいチャートを選んでいったのです。
 巻末の経歴を見ると、龍崎氏は外資系を数社渡り歩き、株式のディーラーやエクイティ・デリバティブ・セールスなどを経験したとのことです。龍崎氏は明らかに株式のプロです。プロといえどもこの程度のことしか考えていないということを知り、乙は嘆かわしく思いました。
 乙は、昔の(といってもそんなに古くはありませんが)本を本棚から引っ張り出して読むのが好きです。この本も、大変いい勉強になりました。


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2006年07月06日

木戸次郎氏の株価予測の信頼性

 乙は、木戸次郎(2005.7)『世界の成功者に学ぶ投資の極意』SPICE について、すでにブログに書きました
http://otsu.seesaa.net/article/13948002.html
が、その時点では、十分書けなかったことがあります。
 この本で木戸氏は推薦株6銘柄を挙げているのですが、それが実際どうなったかを検証するには、ブログに書いた時点では時間が短すぎたのです。現在は、この本の刊行後1年経ったので、その検証ができる状態になりました。
 株式評論家を名乗る(本の表紙にそう書いてあります)木戸次郎氏の株価予測は、どれくらい信頼できるものでしょうか。
 p.25 では、「私は、2005年、日経平均2万円ということにずっとこだわりを持ってきて唱えてきた」と書いてあります。以前から木戸氏はこう唱えていたのですね。結果は、2006年の今から見れば明らかです。木戸氏の予想は外れました。これについては、木戸氏は p.37 でお詫びしていますが、ここでも2006年には日経平均が2万円になるという予想を(改めて)しています。これについては、2006年末まで待ってみなければ何ともいえませんが、乙の予想では2万円にはならないでしょう。(実は、なってくれれば、ありがたいのですが。)
 さて、この本の p.64 から推奨株が6銘柄出てきます。帯にも「倍増必至! 目から“ウロコ”の6銘柄」という宣伝文句がでかでかと書いてあります。これに引かれて本書を買った人もいたことでしょう。
 本書執筆時の2005年5月(この時期については、p.73 に書かれています)を基準として、それぞれの銘柄の株価がどうなったかを検証してみましょう。(ネットで適当な株価のグラフを見ながら以下をお読みください。)

 推薦株@ 9435 光通信
 2005.5当時の株価=6,600 円
 木戸氏の予想:「1年後には1万円を軽く超している」(p.68)
 実際:2005.12.21 に最高値 11,900 円を付けるが、その後大幅に下落し、2006.7現在 約 6000 円。

 推薦株A 6784 プラネックスコミュニケーションズ
 2005.5当時の株価=16万円
 木戸氏の予想:「私が絶対的な自信を持って注目している銘柄」(p.69)「2006年以降は新興市場の銘柄というのは間違いなく二極化が進み【中略】プラネックスコミュニケーションズこそ私の考える勝ち組候補株なのである。」(p.72)
 実際:2005.7.23 に最高値 233,000 円、2005.11.25 に 232,000 円を付けるが、その後大幅に下落し、2006.6.2 に最安値 26,500 円を記録し、2006.7現在4万円程度。

 推薦株B 4813 ACCESS
 2005.5当時の株価=200万円(その後、2006年2月に 1→3 に株式分割)
 木戸氏の予想:「株価目標は1年以内に300万円を超すと自信を持ってお伝えしておこう。」(p.76)
 実際:2006.4.13 に最高値 118 万円を記録(株式分割後なので、以前の354万円に相当)、その後、下がり、2006.7現在は83万円前後。

 推薦株C 8088 岩谷産業
 2005.5当時の株価=290 円
 木戸氏の予想:「1年後には500円を目指すこととなるであろう」(p.83)
 実際:2006.1.11 に最高値 502 円を記録するが、その後下がり、2006.7現在は 380 円程度。

 推薦株D 6466 トウアバルブグループ
 2005.5当時の株価=(激しく上下していた時期だが)約30万円
 木戸氏の予想:「目標はずばり60万円としておこう。」(p.85)
 実際:2006.1.10 に最高値 35 万円を記録、その後下がり続け、2006.6.8 には185,000 まで下がる。その後上昇し、2006.7現在 25 万円。

 推薦株E 1723 日本電技
 2005.5当時の株価=720 円
 木戸氏の予想:「今後の目標は1年間の長期投資でズバリ1500円を目指すと見ている。」(p.86)
 実際:2005.10.24 に最高値 1155 円を記録、その後下がり続け、2006.7現在 830 円。

 さて、どうでしょうか。木戸氏の予想がかろうじてあたったといえるのはBの ACCESS だけです。
 @の光通信とCの岩谷産業は、最高値を見ればあたっているように見えますが、実際上、株を最高値で売り抜けるのは至難の業ですし、木戸氏が「1年後には〜」といっている以上、最高値を記録した時点で売るよりは、さらに上昇すると予想して保有し続けるのが普通だろうと思います。結果的に株価の下落に見舞われたはずです。仮に「最高値から1割下がったところで売る」というような戦略を採用していれば、何とか成績を残すことができたかもしれません。
 ところで、2005年5月を基準に考えると、その後、(結果論ではありますが)年末にかけて日本の株価は全体的に上昇しました。そのことを考慮すると、木戸氏の予想は(出版後1年程度で上がる株を予想しているわけですが)あたって当たり前ではないでしょうか。こんなにもはずしてしまったにも関わらず、株式評論家を名乗っていていいのでしょうか。乙だったら、恥ずかしくて、世間に顔向けできず、とうてい「株式評論家」とは名乗れない気分です。
 上に記したように、各銘柄が最高値を記録した時期は、だいたい平均株価が急上昇した時期です。つまり木戸氏の予想が、一見あたっているように見えるところでも、単に連れ高しているだけと見ることができます。本書では、この6銘柄がなぜ推薦できるのか、延々と理由を述べていますが、結果的にそれらの記述はほとんど無関係だったと言えます。
 すでに、橘玲氏が喝破したように
http://otsu.seesaa.net/article/19337369.html
株式評論家のいうことはまったくあてにできないということですが、乙が検証してみても、それを裏付ける結果になりました。
 木戸氏は、本書の p.25 で「もし、あなたが本書に巡りあうのが1年遅かったら必ず後悔するということを断言しておきたい。」と述べています。乙は、出版後約1年たってから再度読み返しましたが、後悔どころか、1年遅くてたいへんすばらしい経験をしたといえるでしょう。木戸氏の言説の信頼性が低いことがとてもよくわかったからです。


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2006年07月04日

太田晴雄(1998.1)『預金封鎖』オーエス出版

 乙が読んだ本です。
 副島隆彦(2004.9)『老人税----国は「相続」と「貯蓄」で毟り取る』祥伝社
http://otsu.seesaa.net/article/20136536.html
を読んだあと、国会図書館の蔵書検索をして気になっていたのですが、何と、この本そのものを近くの古本屋で発見!! たった 300 円で買うことができました。まったく偶然でした。
 さっそく読んでみましたが、内容は、題名から想像できるとおりでした。以下に目次を示します。

 第1章 円が紙くずになる日
  200X年 預金封鎖
  限界を超えた日本の財政
  経済政策はなぜ功を奏しないか
  ビッグバンは邦銀の死を早める劇薬
  政府が個人資産を狙う
 第2章 預金封鎖の時代
  歴史は繰り返す
  昭和2年「モラトリアム発令」
  昭和21年「預金封鎖」
  預金封鎖そして新円発行
  資産の捕捉から没収へ
  あの時代、うまくやった人、うまくやれなかった人
  海外でも預金封鎖は珍しくない
 第3章 200X年恐怖のシナリオ
  預金封鎖、今度はこうなる
  国民データの収集を強化しはじめたら気をつけろ
  デノミそして新税登場
  混乱に乗ずるチャンスの生かし方
  その時あなたはどうする
  官僚の行動パターンを読んで行動しろ
 第4章 資産を外国に一時疎開させよ
  カントリーリスクがいっぱいのニッポン
  資産防衛はスイスの「民間防衛」を参考にしろ
  疎開先はやはり国外
  万全を期すならばプライベートバンク
  外国に行って口座を作ろう
 第5章 ドルで持つか円で持つかが貧富の分かれ道
  円で預金した人とドルで預金した人の大きな差
  海外金融商品はこうして選べ
  資産疎開を阻む税法の高い壁
 第6章 自己責任の原則はあなたを賢くする
  勝ち組と負け組の境はコネにある
  価値ある情報とは
  資産家になりたい人の行動原則

 書いてあることは、副島氏の本を読んだ後では、特に目新しいことではないと思います。しかし、この本の出版のほうが副島氏の著作よりもはるかに先なんです。1997年の時点で危機を指摘していたというのは、浅井隆氏の一連の著作とつながる考え方です。
 pp.171-172 では、理想的なポートフォリオについて述べていますが、資産を 1000 万円から5億円までに分けて書いてあります。プライベートバンクが登場するのは1億円以上のところです。このことから、対象読者として数億円の資産がある人を念頭においているような気がします。
 乙は、この本を一読して、ますます副島氏がこの本の真似本を書いたような気がしてきました。乙は、そのこと自体が悪いと言っているわけではありません。副島氏が他者に「自分のマネをするな」と言っていることに対して、その言い方はまずいと言っているだけです。


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2006年07月02日

副島隆彦(2004.9)『老人税----国は「相続」と「貯蓄」で毟り取る』祥伝社

 乙が読んだ本です。
 副島隆彦(2003.9)『預金封鎖---「統制経済」へ向かう日本』祥伝社
http://otsu.seesaa.net/article/13255799.html
 副島隆彦(2003.12)『預金封鎖 実線対策編---資産を守り抜く技術』祥伝社
http://otsu.seesaa.net/article/13302983.html
に続く副島氏の著書です。
 内容は、題名の通りです。題名のように1行でまとめてしまえば、内容は読む必要なしという見方もできますが、国がどのように税金を課そうとしているかを具体的に知るには、やはり一読する必要があります。
 p.42 では、1988年の消費税導入は「日本国民に対する税金教育のための新税だった」という見方が出てきます。なるほどと思わせる視点です。こうして、新しい税金に慣れさせ、これからの大増税を抵抗感なく実施しようという壮大な計画だったというわけです。まあ、当時、政府が本当にそう思っていたかどうかは疑問ですが、結果的に、そのような効果があったということはいえるでしょう。
 p.110 では、副島氏のお得意の「預金封鎖」の話が出てきますが、その時期は、「2〜3年先」となっています。刊行の時期からすると、2006-2007年というわけです。今が 2006 年ですから、さあ、もうすぐ預金封鎖ですよ。(ホントにそうなるのでしょうか。乙はそうならないと思います。)
 p.197 からの第5章では、「2005年春、世界経済の変動が始まる」と題して、大胆な予測が出てきます。日米の国債の暴落とドルの大暴落を予測し、p.234 では、1ドル40円という超々円高が 2007-2008 年に現れるかもしれないと述べています。しかし、この根拠は、1990年4月の160円35銭と1995年4月の79円75銭の値幅である80円60銭分だけ円高方向に進むと考えて、2003年9月17日の117円20銭から引き算して36円60銭ということです。乙は、為替レートについて(特に、大幅な変動を論じるときに)加減算をすることは間違いだと思います。乗除算をするべきです。ここは、レートが半分になることがあるから、117.2/2=58.6円になるだろうと書かなければなりません。その根拠は以前
http://otsu.seesaa.net/article/19489254.html
に書きました。
 p.254 では、本吉正雄『元日銀マンが教える預金封鎖』
http://otsu.seesaa.net/article/16392565.html
や藤井厳喜『新円切替』
http://otsu.seesaa.net/article/14475013.html
が自分の書いた本の真似本だと断定して、「もう二度とこういうことをするな」と断じています。
 これらは、真似本といえば真似本かもしれませんが、しかし、似たような主張をしても、そのこと自体は問題ではありません。そんなのは世の中にごまんとあります。
 しかも、副島氏以前にも預金封鎖に関する本はたくさん書かれています。国会図書館で「預金封鎖」を指定して図書を検索した結果から、2003年3月(副島氏が『預金封鎖』を執筆した時期)以前に刊行されたものをあげれば、以下の通りです。

預金封鎖 / 太田晴雄. -- オーエス出版, 1998.1
あなたの預金が消えていく! / 宮尾攻. -- 小学館, 2001.12. -- (小学館文庫)
「銀行預金」封鎖 / 太田晴雄. -- オーエス出版, 2002.2
預金封鎖であなたの資産が消滅する / 堀篤. -- ガイア出版, 2002.4
預金封鎖 / 荒和雄. -- 講談社, 2003.3

 乙は、これらを読んで中身を確認したわけではありませんが、たぶん、副島氏と似た話を書いていると思います。
 これらの本が先にあったという事実から、副島氏が真似本を書いていると批判される可能性もあるのではないでしょうか。(乙はそう主張するつもりはありませんが。)乙の考えでは、副島氏の主張は強すぎると思います。まさに「天に唾する」ようなものです。
 この本全体として、日本がアメリカの属国になっていることを述べ、そういう体制のもとで、政治家たちのありさまや考え方を中心に税金問題をとらえるという観点で書かれています。ちょっと偏った見方でもありますが、これで一貫した説明をされると、そういうものかなとも思えてきます。
 なお、乙は、この本の対象読者をどういうものとして想定しているかが気になりました。どうも、単なる老人ではなく、金融資産が数億円以上あるお金持ちで、特に企業の経営者を念頭において書かれているようです。pp.134-138 あたりの記述でそう思いました。


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2006年06月30日

藤井厳喜(2004.12)『「国家破産」以後の世界』光文社

 乙が読んだ本です。
 乙は、すでに藤井氏の著書を3冊読んだことがあります。
藤井厳喜(2005.12)『這い上がれない未来』光文社
http://otsu.seesaa.net/article/16101932.html
藤井厳喜(2004.5)『新円切替----国家破産で円が紙くずになる日』光文社
http://otsu.seesaa.net/article/14475013.html
藤井厳喜(2005.6)『「破綻国家」希望の戦略』ビジネス社
http://otsu.seesaa.net/article/12902166.html
 この本は、これらの中間の時期に書かれたものになります。
 藤井氏は、2008年に日本は国家破産すると予測しています。そればかりか、2010 年には北朝鮮から日本に核ミサイルが撃ち込まれ、2022 年には中華人民共和国が日本を併合するというのです。(pp.006-009) まあ、これは「悪夢」ということですから、現実になってほしくはないですが、藤井氏はこういうスタンスでこの本を書いています。
 Part 1 では、日本の現在の国債発行や低金利の異常ぶりを描きます。Part 2 では、国家破産までは「心理ゲームだ」としています。いつかは確実に破産するけれども、それがいつなのかをあてる心理ゲームが今行われているというわけです。サドンデス(突然死)シナリオでは、p.074 で、2008 年までに国家破産が起こるとしています。それを乗り切っても、2010 年以降に持ち越されるだけだというわけです。p.085 から、三つの近未来のシナリオが描かれます。第1はアメリカの経済植民地、第2は中国の属国、第3は海洋アジアの小国です。いずれも暗い未来です。藤井氏は第3のシナリオをもっとも妥当と考えているようです。
 Part 3 では、破産国家の例を述べ、pp.126-127 で、国家破産では中流の人間が一番ダメージが大きいことを指摘しています。pp.154- では、日本のデフォールトがどう起こるかを予測しています。いよいよ身につまされます。Part 4 では、「日本再占領」と題して、アメリカがどのように日本を「占領」しようとしているかを描きます。
 Part 5 では、ブリックスをどう見るべきかが述べられます。pp.268- によれば、BRICs は数十年単位で考えれば投資先としておトクだということです。乙は、そんなに長く生きられませんから、こういう予測を述べてもらっても意味はありませんが。
 全体として、国家破綻(政府破綻)が国民に悲惨な生活を味わわせることを述べた本です。こうなりたくはありませんが、しかし、今の政府のやり方(財政再建を議論していても、ちっとも進まない)を見ていると、もしかしてこうなるかもしれないと思わせます。
 こんなことも頭の隅に入れつつ投資を考えるべきだというところでしょうかね。


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2006年06月28日

山崎元(2002.7)『山崎元のオトナのマネー運用塾』ダイヤモンド社

 乙が読んだ本です。
 末尾には、「本書は『週刊ダイヤモンド』の連載(2000.4.8-2002.2.23)および LOOP 掲載の文章に加筆・修正したものです。」とありますから、実際に書かれたのは、さらに古いというわけです。
 一部の記述は、確かに古いところがあります。しかし、いい本は数年経ってもいい本ですから、そんなに気にすることはありません。
 山崎氏はファンドマネージャーを長くやっていた人なので、そういう目でものを見ています。元が週刊誌の連載だったということもあり、短い記事が続いていく印象を持ちました。
 以下、乙がおもしろいと思ったことをいくつか抜き書きしておきます。
 p.19 では、運用ではコストが最重要という話が出て来ます。これをひとことでいえば「売り手側の儲けが大きいものには投資するな」(p.21)です。乙は、オプション・マスターでそれを痛感しました。
http://otsu.seesaa.net/article/17568213.html
 pp.46-48 でも運用のコストの話が再度出てきます。
 p.23 では、「初心者向けの運用商品などない」という話が語られます。これも、乙が感じていることをはっきりと指摘してくれました。
 pp.48-55 では、ファイナンシャル・プランナーへの不信感が語られます。p.51 では、旧来型のマネー・プランは役に立たないと断言しています。乙がうすうす感じていたこと
http://otsu.seesaa.net/article/19537879.html
を山崎氏は明確に書いています。
 p.87 では、パッシブ運用の三つのメリットが挙げられています。@コストが安いこと、Aキャッシュ・ポジションが小さいこと、B中身がわかりやすいこと、の三つです。キャッシュ・ポジションについては、乙も感じていました。アクティブに株式取引をしようとすると、どうしてもある程度の現金をおいておかないといけません。でないと、株価が下がったときに買いに行けません。しかし、これは資金全体としてみれば(遊んでいる金を持っていることになりますから)運用面で不利に働きます。パッシブ運用ならば、手元の現金の全額を株に投じることができます。
 p.94 では、PBR 1倍割れの銘柄を、それだけを根拠に買うことはよくないと述べています。それにはそれなりの事情があるからだというわけです。しかし、乙は、そんなに気にすることもあるまいと気楽に考えています。株価はあらゆることを盛り込んだ結果ですから、PBR 1.0 以下の株を複数買って、ある程度の期間保持していれば、平均的な(TOPIX 程度の)運用よりはよくなるのではないでしょうか。(乙は、単純すぎるでしょうか。気になる人は、このブログの「オール投資徹底検証」の記事カテゴリの記述をご覧下さい。)
 p.110 では、投資のしかたの吟味方法として「この方法が永遠に有効だとしたら何が起こるか」「この方法を他人も利用したときに何が起こるか」と考えるように述べています。時間と空間を広げて考えるというのはとてもいい方法です。ただし、思考実験程度ではなかなかわからない(判断が付かない)ことも多いように思いますが……。乙は、実際に試してみることもあっていいように思います。
 pp.127-130 では、個人投資家にとってアナリストのコメントは役に立たないという話が出て来ます。そんなものでしょう。橘玲氏
http://otsu.seesaa.net/article/19337369.html
が論じている株式評論家の話と同じことだと理解します。
 p.142 では、株の期待リターンは 11-13% くらいだという話が書いてあります。機関投資家の期待値だそうです。かなり高いですが、乙がいろいろな人(機関投資家ではなくて単なる個人ですが、銀行関係者など、業界に関係している人を含みます)と話をした感じでは、株のリターンといえば、だいたい 10% くらいを考えている人が多いようです。p.143 では、この期待リターンは高すぎるという山崎氏のコメントが書いてあり、まあ、あまり期待しないほうがいいようですが。
 pp.190-191 では、アクティブファンドで、必要な人件費などのコストを考えると、運用額は 1000 億円くらいがちょうどいいと述べています。現実には、こんな大きいファンドは少ないと思いますが、ということは、ファンド会社が儲からず、きちんとした投資ができないということで投資家にもよくないということになってきます。乙は、20億円くらいをファンドの運用額の下限と考えていました
http://otsu.seesaa.net/article/12678037.html
が、現実の下限はそれよりずっと大きいと見るべきかもしれません。
 p.193 では、投資信託の場合、1.5% の信託報酬は高すぎるとのことです。となると、最近は 1.5% くらいの信託報酬の投資信託が多いので、なかなか投資信託を選べなくなりそうです。p.236 では、投資信託のコストについて、ベンチマークを運用報酬の2倍分上回る利回りが目標となるといっています。1.5% の報酬を受けるファンドであれば、ベンチマークを 3% 上回るということになります。これはなかなかむずかしいでしょうね。というわけで、p.194 にあるように、山崎氏は ETF によるパッシブ運用を勧めることになります。乙も、だいぶこの考え方に傾いてきました。
 p.238 では、ファンドの成績を見るのに5年では短すぎるといっています。実際は、3年とか5年で見る人が多いし、各種データもそういうのしか用意されていないので、山崎氏の発言は理想論になってしまっています。しかし、あるべき姿を知ることも意味があると思いました。
 この本は、全体として、まじめな本であり、お勧めできると思います。自分のわずかばかりの投資の経験と山崎氏の指摘をあわせて考えると、うなずけるところがたくさんあります。


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2006年06月26日

加藤康之(2006.6)『資産運用、投資のプロはこう考えている』東洋経済新報社

 乙が読んだ本です。
 著者の加藤氏は、野村證券株式会社執行役であり、金融経済研究所金融工学研究センター長でもあります。そこで、本書中には、金融工学研究センターが作成した図表類がふんだんに使われ、個人のファイナンシャル・プランナーが書いた本とはだいぶ違った様相を示します。
 この本は、投資のプロ=機関投資家(年金基金など)の資産運用手法をベースにして、個人投資家の中長期的な資産運用の方法について解説したものです。その意味で、スタンダードなやり方であり、失敗しないやり方とも言えるでしょう。乙はおもしろく読みました。
 p.80 では、資産クラスを分類しています。まず、リスク資産と安全資産に分け、リスク資産を国内株式、国内債券、外国株式、外国債券、オルタナティブに5分しています。ここでオルタナティブが登場してくるあたり、資産運用の現状をよく反映しています。
 p.86 では、国内株式、国内債券、外国株式、外国債券、短期資産の5クラスのリターンとリスクをグラフで表示しています。こういう資料は大変おもしろいです。基になったのは p.49 にあるデータですが、20年から35年程度を通算した結果とのこと。そこでは、年率リターンを、短期金利 4.56%、国内債券 6.62%、国内株式 8.80%、外国債券 6.08%、外国株式 9.11%、そしてインフレ率を 3.28% としています。今の日本の低金利を基準に考えると、とてもじゃないけれど考えられないリターンです。でも、一般論でいえば、このくらいの数字が達成されるんですね。
 問題は、過去数十年間ではこうだったけれども、これが今後も続くのかということです。それは、日本の異常な低金利がいつ解除されるかということとも絡みます。乙の予想では、低金利はそう簡単に解除されないのではないかと思います。だって、金利が 4% とかになったら、国債や借入金などの合計額 827 兆円(2006年3月末現在、財務省)
出典=http://www.mof.go.jp/gbb/1803.htm
の利息が33兆円にもなってしまうので、日本の税収入だけでは払いきれなくなるからです。
 ということで、日本の低金利が続くとすると、本書のリターンの数字も(国内のところは)あてにならないのではないかと思います。
 p.89 では、いろいろなヘッジファンドの運用戦略ごとのリスク/リターンのグラフを載せています。1994年から2004年の結果だそうですが、これも大変おもしろいです。ショート・セリングだけがマイナスで、あとはだいたい 11% 程度のリターンを達成しています。ヘッジファンド全体のリスクは 8% 程度であり、乙が思っていたほど高くありませんでした。ただし、もしかして、多数のヘッジファンドを平均したために一見リスクが小さくなっているように見えるだけかもしれませんが。
 p.102 には、日本の企業年金の資産配分のグラフが出ています。国内債券 22%、国内株式 27%、外国債券 12%、外国株式 17%、一般勘定 8%、その他 7%、短期資産 7%ということです。乙の印象では、国内資産が多いんだなあと思いました。加藤氏は、特にこのアセットアロケーションを個人にも勧めているわけではありません。あくまで、参考のために示すということです。確かに、個人投資家と比べれば、機関投資家は運用額がはるかに大きく、また期間もはるかに長くなります。限られた資金を限られた期間(たとえば15年)運用する個人では、考え方も違ってくると思います。
 pp.109-120 では、コアポートフォリオ(資産運用の中心)としてパッシブ運用を用い、サテライトポートフォリオ(資産運用の一部)としてアクティブ運用を導入する考え方が解説されます。乙は、今までいろいろ試行錯誤してきましたが、どうもこの考え方が一番いいようだと考えるようになってきました。この考え方は、朝倉智也(2006.3)『投資信託選びでいちばん知りたいこと』ランダムハウス講談社
http://otsu.seesaa.net/article/17479870.html
でも説明されています。
 pp.153-154 では、長期的な資産配分「戦略的資産配分=SAA=Strategic Asset Allocation」とは別に、それをちょっとだけ(短期的に)変更する「戦術的資産配分=TAA=Tactical Asset Allocation」という考え方が示されます。これは、資産配分のリバランスとは違った考え方であり、ちょっとした遊びのようなものだと理解しました。加藤氏は資産配分の数%程度の変更を想定しているようです。
 第12章(pp.155-166)では、人生設計が大事だとといています。それによってリスクが取れるかどうかが決まるからです。また、p.183 では、なぜ利食いは早く損切りは遅くなるかを行動ファイナンス理論から説明しています。このような話題の広がりは、とても有意義です。

 ところで、この本が想定している個人資産家は、運用資産いくらくらいの人なのでしょうか。pp.14-15 の年金や退職金の記述を見てみると、数千万円程度を想定しているようです。実際、この本の記述はそれくらいの資産で実行可能だと思います。その意味で、本書は多くの人に読まれてもいいのではないでしょうか。


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2006年06月24日

神戸孝(2003.3)『幸せな老後を呼びこむ ほんとうに真っ当な資産運用』朝日新聞社

 乙が読んだ本です。
 著者には申し訳ないけれど、一読して、何も新しいことがないなあと思いました。この本に書かれていることは、乙にとってほぼすべてすでに知っていることでした。「真っ当なもの」というのは、つまりは「当たり前のもの」であり「平凡なもの」ということなのでしょう。
 この手の本は昔からたくさんありました。本屋さんで手にとって立ち読みすれば、だいたいの内容がわかりますから、買う必要はないと判断できるはずです。
 乙は、ネットの古本屋でタイトルだけを見て購入しました。値段は忘れましたが、とにかく安かったので、あまり損した気分はありません。(自分の時間を損した気分はあります。)
 資産運用に関する本をまったく読んだことのない人が1冊目として読むにはいいかもしれませんが、それだけです。自分で投資を実践している人は、読む必要はありません。ただし、間違ったことが書いてあるわけではありませんから、批判することもありません。当たり前のことが当たり前に書いてあります。
 なぜ、ファイナンシャル・プランナーがこのような「平々凡々な」(乙はあえていいます)本を書き、また出版社が出版するのでしょうか。類書がたくさんあるのですから、多くの著者・出版社がこういう本を手がけているのです。乙は、むしろこちらの「なぜ」のほうに興味を持ちました。
 「入門書」の必要性は乙も認めますが、だとしたら、その旨をタイトルなり表紙になりに明記してほしいと思います。まあ、ある程度慣れてくれば、タイトルを見ただけで読む価値がないことを見抜けるようになるのでしょうが。
 ちょっとおもしろいといえば、第5章の外貨建て商品のところでしょうか。p.178 で国内のインフレ対応のために外貨を持つべきだという意見はおもしろいと思います。神戸氏は、国債残高の急増ぶりに対して解決策はインフレしかないだろうという意見を述べています。乙もそう思っています。また、p.193 で中国株を薦めていますが、買った銘柄の大部分が紙くずになってしまったとしても、一銘柄だけでも何十倍かになっていれば充分元は取れるという考え方などは一つの意見として、おもしろく受け取りました。
 しかし、全体として、乙は残念な読後感を持ちました。


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2006年06月22日

山村剛人(2005.10)『ラブホテルは今日も満室!!』ゴマブックス

 乙が読んだ本です。
 怪しげなタイトルですが、レジャーホテル・ファンドについて書かれています。
 乙は、すでに自分が投資しているレジャーホテル・ファンドについて、ブログに書きました。
http://otsu.seesaa.net/article/15111327.html
 この本は、1,300 円の定価が付いていますが、実際は、乙が運営会社のG.F.S.主催の(リニューアル後の)レジャーホテルの内覧会に出向いたときに係りの人から無料でもらいました。内容は、レジャーホテル・ファンド「HOPE α」シリーズの宣伝であり、ファンドのパンフレットみたいなものです。基本的には、レジャーホテル・ファンドの有利性を述べている本であり、欠点はまったく書いてありません。この手の本は、執筆者がファンド会社と別にいても、実際はファンド会社と一体になった人が書いており、ファンド運営会社に都合のいい話しか書いてありませんから、記述を 100% 信用してはいけないものです。眉にツバを付けながら読むくらいでいいでしょう。
 この本の内容についてうんぬんするということは、実はファンドそのものについてうんぬんすることになります。そのつもりで以下をお読みください。
 さて、このファンドのいいところは、8.4% の利回りが予定されているところです。上限は 12% という話ですから、なかなかのものです。今の日本ではとてもおいしい話です。しかし、投資話で、高利回りをうたっているところは、必ず何か隠された秘密があります。
 橘玲氏が『臆病者のための株入門』
http://otsu.seesaa.net/article/19337369.html の第7章で述べているように、ホントに安全で有利な投資話であれば、金融機関が、もっと低利でいくらでも資金を貸してくれるでしょう。今の日本のような金余りの社会では、相当な低利率で借りられるはずです。そういう状況の中で、ファンド会社が手間暇をかけて(しかも高利回りをうたいつつ)個人投資家を募っているということは、金融機関が融資してくれないわけで、つまりそれはそれなりのリスクがあると金融機関が判断しているということです。
 ですから、この手の本を読むとき、一番のポイントは「なぜ、金融機関から低利の融資を受けずに、個人投資家から高利で資金を集めるのか」という点です。この点が納得できなければなりません。
 山村氏は、p.64 から、誰でもが参入できないからこそ、レジャーホテル・ファンドの魅力があると述べています。金融機関が運用会社に融資しないのは、レジャーホテル・ファンドに融資すると金融機関のイメージが傷つくからだというわけです。p.133 以降にも同様の記述があります。
 乙が、この論理にしたがえない部分は、「金融機関がイメージ悪化を恐れて融資しない」といいながら、pp.176-183 で、このファンドがノンリコースローンを導入して高収益を挙げると書いている部分です。p.177 では、このノンリコースローンとして、金融機関から 2% の金利で融資を受ける話が書いてあります。これが可能なら、ファンド全体として(というよりも、会社として)、8.4% の予定利率を示して個人投資家を募るよりも、金融機関から 2% の利率で資金を融資してもらうほうがいいに決まっています。
 そもそも、金融機関が「イメージ悪化」ということでレジャーホテルに対する融資を断るなんてことがあるのでしょうか。違法行為をするわけでもなく、きちんと利益を上げている会社があるならば、積極的に融資するものではないでしょうか。銀行は、法律的にグレーゾーンの行為(ある見方では違法行為です)をしている消費者金融にも融資をするくらいなんですから、レジャーホテルだからといって融資をしないとは考えられません。
 p.135 では、今、新生銀行と東京スター銀行がレジャーホテルをビジネスとしてとらえようとしている話が書いてあります。山村氏は、だから個人投資家は早いうちにこのファンドに投資しなさいといいたいようです。しかし、本当にこのファンドに魅力があるなら、金融機関が G.F.S. にそういう融資をするはずです。さらには、金融機関の直接参入がどんどん起こるはずです。そうならないのは、やはり、著者が語っていない何か隠されたリスクがあるからだと乙は思います。
 では、どんなリスクがあるのでしょうか。
 乙は、この業界のことはまったくわかりませんから、以下は、単なる憶測で書きます。
 乙が思うに、一つの問題は、レジャーホテルをリニューアルして、高収益体質にしたとして、それが5年間も続くのだろうかということです。このファンドは、インカムゲイン(つまり利用客が払う代金)に依存していますから、5年経たないうちに利用者が減ってしまえば、利益が出ず、配当が下がります。
 もう一つの問題は、(こちらのほうが大きな問題だと思いますが)しかるべき配当を出して運用した後、出口戦略をどうするのかという問題です。リニューアル時に計算された資産価値を5年後も保つことができるでしょうか。こればかりはわかりません。管理保守がどのように行われるかでも相当に違ってきます。5年後にふたたびリニューアルするということで、その後また収益が上がることになったとしましょうか。そのまま投資を継続して10年後まで建物が持つのでしょうか。20年後は? 40年後は? 乙は、いつかは資産価値がなくなると思いますが、その時点で損失をどう扱うのでしょうか。それを考慮した場合に、今現在の資産価値をどう考えればいいのでしょうか。会計上の減価償却はしているにしても、実際に長期の運用をする場合は、減価償却とは別の「何か」が必要なのではないでしょうか。山村氏は、この問題に触れずに、5年間の運用で利益が出るようにいっていますが、いざ、5年後に償還することになったとき、それまでの配当金はインカムゲインに基づき 8.4% の計算で出たとしても、キャピタルゲインがなく、それどころか、多額のキャピタルロスが発生し、大幅な元本割れが起きないとは言えません。
 もちろん、キャピタルロスが発生すれば、劣後出資している G.F.S. が全損を被ることになります。それでいいのでしょうか。HOPE α3 でいえば、投資家の優先出資6億4千万円に対して、G.F.S. の劣後出資額は9千万円で、出資総額は7億3千万円です。利益は、最も低く見積もっても毎年 15% くらいはありそうですから、1億円程度です。8.4% は 15% の約半分になりますから、1億円の利益の半分は投資家に配分します。すると、G.F.S. は5千万円程度の利益になります。これが5年間続けば、会社の利益は2億5千万円ですから、償還時に劣後出資額9千万円を全損してもいいという判断はあり得ます。
 繰り返しますが、以上は乙の勝手な憶測です。
 これらの二つの問題を考慮すると、やはり、投資した後、5年の運用期間を経験し、償還まで一通り見てみないと、ホントに有利な話かどうかは何ともいえません。最も早い場合でも、HOPE α1 の償還を見なければ、実績は何ともわかりません。
 乙は、HOPE α3 に投資していますが、完全に信頼して投資しているわけではありません。語られていないリスクの存在(上述の二つは乙の憶測にすぎず、それらだけが問題だというわけではありません)を考慮すると、この手の話に資金を集中するのは危険だと思います。
 p.194 では、HOPE α2 で 300 万円を投資し、きちんと運用されることに安心したのか、HOPE α3に 3000 万円を投資した投資家の話が出て来ます。仮にこの投資家が3億円を運用していたとしても、10% もの比率でこの話に加わるのは比率が高すぎるように思います。しかも、HOPE α2(2005.1 開始) と HOPE α3(2005.7 開始)では、半年しか離れておらず、実績は何とも判断しようがないものです。人様のことですから、乙とは関係ありませんが、世の中にはそういう人もいるんだなあと乙は感心しました。
 p.194 によれば、投資家の平均投資額は、一人あたり500万円だそうです。皆さん、すごいんですね。
 乙は、出資額を最低額の50万円だけにして、5年間ようすを見ようと思っています。あ、すでに1年経ったからあと4年ですが。無事償還されたら、その次はもう少し集中させてもいいかもしれません。それでも、500万円まではいかないと思います。


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2006年06月20日

田中徹郎(2005.8)『50歳からの30年!! ゆうゆう生きるお金学』こう書房

 乙が読んだ本です。
 題名から自分にぴったりの本だと思って買いました。
 ファイナンシャルプランナーが、タイトル通り、50歳からの30年をどう生きるかをお金の面から書いた本です。
 第1章は、「30年たてばこれだけ世の中変わる」で、30年前の状況を述べ、今といろいろ違っていたことを説明しています。したがって、今から30年後も、今は何ともいえず、状況はまったくわからないというわけです。このあとの記述の序論のような章です。これで20ページもかかるのはかなり冗長な感じです。
 第2章は、「長生き対策としての資産運用、資産防衛の必要性」で、ひとことでいうと、自分自身の(50歳から30〜40年間の)ライフプランを作成しようということです。収入(平均的な年金収入)と支出(高齢者の普通の支出金額)の予定を明示し、今いくら必要なのか、今後、年何%くらいで運用していけば死ぬまで大丈夫(資産残高が赤字にならない)かを計算しています。そして、数千万円の退職金を得る普通のサラリーマンにとっては、今後2%/年程度のインフレ率を考慮すると、7%/年程度の資産運用が必要だということになります。この章までで1冊の本の半分を占めます。乙の感じでは、この章も、かなり冗長なように思えます。もっと端的に書けるのではないでしょうか。まあ、具体的な(資産の増減の)シミュレーションの結果を示しながら書くスタイルになっていますから、わかりやすいといえばわかりやすいのですが。
 第3章は、「さあ、資産運用を始めましょう」ということで、個人投資家にとっては、ここから読み始めてもいいのではないかと思います。(読む量が半分で済みます!)ここで書かれているのは、アセットアロケーションの話です。p.106 では、ローリスク資産は年率2.5%程度、ミドルリスク資産は年率4.5%程度、ハイリスク資産は年率8%程度のリターンを考えるとよいと書いてあります。で、これを組み合わせてたとえば年率5%の収益率になるようにアセットアロケーションを決めることになるのですが、ここ、なぜ5%なのか、よくわかりません。30年間の生活を考えて、資産がいくらあって、年率何%で運用すれば充分かを考えれば、個人ごとの適切な収益率が求められると思いますが、単純に個人投資家のことを考えると、収益率は5%よりは7%のほうがいいと思います。(それではリスクが大きくなりすぎていけないのですが、そういう話が出てきません。)また、p.114 では、日本株を30年保有すれば年率3%程度の収益になり、このように保有期間が長ければ長いほど、ある収益率に収斂するということがわかるようになっています。それはそうなのですが、では、p.106 でハイリスク資産(株など)のリターンを8%と考えていることと矛盾しないのでしょうか。
 p.122 から、日本株、外国株、国内債券、外国債券の伝統的な4分類はもう古いということで、商品ファンド、不動産投資信託(REIT)、ヘッジファンドなどのその他資産を(これまた日本国内と外国に二分して)組み込んで、6分類で考えるべきだという話になります。pp.128-129 では、通貨の種類、リスクの高低と組み合わせてこの6分類を位置づけ、マトリックス・アロケーションというのが提示されますが、乙としては、あくまで例示として見たほうがいいように思います。変額年金保険などがあちこちに現れますが、乙は、こういうのはまったく考慮に値しないと思うからです。
 第4章は、具体的な金融商品の選び方を示しています。pp.139-141 で、株式投信は手数料が高くて、買う側には意味がないということが書いてあります。pp.142-144 では、変額年金保険を取り上げて、原商品を組み合わせたものだから、余計なコストがかかるということが書いてあります。だとしたら、p.128 で変額年金保険を組み込んだ案を提示していていいのでしょうか。
 第5章では、「この商品は検討に値する!」と題して、商品ファンド、ヘッジファンド、SMA(ラップ口座のこと)を紹介しています。類書にはあまり紹介されないので、この本の独自性があるところだと思われます。最初の商品ファンドですが、pp.158-161 にはオプション・マスターが取り上げられています。乙は、これを購入し、最近、解約しました。
http://otsu.seesaa.net/article/13068411.html
http://otsu.seesaa.net/article/17568213.html
オプション・マスターは、毎年 5.25% という手数料が高すぎて、投資家サイドから考えると、割に合わないように思います。ヘッジファンドについても、pp.170-188 に書かれているように、田中氏は積極派です。乙は、よくわからないというのが本音です。(そうはいいつつ、一部の資金を運用していますが。)SMA(ラップ口座)については、乙はそんなに資産があるわけではないので、はじめから考慮の対象外です。というわけで、第5章も、乙にはあまり有意義な感じがしませんでした。
 この本をひとことでいうと、個人がこの本を参考にして資産運用をすることはどだい無理であり、適当なファイナンシャル・プランナーに(できれば、著者の田中氏、つまり銀座なみきFP事務所に)相談しつつ資産運用方針を決めてほしいというスタンスで書かれているように思います。
 まあそれはそれで理解できますが、乙は、やはり、資産運用は個人の判断で行うべきだと思います。乙は、FPに相談したくありません。だって、FPといっても考え方がさまざまで、いろいろな本を読んでみるとおすすめのアセットアロケーションにしたってばらばらなんですから、自分が相談したFPが自分に最適な設計をしてくれるなんて期待できないと思います。
 この本は、あくまで一人のFPがこういう意見を語っていたというスタンスで読むのがいいのではないでしょうか。

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2006年06月18日

藤巻健史(2003.10)『藤巻健史の実践・金融マーケット集中講義』(光文社新書)光文社

 乙が読んだ本です。
 末尾には「本書は『藤巻健史の実践・金融マーケット集中講義』上、下の2冊を合本とし加筆修正したものです」とありますから、実際に書かれたのはもう少し古いのでしょう。
 最初に「この講義録は、6日間に亘り3時間ずつ講義したものを本にまとめたものです。」とあります。本文を読んでも、それが感じられます。これがいいか悪いかはともかく、乙は、やや読みにくいように思いました。録音文字化した講義内容に手を入れたのでしょうが、もう少し本格的に手を入れてしまった方が、読む人間にはわかりやすかったのではないかと思われます。
 しかし、内容は濃く、為替、短期金融、長期国債、金利スワップ、オプションのそれぞれについて、実際にトレーディングしてきた人の立場から徹底的に実践的に解説されています。今までにないスタイルの本のように思います。こういう本が書ける藤巻氏はものすごい人だと思いました。
 本書の内容を簡単にまとめることはとうていできません。実際に読んでみるしかないと思います。
 その中で、乙がおもしろいと思ったことを3点だけ抜き出しておきます。
 p.255 で、日本政府の大きな財政赤字に言及していますが、藤巻氏は「国が破産するとか、徳政令をやるとは私も思っていません」と断言し、その代わりに超インフレを起こすだろうと予想しています。乙も、たぶんこれが現実的な政策だろうと思っていましたが、伝説のトレーダーがこう判断しているということで、心強く思いました。
 pp.367-371 では、住宅金融公庫や郵便局の定額貯金は、利用者にオプションを与えていることと同じだという話が出て来ます。これは、乙には新しい見方で、刺激的でした。なぜこれらの商品が有利なのかを見事に説明しきっています。(今は、状況が違ってきていますから、必ずしも当てはまるわけではありませんが、説明としては今でも有効です。)
 pp.406-423 では、ヘッジファンドの話が出て来ます。ヘッジファンドは、運用者の儲けが大きく、やりたい(投資したいのでなく運用したい)人が多いということです。それはそうでしょう。それに加えて、ヘッジファンドは運用者が自分の金を入れて運用するのが普通だということです。さもないと、資金が集まらないのだそうです。まあそれもそうでしょうね。ですから、その点に関していえば、ヘッジファンドは、どういうやり方であろうとも、儲けることを主眼とすることになります。この点は、投資家にとっては魅力となります。しかし、運用者が一時的に儲かればいい(あとは退職するだけ)という場合は、話が違ってきます。乙は、ヘッジファンドでは、運用マネージャーが頻繁に交代するという話を聞いたことがあります。とすると、自分の金を投入しているからといって安心はできないことになります。p.409 では、ヘッジファンドがなぜ情報を外に出したがらないかが説明されます。外部に情報を出すと、「宣伝」とみなされ、「私募」でなくなってしまうんですね。だから、個人がヘッジファンドの情報を集めようと思っても、なかなかわかりにくいということになるわけです。ヘッジファンドは何をどう運用しているのか、簡単にはわからないことが多いのですね。一長一短というところでしょうか。

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2006年06月16日

橘玲(2006.4)『臆病者のための株入門』(文春新書)文藝春秋

 乙が読んだ本です。
 今まで乙が読んだ投資関連本の中で一番お薦めできる本です。750円の新書でここまで書いてあるとは、恐れ入ります。特に株関連の話題が多く、普段から疑問に思っていることが明快に論じられています。とても読み応えがありました。
 乙がいろいろ金融商品を買う前にこういう本にめぐりあっていたら、相当に違った行動をしていたことでしょう。いや、やはり、自分で迷い、間違わなければ、橘氏の書いていることはなかなか信じられなかったかもしれません。
 第1章は「株で100万円が100億円になるのはなぜか?」を説明した章です。p.18 では20代無職の男性が「金融のプロ」を天文学的なレベルで上回る成績を上げたということは、株が(スポーツや将棋の)プロの競技でなく、ギャンブル(つまり偶然のゲーム)であることを証明していると述べています。株の本質がこれでわかります。すごい説明です。そして、pp.24-30 では、実際に複利とレバレッジを効かせればお金を1万倍に増やすことは現実的に可能だということを示しています。この説明にも乙は納得しました。p.36 では、ジェイコム株で20億円を儲けた男が27歳無職であったことは当然だと述べています。失うものがないからこそ、大きなリスクがとれるというわけです。金融のプロではできないことだし、自分の仕事を持っている一般の投資家にもできないことだと言われ、「う〜ん、確かに」と納得してしまいました。
 第2章は「ホリエモンに学ぶ株式投資」で、ホリエモン事件を詳しくかつわかりやすく述べています。乙は、ホリエモンのやったことをここまで簡単に説明してしまった橘氏の力量に感服します。
 第3章は「デイトレードはライフスタイル」という章です。p.74 では、なぜデイトレードが儲かるように見えるか、それはテレビや雑誌やネットには「成功したトレーダー」しか登場しないからで、その裏には損をして退場していった多数の人々がいるということを述べています。橘氏は、まさに、見えないところを見ていますね。p.77 では、なぜ株価のチャートの読み方を知ると儲かるような気がしてくるかを説明しています。「講師は都合のいいチャートを探してきて、それにもっともらしい説明を加えているだけだ」ということです。これにも乙は納得します。今までにも、乙自身がそういう本を何冊か読みましたから、理解できます。p.85 では、なぜニートの若者や退職したサラリーマンがデイトレードにはまるのかを説明しています。普通に働けないからだというわけです。1000万円を運用して、毎年2割の利益を上げても、たった200万円にしかならないということで、この説明にも納得します。
 第4章は「株式投資はどういうゲームか」という章で、p.96 には「株式市場とは、損を広く分散させるためのシステムだ」ということが述べられています。これまたすごい卓見です。この一言で株の本質を表してしまいます。
 第5章は「株で富を創造する方法」です。pp.114-127 の前半では、バフェット流のファンダメンタル分析に基づく長期投資がいかに有利かを述べています。pp.128-139 の後半では、株式評論家が薦める株がなぜあたらないか、そうでありながら、なぜそういう人がいるのか(実は投資家に安心を売るためだ)を説明しています。乙は、今までこんなに明快に株式評論家を位置づけた論説を読んだことがありません。
 p.138 では、「日本が××年に破綻する」などの予言をする人について、なぜそういう言説が広まるかを説明しています。予言が当たればそれでよかったということになるし、あたらなければ悪いことが起こらなかったのだから問題になることはないということです。乙は、こういうことがないようにしたいと思います。たとえば、株式評論家の言ったことを1〜数年後に検証するなどということは、誰かがやらなければならないことです。一部、乙もやりましたし、これからも愚直にやりたいと思っていますが、橘氏に「そんなことはやってもムダだよ」と先回りして言われてしまったような気がしています。
 第6章は「経済学的にもっとも正しい投資法」です。投資家は一番最初に読むべきところでしょう。結論は「インデックスファンドを買え」なのですが、橘氏はなぜそれが一番いい選択なのかをきちんと述べています。ここまできちんと説明されては、もうこの主張に従わざるを得ないという気分になります。
 第7章は、「金融リテラシーが不自由なひとたち」です。pp.170-171 では、平成電電への投資がなぜダメなのかを見事に説明しています。この説明は納得できます。ということは、今の日本で数%以上の確定利回りをうたう投資話はほぼ全部ダメになってしまいそうです。それはそれで一理あります。乙も資金の一部をそういうところで運用していますが、心配になってきました。
 pp.182-185 では、ヘッジファンドがなぜ危ないかを説明しています。乙は、ヘッジファンドが危ない理由を初めて知りました。なるほど「池の中のクジラ」だったんですね。ま、自己資金の全額をヘッジファンドに預けているわけでもないので、乙としては、もう少しようすを見ようと思いますが。
 第8章は「ど素人のための投資法」で、ここも投資家必読の箇所です。p.196 には「最大の資産は自分自身である」ということで、給料をもらっていることを○○円の資産があるものとみなして生活全般を見直そうとしています。pp.200-206 は、国際分散投資の話ですが、ここでも結論は簡単です。MSCIインデックスに投資すればいいということです。pp.201-202 では、中国やインドに投資するのではよくないという理由を述べています。新興諸国に資金が集中すると、すぐに多く集まりすぎる事態になり、バブルがはじけるような状態になるというわけです。これはこれで納得できます。乙は、BRICs 諸国への投資もしていますが、適当な時期に逃げ出すことを考慮しなければなりません。これが難問です。今は、どうしたらいいか、回答が見つからない感じです。
 pp.208-210 では、金融資産の85%を外貨で運用するのがもっとも正しい態度だという話が出て来ます。この論理には納得します。特に今は日本が破綻しそうだとか考えるまでもなく、もともと外貨での投資を考えておかなければならなかったんですね。こういう視点は乙にはありませんでしたし、円と外貨の妥当な投資比率を考えたこともありませんでした。こういう話は目からウロコでした。
 pp.211-214 では「トーシロ投資」と称して、トレーディング(デイトレードを含む)、個別株長期投資(バフェット流)、インデックス投資の3種を取り上げて、それぞれの長所・短所を述べています。乙のようなサラリーマンは、インデックス投資がベストな選択であるように思えます。
 pp.217-218 には小さなミスがあります。1802年からの2世紀を「2世代」と呼んでいます。1世代は、普通30年と考えるべきところでしょう。
 pp.218-220 では、プライベートバンクよりも、インデックス投資のほうが優れていることを示しています。こうなると、プライベートバンクの存在意義が問われることになります。
 ともあれ、乙が読んだ投資関連の本の中で、この本が一番の良書であることは間違いありません。出版社の在庫が一時的になくなったりするほどの売れ行きのようですが、それはわかります。みんながこういう知識を持っていれば、お互い、もう少し幸せになれるように思います。
 すべての投資家が一読するべきだと思います。


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2006年06月13日

藤巻健史(2003.11)『タイヤキのしっぽはマーケットにくれてやる!』日経ビジネス人文庫

 乙が読んだ本です。
 藤巻氏は、以前乙が読んだ著書がおもしろかったし、これが文庫本で安かったこともあり、買ってみようという気になりました。
 この本は、2001年9月に刊行された単行本を一部書き直して文庫に収録したものです。
 帯には「カリスマディーラーの爆笑エッセイ」とあります。実際、楽しい本だとは思いますし、藤巻氏の人となりを知っている人ならば、特におもしろく読めるでしょうが、藤巻氏の他の本を読まずに、いきなりこれを読む人は、たぶん、おもしろさは半減でしょう。(読む人は、「おもしろさ半減」は実感できないでしょうから、「つまらない」と感じて終わりでしょう。)
 著者の藤巻氏は、伝説のディーラーとして名をはせた人ですから、金融関係の話があちこちに出て来ます。しかも、適切なコメントで有意義です。個人投資家としても知っておくべき意見がたくさんあります。しかし、このあたりは、藤巻氏の他の著書でも同様のことが書いてありますから、特にこの本で読むべきものではありません。
 この本は、今となっては、内容的に古い部分もありますので、これから買って読もうとする人には、あまりおすすめではないと思います。それよりは、藤巻氏の新しい著書を読みましょう。


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2006年06月10日

藤巻健史(2004.7)『藤巻健史の「個人資産倍増」法』講談社+α文庫

 乙が読んだ本です。
 乙が以前読んだ、藤巻健史(2005.11)『直伝 藤巻流「私の個人資産」運用法』講談社
http://otsu.seesaa.net/article/16834359.html の前に書かれたものですが、それぞれにおもしろく読みました。ただし、一部の記述が重なっていますが、これはやむを得ないでしょう。
 第1章「日本経済の未来は非常に明るい」では、藤巻氏の楽観的予想が書いてあります。もちろん、単なる予想ではなく、根拠を持った予想ですが、読んでいていい気分になります。p.37 には、ドル建ての日本国債を発行するべきだということが書かれます。乙はこの発想に驚きました。言われてみると、なるほどという面があります。
 第2章「為替が日本の国際競争力を左右する」で、日本の経済を考えるときに、いかに為替が大事かということが説かれます。まさに同感です。
 第3章では、「自分で考えるための情報収集&分析ポイント」ということで、10個のポイントについて説明されます。その3番目ですが、「信頼できると思う人のコメントを継続フォローする」とあります。確かにいえます。そして、p.66 では「もっぱら過去の分析ばかりしている人は、追っかけの対象からはずしてしまうことが必要だ。」とあります。乙は、「オール投資」をはじめ、過去の分析が好きなのですが、そういう人は藤巻氏から信頼できないと言われてしまったような気がして、残念です。
 第4章「マーケットは誤解に満ちている」では、為替・日本経済・海外経済に分けて、それぞれでよくいわれる「誤解」を正しています。ここは、乙が一番おもしろいと思ったところです。p.95 では、p.37 と同じく、「ドル建て短期日本国債」の発行が説かれます。
 第5章「よくわかる経済・金融の基礎知識」は、他の書籍との重なりがあるところですので、藤巻氏の著書を読んでいる人なら、スキップしてかまいません。
 第6章「資産運用の大原則13ヵ条」は、投資家に対する具体的なアドバイスになっています。p.190 からの第9条では「個人投資家はマーケットリスクのみを取れ」ということで、アルゼンチン国債のようなケースがあるから、個人はけっして信用リスクの高いものに手を出すべきではないといいます。これを敷衍すると、海外ファンドなどは、信用リスクが高い(どれくらい安全確実か、見極めることはほとんど不可能)ですから、手を出すべきではないという結論になりそうです。(乙は手を出しているので、藤巻氏の言説に反しています。)
 また、p.195 から第10条で「仕組みが簡単な商品ほどよい」ということが述べられています。満期まで一切の解約ができない、流動性リスクが高い金融商品も、個人は避けた方がよいということです。マーケットが崩れ始めたので逃げようと思っても売れないわけです。先物取引やオプション取引を組み込んだ複雑な仕組みの金融商品は、中途換金ができないものが多いということで、手を出さないほうがいいということです。確かにそうかもしれません。乙は、数年満期の金融商品をいくつか買っていますが、万が一、大きな経済変動があったときなど、損失が出ると思います。しかし、乙の考えでは、資産のごく一部であれば、あまり問題にならないのではないかと思います。
 ともあれ、とても読み応えのある文庫本でした。


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2006年06月08日

長尾数馬(2005.2)『あなたの資産 ここを変えればもっとふやせる!』実業之日本社

 乙が読んだ本です。タイトルに引かれて買ってしまいました。
 プロローグでは、これからの日本経済に対して悲観的に考えるか、楽観的に考えるか、両者の中間で現実的に考えるかで資産運用がこのように変わるという話が出てきます。もちろん、長尾氏が一番有力と考えるのは「現実的」シナリオですが、その場合、モデルポートフォリオは以下の通りです(p.29):預貯金 5%、MMF/MRF 10%、公社債 20%、株式投資信託 10%、個別株式 20%、外貨MMF/外貨預金/外国国債 35%。
 う〜ん、他の本で推奨しているポートフォリオとはずいぶん違います。
 株式投資信託は、さらに細分されて、TOPIX連動日本株70、MSCI連動外国株20、リート10になります。
 外貨MMF/外貨預金/外国国債 は、通貨別に細分されて、ユーロ30、米ドル35、豪ドル15、カナダ10、英ポンド5、中国元<香港ドル>5 になります。
 ここまで細分できるということは、全体の金額がかなり大きいことを想定しているようです。単純に考えて、長尾氏の推奨ポートフォリオによれば、リートはポートフォリオ全体の1%ということになりますが、リートは最低投資金額が50万円くらいですから、全体の資産が5000万円くらいの人を念頭においていることになります。これなら、外貨MMF/外貨預金/外国国債の英ポンドや中国元<香港ドル>が 87.5 万円相当ということで、納得できます。
 第1章は、「日本と世界の経済・金融事情」ということで、日本の現状を正確に把握することが第一歩だとして、少子化現象とともに、日本の株、日本の債券、外国為替などの現状を述べ、ユーロがこれからの世界の基軸通貨になるかもしれないと述べています。また、投資する国の将来性は資源・食糧自給率でわかるとしています。ここは、乙は、ちょっと違うのではないかと思いました。安心度を測るにはこういう指標でいいでしょうが、経済はそれだけではないと思います。日本の食糧自給率が低いのはその通りですが、「日本には食料が回ってこなくなる」(p.48)はホントでしょうか。今だって、日本は世界中から金の力で食料を買いあさって輸入しているわけで、むしろ食料輸出国が飢餓に苦しむようなことすら起こっています。ということは、これからも同じで、経済が発展していれば、(倫理上の問題は残るにしても)世界中から食料の輸入ができるのではないでしょうか。
 pp.51-52 では、個人投資家が中国へ直接投資するのはリスクが高すぎると述べられています。それよりは「中国ビジネスにうまく参入している日本、欧米の多国籍企業へ間接的に投資をすればよい」というわけです。乙は、こう思いません。中国投資がずっと大丈夫だとはいいませんが、今までの流れを見ていると、(あと数年は)状況が大きく変わることは少なく、個人投資家が中国に投資してもいいと思います。
 第2章は、「資産運用の今までの常識はここが間違い」と題して、12個のポイントが示されます。乙から見ると、ここで述べられている「今までの常識」は、あまり常識でもなさそうに思えます。
 ポイントの一つですが、p.72 では「長期分散投資でなぜ損をするのか」と題して、過去15年の日本株の動きを基に、平均株価に分散投資する投資信託の考え方を否定しています。しかし、ここは長尾氏が誤解しています。日本株だけに集中していては「分散投資」になりません。日本株だけでなく外国株も見るべきです。債券や不動産も考慮するべきです。分散投資はそういうものでなければなりません。また、過去の特定の期間を取り上げて、「ほうら見よ。だからうまくいかないのだ」と後からいうことは誰でもできます。我々は、今後どうなるかわからない「現在」に生きているのですから、そういう中で最適な判断をしなければなりません。それを考慮したら、長尾氏の論は成り立たないと思います。
 第4章では、「人気の金融商品を徹底分析する」と題して、個別の商品に対する考え方を述べています。長尾氏は p.98「長期投資は単独株式投資が基本」と考えており、国際優良銘柄の株を長期保有することを主眼に置いていて、投資信託を否定しています。p.124 で述べるように投資信託の手数料が高すぎるからということです。ここも乙と考え方が違うところで、乙は両者ともそれぞれ長所・短所があると思っています。乙は、そのあたりを具体的に見極めたいと考えて、とりあえずは、現物株も投資信託も購入してみました。実地に考え、実行し、反省することで、もっと学ぶことができます。乙には、最終的にどういう態度が望ましいかはまだわかりませんが、長尾氏の考え方は、やや単純すぎるように思います。
 p.114 では、個人変動国債を勧めています。しかし、乙はまったく購入していません。それは、長尾氏がいうように「日本が破綻するから国債を買うべきではない」という理由ではなく、単に、国債の利回りが低すぎるからです。長尾氏の議論は、だいぶずれているように思います。
 この本の内容は、一人の金融コンサルタントの意見として読めば、おもしろい本だと思いますが、乙は内容を全面的に信じる気にはなれません。
 あ、乙はこの本を古本屋で半額で買いました。


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2006年06月06日

前田和彦(2004.8)『借金国家から資産を守る方法』フォレスト出版

 乙が読んだ本です。
 本書は、日本の国家破綻は確実だということで、ではどうしたらいいかを説く本です。
 それはそうなのですが、まず最初に、この本が前提にしていることを明確に書いておかなければ、買う必要のない人までがこの本を買ってしまうでしょう。
 資産が5億円以上(!!)ある人だけがこの本を読む価値があります。
 p.167 には、資産運用に使うアメリカ型プライベート・バンクと資産保全に使うスイス型プライベート・バンクがあり、それぞれ2対8の割合で資産を分散するべきだということが書いてあります。そして、p.168 には、プライベート・バンクに口座を開く場合、最低受入額の目安は 100 万米ドル(約1億円)だと書いてあります。単純に考えれば、2対8に分散して、一方が1億円なんですから、全体で5億円以上ある人でないと、この本に書いてあることを実行できないのです。
 似たような話はあちこちに出てきます。p.169 では、納得のいくポートフォリオを組もうと思ったら2〜3億円ないと、実際にはできないと書いてあります。p.171 では、まともな(つまりはスイス型の)プライベート・バンクは、100万、200万米ドル、あるいは3億円以上ないと口座が開けないということが書いてあります。
 乙の資産はこんなにありませんから、この本で勧めている資産防衛法も何も無意味です。
 170ページ近くも読んできて、これらの記述に出会い、ようやく、この本は自分が読むべきではなかったとわかりました。だったら、こういう大事な情報を本の「はじめに」に明記しておいてください。題名に入れてもいいですよ。
 逆にいえば、5億円以上の資産のある人には、この本は有用かもしれません。日本から海外に資産を移すだけでなく、住むところも海外に移す海外避難(PT)まで考えられているのですから。
 そんなに資産のない人でも、もしかして、5億円以上のお金持ちに対してどんなアドバイスが提案されているのか知りたいという人は、この本を読んでもいいでしょう。著者の前田氏は、プライベート・バンカーだそうですから、プライベート・バンクがどういうものかを知るには、この本が適しているかもしれません。乙は、そういう資産のない人が読めば読むほどこの本は腹立たしくなるだけだろうと思いますが。
 乙は、憤慨しつつ、買ってしまった本を書棚に入れようとしたら、何と同じ本がもう1冊書棚にあることに気づきました。以前にもこの本を買っていて、そのことを忘れて今回もまた買って、合わせて2冊も買ってしまったんですね。つくづく情けなく思いました。
 繰り返しますが、乙のような間違いをする人が出ないように、「5億円以上の資産がある人に」と最初に明記してください。お願いします、フォレスト出版様。
 それを明記すると、そんなに数は売れないと思いますが、しかし、間違って買う人がたくさんいるということは、ある意味で著者および出版社が詐欺を働いているようなものだと言えると思います。そうならないような配慮をお願いします。


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2006年05月07日

朝倉智也(2006.3)『投資信託選びでいちばん知りたいこと』ランダムハウス講談社

 乙が読んだ本です。
 朝倉氏はモーニングスター社の代表取締役ですから、そのウェブサイトを使って投資信託を選ぶ方法が詳しく書いてあります。
 ほぼ投資家の観点から書かれた本です。ここが一番いいところです。何と言っても、普通に投資信託の情報を得るときには、証券会社や銀行など、「販売側」の人からになるわけで、それでは、本当に投資家の役に立つ投資信託は買えません。マネー雑誌などでも、やはり広告の出稿側の声を無視することはできないでしょう。こういう本こそ、投資家の役に立つ本だと信じます。
 第1章は、「投資信託はそんなに甘くない」ということで、投資信託の特徴を再検討します。投資信託の最大の盲点はコストだと書いてあります。そうなんですよね。乙が購入した各種の投資信託については、このブログでいろいろ述べてきましたが、それぞれのところでコスト(各種手数料)を明示するようにしてきました。投資信託では、なるべく低コストのものを選びたいと考えてのことです。
 第2章は、「投資信託選びの下準備」ということで、長期目標を立て、目標利回りを決め、それから資産配分を考えるという真っ当な方法が説明されます。
 第3章は、「投資信託はこう選ぶ!」という章で、さまざまな投資信託のタイプ別に選び方がきちんと書いてあります。なるほど、こういう選び方をするのだったかと思わせる記述がたくさんあります。
 中でも、コア(中核)投信に集中して購入するという方針は、なるほどそうだと思いました。日本株に投資するコア投信の場合は、インデックスファンドか、100 銘柄以上に分散投資しているものを選ぶということです。
 乙は、こういう方針を知らずに投資信託を買い始めたので、それぞれに適当に選んでしまったのでした。乙の場合は、数年経験してみて、それぞれの投信の特徴などを理解してから、ふさわしいものに追加投資するようなことで運用しようと思ったのでした。しかし、そうではなく、主たる投信(コア)を決めてそこに集中投資し、お好みで個別のテーマや地域などに投資する投信(本書ではサポート投信と呼んでいます)を買ってもいいのですが、それは配分比を少なくするべきだということです。確かに、こういう方針がいいですねえ。しかし、それがいいとわかるまでは、乙のように試行錯誤してしまうのが普通なのではないでしょうか。そもそも何をコア投信とするか、最初は判断ができないでしょう。投資信託を購入するより前にこういう本に巡り会うことができる人は少ないように思います。
 第4章は、「購入後のチェックと売却」で、ここまできちんと書いてあれば(その通りにすれば)投資信託によるトラブルはかなり避けられるように思います。リバランスの話もきちんとしています。
 ちょっと意外なのは、p.243 に出てきますが、「投信のパフォーマンスがよすぎる場合も売却の候補になる」ということです。確かに、コア投信としては、そういう考え方も成り立つでしょうね。しかし、サポート投信ならば、これは嬉しいことであり、特に売却しなくていいわけです。
 また、pp.245-246 で、運用期間が来る前に目標金額を達成したら、すべての投信を売却して、預貯金などにしておくという話も意外でした。乙なら、一部の資産だけは売却せずに、運用期間がすぎるまで保有し続けるように思いますが、それではダメなのだそうです。

 乙は、投資信託が好きです(自分の好みに合ってます)が、いろいろ購入する前にこの本を読んでいたら、購入方法が相当に違っていたことでしょう。それくらいインパクトのある本です。本屋さんや図書館に並んでいる投資信託の本など、この本よりもはるかに低レベルで、役に立たないことやすでにわかっていることが書かれているのが普通です。
 投資信託を運用方法のメインにしようとする人ならば、ぜひ本書を一読するべきでしょう。
 乙は、古本屋で買ったのですが(こんな新しい本が古本屋で何と半額で売られているんですね)、買ってよかったと心から思いました。


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2006年05月04日

原田武夫(2005.12)『騙すアメリカ 騙される日本』(ちくま新書)筑摩書房

 乙が読んだ本です。
 この本は、いかにアメリカが日本を騙し、日本の富をアメリカに移転させているかを明確に述べています。たとえば、郵政民営化にしても、それはアメリカのために行うことなのだと書いています。著者の原田氏は元外交官ですから、その主張は説得力があります。日本人として、ここまでアメリカに騙されているとなると、いい気持ちはしません。
 「おわりに」の p.277 からは、郵政民営化によって、郵貯・簡保マネーが日本株に向かい、したがって、日本株が値上がりすることが書かれています。これを事前に予想してアメリカの投資家は日本株を買っておき、数年後に個人投資家による日本株への資金の大移動が起こったときに、うまく高値で売り抜けるというわけです。確かにそういう面は否定できないでしょう。
 さらに、余剰資金が流れ込むことで日本のマーケットはインフレになり、そのとき、アメリカが(高値で)資源・商品を売ることで、アメリカはさらに儲けることができるということです。個人投資家も、今から資源・商品に投資しておくことを考える必要があるかもしれませんね。
 この本は、全体として、投資を扱っているわけではありませんが、投資にも関わる記述があり、乙はおもしろく読みました。

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2006年05月02日

増田悦佐(2006.1)『国家破綻はありえない』PHP研究所

 乙が読んだ本です。
 題名に引かれて注文した本なのですが、読んでみると、投資に関連する本とはいいにくいような気がします。
 第1章「政府は貧乏、でも国民はとてもお金持ち」は、日本経済を冷静に眺めて、結論として国家破綻にはならないということになります。ちょっと日本が理想的に描かれすぎている感じがしなくもありませんが、東京と大阪の町工場の技術水準を高く評価するところなど、納得できると思います。
 労賃が安い国で、誰でも作れるような定型的なものを作っているのが今の中国であり、単に人件費が安いことだけが取り柄なのに対し、日本は、どんどん技術をつぎ込んで、新しいものを作っていく。そういう体制になっているから、中国などが伸びてきても、日本は独自の優位性を発揮し続けるというわけです。
 で、国家破綻の際に問題になる大量の国債の問題ですが、増田氏は低金利の借り換え債や永久債などという手もあるということを紹介しています。永久債(償還期限がなく、利息だけをずっと払っていく債券)というアイディアは乙には初耳でした。しかし、書かれていることを読むと、これはこれでいいアイディアではないかと思えてきます。永久債が仮に 3.5% の利付きだとすると、約30年で元本分が返ってくる計算になり、それ以降は利息だけがずっと付いてくることになりますから、元本が償還されなくても、これはこれで投資価値があります。(ずっと日本政府が存在し続けると信じられる場合に限りますが。)
 第2章は、「少子高齢化は怖くない」ということで、通説に反するけれども、これもまたおもしろい説です。投資とは直接関係ありません。
 第3章は、2050年の日本を予想するといった内容で、乙は、こういう記述が好きになれません。未来予測は、いろいろな条件を前提にした予想にならざるを得ませんが、それらがあまりにも不確実であるし、今予想されていない事態(大事件や革命的新製品の発売)が起これば、社会のあり方が変わってしまうでしょう。そういうもろもろのことに目をつぶって未来予測をしてもあまり意味がないように思います。
 というわけで、読むべきは第1章だけかもしれません。しかし、増田氏の主張は菊池氏の著書
http://otsu.seesaa.net/article/16553677.html
にも通じる話であり、明るい気分になれる本です。
 なお、p.19 には、日刊工業新聞2005年10月3日の引用ですが、日本の200社に対してチャイナリスクを感じる点についてたずねたアンケート結果が載っています。次のような順番です。()の中は、それを選択した企業の数です。
政府の突然の政策変更(111)
技術・ノウハウの流出(95)
元の切り上げ(84)
電力などインフラ未整備(79)
反日感情(66)
 乙は、チャイナリスクというと反日感情が一番かと思っていました。
http://otsu.seesaa.net/article/16709943.html
しかし、そうではないのですね。企業の経営者に対するアンケートですから、中国株の投資家とは違った反応をするのでしょう。ここには、中国に直接進出することを前提にする場合の企業の本音が出ているように思います。

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2006年04月30日

澤上篤人(2005.10)『“時間”がお金持ちにしてくれる優雅な長期投資』実業之日本社

 乙が読んだ本です。
 「これから10年で富の所有者は激変する」という副題が付いています。
 第1章では、年金の話が出てきて、「おや、買う本を間違えたか」などと思ってしまいます。実は、長期投資で自分の資産を作り上げれば、年金なんてどうということのない問題にすぎないという話の前触れなんですが。乙が読んだときは本当に意外な感じがしました。
 第2章で、個人や家計がいまの生活水準を守っていくのがむずかしいという話になります。
 第3章では、運用に踏み切った人から浮上していくということで、土地持ちや天下りを繰り返す高級官僚などの従来型の金持ちは没落し、株式投資などができる人がこれからの金持ち像だということが説かれます。
 第4章がこの本のメインで、どのように資産を運用するのか、そのコツが書いてあります。ここは澤上流の弁舌がたっぷりと聞けます。
 第5章では、現在、日本企業が復活しつつあることが述べられます。
 第6章では、政府の景気対策としての公共工事などがいかにくだらないかを述べ、そんなことは、個人投資家が自分達の手で十分できることなのだということが書いてあります。確かに、日本には膨大な個人資産(1400兆円?)があるわけですから、それをうまく使えば、政府に収められる税収40兆円なんてどうでもいい金額の数字にすぎません。要はお金の使い方なのです。では、どのように? 何と、単に長期投資を心がけるだけです。詳しくは本書を読んでもらうしかありませんが、壮大な話です。日本に長期投資家がたくさんいたら、澤上氏のいうように、不良債権の処理なども民間でできてしまったというのもうなずけます。
 というわけで、この本は、第4章のようにして長期投資の心がけを述べることがメインなのですが、第6章のように、長期投資がもたらす日本経済の改善にまで話が及ぶというところがおもしろいです。本書は、単なる投資関連本というよりは、澤上流の「いかに生きるべきか」が語られる有益な本です。読み終わった読後感は実にさわやかです。小手先のテクニックで投資を考えるのでなく、自分の生き方を基準に投資を考えるという態度がすばらしいんですね。
 長期投資を目指す人は、ぜひ一読しておくといいでしょう。


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2006年04月28日

岡崎良介(2005.12)『これから10年長期投資のロードマップ』ダイヤモンド社

 乙が読んだ本です。
 「一生困らないお金を、のん気投資で手に入れる」という副題が付いています。
 この本の主眼は第2章にあります。これから10年の株価・金利・為替の動きを明確に予想し、グラフのような形の模式図で表しています。このような将来を想定すれば、おのずと取るべき戦略はこうなるということで、それも解説されています。いやあ、普通の人ではなかなかここまでは書ききれないでしょう。しかし、岡崎氏はあえて書いてしまいました。この章が本書の結論部分です。
 第3章は、なぜ今後10年間の動きがそうなるかを解説したところです。過去のデータを利用して分析しています。現実世界での経済的な動きや政治などとの関連も踏まえて、ともかくこの考え方で当てはまるのだという話になっています。これを読むと、第2章の主張が説得力を持ってきます。最終的な結論----すべては米国の経済・米国の景気が動かしている----も、なるほどと思います。何か、この本で日本経済の動きのすべてが理解できたような気分になります。
 この二つの章以外は、あまり新規性はありませんが、乙は pp.221-231 の岡崎氏のおばあさんの話がおもしろかったです。おばあさんは、ずっと倹約生活をし、預貯金一本槍で生活してきて、死ぬときには 4000 万円を残したそうです。そういう生き方が昔の日本人には多かったのですね。しかし、資産運用を心がけていたら、もっと違った人生を送ることができたように思います。それはともかく、岡崎氏はそういうおばあさんにも資産運用についてわかってもらえるようにこの本を書いたとのことです。この気持は納得できます。
 乙も、妻と息子に資産運用についてわかってもらえるようにこのブログを書いています。
http://otsu.seesaa.net/article/14732420.html
 今から10年後に、日本経済がどう動いたかを完全に把握してから、この本を読み直すことがあってもおもしろいかもしれません。経済は、必ずしも、予想したとおりに動くとは限りませんが、なぜそのような予想外の変化が起こるかについても本書中で述べられていますので、充分参考になるでしょう。
 この本は、長期投資を考えている人には必読のおすすめ本です。こういう長期的展望を持って、身近なことに惑わされずに、投資を続けていきたいものです。
 乙は15年の投資を考えていますので、本書の考え方に共感を覚えました。

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2006年04月26日

岡崎良介(2005.4)『フリーランチ投資家になろう!』ダイヤモンド社

 乙が読んだ本です。この本もなかなかおもしろく、おすすめできます。
 フリーランチ投資家というのは、自分であくせくしなくても、お金が勝手に稼いでくれるような、そんな投資家のことです。では具体的にどうするか。ここで長期国際分散投資の話が出てきます。
 岡崎氏は、過去のデータ20年分を集め、日本と外国の株と債券の値動きをいろいろ分析し、それに基づいて、これからこうするといいという処方箋を提示します。それが、日本株(あるいは外国株)3割と外国債券7割という配分比なのです。さらに、外国債券は7年程度の長期運用を目指す(つまり7年はじっと保持する)ということになります。なぜ7年か。これは過去のデータが教えてくれた結果です。7年持っていることが一番いいのです。それに対して、日本株は数ヶ月単位の短期投資がいいということになります。これもデータから導かれる結論です。このあたりの議論は、本書中のデータを見ながらでないと、納得しがたいかもしれません。
 デイトレードなどはやってはいけないのは当然です。また、日本の国債には目もくれません。
 この本全体を通して、過去のデータと今の状況に応じて、最適な戦略を描こうとしている点に好感が持てます。
 たとえば株の売買にしても、p.157 で、上昇局面では3〜4ヶ月を目途として2割程度上がったら利益確定し、下降局面では損失の確定を下落の2ヶ月目に行うなどといった具体的な指針まで示してくれます。1ヶ月に1回の売買というスタイルですから、そういうスタイルでデータを見て、一番いい戦略を描きます。
 いうまでもなく、上に示した処方箋(アセットアロケーション)も、現在(厳密には2005年4月の本書の執筆時)は当てはまりますが、今後しばらくしたら当てはまらなくなるでしょう。しかし、本書を理解しておけば、7年後どう振る舞えばいいか、おのずとわかるような気がします。(再度、そのころに出る岡崎氏の著書を買って読むのでもいいと思いますが。)
 乙は、この本に賛成する部分もたくさんありますが、株の値動きを月1回しかチェックせずに、数ヶ月単位の短期投資をするという記述は疑問を感じました。数ヶ月の間には、かなりの株価の上下があるので、たとえば、売ると決めた後でも、1週間くらいようすを見て、その中の比較的高い時期を狙うようにしたほうがいいのではないかと思います。まあ、こういうチェックをこまめにしていくと、あくせくして忙しくなり、フリーランチ投資家にはなれないのですが。
 乙は貧乏人根性丸出しですね。

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2006年04月24日

藤巻健史(2006.3)『藤巻健史の5年後にお金持ちになる「資産運用」入門』光文社

 乙が読んだ本です。題名に引かれて思わず買ってしまいました。
 内容は、品川女子学院という中高一貫校での金融講座に手を加えたものということで、非常にわかりやすくなっています。正直いうと、乙には、ちょっと物足りなかったという感じでした。金融のことを全然知らない人にはちょうどいいのかもしれませんが。
 この本で述べられていることは、藤巻氏の以前の著作にも見られるようなことで、今の金融マーケットの見方などは一貫しています(当然ですが。)今回は、pp.129-183 で生徒たちの作った 5000 万円の運用案に藤巻氏がコメントするところなどがおもしろいし、また、p.197 から語られる藤巻氏の今までの経歴(それぞれの転換点のところで何を考えたかなどが書かれています)などは興味深かったと思います。しかし、全体としては、新鮮みが少なく、買って損をした感じです。
 というわけで、本書はあまりお薦めできません。それよりは、前著
http://otsu.seesaa.net/article/16834359.html
を読みましょう。

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2006年04月21日

藤巻健史(2005.11)『直伝 藤巻流「私の個人資産」運用法』講談社

 乙が読んだ本です。
 藤巻氏の主張は簡単でとても痛快な本です。
 伝説のトレーダーが今後の金融の動向を見据えて、自分の資産をこのように運用するとはっきり書いています。
・そのうち日本にインフレが来るから、長期固定金利でたくさん借金をする
・その金を日本株と不動産に投資する
・今後円安になるから外貨で資産を運用し、円はなるべく持たない

 端的にいうと、以上のようなことになります。なぜこう考えられるかについては、この本を読んでください。藤巻氏が根拠を示して論じています。(しかし、もちろん、この予測があたるかどうかはわかりません。)
 この他に、この本では、米国経済、中国経済、商品市況(石油・金)、日本の増税問題、日本のものづくり、米銀と邦銀の比較など、幅広いテーマを論じています。これらの全体の概観によって、藤巻氏は上述のような見通しを得ているというわけです。
 乙がおもしろいと思ったことは、p.33 に書いてあります。藤巻氏はバブル崩壊直前に、いろいろな人と面会して、今後の展開を読み、次のようにしたと書いてあります。「私はマーケットの危うさを感じた。日本経済の転機を感じた。そこで株をすべて処分した。また、遅ればせながらの金融引き締めを予想し、債券もすべて売却したのである。」
 つまり、伝説のトレーダーは、アセットアロケーションなどは無関係で、ある時は株に突っ込み、債券に投資し、またあるときはそれらを全部処分してしまうのです。市場への見通しがなければ、なかなかこうはできませんが、しかし、これはおもしろいです。乙も、こうありたいと感じています。事前に決めたアセットアロケーションにこだわるよりも、今はこれがいいと思ったら、そこに突っ込むというような投資です。これでは不安定だという見方もできますが、そうではありません。全資産を一つの金融商品に突っ込むようなことはあってはならないし、あくまで基本は分散投資です。しかし、なお、それぞれの配分割合にこだわることなく、適宜ダイナミックに運用先を変えていくというようなことが必要だと思います。
 このようなダイナミックな運用は、伝説のトレーダーだからできるのであって、一般人には無理だという考え方もあるでしょう。しかし、そうでもないというのが乙の考え方です。自分自身で分散投資して、それぞれの運用先が現在どうなっているかを監視していると、自分の投資した金額の上下という形でいろいろなマーケットの動きが手に取るようにわかります。投資しないで外から眺めていても、実感がわかないでしょう。自分でわずかながらでも投資していると切実感が違います。乙には藤巻氏のような思い切った運用はできませんが、ある程度はダイナミックな運用を目指したいと思っています。
 たとえば、乙は、今のところ、日本株も外国株も順調だと見ています。BRICs などはその典型でしょう。しかし、もう少し先には値下がりもあるでしょう。そういうときは、それに対応した動き(つまりファンドの解約や株の売却)をするつもりだということです。実際の動きに先駆けてダイナミックな運用ができればパーフェクトですが、それは無理だとしても、先行きが暗いときは投資しないという程度でも結果が違ってくるでしょう。乙が日本の国債に投資しないのもこの考え方によるのです。


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2006年04月19日

内藤忍(2005.1)『内藤忍の資産設計塾』自由国民社

 乙が読んだ本です。
 とてもまじめで、長期の資産運用を考える上での一番の参考書といえるでしょう。乙が最初にこの本に出会っていたら、考え方が変わっていただろうにと思います。特に第1章がおもしろいです。
 p.5 では、日本株投資の場合、数年の投資期間を見たとき、TOPIX を上回るアクティブファンドの数は半分以下であるという表が出ています。だからインデックス運用が無難だという結論になるわけです。しかし、乙は、話はそう単純ではないと思います。一定額を一定期間運用する場合はその通りですが、個人投資家は、必ずしもそう行動するとは限りません。株の調子がいいときには株に資金を突っ込み、具合が悪くなれば逃げます。そして、そういう株価の変動は、日本経済全体の流れのようなものを見ているとかなりわかります。悪くなっていくのがわかっていて資金を引き揚げないのは怠慢です。それを考慮すると、内藤氏のいうようなことがそのまま当てはまるとは限りません。
 p.28 から、投資では、個別銘柄を選択するより、アセットアロケーションを考えることが一番大事ということが説かれます。大変おもしろいです。
 乙は、単に値上がりすればいいじゃないかと思っていましたが、それではハイリスクになってしまうので、あるとき(たとえばブラックマンデーのようなとき)ガツンとやられてしまうというわけです。それはわかるのですが、しかし、だからといって、今のような状態で日本の国債を買うというのは、どうも乙にはできません。低金利を背景に、あきらかにリターンが低いことがわかっているのですから。
 長期にわたって安定したリターンを得るためには、アセットバランスを調整しながら一定のアロケーションで行くほうがいいというのは理解できますが、それは、数十億円とか数百億円とかを運用する場合ではないかと思います。内藤氏はファンドマネージャーだったようですが、そういう場合は、個人投資家と違って、機関投資家にきちんと運用方針を説明できるように、もっとスジの通った運用をするべきです。この本に書いてあることはかなり当てはまるでしょう。でも、それに比べて少額を運用する個人投資家の場合はどうでしょうか。
 個人投資家としては、アセットアロケーションを厳密に守らなくても、リスクが取りに行けると思ったときに取りに行き、どうもダメだと思ったら、手を引くというようなことがあってもいいのではないでしょうか。
 たとえば、乙の考えでは、今は、日本の国債を買うことは考えませんが、数年先に、株が相当に上がったころに(?)かつ、金利がかなり上昇したときに、株を全部売って、国債を買うということがあるかもしれません。そのときは、株の割合が0になり、国債の割合が(0から)増えるのですが、それでいいのではないでしょうか。
 また、個人投資家としては、アセットのリバランスがしにくい場合があるように思います。個人投資家は、アセットアロケーションをあまり厳密に考えるよりも、やや大胆に自分の考えで運用先を変えるというのもありではないかと思ってしまいます。少しぐらいアセットアロケーションが変わっても、あまり気にしなくていいと思います。分散させることはとても大事だと思いますが。
 乙の考え方としては、アセットアロケーションはどんどん変えていくべきで、固定的な運用はよくないと思います。ましてや、リバランスのために、一部の投資先を解約して別の商品を購入するなんて手数料がかさむだけです。しかし、次の商品の購入にあたっては(分散投資という点で)考慮するべき重要ポイントです。
 p.163 には、標準的なアセットアロケーションとして、日本株式 30% 日本債券 10% 外国株式 20% 外国債券 20% その他 20% という数値が出てきます。p.168 では、「外貨は40%くらいを占めるように」とあります。この意見は大変参考になりました。乙の場合は、今までのところ、先にアセットアロケーションありきで投資先を決めているわけではなく、適当に分散投資を考えてきただけです。つまり、乙のアセットアロケーションは結果的にそうなったというだけです。一応、乙の現在の資産配分を計算してみると、日本株=17% 日本債券=0% 外国株=29% 外国債券=11% 預貯金=10% 不動産その他=32% となり、不動産その他がかなり多いようです。(例によってワンルームマンションは含みません。)
 p.59 では、日経新聞の 2003年1月3日 の有望銘柄の検証があります。以前、乙も 2005 年分についてやってみましたが
http://otsu.seesaa.net/article/13168549.html
こんなことをする前に、この本を読めばよかったですね。結論はすでに出ていたんですから。
 ま、乙のしたことは、余計な手間をかけたのだと残念がるよりも、自分自身で調べて納得したのだということに価値を見いだしましょう。
 p.121 には、株価の変化を追いかけたグラフとして、全銘柄平均と、バリュー株(割安株)とグロース株(成長株)の比較が出てきます。バリュー株が全銘柄平均を上回っています。ということは、バリュー株投資をすればいいことになります。インデックスファンドよりも、バリュー株を狙うアクティブファンドに投資するのがいいことになるわけです。(これについては、乙の考え方を
http://otsu.seesaa.net/article/15981395.html で示しました。)


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2006年04月16日

森木亮(2005.2)『2008年 IMF 占領』光文社

 乙が読んだ本です。
 本の内容をひとことでいえば、2008年には日本が破産して、IMF が乗り込んでくるだろうということです。財政史の立場から日本破産について客観的に述べています。多くの国家破綻本が、だからどうしたらいいかということを書いているのに対して、森木氏は、破産は破滅ではないということで、日本人はむしろこれを甘受するべきだということを述べています。
 国債がまもなく暴落し、日本銀行が破産することになります。この道は、日本が過去にもたどった道であり、必然的にそうなるというわけです。こうなったのは、40年にもわたる政治家や官僚などの行動・判断の結果であり、今やどうしようもない状態になったと述べています。
 第6章では、小泉首相は偽改革者だと述べており、本来あるべき改革と違ったことをやってるということで、政治批判になっています。確かに政治が経済を左右しているのですね。
 この本の内容を素直に信じれば、今や、株の売買などをやっているときではないということになります。株安も円安も迫っているということですから、さっそく株を売って、海外に資産を移すしかないことになりそうです。
 ホントにそうするべきかどうか。乙は、まだ判断に迷っています。
 2008 年といえば、2年後ですが、まさか今から2年でこんな事態になるとはとうてい思えません。

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2006年04月14日

菊池英博(2005.12)『増税が日本を破壊する----本当は「財政危機ではない」これだけの理由』ダイヤモンド社

 乙が読んだ本です。
 今の日本は財政危機ではないという本で、びっくりします。財政危機だと主張するのは、政府(財務省)と新聞であり、それは、増税を国民に納得してもらうためのキャンペーンだというわけです。むしろ、今の日本は政策危機だということです。政策を間違えて緊縮財政を6年も継続しているから、税収が激減し、政府債務が増加してしまったということです。
 菊池氏によると、財政危機に関していえば、「粗債務」<負債>で見るのでなく、「純債務」(粗債務から金融資産を引き算したもの)で見るべきで、そうすると、日本は健全であり、財政危機にはほど遠いということです。日本の場合、諸外国と違って、政府が非常に大きな金融資産を保有しており、したがって純債務で見れば GDP 比率が他の先進国からかけ離れて大きいわけではないということになります。
 では、その金融資産とは何か。社会補償基金 254 兆円、内外投融資 136 兆円、外貨準備 90 兆円の合計 480 兆円です。粗債務 795 兆円が大きくても、純債務は 795-480=315 兆円しかなく、GDP 503 兆円と比べれば、大した金額ではないわけです。したがって、まだまだ国債が発行できるともいえます。
 乙が、大きな本屋さんにいったとき、書棚に国家破綻本があふれ、今にも日本が破産しそうだと思われました。しかし、一方ではこういう本があるというのはとてもおもしろいです。
 実際のところ、財政危機だとする考え方と財政危機ではないとする考え方のどちらが正しいのか、乙にはわかりません。菊池氏のいうように、今が財政危機ではないとしても、今までのやり方で、国債の大量発行を続けていけば、純債務でも GDP 比がどんどん大きくなっていくように思います。日本が、積極財政を進めて、名目 GDP をさらに大きくするようにしても、借金は借金でさらに大きくなりそうです。プライマリバランスさえ達成できない状況の日本が、今後10年程度で国債発行が減少するなんてことがあるのでしょうか。
 菊池氏によれば、減税することで、結果的に税収が増えるというようなシナリオもあるとのことで、なかなか財政というのは奥が深いものだと思いました。「赤字だから増税」という単純な発想だけでは不十分なんですね。
 こういう本を読むと、(現実は変わらないのに)なんだか気分が楽になるような気がします。少なくとも、数年以内に国家破産などということはなさそうに思えてきます。精神衛生上、大変いいです。


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2006年04月12日

ベンジャミン・フルフォード(2003.10)『ヤクザ・リセッション----さらに失われる10年』光文社

 乙が読んだ本ですが、厳密にいえば、これは投資関連本ではありません。
 日本社会はヤクザに汚染されているというわけで、「政・官・業」がどのようにヤクザと絡んでいて、どのように不当なことをやっているかを書いた本です。内容的には新しいことは多くありませんが、さまざまな事実をつないでいくと、そこに日本社会の不合理な面が浮かび上がってくるというわけです。
 どうにも、日本の未来は明るくないようです。
 さて、その中で、ちょっと気になるひとことがありました。
 p.258 ですが、「いま、財務省の役人たちは、当時(乙注:戦後日本の新円切替と預金封鎖の時期)のことを改めて研究しているという。そして、預金封鎖、預金切捨て、新旧分離に関する法律が時限立法ではなかったのを確認し、いまでも適用できるのがわかったという。」とあります。
 大いに気になりますねえ。これでは、本吉氏
http://otsu.seesaa.net/article/16392565.html
が述べていたことが間違いになってしまいますからね。
 さっそくネットで調べてみました。

http://www.carlos.or.tv/essay-j/deposit_freeze_jp.html
戦後不足がちであった食糧の買いあさりの防止や、インフレ対策として預金封鎖と新日銀券への切替えを含む施策が1945年11月頃から検討され、司令部との折衝を踏まえ、1946年2月17日に勅令(大日本帝国憲法第8条)、すなわち「金融緊急措置令(1963.7.22廃止)」「日本銀行券預入令(1954.4.10廃止)」に基づき幣原喜重郎内閣により実施された。また、企業と金融機関の再編整備が重要な課題であり、財務局発足当時の金融関係の重要な業務は、「金融機関経理応急措置法」(1946.8.15法律第6号)と「金融機関再建整備法」(1946.10.18法律第39号)の施行事務にあった。【中略】金融機関経理応急措置法第2条にいう、金融機関の負債のうち「命令で定める預金等」というのが市民の預金の意味であることに留意。しかもこれらの法律は現行法であり、命令というのは、政令、つまり国会審議を必要としないものであることにも留意しないといけない。

http://www.yukan-fuji.com/archives/2004/12/post_1158.html
「預金封鎖」荒和雄著(講談社文庫・560円)
終戦直後の預金封鎖の時に使われた法律の一部が今も廃止されずに残っており、法律解釈上は政令か内閣府令で預金封鎖が瞬時に可能だという。

http://www.nextftp.com/BangukokThai/fuusa.html
 昭和の預金封鎖実施に当たり、制定された六つの法案があります。
 @ 金融緊急措置法
 A 日本銀行券預入令
 B 臨時財産調査令
 この三つの勅令を軸にして、実際に預金封鎖を実施、その後の預金カットにいたる措置として、追加で三つの法律を公布、施行。
 C 金融緊急措置令施行原則
 D 会社経理応急措置法
 E 金融機関経理応急措置法
 この法律によって、封鎖された貯金は、第一封鎖預金と第二封鎖預金に分けられ、第二封鎖預金と企業・金融の不良債権が一括処理され、戦後補償打ち切りが行われました。
 @とAは現在廃止、BとCは廃止されたと言う資料無し、DとEは間違いなく現存しています。残った法律で、つまり法改正を国会の場で行わず、解釈しだいでは突然の「預金封鎖」は可能ではないかと言えるそうです。

 う〜ん、これらを読むと、やはり、法律上は預金封鎖が可能であるように思えてきました。
 乙の安心感は、たった2日間だけでしたね。
 ただし、現実の政策として考えると、預金封鎖するよりは、増税やハイパーインフレのほうが可能性が高いと思いますが。

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2006年04月10日

本吉正雄(2004.6)『元日銀マンが教える預金封鎖』PHP研究所

 乙が読んだ本です。
 預金封鎖があるとしたら、どんなふうになるのか、それを(日銀の立場から?)冷静に描いています。単なるパニック本ではありません。預金封鎖が問題なのではなく、それに続く財産税が問題なのだというのは、当然ですが、一方では、そういうことよりもハイパーインフレのほうが可能性が高いようだと述べています。乙も同感です。
 乙がおもしろいと思ったところを3点、書いておきます。
 p.57 「(国債の)支払い停止は行われる可能性はないのか。一つだけある。日本銀行が直接引き受けた国債を政府が支払い停止にするのだ。国債全部について支払いを停止すれば、ほとんどの金融機関は破綻するであろう。しかし、日本銀行が保有するものだけに限れば、金融機関の破綻は避けられる。」
 とてもおもしろい発想です。こうして、日本銀行が損をして、それでいいのかどうか、乙にはわかりませんが、いやはや奇抜な手があるものだと思いました。
 pp.92-94 では、預金封鎖を行うにあたって、原則的に国会の審議を経なければならないということが述べられています。しかし、それでは預金の引き出しなどが行われてしまうので、「預金封鎖」にならなくなってしまいます。それ以上に、財産税の実施が大問題です。日本には「租税法律主義」という原則があり、法律に定めない租税を課すことは憲法84条違反になるので、実施できないと書いてあります。つまり、今の憲法下では財産税の実施はきわめて困難だということです。技術的には可能でも、法律的に不可能というわけですね。
 終戦直後の預金封鎖と財産税は、旧憲法が実質的に機能しなくなり、新憲法が公布される前で、GHQの強大な権限をバックにして行われたのであって、今の日本では、そういう状況にないから、過度の心配は無用だというわけです。これを聞いて、乙は少し安心しました。
 p.208 以降では、預金封鎖への対処法が述べられています。その最初に「円」を外貨預金するという方策が書かれていて、乙は驚きました。こんな方法があったのですね。外国の銀行に(マルチカレンシーの)口座を開設し、その「円」の口座に自分の財産を預けておくというわけです。こうすると、日本の預金封鎖などの影響は一切受けないことになります。しかも、外貨で預金しているわけではないから、両替手数料はかからないし、為替リスクもありません。かかるのは(日本との往復の)送金手数料だけです。日本の銀行に送金できなくなってしまったら、現地に行って直接現金を円で下ろせばいいということになります。これは一番安全な(ただしローリスク・ローリターンな)方法だと思います。

 それにしても、預金封鎖と財産税がないとなれば、財政赤字を解消するために、これからの日本に残された道はハイパーインフレしかないということになりそうで、いやな話ですね。


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2006年04月06日

澤上篤人・横田濱夫(2005.11)『のんびり!カンタン!!幸せな長期投資』経済界

 乙が読んだ本です。2人の対談というスタイルで書かれた本で、わかりやすいと思います。
 どちらかというと、澤上氏が自分の考え方を述べる部分が多く、横田氏もそれに賛同する立場ですから、澤上流投資哲学開陳といった内容になるわけです。ただし、対談スタイルで書かれていますから、全体として冗長な感じを受けました。
 乙も、長期投資を中心に考えるほうがいいと思っていますので、この本は共感を覚えながら読みました。いい会社、5年後、10年後に必要になる会社の株を、年2〜3回ある暴落時に買って、そのままにしておくというシンプルなやり方です。このやり方を個人で行うのはなかなか大変ですが、投信会社が行うならば、かなりいい線でいけると思います。
 p.35 には、投資のことは勉強しなくていいという話が出てきます。乙は、ここに違和感を感じました。さわかみファンドに投資する場合でも、それでいいのだ、それがいいのだと自分で納得するためには、株や債券、為替、金利など、一通りの経済学的知識が必要なのではないでしょうか。そういうのを知らずにさわかみファンドに投資するならば、それは、澤上氏を神と扱い、盲目的に信じているにすぎません。p.57 では、盲信や信奉はよくないという話が出てきます。投資は、自分で納得しながら行うことが大事です。そのためには、やはり最低限の勉強が必要であると思います。
 pp.96-97 には、「若くして家を建てるより、できるだけ運用に振り向けておくという選択もある。【中略】住宅購入の頭金として最初に払ってしまう1000万円の価値がみんな、わかっていない。私だったら絶対に、これを運用に回すね」という話が出てきます。乙も、いろいろ迷った経験の末、今ならこの考え方に強く共鳴します。
 澤上氏の本は、いろいろ出ています。1冊読んで、澤上流の考え方を知ることは、それを受け入れるにせよ、拒否するにせよ、大切なことのように思います。
 乙としては、澤上氏の率いる「さわかみファンド」がもっともっと発展するように期待していますし、それが望ましい姿だと思っています。
 乙は、「さわかみファンド」について、すでにこのブログに書きました。
http://otsu.seesaa.net/article/14016027.html

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2006年04月04日

藤井厳喜(2005.12)『這い上がれない未来』光文社

 乙が読んだ本ですが、厳密にいえば投資関連本ではありません。
 「国家破産」以後の世界のあり方を記述している本です。もう「日本は詰んでいる」というわけで、国家破産を前提にした本です。
 Part 1 では、政府が発表した文書(内閣府(2005.5)『日本21世紀ビジョン』国立印刷局)をもとに、日本が破産するようすが描かれます。破産は政府も認めている日本の将来像だということになります。日本が破産してどうなるか。p.042 に明記してあります。@経済が停滞縮小し、優れた人材が外国に流出する。A官が民間経済活動の足かせとなる。国債価格が急落し財政破綻する。増税のみに依存した財政再建で個人および企業の税負担が増える。Bグローバル化に取り残され、国際政治に受け身になり、発言力が低下する。C将来に希望が持てない人が増え、社会が不安定化する。社会的なつながりを欠いた人が増加する。大都市近郊地域がゴーストタウン化する。
 というわけで、まことに暗い社会になります。
 郵貯・簡保のカネも、財政投融資という形で官僚が勝手に使ってしまって、今や不良債権の山だということです。取り付け騒ぎが起こったら、政府はどうするのでしょうか。お札をどんどん印刷すればいいという問題ではないはずですよね。
 Part 2 では「国家破産」以後の社会が具体的に記述されます。グローバル化するのだから、日本人の賃金が下がるのは当然だという説明がされます。説得力があります。
 Part 3 から「格差社会」論議が始まります。以下、Part 4 で「階級」について語られ、Part 5 では日本の「階級社会」が描かれ、Part 6 では、それと対比してアメリカの「学歴階級社会」が描かれます。Part 7 では、世界規模で「下流転落」現象が起こっていることを述べ、Part 8 では、どういう人が這い上がれるのか、どういう人が這い上がれないのかが説かれます。その後に「ある実業家の回想」と題して、役人がいかに日本をコントロールしてきたか、それによって民間がいかに苦労してきたかが述べられます。旧運輸省と対立しながらヤマト運輸で宅急便を作り上げた小倉昌男氏の苦労の話と重なる部分があります。
 ここまで完璧に国家破産後について書かれてしまうと、乙はどうしたらいいものか、悩んでしまいます。日本で投資などしている場合じゃないだろうという声が聞こえてきそうです。このままではいつかは日本が破産するので、それを前提にした生き方を考えておかなければならないようです。


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2006年03月30日

鈴木雅光(2005.9)『入門! インド株』インデックス・コミュニケーションズ

 乙が読んだ本です。
 インド株を始めるために、まずはこの1冊を読むべきでしょう。いろいろなタイプのインド株への投資が一通り書かれています。
 乙は、今の日本でインドの株が直接買えないのだから、投資信託しかないと思っていましたが、そうではなくて、ADRやeワラントなど、別の手段もあることをこの本で知りました。
 もっとも、乙の場合は、自分の投資スタイルと一番ぴったり合うのは投資信託だと思っています。
 ADRは、個別の企業への投資ですから、個別株と同じくそれぞれの企業研究が必要になりますが、乙にはそういう時間がありません。
 eワラントは、レバレッジを効かしたハイリスク・ハイリターンな方法ですから、乙の投資の方針と合いません。
 インド株ファンドの投資方針として、p.56 には「10年単位での利益を追求するように」と書いてあります。あまり短期的な上昇に気を取られるなということですね。10年ということに興味を持ちました。乙の場合は、15年を考えていますから、すでに買った投信をずっとそのまま保有し続けるつもりでいます。

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2006年03月18日

西岡進(2004.1)『都市型ワンルームマンションで資産をつくる』ダイヤモンド社

 乙が読んだ本です。
 ワンルームマンションの購入前に、本屋さんで買って読みました。
 著者は、ワンルームマンションのデベロッパーの人ですから、この本はワンルームマンションのいいことばかりが書いてあります。この本を信じてワンルームマンションの購入に至ってくれれば、著者としても満足ということですね。
 さて、投資として考えると、一番重要なのは、第3章「都市型ワンルームマンションに投資するメリット」のところでしょう。ここに書いてあるメリットは、以下のようなことです。(1)ワンルームマンション経営は老後の“年金”になる。(2)ワンルームマンションのローンは生命保険の代わりになる。(3)預貯金よりも高利回りである。(4)ローンを使うと少ない自己資金で投資が始められる。(5)所得税の節税メリットがある。(6)相続税対策になる。(7)自分で(子供用に、SOHO としてなど)使うこともできる。(8)実物資産投資だから手堅い。
 以下、この8点を順次検討しましょう。
(1) 確かに、私的年金になるのですが、問題は、今考えている家賃が、そのころまで継続的に入ってくるかということです。pp.50-51 には、30歳の時に購入したマンションで、60歳の時にローンを完済し、年金がもらえると書いてありますが、築30年のマンションで以前と同じような家賃が取れるものでしょうか。これはそうなってみなければわかりません。可能なようにも思いますが、そうでないかもしれません。
(2) 住宅ローンが生命保険になるという発想は、書いてあることは間違っていませんが、そのような目的でローンを借りるわけではないので、おかしな話です。
(3) 今は低金利ですから預貯金よりも高利回りですが、これから金利が上がったら、そうではなくなります。今の非常識な低金利はいつかは終わるでしょう。そのときでもワンルームマンションは優位でしょうか。
 それに、ワンルームマンションよりも高利回りが期待できる商品が(不動産投資の場合でも)あるので、そちらのほうがいいのではないかと思います。
(4) ローンを借りると、その分の利子を払わなければなりません。2.6% くらいで借りて、5% の運用利回りと考えれば、元は取れますが、2.6% は変動金利ですから、これから金利が上がれば(そして乙は金利が上がるものと思いますが)、ローンの利率もどんどん上がっていきますから、この点は逆にデメリットになります。
(5) 乙の場合も、不動産所得は赤字で、したがって、給与所得からその分を引いていますから、確かに節税のメリットはあります。しかし、ざっと計算しても、節税分は赤字額の2割程度(給与所得が数百万円以上の場合)ですから大した金額ではありません。単純に考えても「赤字になるために投資する」という考え方は不健全です。
(6) 相続税対策になるメリットもありそうですが、それは投資家が考えるべきことと違うように思います。少なくとも、乙は、今から15年は死なないつもりです。もうすぐ自分が死にそうだと思っている人は、どうぞマンションを買ってください。
(7) 自分や家族が使うということはあると思います。しかし、これは投資とは別の問題です。自分と家族のライフスタイルなどの問題になります。
(8) マンションは実物資産ですから、何があっても残るという安心感はあります。しかし、一方ではこれが負担になる場合もあります。取り壊すのに大変な費用がかかりますから、もしかして地震・火災・戦争などで被害が出たとき、購入価格が 1900 万円のマンションでも、被害額はそれ以上になることがあり得ます。取り壊しからマンション再建まで考えると数千万円かかりそうです。再建しないという手もありますが、その方向で区分所有者の意思がまとまるということはほとんど考えられません。

 以上のようなわけで、この本はデベロッパーの側から書いたものですから「ワンルームマンションの明るい未来」をうたっていますが、よく考えてみなければいけません。
 乙の感覚では、ワンルームマンションは、長期にわたってわずかながら家賃収入が期待でき、ほんの少しの黒字になりそうだといったところです。ワンルームマンションに投資するくらいなら、もっと他の金融商品に投資するべきです。そのほうがトータルのリターンがよくなります。今の乙には、その自信があります。
 というわけで、乙は、ワンルームマンション投資は、あまりおすすめできません。


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2006年03月14日

平松朝彦(2006.1)『亡国マンション』光文社

 乙が読んだ本です。日本のマンション問題のすべてが語られていると思います。とても刺激的な本です。著者の基本的な考え方は、マンションのあり方自体が問題で、そうなったのは国が住宅政策をきちんとしてこなかったことが根本的な原因だとしています。今問題になっているマンションの耐震強度の偽装問題などは、そのような大きな流れの中で考えるべきだというわけです。
 マンションが、排水設備の使用期限である30年で使えなくなるという指摘は驚きでした。そろそろ築30年のマンションが増えて来つつあり、今後さらに増えてきます。排水管の状況は、個々のマンションごとに違いますので、何ともいえませんが、この問題が前面に出てくる可能性は高いと思われます。
 この本に書かれていることは正しいと思いますが、だとすると、マンションに住むということ自体が問題になりそうですし、したがって、マンションに投資するというのも無謀な選択肢だということになりそうです。
 乙も、以前はマンションに住んでいましたが、自分で管理組合の役員などをしてみると、確かに、この本で指摘されているような問題がありそうに思いました。なるべくそういう問題を避けることができるよう、修繕積立金の値上げなどを行いましたが、そういうことをしてみると、区分所有者の意見がなかなか一致しないという問題に直面しました。
 著者が提案するようなスケルトン・インフィル構造のマンションができればいいのですが、今は、そのようなものの価値を認めないような仕組みができあがっているし、マンションの購入者も、数十年も住むつもりで購入しているのではないということで、なかなか解決はむずかしいのではないでしょうか。


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2006年03月09日

藤井厳喜(2004.5)『新円切替----国家破産で円が紙くずになる日』光文社

 乙が読んだ本です。いわゆる国家破綻本で、日本の絶望的な未来を描いた本です。ただし、2004年秋の新札の発行よりも前に書かれた本ですので、新札発行と新円切替を関連付け論じていることは言い過ぎになってしまう(なってしまった)と思います。
 この本はいろいろと刺激がありました。国家破産からは簡単に逃げられないと割り切っている点は説得力があります。
 pp.223-228 で述べられるように、数億円以上の資産があれば、PT(Perpetual Traveler)になってしまう手がある(それで日本の破産から逃れられる)というのはその通りだと思います。しかし、ゴミ投資家の乙にはそんなに資産がないので、日本から逃れられません。
 乙が驚いたのは、「はじめに」の pp.009 以降の記述で、海外投資(特に投資信託)で何千万円かの虎の子を失ったという被害者が続出しているというくだりです。訴訟なども起こされているそうですが、「被害者=投資家」が(海外投資を薦めた)評論家を訴えているようで、乙には、何のことか、理解できません。評論家はあくまで評論家であって、訴訟の対象にはならないでしょう。訴えるなら、海外のファンド会社でしょう。しかし、それだって目論見書をちゃんと読めば、資産がゼロになることもあると書いてあるでしょうから、訴訟は却下されるでしょう。乙はその評論家の言を単純に信じた投資家が悪いのだと思います。中には悪徳商法もあるとは思いますが、(そして、それはネットの中でもリアル社会の中でも同じですが)それを信じて行動するかどうかはすべて投資家の責任のように思います。
 p.039 では、預金封鎖はまだ先の話と書いていますが、乙も同じ意見です。その前にインフレが起こるはずです。p.085 では、借金超大国がいつ破綻するか、その予測は難しいと書いてあります。そうなんです。そこが一番の問題なんです。このままではうまくないのはわかっていますが、破綻するのかどうか、するとしたらいつなのかがわからなければ、対処のしようがないわけです。p.087 では、インフレすらいつ起こるかわからないと書いてあります。
 pp.099-127 は「アメリカの借金を背負い込む日本」が描かれています。アメリカ国債を買い続ける日本のおかしさが指摘されています。これは、国家破産とは別に考えるべき政治問題です。pp.167-199 の「下請け国家に堕ちた日本」では、日本はアメリカの51番目の州ではなく、単なる下請け国家、つまり属国か植民地だと述べています。これも、国家破産とは別の政治問題です。
 pp.146-149 に、アメリカがやるかもしれない「荒技、秘策」が二つ紹介されています。一つは、新ドル札を発行し、旧ドル札はアメリカ国民は無制限に新ドル札に交換し、国外の旧ドル札は新ドル札に換えないと宣言するやり方です。これで旧ドル札は紙くずになるので、アメリカは対外債務を一気に減らせるというわけです。旧ドル札で買った旧国債は旧ドル札で償還されるから、国債も紙くずになります。しかし、これは、国債を買った人に対して、使えるドル札で償還しないということで、国家的なウソになってしまいますから、デフォルトと同じことで、まず起こりえないでしょう。
 もう一つは、新ドルと旧ドルの交換比率を1対2にするデノミです。ここの記述は、乙には理解できませんでした。2旧ドルが1新ドルに読み替えられるデノミによって、日本保有のアメリカ国債が一気に半分になってしまう(つまり借金が半分になる)というわけです。それはそうですが、しかし、半分になった資産の価値(たとえば、それで買える石油の量)は、以前の2倍あるわけで、それを日本からの借金として、アメリカが後日返そうとすれば、デノミで給与も預金も半分になっていますから、以前の2倍働いて返す必要があります。つまり借金は、見た目には半分になりますが、実質的には変わらないのではないかと思うのです。旧1ドル=100円がデノミ後に新1ドル=2旧ドル=200円になるということは、借金の額が半分になっても、円に両替すれば借金額は変わらないのです。藤井氏は、これでなぜアメリカの借金が半分になるといっているのでしょうか。乙には理解できませんでした。
 全体として、パニック本の中では、比較的冷静に書かれている本だと思います。

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2006年03月07日

浅井隆(1992.5)『日本発、世界大恐慌!----あなたは財産を守れるか----』徳間書店

 乙が読んだ本です。古本屋で見つけて買いました。
 http://otsu.seesaa.net/article/13541062.html で書きましたが、この本は、浅井氏によるパニック本の最初のものだと思います。
 1930年代の大恐慌と、それ以前のいくつかの恐慌とがどんなものであったかを述べ、それと同様のことが1990年代前半に日本で起こるということが書かれています。
 この本は、1992年の刊行ですから、バブルがはじけた後です。日経平均株価の1989年の最高値 38915円から株価が大幅に下がり、浅井氏が本を書いた1992年3月には2万円を割りました。
 日経平均株価の具体的な数値は http://www3.nikkei.co.jp/nkave/data/index.cfm を見てください。
 p.244 では、1993年秋に世界大恐慌が発生すると予想しています。(p.245 では「相場の底は1993年か1994年となるにちがいない」といっています。)この段階で、日経平均株価は 4000 円だというわけです。実際には、日経平均株価は2003年4月に最安値7607円まで下がりましたが、1993年は、16000-21000 円あたりを上下していました。1994年は、ほぼ2万円前後で安定していました。この点からは、浅井氏の予測は当たらなかったと言えそうです。
 また、p.244 では、不動産価格についても、1992年春の水準から2〜3年で半分以下になると予測しています。不動産価格がどうなったかを明確に示すことはむずかしいのです(地価に限定しても、都市部と非都市部では相当に違います)が、日本不動産研究所の市街地価格指数 http://www.reinet.or.jp/jreidata/a_shi/ によれば、1992から1995ころまでは、最高価格地の変動率が1年で -20% から -30% くらいですから、浅井氏の予想はまああたったと言えるのではないでしょうか。
 さらに、浅井氏は東京大地震を予測していますが、これはご愛敬とでもいうべきものでしょう。
 さて、実際は「世界大恐慌」と呼ばれる事態にはなりませんでした。
 それは、過去の失敗に学んで、昔と違って経済のコントロールがうまくなったということではないかと思います。急激な変動を避けるようにする工夫は、(昔と違って)いろいろ可能なはずです。制度が未整備の1930年代に起こったことが、現代でも同じように起こるとは、考えにくいと思います。というか、1930年代の恐慌を経験して、そういうことが起こりにくいように制度設計を変えてきたと見ればいいでしょう。
 あるいは、その後の日本の流れを見ていると、浅井氏の著作で予測していることが、もっとゆっくり起こったと考えると、実際に近くなります。銀行の不良債権問題など、まさにこの本が予測する通りかもしれません。
 ということは、浅井氏が数年先に起こると述べていること(今の著作でも)に対して、15年先にそうなると考えるといいということです。危機に対して、時間はたっぷりあるからゆっくり取り組もうという態度でいかがでしょうか。
 ともあれ、乙は、14年も経ってからこういう本を読むのもおもしろいものだと思いました。


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2006年03月05日

吉本佳生(2001.10)『「投資リスク」の真実』PHP

 乙が読んだ本です。
 はしがきに「私はなぜ、株式投資で失敗したのか」とあり、率直な書き方だと思いました。
 全体に、とてもまじめな本です。今読んでも価値があります。いい本は5年経ってもいい本です。
 全25回の経済学の講義を聞いているような錯覚に陥ります。語られる例はおもしろいのですが、確率論や統計学に関する話が多く、書名と内容が若干ずれているような印象があります。グラフの読み方や統計でウソをつく方法などは、他の分野にも当てはまりそうです。
 p.131 では、某社が3地区でそれぞれシェアを落としているのに、それを合算するとシェアが上昇するというとても興味深い現象が示されており、乙はデータの不思議さを感じました。こんな例があるんですね。
 p.197 には、こうあります。「結局、いろいろな儲け話や、さまざまなかたちで提示される株価や円相場などの予想は、それをあなたが信じ、あなたが取引に引き込まれれば、儲け話や予想をあなたに説明した人が儲かるしくみになっています。」いやはや、達観です。これを聞くと、何にも投資できなくなりそうでこわいです。
 この本では、単なる確率だけでなく、心理的(感覚的)な確率の話があったりして、読んでいて納得させられます。投資のために読む本というよりは、その基礎の勉強をするための本といったほうがよさそうです。


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2006年03月03日

澤上篤人・村山甲三郎(2005.12)『長期運用時代の大本命! ファンド・オブ・ファンズ入門』実業之日本社

 乙が読んだ本です。
 「さわかみファンド」の代表者と「ありがとうファンド」の代表者がやさしく書いたファンド・オブ・ファンズの入門書といえるでしょう。
 第1章は、澤上氏の執筆で、これから10年で個人が100兆円くらい投信を買っているはずだという見通しが述べられます。そうかもしれません。この低金利時代では預貯金が嫌われるのも道理ですからねえ。乙も、そう考えて資産運用を考えるようになったのです。
 第2章から第5章は村山氏の執筆で、この本の中心をなすものです。第2章は投信入門で、はじめて投信を購入する人むけに書かれており、記述は冗長で、あまり読む意味がありません。第3章からようやく本論にはいるという感じになります。第3章では、どういうファンドがいいファンドかを説明しています。乙もこの記述に賛成です。第4章では、世界のファンド・オブ・ファンズのいろいろを紹介しています。おもしろい記述なのですが、登場する会社がイニシャルでしかなく、この記述が本当かどうか、確かめようもありません。ここで実名を出してしまったら、「ありがとうファンド」に投資するのでなくて、その会社に投資しようということになってしまいますから、名前を出そうにも出せなかったのでしょうが、これでは、間接的に「ありがとうファンド」の宣伝をしていることになり、本を出すことの意味が半分くらい失われます。第5章は、これからの日本でのファンド・オブ・ファンズのあり方を述べたもので、主張は理解できます。
 第6章は、澤上氏の執筆で、郵貯が投信ビジネスをするなら、こんなふうにしたらどうかという一つの提案です。郵貯が一つのファンド・オブ・ファンズになり、いろいろなファンドに運用を競わせて、いいファンドを育てようということです。以前、さわかみファンドの通信にも書かれていたことの繰り返しですが、乙は、この考え方に強く引かれます。これが実現するといいですね。郵貯の資金の全部でなくても、一部がこうした形に回るだけで、日本は劇的に変わるように思います。
 第7章も澤上氏の執筆で、「おらが町の投信」をファンド・オブ・ファンズで作ろうという提案で、9割は長期運用に回し、1割は地元に投資するファンドという提案です。乙は、ここの記述が今ひとつわかりませんでした。ファンドの存在意義が資産の着実な成長を目指すものだとすれば、地元に一定割合の投資をするというファンドがどのくらい支持されるものでしょうか。投資家の愛郷心をくすぐることで投資金額が増えるものなのでしょうか。普通には、投資家は投資の効果があるところに投資するものであって、「地元だから」という理由で投資するものではないと思うのですが。また、長期投資の部分は、別のファンドに委託すればいいと思いますが、地元に投資する部分は、ファンドが自力で運用するしかなく、それはつまり信用金庫や農協などが行っているビジネスへの参入になるわけで、うまく行くかどうかは何ともわかりません。さらに、この計画では集まる資金の多少によって意味づけが大きく変わってきます。今の日本で、「おらが町の投信」に資金が集まるようなことがあるでしょうか。いったん資金が集まりはじめれば、口コミで広がっていくことも考えられますが、そうなるまでの立ち上げが大変です。個人資産のたった2%しか投信に向かっていない現状なのですからねえ。乙は、そんなことを考えて、この第7章は、夢物語だなあと思いました。
 さて、この本を読み終わって、乙はファンド・オブ・ファンズに対する疑問が解決されていないように思いました。第1に、ファンド・オブ・ファンズは、他のファンドに投資するので、それ自体をいくら低コストにしても、トータルなコストは他のファンドを直接購入する場合に比べてどうしても高くなってしまうことです。第2に、それと関連して、いいファンドが見つかるならば、直接そのファンドに投資すればいいのであって、ファンド・オブ・ファンズに投資する意味は何なのかということです。
 個別の株式に投資すると、投資家がそれぞれの会社について調べることになり、それが大変だからファンドという仕組みができたと思います。同じ理屈で、数千ものファンドがあって何がいいのかわからないからファンド・オブ・ファンズができたと考えることもできるでしょう。つまり、ファンド・オブ・ファンズに払うコストはいいファンドを選ぶプロセスを代行してもらうことだということになります。
 もしかしてファンド・オブ・ファンズは分散投資が目的なのかもしれません。だとすると、数種類のファンドに投資するのでなく、数十種類から数百種類のファンドに投資するべきかと思いますが、乙は、ファンド・オブ・ファンズでそんなにたくさんのところに分散している例を知りません。たいてい数種類ではないかと思います。
 もしも、ファンド・オブ・ファンズが投資家に代わっていいファンドを探してくれるとすると、株式ファンドを個別の株購入の指南役として使うことが可能なように、ファンド・オブ・ファンズに最低金額(1万円?)だけ投入して、そのファンド・オブ・ファンズがどこに投資しているかをチェックし、そのファンドに投資家が大部分の資金を投入するようなやり方が成立しそうです。情報提供料だと思えば1万円は安いものです。(しかも、その1万円はだいたいそのまま返ってくることが期待されるのですから。)いや、それ以前に、ファンド・オブ・ファンズを募集する目論見書を見れば、その程度のことは書いてあるはずですね。
 乙は、投資家の一番知りたいところを隠してこの本が成立したかのような印象を持ちました。

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2006年03月01日

木戸次郎(2005.7)『世界の成功者に学ぶ投資の極意』SPICE

 乙は、日本株の本かと思って、買って読んだら、実は、6割がベトナム株投資の話でした。意外でした。
 乙は、ベトナム株についてはまったくわかりませんので、その部分はスキップし、他の部分についてコメントします。
 p.16 から、「海外ファンドのリスクを知るべし」と題し、海外ファンド自体がハイリスクだといっています。そしてこんなふうにいっています:「1年間で何倍にもなるファンドというのは1年間で何分の一にもなり得るということである。」木戸氏によれば、海外ファンドで5年間、毎年20%利回りがあるからといって、これから先もそうなるというわけではなく、むしろ、5年間で2倍以上も値上がりしている金融商品を買っていると解釈できるというわけです。しかし、乙の考えでは、ここの数値は変です。投資した金額に対して、損益はある程度バラツキを持った数値としてとらえます。その「幅」は、利益のほうにも損失のほうにも同じような割合で伸びていると考えられます。確率分布でいえば、正規分布を仮定してもいいでしょう。ざっと見て、5割増と5割減が同じ確率になるでしょう。「何倍にもなる」はプラス数百%ということですから、その反対はマイナス数百%ということになります。しかし、投資では、一般に(信用取引などは別として)投資した金額以上に損失がふくらむことはありませんから、マイナスの上限は 100% に決まってしまいます。
 こう考えると、つまり「1年間で何倍にもなるファンドというのは1年間で何分の一にもなり得るということである。」は「1年間で何倍にもなるファンドというのは1年間でゼロ(つまり破綻)にもなり得るということである。」としなければなりません。あるいは、より正確には「1年間で2倍以上にもなるファンドというのは1年間でゼロにもなり得るということである。」となりましょうか。
 木戸氏の主張は、過去5年間にわたって年20%の利回り実績を上げてきたファンドであっても、これから先もそうなるという保証はなく、むしろ、5年前の2倍に値上がりした金融商品を買っていることであり、破綻の可能性もあるのだということです。この主張は、間違いではありませんが、問題は、今後の破綻の可能性と、今後も同様に年20%の利回りを上げる可能性のそれぞれがどれくらい大きいかです。今までの実績を考慮すれば、破綻の可能性の方が小さく、年20%の利回りを得る可能性のほうがずっと大きいように思います。仮に、破綻の可能性が年20%のリターンを得る可能性の 1/5 だとすると、期待リターンはちょうどゼロになりますから、破綻の可能性がこれより小さいと判断できれば、投資していいということになります。
 さて、1年後に 1/6 の確率で破綻してゼロになり、5/6 の確率で 20% のリターンが得られるファンドがあると仮定しましょう。5年後、このファンドがどうなるかを計算してみると、5年後までに破綻する可能性は 1-(5/6)**5≒0.6 で、破綻しなければ(約4割の確率で)2.488 倍に資産が増えることになります。期待値はこれでもゼロです。世界中のファンド(のうち年20%の利回りを出しているもの)が過去5年で6割ほど破綻しているでしょうか。とてもそうは思えません。
 ということは、1対5の確率でうんぬんという考え方が間違いで、破綻する可能性はもっとずっと低いことになりそうです。その分、期待リターンはゼロではなく、相当に高いということになるかと思います。
 もちろん、破綻の可能性はゼロではありませんから、万が一には投資金額がパーになってしまうのですが、あまりそれをおそれても萎縮するだけのように思います。
 p.59 から、REIT のマイナス面を説いています。不動産価格の上昇で安定した利回りが期待できず、むしろ、不動産価格の低下が起こり、REIT も値を下げるだろうということです。乙は、よくわかりませんが、いくつかの新聞記事などで似たような意見を見かけましたので、たぶん、こういう考え方が当てはまるのだろうと思っています。
 p.64 から日本株の「推薦銘柄」6種が書いてあります。乙は、こういう内容が大好きです。(これにしたがって実際に株を買うことはありませんが。)
 さて、木戸氏はどれくらい今後の株価をあてることができるのでしょうか。この本の記述によると、出版後1年後くらいを目安としているようなので、この部分は 2006年6月ころに6銘柄の株価を確認した上で書くことにしましょう。


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2006年02月27日

吉本佳生(2002.7)『投資リスクとのつきあい方(上)---サイコロで学ぶリスク計算』講談社+α文庫

 乙が読んだ本です。
 この本もまじめな本で、リスクの計算法はこれでバッチリわかります。確率や統計のことについてあまり知識がない人でも理解できるのではないでしょうか。難しい確率の話をサイコロで説明してしまうことに感心しました。
 ただし、乙にはどうしてもわからなかったことがあります。
 著者は、リスク管理が大事だということを繰り返し述べていますが、「リスク管理」とは何なんでしょうか。本書を読むことでリスクの計算のしかたはわかりますので、自分が買って持っている株について、リスクを計算することもできます。でも、計算することが「管理」ではないですよね。1ヶ月に1回リスクを計算した後、何をすることがリスクを「管理」することなのでしょうか。
 著者には、あまりにも当たり前すぎて、「どうしてそんなことがわからないんだ」としかられてしまいそうですが、乙にはわかりませんでした。
 WWW を検索すると、リスク管理には大きく二つの意味があるようです。

 第1の意味は、リスクを小さくすることです。三つを引用します。
 http://kw.allabout.co.jp/glossary/g_money/w001772.htm
「リスク管理とは、リスクの度合いを自分の受け入れられる程度にコントロールすること。
リスクとして想定されていたことが実現してしまった時に、損失を最小限にとどめるように処置することもリスク管理の大事な一面である。リスク管理の基本としては、状況に応じて資産の現金比率をコントロールすることや、銘柄分散することなどが挙げられる。資産運用においては、収益を求めることと、リスク管理をすることが重要な作業の2本柱といってもいい。」

 http://kabuyougo.blog15.fc2.com/blog-entry-731.html
「リスク管理とは 自分の受け入れられる程度に、危険の大きさを調節することをいいます。
想定していた危険が、起きてしまった時に、損失を最小限にとどめる処置をすることも大事な管理の一つで、状況に応じて銘柄分散することや現金比率の調節をすることなどが、挙げられます。資産運用においては、リスク管理と収益を求めることが重要な作業となります。」

 http://support.mitsue.co.jp/archives/000115.html
「リスク管理とは、具現化して欲しくないが具現化する可能性のある事柄に対し、具現化する可能性をできるだけ低くするための活動を指します。」

 第2の意味は、リスクに対して対策を講じることです。こちらも三つを引用します。
 http://www.fukuzatsu.jp/mailmagazine/20030909.html
「リスク管理とは、「危機が起こらないように予めリスク(危険)を想定し、対策を講じること」をいう。」

 http://www.rmcaj.com/web_page/conference/lessons/001/0509_06a.htm
「リスク管理とは未だ起きていないことを予め予測し対策を練っておくことである。」

 http://blog.goo.ne.jp/moneycafe/m/200511
「リスク管理とは、そのリスクを正しく理解したうえで、足をすくわれる可能性を極力減らしたり、あるいは足をすくわれたとしても軽症で済むようにすることです。」

 このうち、第2の意味「対策を講じる」というのは、株式投資の場合、ちょっと違うような気がします。だって、株価は上がるか下がるかで、自分でどうこうすることはできません。この意味では、一番の対策は株を買わないことになってしまいます。また、この場合、リスクの意味が「変動の大きさ」という意味でなく「危険性」というような意味になっています。
 ですから、株の場合の「リスク管理」は、第1の意味(リスクを小さくすること)ということになりそうです。それにしても、「管理」という日本語は、あまりぴったりしていないような気がしています。英語の management も同様です。リスクを小さくすることなら、「リスク管理」よりは「リスク低減」(decrease)とか言ったほうがずっとわかりやすいでしょう。
 乙がわからなかったことがもう一つありました。リスク管理の視点からは、損切りは大切だということになります。ある程度以上に下落が始まったら、株は損を承知で売らなければなりません。それは納得できます。しかし、予定外に株価が急激に上昇した場合も同じなんでしょうか。
 株価の急騰は、ボラティリティ(=標準偏差)を増大させますから、これから当該株価のリスクが大きくなっていくことがわかるわけで、リスクを抑えるためには、損切りと同じく、早めに株を売った方がいいということになります。
 しかし、一般的には、(投資家の心理からすれば)株価の上昇がはじまったからという理由でその株を売却するのは変で、それよりはじっと持っている(そして上昇が一段落したら売る)ほうがいいように思います。なぜならば、株価が上昇するのは何か理由があるはずで、その理由は瞬時に市場の全員が知ることになるわけではないから、株価の上昇も瞬間的なことではなく、数日かけてゆっくり上がっていくことが多いように思います。(もしかすると、ストップ高になるときに値幅制限が付いていることも影響しているかもしれません。)したがって、株価が急に上がりはじめたからと言う理由で売却すると、あまり利益が上がらず、少し待ってから売却することではじめて株価上昇の恩恵を得ることができるように思います。
 たぶん、リスク低減は下落場面(損切り)だけで適用するのでしょうね。いや、やっぱり、急騰があったということは急落もあり得るということなので、その時点でさっさと売るんですかね。わからない、わからない。


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2006年02月25日

鈴木雅光(2003.1)『買ってはいけない「金融商品」のからくり』主婦の友社

 乙が読んだ本です。とてもまじめな本で、大いに参考になります。
 p.33 には、30億円以下のファンドは危険だという話が出てきます。納得です。
 pp.58-64 には、グロソブは為替リスクがあり、円高になると損失が出るので、ハイリスクであり、買ってはいけないとされています。乙は、円高で損失が出るのは正しいと思いますが、http://otsu.seesaa.net/article/12540315.html で述べたとおり、グロソブの投資対象が世界分散型なので、為替の変動(ほとんどの通貨に対して円高になること)はそんなに心配することではないだろうと思います。まあ、為替リスクをハイリスクといえば、グロソブもハイリスクになるわけですが。
 pp.76-81 では、海外投資を取り上げ、詐欺事件が多いことを指摘し、p.79 には過去に起こった詐欺事件の一覧表が示されています。乙は、しかし、海外投資には詐欺もあるけれど、そうではないものもあるので、それをかぎ分けることが必要だと思います。ではどうするか。p.186 に回答が出ています。インターネットで評判を事前にチェックすればいいのです。ネット上の情報は玉石混合であることはもちろんですが、たくさんの記事を順次見ていくと、だいたいの傾向のようなものが見えると思います。
 p.98 には、個人向け国債も買わないということが書いてあります。低金利ですし、しかも信用の格付けが低いわけですから、これは当然です。
 乙は、2006年現在でも読む価値がある本だと思います。

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2006年02月23日

山崎元(2005.10)『お金をふやす本当の常識---シンプルで正しい30のルール』日本経済新聞社

 乙が読んだ本です。
 実にまじめな本で、日経ビジネス文庫ということでお値段は 667 円+税 しかかかりません。おトクです。
 30個のルールで投資関係の教訓を語っています。
 ルール1:分からない運用商品には手を出さない!
 いやあ、同感です。実感です。乙も、このルールで手を出さなかった金融商品が過去にいくつもあります。(これからもいろいろ経験するでしょう。)その時点ではこの本を読んでいたわけではないのですが、結果的には、この本のルールを実践していたことになります。
 ルール10:長期投資でもリスクは減らない!
 常識への挑戦です。でも、この本を読むと、山崎氏のいっていることの方が正しいと思います。1年間で年率マイナス40%になることと4年間で年率マイナス20%になることでは、後者のほうがリスクが縮小するように感じますが、100万円を基準に考えて、1年後に60万円になることと、4年後に 0.8 の4乗で41万円になることを比べると後者のほうが下落幅は大きいのですね。こういう考え方は、乙には目からウロコでした。
 ルール14:経済パニック論の真意を見抜け!
 経済パニック論とは、日本経済破綻、預金封鎖、資産防衛などの話です。山崎氏は、仮に「預金封鎖から資産課税」が10年後にはじめて起こる確率が 1/10 で、預金のカット率が3割の場合、期待リターンが10年後にマイナス3%、つまり、年率リターンではマイナス 0.3% にすぎないと述べています。そして、海外ファンドなどにはいろいろ問題があるので、薦められないとして、代わりに個人向け国債を推薦しています。
 ここは、乙が一番違和感を持ったところでした。
 まず、海外ファンドですが、山崎氏は、次のような理由を挙げて、否定的な意見を述べています。
(1) ファンドの手数料が高くかつ多くの場合不透明である(特に「成功報酬」と「ファンド・オブ・ファンズ」に注意)
(2) ファンドの仕組みが複雑である
(3) ファンド資産の保管に関する複雑さも問題である(配当が入金しない場合などに、自分で解決できるか)
(4) 運用者の信用度の確認が難しい
(5) 解約換金の手続きが時に難しい
(6) 営業担当者の信頼度確認の難しさもある(担当者がいなくなってもファンド資産は守られて、自由に換金できるか)
 これらの点について、乙は、次のように考えています。
(1) 確かに国内のファンドよりも手数料が高いのですが、国内よりも実際にリターンが大きい場合が多いと思います。見せかけだけでしょうか。乙にはそうとも思えないのです。
(2) 複雑であることがすなわち悪いわけではないと思います。そういう仕組みを利用しているからこそ、大きなリターンがねらえるという面があるように思います。
(3) 一般に、配当は出さないのが普通のように思います。ただただ長期に運用しているだけですね。もしも、配当が入金しない事態になれば、英語でのやりとりになりますが、これは覚悟しなければなりません。
(4) 運用者の信用度は、確かに確認が難しいです。国内では、各種の規制がありますから、いいかげんな業者はそもそも営業できないわけで、一種の守りがそこにはあります(いわば投資家が法律で守られているわけです)が、海外では、そこがよくわかりません。乙は、その会社が今まで長期にわたって運用してきていること、純資産がそれなりに大きいことをもって、まあ大丈夫だろうと(勝手に)信じています。
(5) 購入時に確認していますが、自分が解約する場合は、さほどむずかしくないと思います。問題は、自分が死んだ場合です。子供などが解約する(あるいは名義変更する)ことになりますが、海外はここが難しいです。日本ではハンコで何とかなりますが、海外ではサインです。死亡証明やら相続人の証明やらを英語でやりとりしなければなりません。相当に面倒なことになりそうです。
(6) 営業担当者は、ファンドの申込み(購入)までの代理人であって、その後はあまり関係しません。(でも、投資を継続する限り、ファンドからは報酬の一部が営業担当者に流れているんですけど……)解約はファンド会社宛に連絡しますから、担当者がいなくなってもほとんど関係ありません。
 なお、海外ファンドといっても、海外の銀行などが直接販売するファンドを買えば、(3)から(6)はほぼ問題ないように思います。これは海外ファンドとは別の話ですかね。
 次に、山崎氏がなぜ個人向け国債を推薦するのかが乙には分かりませんでした。個人向け国債は、普通の国債と仕組みが違いますが、要は普通の国債よりも 0.8% 利率が低いということです。それでなくても低い利率が、さらに低くなるわけです。変動金利ですから、これから金利が上がれば、それに連動していくということで有利な面もありますが、それにしても、こんな低金利なのが推薦できるという考え方が乙には理解できません。

 なお、最近、気が付いたことですが、山崎氏のサイトを見ると、ルール14と同じことが書かれています。
http://www.rakuten-sec.co.jp/ITS/Yamazaki/V_TOP_Yamazaki_20050318.html
文庫本よりもさらに安く、ネットでタダで読めるようになったんですね。


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2006年02月21日

国会図書館で調べた浅井隆氏の著書

 浅井隆氏はいろいろ本を書いているらしいことがわかりましたので、乙はちょっと国会図書館のデータベースで調べてみました。
 著者名に「浅井隆」と入れて、出てきた結果から同姓同名の人の分を削除しました。それが以下の表です。

浅井隆(1990.11)『NTTが核攻撃される日』フットワーク出版
浅井隆(1991.4)『アメリカの罠』フットワーク出版
浅井隆(1991.10)『証券業界腐敗の構造』ベストセラーズ
浅井隆(1991.11)『仕組まれた湾岸戦争』東洋経済新報社
浅井隆(1992.5)『日本発、世界大恐慌!』徳間書店
浅井隆(1992.9)『アメリカより「愛」をこめて』フットワーク出版
浅井隆,未来経済研究会(1993.4)『経済激動超予測. 1993〜1995』徳間書店
浅井隆,未来経済研究会(1993.11)『金が日本を救う!』徳間書店
浅井隆(1994.6)『地上最後の投資の楽園』中経出版
浅井隆(1994.6)『'95年の衝撃』総合法令
浅井隆,楠戸義昭(1994.7)『バブルの日本史』徳間書店
浅井隆,金融問題プロジェクト(1994.7)『超銀行革命』総合法令
浅井隆(1994.10)『天変地異の法則』学習研究社
浅井隆,林英臣(1994.10)『超恐慌』総合法令
浅井隆(1994.11)『サバイバル読本. “食育"編』総合法令
浅井隆,戦略経済研究所(1995.1)『不況からの脱出』総合法令出版
浅井隆(1995.4)『大世紀末シンドローム』徳間書店
浅井隆(1995.5)『経済の衝撃』総合法令出版
浅井隆,戦略経済研究所(1995.5)『第二海援隊構想』総合法令出版
浅井隆,太田晴雄(1995.8)『あなたの財産はかくも簡単に消滅する!』総合法令出版
浅井隆,戦略経済研究所(1995.8)『円高災害株安パニック』総合法令出版
浅井隆(1996.1)『取り付け騒ぎマニュアル』総合法令出版
浅井隆(1996.1)『チャイナ・プロブレム』徳間書店
浅井隆,戦略経済研究所(1996.2)『財産防衛マニュアル』総合法令出版
浅井隆(1996.4)『パラダイム大転換』学習研究社
浅井隆,戦略経済研究所(1996.8)『食糧パニック』第二海援隊
浅井隆,戦略経済研究所(1996.8)『くたばれ官僚!』第二海援隊
浅井隆,戦略経済研究所(1996.10)『21世紀の勝者は誰か』ソニー・マガジンズ
浅井隆(1996.11)『97年の逆襲』第二海援隊
中森貴和,浅井隆(1996.11)『壮大なツケ』第二海援隊
中山修二,浅井隆(1996.12)『超食糧危機』第二海援隊
浅井隆,ベンチャーサポート(1997.4)『ベンチャー大革命』第二海援隊
浅井隆,大伴高史(1997.4)『爆発する郵貯と生保』第二海援隊
浅井隆,太田晴雄,ベトナム・ミャンマー投資調査プロジェクト(1997.6)『ベトナムVSミャンマー』第二海援隊
浅井隆,生保問題調査プロジェクト(1997.7)『生命保険サバイバル読本』第二海援隊
浅井隆,林弘明&バブル処理コンサルティングチーム(1997.10)『バブル処理マニュアル』第二海援隊
浅井隆,プライベート・セキュリティー(1997.11)『財産防衛マニュアル 完全版』第二海援隊
浅井隆(1997.12)『98年-2010年に起きる100の出来事』第二海援隊
浅井隆(1997.12)『オレの老後をどうしてくれる!』第二海援隊
浅井隆,大伴高史,松岡亮(1998.2)『大倒産時代』第二海援隊
浅井隆(1998.5)『30年不況』第二海援隊
浅井隆,大伴高史(1998.7)『あなたの郵便貯金がおろせなくなる日』第二海援隊
浅井隆(1998.9)『大不況脱出のための8つの情報収集法』第二海援隊
浅井隆(1998.10)『日本発世界大恐慌はやってくるか』第二海援隊
浅井隆(1998.12)『あなたの財産を10年で倍にする法』第二海援隊
浅井隆(1999.1)『浅井隆が教える史上最強の不況脱出法』徳間書店
川又三智彦,浅井隆(1999.3)『日本沈没、日本再生』第二海援隊
村山節,浅井隆(1999.7)『文明と経済の衝突』第二海援隊
浅井隆(1999.8)『勝ち組の経済学』小学館
浅井隆(1999.9)『21世紀に勝ち組となるための100の成功法則』第二海援隊
浅井隆(1999.12)『2000年の衝撃』第二海援隊
浅井隆(2000.1)『勝ち組になるデータファイル』小学館
浅井隆,戦略経済研究所21(2000.4)『未来革命』第二海援隊
浅井隆(2000.8)『海外ファンドによる財産倍増計画』第二海援隊
浅井隆(2000.12)『2003年、日本国破産. 警告編』第二海援隊
浅井隆(2001.5)『2003年、日本国破産. 対策編』第二海援隊
浅井隆(2001.9)『勝ち残り経済学』小学館
浅井隆(2001.10)『2003年、日本国破産. 番外編』第二海援隊
跡田直澄,浅井隆(2002.6)『2003年、日本国破産. 衝撃編』第二海援隊
浅井隆(2002.10)『国家破産!?気づいた人には大チャンス』あ・うん
浅井隆,キーウィ・サポート(2002.12)『日本がだめならニュージーランドがあるさ! (2003年、日本国破産 ; 海外編)』第二海援隊
浅井隆(2003.1)『勝つ経済学』小学館
浅井隆(2003.9)『国家破産サバイバル読本. 上』第二海援隊
浅井隆(2003.12)『国家破産サバイバル読本. 下』第二海援隊
浅井隆(2003.12)『清貧どケチサバイバル』あ・うん
浅井隆(2004.7)『いよいよインフレがやってくる!』第二海援隊
浅井隆(2004.11)『最強の自分年金マニュアル』ダイヤモンド社
浅井隆(2004.12)『あと1年半は株で大儲けしなさい!』第二海援隊
浅井隆(2005.2)『退職金制度・規程の見直しと不利益変更問題への対応』日本法令
浅井隆(2005.3)『次にくる波』PHP研究所
浅井隆,戦略経済研究所(2005.3)『なぜライブドアはフジテレビを乗っ取ろうとしたか!?』第二海援隊
浅井隆,戦略経済研究所21(2005.5)『ホリエモンへの挑戦状』第二海援隊
浅井隆(2005.9)『最後の2年』第二海援隊
浅井隆(2005.12)『小泉首相が死んでも本当の事を言わない理由. 上』第二海援隊

 このリストは、浅井氏の著作物を全部網羅しているわけではないようです。少なくとも、乙が読んだものの一部がリストアップされていません。(浅井隆(1993.9)『大不況サバイバル読本 '95年から始まる"危機"を生き残るために』徳間書店)
 しかし、だいたいの傾向を知ることができます。
 浅井氏は毎年のように数冊の著書を出版しています。恐るべき生産量です。しかし、こんなにも多数の著書を書いて、全部がオリジナルなのでしょうか。正確には、それぞれの著書を読んで比較しなければなりませんが、乙が読んだ数冊の内容から類推して、全体として記述の重なりがかなり多いのではないかと想像します。
 また、1991年以前の著書は、題名から考えてパニック到来を予想したものではなさそうで、1992年の『日本発、世界大恐慌!』くらいからがパニック本といえそうです。
 この本を読んでみようかと思いますが、近くの図書館にもないので、国会図書館まで行かなければならないのでしょうか。う〜む。この本は、こういう手間をかけるだけの価値があるでしょうか。
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2006年02月18日

浅井隆氏の国家破綻本3冊

 乙は、近所の図書館に行って、浅井隆氏の本3冊を読みました。いずれもちょっと古いものです。

(1) 浅井隆(2000.12)『2003年、日本国破産<警告編>』第二海援隊
 何と、最近出版されている浅井隆氏の本の主張とほぼ同じです。違いは、2003年に国家破産が起こるとしていることだけです。p.48 には、次のようにあります。「私たちが知っているような日本国の姿は、早ければ2003年に、遅くとも2005年には完璧に終わってしまう。」もちろん、今は 2006 年ですから、この主張が間違いであったことが完璧にわかります。

(2) 浅井隆(1993.9)『大不況サバイバル読本 '95年から始まる"危機"を生き残るために』徳間書店
 10年以上も前の本ですが、何と、ここでも似たような主張がなされています。
 pp.132-138 では、日本の財政崩壊の話が出てきます。日本では216兆円の借金が返せないという話です。今の 1400兆円という金額から見ると、かわいい話です。
 p.168 では、1995年にアメリカの財政は破綻するとしています。そして、p.179 では「1995-1998年は、1930年代に次ぐ20世紀の「世界恐慌」の時代として歴史の年表に記録される」とゴチックの目立つ字で書いてあります。現在の 2006 年から見れば、この文言の当否は明らかです。今の歴史の年表には、世界恐慌は記録されていません。
 浅井氏の危機をあおる話は、その時期をいつも出版後2〜3年としているんですね。
 この本の p.249 にあることばが、おもしろかったです。「どんな時代にも本物は生き残る。」本来は別の文脈で使われているのですが、この言葉は、まさに浅井氏の本に当てはまりそうです。こういう本があったことは、ほとんど忘れ去られていますから、「本物」ではなかったということになるのではないでしょうか。本の場合は図書館に保管されますから、「本物」でなくても、破棄されるまでは「生き残る」わけですが。

(3) 浅井隆(1994.9)『超恐慌---800年に一度の大動乱があなたを襲う!!---』総合法令(株)
 本の趣旨を繰り返し述べるまでもないでしょう。その他の本と同じです。p.22 から、日米財政赤字は「もうすでに時遅し」だとしています。

 さて、こうして何冊か読んでみると、浅井隆氏は1993年から現在に足るまで、日本の財政崩壊による国家破産を一貫して主張してきました。主張がぶれないのはエライです。しかし、問題は、そういう大事件が起こる時期の予想です。いつも出版後数年先を予想しています。浅井隆(2005.3)『次にくる波---2007年から、いよいよ経済大変動がやってくる』PHP研究所 については、すでに乙のブログで触れましたが、国家破産は2007年と予想しています。
 これでは浅井氏はオオカミ少年になってしまうのではないでしょうか。過去の延長上に未来があるとすると、このままだと、浅井氏は2008年に『2010年、日本大崩壊』などという本を出版することになるような気がします。出版できるということは、それを買う人がいるということで、つまりは、日本経済が崩壊していないということになりそうですが、さて、どうなんでしょうか。
 本は図書館に保管・記録されますから、書いてあることの検証・確認が可能です。
 乙は、出版後相当期間が経ってからこういう本を読むのが大好きです。へそ曲がりでしょうかね。
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2006年02月17日

浅井隆(2005.3)『次にくる波---2007年から、いよいよ経済大変動がやってくる』PHP研究所

 乙が読んだ本です。
 日本という国家が破産する、いやすでに破産しているという本です。
 2006年から2030年までに、日本は金利が急騰し、国債という借金が返せなくなり、破綻するというわけです。円も暴落するし、猛烈なインフレが起こります。消費税の大増税もあります。もう日本人全員が助かる道はないということになります。ドイツ、トルコ、アルゼンチン、ロシアなどの例を引き、記述は具体的です。借金を返すことはもう不可能になっているから、あとは個人でその対策を進めるしかないというわけです。
 著者はニュージーランド移住まで考えているということなので、著者は本当に国家破産を考えているのでしょう。
 一読して、不思議な説得力を感じました。なぜならば、日本政府の膨大な借金は、もう誰でも知っている現実なのですから、その先、どうなるかを考えれば、この本に書いてあるとおりだということになります。(本当に2007年からそういう波がくるかどうかは、乙にはよくわかりません。)
 日本はこういう破滅状態にはならないと考える人は、では、どのようにして借金の自転車操業から脱することができると考えるのでしょうか。具体的な方策があるのでしょうか。
 10年国債を30年国債にして(さらに100年国債にして)借金を繰り延べても、それは借金のとりたてを後回しにしたというだけで、いつかは返せなくなるという事態が確実にやってきます。
 政府やお役人は、一体何を考え、何をしているのでしょうか。
 乙は、この本の記述を全部信じるわけではありませんが、こういうことがあっても不思議はないと思います。この意味からも、資産の一部は海外で運用する必要があると思います。
 ちょっとした問題点を指摘するとすれば、pp.262-263 で「日本政府の年金はニュージーランドに住んでいてももらえる。」と書いている点でしょうか。国家が破産した後では、年金はなくなっている(少なくとも、充分な額をもらえるなんてことはありえない)と思うのですが。


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2006年02月15日

副島隆彦(2003.12)『預金封鎖 実線対策編---資産を村り抜く技術』祥伝社

 乙が読んだ本です。
 この本は、副島隆彦(2003.9)『預金封鎖---「統制経済」へ向かう日本』祥伝社 に続く本です。
 1章では、実物資産としての金(きん)地金の話が語られます。2章では、ペーパー・マネーの時代が終わるということで、銀や石油の話です。
 3章からが本題で、3章はアメリカ発世界恐慌の足音ということで、米国債も日本国債も暴落すると予言しています。p.90 では「2006年ぐらいを目途に、アメリカは中国の景気を一気に暴落させるという動きに出るだろう。」という不気味な予言が出てきます。今年はもうその2006年になりました。中国の景気は絶好調のままですが、さて、あと1年でどうなるでしょうか。
 4章では、昭和21年2月の「預金封鎖」を取り上げ、どのようにしてそれが行われたかを具体的に記述しています。
 5章から6章では、「借りたものが勝ち」という思想を語り、銀行融資の受け方、各種ローン、生命保険、年金、不動産投資、個人国債などの話題を扱って、これからどうなるのか、どうしたらいいかを述べています。
 そして、終章として「預金封鎖」がどのようにやってくるかを述べています。
 卒末には、著者が推薦する「優良ヘッジファンド」最新・(といっても2003年現在ですが)のリストが掲げられています。
 p.239 では、前著とそれに関する毎日新聞の記事に触れて「私が8年前から主張し続けてきたのは、敗・から60年目にあたる2005年を皮切りにして、その後の数年間にアメリカ発の世界恐慌が始まり、これに卒き込まれる日本が緊急の金融統制措置を発令する。このように書いてきた。」と述べています。つまり、これは著者の長年の主張であることがわかります。
 乙は、この本で書かれているような預金封鎖はしばらくなさそうに思います。だって、これをしたら、日本の中のお金の動きがストップしてしまい、会社も個人も動きがままならない事態になります。まるで経済がストップするかのようです。いくら何でもこんな乱暴なことはできないのではないかと思います。
 その代わり、では、どうしたらいいか。乙は零細個人のゴミ投資家ですから、政府がどんな対策を取るのか、まったく予想できません。
 乙の場合は、預金封鎖されても、あまり困らない程度の預金(もちろんペイオフの心配とは無縁のレベルです)しかありませんから、まあ、「なるようになれ」で暮らしていってもいいかなあなどと気楽に考えています。だって、日本に住んでいる人たちは、全員が同じ運命を共有しているわけですからねえ。何とかなるでしょう。少なくとも、それで死ぬことはないでしょう。
 大混乱を見込んで海外移住を考える人もいるでしょうが、乙は、日本語が通じ、親戚・友人・知り合いがたくさんいる日本で暮らすことが、自分にとって一番の安全・・和・幸福につながるように思うのですが。


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2006年02月14日

副島隆彦(2003.9)『預金封鎖---「統制経済」へ向かう日本』祥伝社

 乙が読んだ本です。
 2年半ほど前に出版された本ですが、最近、古本屋で買いました。
 近頃、乙は投資に関する本を買ったりすることがありますが、以前買ったものを読み直してみたり、やや古い本を買って読んでみたりすると、とてもおもしろいと思うようになりました。
 ことの本質を突くような、本当にいい本なら、数年経ったくらいで価値が変わることはありません。10年でも通用すると思います。(いろいろ制度が変わるので、10年は無理かもしれませんが。)
 さて、この本は、預金封鎖を主題とする本です。これからアメリカ経済がおかしくなり、それにともなって世界経済がおかしくなり、日本も巻き込まれる。その先に、預金封鎖があるという論法です。
 乙は、日本の預金封鎖は(ここしばらくは)ないだろうと思っています。そんなことしたら政府は完全に信用を失いますし、日本は大混乱になるからです。
 それはともかく、この本の中には、たとえば、次のような記述が出てきます。
 p.115 「再来年の二〇〇五年ごろから、世界の経済の雲行きは急激に怪しくなるだろう。」
 p.212 「(二〇〇四年に)ブッシュが再選されることが決まり、その翌年二〇〇五年からデフレ=大不況がアメリカを襲うだろう。それが日本にも影響を与える。私たちはそれに備えなければならない。」
 乙は、こういう記述を読むと、とても愉快になります。
 今は2006年ですが、この本が予想するような事態は起こりませんでした。
 副島さんは、現状をどう把握していらっしゃるのか、機会があったらぜひうかがいたいと思います。
 たぶん、時期がちょっとずれただけで、数年以内にきっと大不況が起こるとおっしゃるのでしょう。
 乙は、数年後に再度この本を読んで、その時点でこの本の記述内容を再考してもいいですよ。それまで大切に保管しておきます。

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2006年02月07日

藤井厳喜(2005.6)『「破綻国家」希望の戦略』ビジネス社

 乙が読んだ本です。
 国家破綻を防ぐために、政府発行通貨を実施せよということが書いてあります。第2章以降は、アメリカと中国の話で、第1章とはだいぶ趣が違います。
 政府発行通貨というのは、日本銀行券とは別物です。とはいえ、本当に紙幣を発行し流通させると、円の信用がなくなって、金利が急騰するので、そんなことはせずに、通貨発行権を日銀に買い取ってもらう(たとえば80兆円×5年間で)という発想です。
 何もないところから、いきなり膨大なお金が生まれることになり、こんなことをして、日本は国として大丈夫かどうか、心配もあります。これほど膨大な政府発行通貨の経験はないわけですから、いざ実行したら何が起こるか、何とも見当がつきません。
 もっとも、借金で首が回らなくなって破綻するよりはマシですから、検討してみてもいいかもしれません。
 おもしろいアイディアだとは思いますが、乙は前例踏襲主義の政府・官僚がこんなことをする可能性は低いと見ます。しかし、国家破綻のような異常事態になれば、何があるか、わかりませんね。


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2006年02月06日

浅井隆(2005.12)『小泉首相が死んでも本当の事を言わない理由(上)』第二海援隊

 乙が読んだ本です。
 この本によれば、ついに日本の借金が1000兆円を突破し、債務がGDPの2倍を超えたということで、間もなく国が破産するということです。小泉改革では遅すぎてどうしようもなく、今後の日本では大増税、ハイパーインフレ、大不況があると予測しています。ロシア、アルゼンチン、トルコの実例を示して、日本も同様になるという主張です。いわゆる国家破綻本の一種です。
 日本の国債の発行残高が異常に増大しているのは、その通りです。それが国の借金であり、今や国の財政が自転車操業になっているというのもその通りです。そういう異常状態がいつまでも続けられるとはとうてい思えません。その意味では、大量に発行されている国債が、いつかは消化しきれなくなる可能性はあると思います。また、金利が上昇すれば、国債の利払いも増えますから、税金などの収入だけでは利払いが払いきれなくなることもあるわけで、それが何につながるかといえば、当然、国家の破綻でしょう。そのとき、日本がどうなるかは大問題です。
 そんなことで、乙は、こういう国家破綻本に対して、無視せずに、ある程度はそうなるかもしれないと思いつつ対策を考えるといいのではないかと思っています。
 本当の問題は、国家破綻がいつ起こるかということですね。こればかりはわかりません。とてつもなく大きな借金を背負っていたって、お金を貸す人(国債を買う人)がいる限り、問題にはならないからです。現に、今、そういうことで国債は消化されているのですから。乙は1998年の大量国債が償還を迎える2008年までは大丈夫なように思います。
 春には、下巻が発行される予定なので、乙はたぶんそれを買うと思います。


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